くすりと糖尿病
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原著論文
  • 朝倉 俊成
    2023 年 12 巻 2 号 p. 49-60
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2024/02/14
    ジャーナル 認証あり

    糖尿病治療用注射製剤に用いる注射針は,患者へのQOL(quality of life)等に配慮し,細く短いものへと開発が進んできた.現在,最も細い糖尿病自己注射専用針は34ゲージ(G)針(以下,34G針)で3製品が発売されている.そこで,本研究の目的は,34G針の基礎性能試験を実施し,構造上からの特徴および考えられる臨床使用におけるポイントについて考察することである.対象は,ナノパス®II 34G4 mm針(テルモ:NPII34G4)とナノパス®Jr. 34G3 mm針(テルモ:NPJ34G3),そしてアキュファイン®34G3.5 mm針(ロッシュDCジャパン:ACCU34G3.5)とし,基礎性能試験等(外観測定,強度試験,破断試験,刺通抵抗試験,流路抵抗試験,注入抵抗試験,および液だれ時間試験)を実施した.外観測定では,いずれも有効針長はJIS規格内に納まっていたものの,糊山の高さと有効針長に注目するとNPJ34G3が最も短い針と感じやすくなると考えられた.たわみ試験では,3種の中でNPJ34G3の強度が高く(p<0.005),破断については,ACCU34G3.5に比べてNPJ34G3とNPII34G4が破断しにくい結果となった(p<0.005).最大刺通抵抗はACCU34G3.5が最も小さいことから(p<0.005),痛みに関してはACCU34Gがわずかに小さくなると推測された.流路抵抗はACCU34G3.5が最も大きかった(p<0.001).加えて,複数のパターンで検討した最大注入抵抗についてはいずれもACCU34G3.5が大きく,注入ボタンを押し切ってからの「液だれ時間」についてもNPII34G4に比べてACCU34G3.5の方が有意に長かった(p<0.001).このことから,臨床ではNPJ34G3の長さが短いことと強度があることが特徴であり,同じテーパー構造を有するNPII34G4もその傾向がみられた.ACCU34G3.5は最大刺通抵抗が小さかったことから,痛みが少ない傾向は推測できるが,流路抵抗,最大注入抵抗,そして液だれ時間試験の結果より,ACCU34G3.5を使用した患者では注入ボタンを押すときに硬く感じたり,注入後の規定保持時間を守っても抜針時に針先からの液だれが生じる可能性が考えられた.したがって,3種とも規格上最も細い注射針ではあるが,本基礎性能試験により明らかとなった特徴を踏まえた対応が必要と考える.

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