1. Penicillium chrysogenum Q176の油脂はその大部分がグリセライドからなり, 脂肪酸は飽和酸としてはミリスチン酸, パルミチン酸, ステアリン酸, n-テトラコサン酸, 不飽和酸としてはオレイン酸, リノール酸及び少量の高級モノエチレン酸を含んでいる。
2. Penicillium chrysogenum Q176の油はその脂肪酸組成においてAspergillus sydowi, Penicillium javanicumのそれに大体似ている。すなわち, 脂肪酸含量はオレイン酸, リノール酸, パルミチン酸又はステアリン酸, n-テトラコサン酸の順に減少し, 又, エルゴステリンを含む。たゞ両者と異なり, ミリスチン酸を含有している。なお, ミリスチン酸は酵母の油で認められている。
3. Penicillium javanicumはPenicilliumの中でも特に含油量多く, Penicillium chrysogenum Q176の約5~8倍の油をもつている。両者をくらべると組成脂肪酸はかなり良く似ているが, 後者は比較的不飽和成分が多く, 又, 分子量の小さい油の含量がやゝ多い。
4. これまでの研究の範囲内では黴の油は酵母の油にくらべてその組成は類似しているが各成分の含量は著しく異なり, 不飽和成分に富むものが多い。但し例外もある。
5. 一方, 病源菌の脂質と黴のそれとくらべると前者は特殊な例ばかりのためか, 蝋の含有量が著しく高い。後者は前述のようにグリセライドである。
抄録全体を表示