Sodium-glucose co-transporter 2 (SGLT2)阻害薬による有害事象発症リスクは,成分ごとの臨床試験結果によりばらつきがあることから,大規模レセプトデータベースを用いてSGLT2阻害薬を投与されている2型糖尿病患者において,成分ごとの有害事象発症リスクについて検討を行った.本研究はメディカル・データ・ビジョン(MDV)のデータベースを利用し,2型糖尿病でSLGT2阻害薬が投与されていた患者169,658名を対象とした.有害事象は急性腎障害,大腿骨骨折,重症低血糖,糖尿病ケトアシドーシスとした.レトロスペクティブコホートスタディを実施した結果,急性腎障害,大腿骨骨折,糖尿病ケトアシドーシスはSGLT2阻害薬の成分間で有意な値を示さなかった.重症低血糖は,イプラグリフロジンをReferenceとし,エンパグリフロジン(ハザード比0.66),カナグリフロジン(ハザード比0.51),ダパグリフロジン(ハザード比0.57)が有意な値を示した.本研究により,急性腎障害,糖尿病ケトアシドーシス,大腿骨骨折の有害事象発症リスクは薬剤間で差がなく,重症低血糖の発症リスクは薬剤により差異を認めたため,症例数の蓄積もしくは,メタアナリシスなど他の手法を活用し検討を行う必要があると考える.本研究の結果を活用することで,SGLT2阻害薬のメリットを最大限に活用した,糖尿病薬物療法の実践が可能になると考える.
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