欧州各国では所得・教育歴・職業等による健康格差の所在が示されており,健康の公平を追求する観点から,政策的対応が検討されている。欧州レベルでは1980年代より世界保健機関欧州事務局が議論を主導してきた。近年では欧州連合における一般的公衆衛生対策の協調がすすめられる中で,健康格差もその課題の1つとして盛んに議論され,知見が蓄積されている。各国政府の対応では,英国のように包括的な政策を形成している場合から,事実上無視されている場合まで多様である。これまでの経験では,健康格差の縮小を短期的に行うことは困難であり,継続的取り組みが必要である。こうした経験に学びつつ,日本においても健康格差についての状況把握と政策的対応をすすめていくことを検討すべきである。
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