くすりと糖尿病
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10 巻, 2 号
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原著論文
  • 齊藤 幹央, 田所 茉侑, 宮下 しずか, 朝倉 俊成
    2021 年 10 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/26
    ジャーナル 認証あり

    近年,新たな経口糖尿病治療薬としてSGLT2阻害薬(SGLT2i)などが承認され,多様な効果が期待される一方で,副作用が問題視されている.そこで,JADERを用いて経口糖尿病治療薬と肝障害の関連性について調査解析し多角的に検討を行った.その結果,過去約16年間で668例の報告があり,著者らが考案した肝障害の発現リスク評価値(EiRiLI)では,DPP-4阻害薬(DPP-4i)とSGLT2iが他剤より2~5倍の発現リスクを有する可能性が示唆された.既存報告論文の解析において,臨床型では肝障害型が最も多かった.診断の根拠はDLSTの実施率が高く,アレルギー反応機序による発現率が半数以上を占める可能性が示唆された.服用から肝障害発現までの期間(潜伏期間)では,他剤による肝障害と比べ,長期服用(1か月間以上1年間未満)に伴い発現率が高い傾向を認めた.EiRiLIで高値を示したDPP-4iとSGLT2iによる肝障害については今後,詳細な研究が求められる.特に免疫学的機序が関与する場合には潜伏期間の特異性も踏まえ,投与開始から中長期的なモニタリングが必要であると考えている.

  • 堀井 剛史, 國貞 なるみ, 厚田 幸一郎
    2021 年 10 巻 2 号 p. 197-208
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/26
    ジャーナル 認証あり

    Sodium-glucose co-transporter 2 (SGLT2)阻害薬による有害事象発症リスクは,成分ごとの臨床試験結果によりばらつきがあることから,大規模レセプトデータベースを用いてSGLT2阻害薬を投与されている2型糖尿病患者において,成分ごとの有害事象発症リスクについて検討を行った.本研究はメディカル・データ・ビジョン(MDV)のデータベースを利用し,2型糖尿病でSLGT2阻害薬が投与されていた患者169,658名を対象とした.有害事象は急性腎障害,大腿骨骨折,重症低血糖,糖尿病ケトアシドーシスとした.レトロスペクティブコホートスタディを実施した結果,急性腎障害,大腿骨骨折,糖尿病ケトアシドーシスはSGLT2阻害薬の成分間で有意な値を示さなかった.重症低血糖は,イプラグリフロジンをReferenceとし,エンパグリフロジン(ハザード比0.66),カナグリフロジン(ハザード比0.51),ダパグリフロジン(ハザード比0.57)が有意な値を示した.本研究により,急性腎障害,糖尿病ケトアシドーシス,大腿骨骨折の有害事象発症リスクは薬剤間で差がなく,重症低血糖の発症リスクは薬剤により差異を認めたため,症例数の蓄積もしくは,メタアナリシスなど他の手法を活用し検討を行う必要があると考える.本研究の結果を活用することで,SGLT2阻害薬のメリットを最大限に活用した,糖尿病薬物療法の実践が可能になると考える.

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