日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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ポスターセッション_I_
  • 医療・教育との長期の連携が必要となった2症例
    渡辺 文治, 末田 靖則, 中村 泰三, 仲泊 聡, 渡邊 公恵, 齋藤 奈緒子
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【はじめに】
     入学以前の乳幼児や小中学校に在籍するケースでは、福祉施設を利用できなかったり、盲学校や弱視教室に通学していないために、福祉・医療・教育面での適切な支援を受けられない場合がある。また、他の障害があったり、原因疾患が進行性で単純な視覚障害の状態にない場合もあり、複数の施設の連携が必要となることも多い。本稿では、比較的長期にわたり医療・福祉・教育の関わりが必要だった2症例を報告する。【プロフィール】
     症例1は、相談開始時10歳の網膜芽細胞腫の男性。視力は右0左0.1前後であった。主訴は学習上のLV機器の選定等で、大学病院からの紹介である。
      症例2は、相談開始時8歳の男性で、頭部外傷により、視力は右0左0であった。高次脳機能障害、片マヒ等合併。主訴は、学習に関する相談等で病院リハ部からの紹介である。
    【相談・訓練経過】
     症例1の場合は、高校卒業まで不定期に継続相談・訓練を継続した。左眼再発に伴う入院、視力低下を繰り返す。最終的には盲学校進学。視力が有効である間は、教材・LV機器の相談が中心。その後進学に関する情報提供や点字の学習等の援助をした。
      症例2の場合は小2から小6までほぼ定期的に継続。何度かの入院時、集中的に訓練。利き手側のマヒのため、手指の機能向上を目標に訓練。運動的な内容も実施。学校を含む関係諸機関のミーティングを開催。検査結果や訓練状況・教材の情報等を学校側に連絡した。
    【結論】
     視覚障害の原因疾患が進行性であったり、他の障害を併せ持つなど単純な視覚障害の状態にない場合もあり長期間関わりを持つ必要のあるケースが存在する。
     医療・教育・福祉間で長期にわたり連携を取る必要がある場合、中心となる役割を果たす機関が必要となり、これを担う機関はどこなのかのかが問題となる。 
  • 渡邊 公恵, 仲泊 聡, 齋藤 奈緒子, 渡辺 文治, 末田 靖則, 中村 泰三, 菅原 安英, 久米川 浩一, 浅川 晋宏
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】今回、我々は、2泊3日という超短期入院による集中的ロービジョンケアを試みに行ない、その効果について検討した。【方法】対象は、神奈川リハビリテーション病院眼科を受診したロービジョン患者4名で、プログラム内容は患者のニーズをもとに、できるだけ様々な情報提供が可能になるよう個別に作成し、眼科において視覚機能の評価および拡大補助具の選定を行い、七沢ライトホームにおいて生活訓練の導入を行った。また、家族に対する生活訓練およびロービジョンの疑似体験を実施した。【成績】症例に共通して得られた効果は以下の4つであった。1)生活訓練を経験することで自信の向上がみられた2)当初希望していた本人のニーズ以外の訓練項目に対しても意欲を持ちはじめた3)家族のロービジョンに対する理解が深められた4)七沢ライトホームを利用することで、視覚障害者の生活訓練の内容をより具体的に理解できた【結論】短期入院による利点は、第一に、充実したサービス提供が可能となった。これは入院の形態をとることにより、訓練時間以外の生活を観察することから患者の新たなニーズを発見し、プログラム内容の再検討につなげることができたためと考えられる。第二は、訓練内容を効率的に習得できたという点である。3日間で少ないケースでも14時間集中的に訓練できたため、効率良く訓練内容を吸収することができた。その結果、訓練効果の定着につながったのではないかと考えられる。その他、「入院が短期間なので学校や仕事がある場合でも生活に影響が少ない」、「身体障害者手帳を所有していなくても、視覚障害リハビリテーションが受けられる」ということが挙げられた。退院後の生活に役立つように利用可能な社会資源を紹介することも重要であった。今後さらに症例数を増やし、より充実したサービスを提供していきたい。
  • 新井 千賀子, 東 範行, 仁科 幸子, 越後貫 滋子, 赤池 祥子
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    目的:国立成育医療センター眼科では視覚障害が小児の発達にあたえる影響の重要性を考慮し早期からの小児ロービジョンケアに取り組んでいる。小児のロービジョンケアについては教育や育児などを含んだ情報提供が重要なニーズとなっていること(新井ほか、1998)から、教育や育児についてロービジョン相談としてロービジョンエイドなどの処方とは別に実施している。本研究は2003年1月から2005年6月の間にこのロービジョン相談を受けた103例(男63、女40例 0歳_から_20歳 平均4歳4ヶ月)について、疾患、年齢、視覚障害の程度、重複障害の有無および相談の内容とニーズについて分析を行い、視覚障害乳幼児の早期支援について検討することを目的とする。結果と考察:103例のうち未熟児網膜症が最も多く35_%_、先天白内障、無虹彩、小眼球などの先天疾患が40_%_となっている。年齢別には7歳未満の未就学の乳幼児が87_%_であった。3歳以下の乳児が全体の58_%_、0歳児が約10_%_をしめていた。視力測定が実施されている48例について視力の分布をみると(視力の高い方を採用)その分布は0.4_から_光覚であり、0.1未満が全体の67_%_、光覚が35_%_をとなっていた。他の障害との重複は45_%_が相談開始の時点で重複障害が明確であり、25_%_が経過観察であった。おもに重複する障害は知的障害であった。これらのことから、国立成育医療センターにおけるロービジョン相談の特徴として、3歳未満の乳幼児が中心であり、光覚などの視力障害が重度な事例が多く、さらに重複障害がある事例が多くふくまれていることがわかる。これらの実態を反映して相談内容の中心は、視覚障害に対応した育児方法や発達支援など乳幼児に特化したものであり、未就学の視覚障害乳幼児を支援するリソースの情報や、幼稚園・保育園などへの就園、小学校への就学を中心とした教育に密接に関連した情報提供であった。
  • 佐渡 一成, 佐渡 眞樹, 福澤 篤志, 内田 まり子, 中村 透
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    緒言:日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成14年10月より、視覚障害者を対象にセンターに2週間宿泊しながら日常生活訓練や歩行訓練、パソコン訓練などの「短期リハビリテーション(短期リハ)」を行っている。この短期リハ中に、ロービジョンケアを希望した参加者には、さど眼科にて諸検査、補助具の処方、カウンセリングなどを行っている。
    対象:これまで、9回の仙台における短期リハ中に眼科を受診したものは、男性7名、女性11名。年齢は37歳から75歳(平均55.3歳)。居住地は宮城県10名(仙台市7名)、岩手県3名、福島県2名、秋田県、山形県、新潟県各1名であった。優位眼の視力は、0から0.3(優位眼の視力が0.1以上のものは2名)。視覚障害の原因疾患は、網膜色素変性症7名、視神経萎縮(脳腫瘍術後含む)3名、増殖糖尿病網膜症、網膜剥離術後、網脈絡膜萎縮 各2名、未熟児網膜症、緑内障 各1名であった。これらに対して、問診で得られた情報から、個々に応じて必要と思われたロービジョンケアを行った。
    結果:参加者に対して、眼科で行ったのは、遮光眼鏡処方8名(内 度なし4名)、身障手帳申請2名などであった。短期リハ後、継続的に当院を受診しているのは、18名中1名のみであった。他の1名は、専門的なロービジョンケアによって残存視覚の利用が可能と思われたので、東北大学病院のロービジョン外来を紹介した。一方、遮光眼鏡による羞明の改善を除くと、短期リハ参加者の多くに対しては、残存視覚の利用というよりは、情報提供を含む精神的なサポートが主な対応であった。
    考察:一般的に、比較的残存視機能が良好な群では、遮光眼鏡だけでなくルーペや拡大読書器、単眼鏡などの紹介・処方が有効である。一方、残存視機能の利用が困難な群では、遮光眼鏡以外の補助具は無効なことが多く、主に精神的なサポートや情報提供などが求められる。
    結論:患者は、何らかの利益を期待して医療機関を受診する。残存視機能の利用が困難となった患者に対しても、医療機関では、精神的なサポートや情報提供など、その患者にとって有益な情報(医療)を提供し続けるべきである。
  • ーシミュレーションによる研究ー
    小林 章, 道面 由利香
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】
     夜間歩行が困難な視野狭窄を持つ人を想定し、携帯性に優れる小型・軽量の高出力タイプLEDライトと住宅街等に敷かれている路面の白線を活用した場合におけるパフォーマンスを測定した。
    【方法】
     出力1W、3W、5W三種類のLEDライトを使用して10人の健常者の男女(平均年齢26.3歳±3.02)にシミュレーションゴーグルを着用させ、長さ60m幅3mの屋外コースを歩く際のPPWS(Percentage of Preferred Walking Speed)を測定した。試行の半分は15cm幅のビニールレーザー製の白線をライトで照らしながら、残りの半分は路肩の縁石を照らしながら歩かせた。また、歩行コース上3カ所に低コントラストの障害物をランダムに配置し、衝突回数を測定した。使用したシミュレーションは視野5度及び3度、視力0.02及び0.01であった。白線の平均マイケルソンコントラストは0.81、路肩の縁石は0.33であった。
    【結果】
     視野5度、視力0.02の条件で白線を5WのLEDライトで照らしながら歩いた時の平均PPWSがもっとも高く1.02であった。白線がある場合で5Wまたは3Wのライトを用いた時のPPWSには有意差がほぼ無かった。また、視野5度で白線があるときは、障害物への衝突が全く見られなかった。
    【考察】
     今回のデータから、視野5度、視力0.02以上で5Wのライトと白線が活用できれば、特別な練習や訓練をしなくてもほぼ快適な歩行速度で歩ける可能性が高いと言える。しかし個々のデータを見ると出力の低い1Wタイプのライトで1.0前後のPPWSで歩ける被験者が数名存在した。このことはライトの使い方を教示し、練習すればパフォーマンスの向上が得られる可能性を示唆していると思われた。
  • 内野 大介, 小林 章
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】路面に敷設される白線には夜間光を受けた時の輝度を高めるためにガラスビーズが混入されている。その輝度はガラスビーズの種類によって異なるが、本研究では高い輝度を持つ白線がロービジョンを持つ人の夜間歩行に及ぼす有効性について検証を試みた。
    【方法】実験は12名の晴眼の被験者にシミュレーションゴーグルを着用させ、照度の低い屋外の直線道路(全長60m)で行った。通常の輝度を想定した白線(以後通常白線と呼ぶ)と高輝度白線を敷き、その途中にランダムに障害物(パイロン)を設置した。この環境においてAB、2種類の実験を行った。実験Aでは、視力3種類(0.04、0.02、0.01)のみの条件で、実験Bは、視力0.04+求心性視野狭窄3種類(7.5、5、3度)の条件で行った。歩行時には1WタイプのLEDライトで白線を照らしながら、さらに全試行白杖所持で歩かせPPWSおよび障害物への衝突回数、白線を見失った回数を測定した。
    【結果】実験A:各試行の歩行所要時間からそれぞれPPWS(その人の手引き歩行速度PWSに対する各試行の歩行速度の割合(_%_))を求めた。高輝度白線の方がPPWSは高く(F(1,11)=55.35,p<.01)、視力が落ちるほどPPWSは低下していた(MSe=24.41,p<.05)。
    実験B:(1)白線の種類と視野の程度の間に交互作用が認められ(F(2,22)=3.75,p<.05))、PPWSはすべての視野において高輝度白線の方が高かった(7.5゜:p<.05, 5゜,3゜:p<.01)。また、通常白線では視野が狭くなるほどPPWSが低くなった(MSe=79.33,p<.05)が、高輝度白線では5゜と3゜の間に有意な差が見られなかった。(2)白線を見失った回数は高輝度白線の方が視野5゜、3゜の時は少なかった(5゜:p<.05 3゜:p<.01)。高輝度白線においては、白線を見失う回数について視野の程度による差は見られなかった。
    【考察】高輝度白線は、夜間歩行時の視認性を高め、視力低下と視野狭窄が原因で低下する歩行パフォーマンスを改善できることが示唆された。実験Bにおいては白線の種類に関わらず、視覚で発見できなかった障害物を白杖によって検知した回数が多かった。このことから高輝度白線のある場所でも、歩く際の白杖所持の必要性が示唆された。
  • 高戸 仁郎, 武田 真澄, 田内 雅規
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】視覚障害者の道路横断は,出発前に完全な歩行方向が定位できないため,鉄道駅ホームと並んで危険な箇所とされている。その対策の一つとして、欧米では音響信号機の押しボタンスイッチ(箱)に歩行方向を示す触知標示を取り付け,それを手指で触ることで歩行方向を知らせる方式が運用されている。この触知標示の有効性について,系統的な評価は未だなされていない。そこで,本研究では実際に使用されている触知標示が,歩行方向の定位,横断開始時の歩行軌跡などにどの程度有効であるかを検討した。
    【方法】触知標示:触知標示は,底辺10mm,高さ40mmの二等辺三角形で高さ4mmのドイツで使用されているものと同じサイズとした。それを歩行路(3m×10m)のスタート地点で,被験者の右前方の高さ118cmの所へ設置した。実験手続き:被験者は全員アイマスク,イヤーマフを装着し,触知標示に触れる前には,実験者が手引き歩行してディスオリエンテーションを行い,現在の体の向きを分からないようにした。被験者が触知標示で方向を取った後、角度を計測し終えたら,被験者に合図をして歩行を開始させその軌跡を記録した。被験者:平均年齢20.5歳の晴眼者10名で,そのうち女性3名であった。
    【結果】方向定位の精度,歩行の安定性に及ぼす影響をみるために,方向定位角度,歩行開始3m地点での中央からの距離を算出した。方向定位の角度を正面(0°)に対して左右で比較した結果,右10.6°,左17.0°と左方向への角度が大きかった.また3m地点での歩行路中央から偏軌した距離は,右方向が49.8±34.4cmで、左方向は61.1±41.6cmで、平均では56.2±46.5cmであった。左方向の逸れは右方向に比べて大きく有意な差があることが明らかになった(t(166)=-2.26,p<.05)。
    【結論】これらの結果から,今回使用した触知標示はそれのみでは方向を正確に示すのに十分ではないことが示唆された。
  • 石川 充英, 山田 幸男, 大石 正夫, 清水 美知子, 小島 紀代子, 羽賀 雅世, 本田 芳香
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    近年、自立を支援する観点から障害者の地域生活と就労をすすめ、一元的にサービス提供をする仕組みとしての障害者自立支援法案をはじめ、支援費制度や介護保険制度の導入など、視覚障害者の福祉は大きな変化の時期にきている。また、視覚障害者は、糖尿病やうつ的傾向など、眼科だけではなく、内科、精神科、皮膚科など複数の診療科を受診することも少なくない。さらに、視覚障害者の自立支援に関わる職種は、福祉・医療の分野だけではなく、公共職業安定所(ハローワーク)、職業訓練校、盲学校など、多岐にわたり、その問題も多様化・複雑化している。このような問題に、多様な分野や職種が視覚障害者の自立支援に関わる場合、専門家の連携の重要性は、今後一層高まっていくと考えられる。
    現在、視覚障害者更生施設をはじめとした施設では、視覚障害生活指導員などの施設職員が、多職種間の連携の役割を担っていることが多い。しかし、在宅で生活する視覚障害者にとって、このような役割を担う人が身近にいることは少ない。
    そこで本研究では、中途視覚障害者が主体的に地域生活を送るための多職種チームにおける連携、特にコーディネーターの役割機能を明らかにすることを目的として、甲信越地方の病院に開設されている「視覚障害リハビリテーション外来(以下、リハ外来)」に通院している中途視覚障害者2名の自立支援に向けた多職種チームのアプローチを内容分析した。その結果について報告する。尚、分析をおこなうにあたり、個人を特定しない、プライバシーの保護等の倫理的配慮をした。
  • †派遣事業を利用している盲ろう者の障害特性とコミュニケーション手段の分析†
    井手口 範男, 前田 晃秀, 中野 泰志, 大河内 直之, 布川 清彦, 苅田 知則, 福島 智
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    目的:
    視覚と聴覚の両方に障害を有する盲ろう者の自立と社会参加の推進には、他者とのコミュニケーションや移動の支援にあたる「通訳・介助員」の支援が有効である。その通訳・介助員を派遣する派遣試行事業は、地方自治体が盲ろう者団体をはじめとする障害者団体や福祉事務所等に委託することで運用されており、平成17年度末現在、60のうち32都道府県・政令指定都市で実施されるようになった。しかしながら、どのような盲ろう者がこの事業を利用しているのかについては、把握できていない。そこで、本研究では、1)人的支援を必要としている盲ろう者の障害の状態やコミュニケーション手段、2)派遣事業における問題点や課題の2点を明らかにすることを目的に、盲ろう者向け通訳・介助員派遣試行事業を受託している団体に対してアンケート調査を実施した。
    方法:
    アンケート調査は、社会福祉法人全国盲ろう者協会と協力して実施した。調査の対象は、全国盲ろう者協会が把握している30の派遣試行事業を運営団体であった。
    結果と考察:
    30の被調査団体の内、19団体から有効回答が得られた(回収率63.3%)。1)盲ろう者の視覚・聴覚の障害等級の組み合わせと、すべての障害を併せた等級について尋ねた結果、ほとんどは、1級あるいは2級の重度障害であることが明らかになった。また、盲ろう者の使用しているコミュニケーション手段については、音声、手書き文字、手話(触読)、手話(接近)、各種の指文字、墨字筆記などが挙げられた。ここで特徴的であったのは、受信と発信の手段が必ずしも一致していないことである。特に音声の受信と発信の間には大きな違いが見られ、相手の話については聴覚以外の感覚によって情報を受信し、発信の際には音声を用いて自分の言葉を話す盲ろう者が多数いた。盲ろう者が使用している文字については、墨字、拡大文字、点字が挙げられ、読み書きの際に使用する文字は同一のものであることが示された。その一方で、文字を使用していない盲ろう者も少なからず存在することが確認された。2)通訳・介助員派遣事業を運営するうえでの課題や問題点で多かったのは、通訳・介助員の不足に関すること、予算の不足に関すること、派遣時間数に関することであった。
  • - ハイブリッド車の静粛性が視覚障害者の歩行に及ぼす影響 -
    金沢 真理, 中野 泰志, 井手口 範男, 布川 清彦
    セッションID: P_I_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    目的:
    ハイブリッド車とは混合動力車のことで、2種以上の動力源を使用する自動車を指す。日本ではトヨタ自動車株式会社がエンジンと電動機のハイブリッド車「プリウス」を市販したのをきっかけに、排気ガスや騒音等が少なく、優れた環境性能の車として注目を集めている。しかし、その静粛性のため、歩行者が車の存在に気づきにくく、接触事故等に巻き込まれる可能性も秘めている。特に、路地等を横断する際に車の有無をエンジン音で確認する場合が多い視覚障害者にとって、新たなバリアになる可能性がある。本研究では、(1)ある視覚障害者が、路地を横断する際、エンジン音がしなかったにもかかわらず、不意に目の前を自動車らしき物が通り過ぎるという危険に遭遇した事例の分析と(2)ハイブリッド車とガソリン車の静粛性に関する音響比較実験を実施した。
    方法:
    (1)事例分析;エンジン音の静かな車と接触しそうになった視覚障害者に対して、ヒアリングを行い、接触しそうになった場所や状況等を明らかにした。また、その現場の状況をより正確に把握するために、その環境の調査を行い、同様の状況を類似した道路環境を使って擬似的に再現し、確認を行った。(2)音響比較実験;危険をもたらした対象がハイブリッド車であった可能性について検討するため、ハイブリッド車と一般的なガソリン車の音響分析をダミーヘッドを用いて行った。
    結果・考察:
    事例分析の結果、路地で停車していたハイブリッド車がモーター駆動で静かに発車したために危険に遭遇した可能性が高いことがわかった。音響比較実験の結果、ハイブリッド車のモーター駆動時の走行音や発車する際の音を認知するのは困難であることがわかった。これらの結果から、交通量の少ない路地や狭い道で静粛性の高いハイブリッド車に遭遇した場合には、接触事故等につながる可能性が高いことが予想できた。環境性能を考慮すると今後、ハイブリッド車は増加すると考えられるが、視覚障害者の努力では、その存在に気づくのは困難だと思われる。環境性能を備えつつ、視覚障害者にも安全なシステムの開発が急務である。
ポスターセッション_II_
  • 網膜色素変性症患者の視野の形状による比較
    中西 勉, 簗島 謙次, 石田 みさ子, 吉井 大, 清水 里美, 大平 文, 根子 裕, 三輪 まり枝, 林 弘美, 古寺 久子, 小林 ...
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的:ロービジョン者に実施した屋外歩行に関するアンケートのうち、網膜色素変性症患者で視野が(1)視野狭窄、(2)狭窄でその外側などに視野の残っているケース、(3)輪状暗点、、に分類された患者のアンケート結果を比較した。方法:外出についての恐怖心、階段利用時の状況、人や障害物への接触など屋外を単独歩行する際の困難さなどについて、面接によるアンケートを実施した。回答方法は「はい」「いいえ」の二者択一を基本とした。得られた結果を視野形状ごとに検討するとともに3つの視野での比較も行った。結果:視野の形状ごとに検討した結果では、(2)では「上り階段を終えた後の足上げ」では「はい」が明らかに多かった。さらに(1)と(3)では「歩行者用の信号機の発見が困難」で「いいえ」が多く、「青の判断は信号機を見て行っている」では明らかに「はい」が多かったが、(2)では両質問とも有意ではなかった。3つの形状の比較では、「歩行者用の信号機の発見が困難」、「青の判断は信号機を見て行っている」、「左右上下を見ながら歩いている」などが有意であった。多重比較の結果は、「歩行者用の信号機の発見が困難」では(1)と(2)の間が有意で、(2)の患者に信号の発見が困難な場合が多かった。「青の判断は信号機を見て行っている」では、(1)と(2)の間が有意で(1)の患者が信号を見て青を判断することが多く、「左右上下を見ながら歩いている」では(1)と(3)の間が有意で、(1)の患者に左右などを見ながら歩行している人が多かった。考察:視野の形状により回答に違いが見られた。さらに、視野の形状としては中間に位置する「狭窄でその外側などに視野の残っているケース」では、物を見るストラテジーが確立されていないことが推察された。今回のアンケート結果の分析により、生活訓練の重要性が再確認された。
  • 眼鏡箔をかけた撮影画像と画像処理ソフトウェアによるぼかし加工の比較
    山本 百合子
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    カメラに視覚のシミュレーションの為の眼鏡箔(Transparent OCCLUSION)をかけ制作した画像と、画像処理ソフトウェアでぼかしフィルターをかけた状態のものを比較した。【方法】先ず、文字その他の画面をデジタルカメラで撮影した。対象はさまざまな大きさ/太さの文字、線分、図形である。レンズには視覚のシミュレーションの為、5段階の眼鏡箔をかけた。更に眼鏡箔をかけないものを、画像処理ソフトウェアを用い、加工した。画像処理ソフトウェアのぼかし加工は、ガウス半径を指定することにより、さまざまな劣化の度合いが表現できる。このガウス半径を調節し、最も眼鏡箔によるぼかしと近いものを探った。更に距離の差を再現する為、5段階に解像度を変え、それぞれにガウス半径を変えてぼかした画像も制作した。また、実際の生活空間(学校の黒板、図書館の本棚)も同様に撮影し、ぼかし加工のガウス半径の近似値を求めた。【結果】眼鏡箔による視覚のシミュレーションは、画像処理ソフトウェアによる劣化と全く同一ではないが、ものの「見えにくさ」に関しては、概ね同じであることが客観化できた。【考察】実生活の中では、ロービジョン者のみではなく一般ユーザーも、サインやパッケージ、書物などの読みにくさを訴える事が多い。しかし、「見やすさ」の為のガイドラインなどを作成する事は難しく、文字のポイント数の下限を示すのみとなっている。一方、文字は太さや書体によっても、その見やすさは大きく変わる。設計/デザイン段階で、制作者が文字、その他の「見やすさ」を検証できれば、よりユーザーの利便性の高い物が作れると考えられる。今回の比較で、画像処理ソフトウェアのぼかしフィルターでサインや書物を劣化加工しても見える物であれば、より見やすいデザインの為の基準になることが、示唆された。
  • 田尻 聡, 佐渡 一成, 山縣 祥隆, 山本 百合子, 河嶋 洋一
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】参天製薬(以下参天)の点眼容器は、患者さんの使い易さのさらなる向上を目指し2002年10月以降順次ディンプルボトルというタイプに変更されている。しかしながら、一方で主に点眼容器の形状で点眼剤の種類を識別されていた方々から識別できない,識別しにくいといった不具合が生じたため、既存の突起シールに改良を加えた新しい識別シールを開発した。本シールの有用性や問題点については佐渡らや山縣らがこれまでに本学会で報告したので、今回は本シールの開発経緯について報告する。【対象および方法】参天社員の晴眼者24名を対象とし、(1)ユニバーサルデザイン(以下UD)数字の形に浮きだしを加えたタイプ、(2)UD数字上に点状突起を配列したタイプ、(3)デジタル数字の形に浮きだしを加えたタイプ、(4)デジタル数字上に点状突起を配列したタイプの4種類のシールを用い,ディンプルボトルに貼付した状態で時間の制限を設けずに閉瞼触指により数字を回答させ,正答率を求めた。なお数字はアラビア数字の1から7を用いた。【結果】正答率は(1)が51.8_%_、(2)が73.2_%_、(3)が59.5_%_、(4)が76.2_%_であった。浮きだしタイプと点状突起タイプの正答率の平均を比較した結果、浮きだしタイプが55.7_%_、点状突起タイプが74.7_%_と点状突起タイプが明らかに高かった。1から7の数字で正答率の高かった数字は1と7で、逆に正答率の低かった数字は4と6であった。【結論】視覚による識別も重視する必要があることからロービジョン者にも読みやすいとされているUDで表した(2)のタイプで識別シールを作成した。【考察】新しい『点眼容器用識別シール』はロービジョンの方々にとって有用であることが報告されているが、特にフォントの種類をはじめ,1から7までの数字の必要性や突起の形状、数字以外の他の図案等についてなど、今後さらなる検討が必要と考える。
  • 佐渡 一成, 阿部 直子, 大江 晃, 千葉 康彦, 二本柳 淳子, 安達 いづみ, 小野 峰子, 福澤 篤志, 木村 要, 山縣 浩
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    緒言:視覚障害者の支援には、多職種の連携が重要である。しかし、長年にわたり十分な連携がなされてきたとはいえない状態であった。
    ロービジョン勉強会の経緯:各分野の人材は豊富であった仙台において、2000年8月から教育、福祉、行政、医学などそれぞれの分野から、分野横断的に個人が集まり、「連携」とそれぞれの「知識の向上」、(そのことから生まれる「支援サービスの質の向上」)を目指して勉強会を行ってきた。勉強会は原則的に月1回。今回はこれまでの勉強会のテーマと話題提供者について提示する。
    結果:このような勉強会(グループ)の立ち上げは比較的容易である。一方で、継続していくことは、特に初期は決して容易ではなかった。しかし、5年にわたり継続してきたことで、お互いの理解は進み、そのことが仙台におけるいくつかの「連携」事例の基礎となっている。最近は、学生など若い参加者も増えてきた。今後は、個人の転勤などで弱体化しうる「個人的な連携」から継続的で強固な「組織間の連携」への進化を模索している。
    考察:視覚障害者の支援には、多職種の連携が重要である。参加している個人は、それぞれ自分の分野については専門家であっても、関連する他分野についても熟知しているものは少ない。だからこそ、お互いの理解と尊敬が必要である。そのためには、個人的な友好関係に加え、「言葉」に関する共通理解などのいくつかのハードルを認識し、乗り越える必要がある。このような勉強会は、有効な視覚障害者の支援のために必要な関係者間の連携を育てるのに極めて有効である。初めから理想的で強固な連携の構築は難しい。最初は個人的な集まりから始めて徐々に育て上げていくのも一つの方法である。
  • 上野 英子
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】
     現在,情報化が進展する中,視覚障害者は視覚を通した情報を得られず,必要な福祉資源を十分に活用できないと予想される.行政から発信される情報によって,その認識率・利用率に格差が見られる(上野ら,2005).その要因として,対象者の年齢,家族構成,性別などに関連する個人的要因などが関係すると考えられる. 例えば, 水野(1998)は,「視覚障害者の中でも特に年齢の高いものや障害発生時期の遅いものは,視覚障害者対応商品に関する知識が少ない」と述べている.今回は,視覚障害者が享受できる福祉制度の認識率と利用率が,年齢や受傷経過年数等と関連するかどうかを検討した.
    【方法】
     調査対象は,A眼科クリニック(T市)を受診した51名の視覚障害者(男性16人,女性35人,平均年齢70歳)であった.いずれも,視覚障害を原因とした身体障害者手帳を所持する者および,手帳取得に該当する者であった.また,眼科クリニックに来院した際に,本調査の説明を十分に行い,実施について同意を得た.調査内容は,基礎調査(年齢,性別,手帳の有無等)および福祉制度に対する視覚障害者の認識率,利用率などであった.基礎調査は,主治医の問診およびカルテ診療録の情報を基に実施した.認識率,利用率に関する調査は,菊入(2000)を参考に17項目(福祉制度の認識率,利用率等)で構成した.個室で面接者と対象者との1対1の面接法で実施し,口頭で行う指示的面接調査法で行った.
    【結果と考察】
     主な結果として,5項目(医療費助成,税の減免,公営住宅優先入居,日常生活用具)について,高年齢群(65歳以上;38人)に比べ,低年齢群(65歳未満;13人)の認識率は有意に高かった(p<.05).65歳未満の年齢層は,家庭や社会的にも現役あるいは主要な立場にあり,制度の認識率あるいは利用率においても高くなると考えられる.しかし,65歳以上の高齢者が増加している現状を考えると,彼らのQOLの向上にはより制度の浸透率を高める必要がある.
  • 善積 有子, 高橋 広, 志鶴 紀子, 久保 恵子, 斎藤 良子, 山田 信也
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    〔目的〕柳川リハビリテーション病院眼科ではロービジョンによる日常生活の不便さを訴えて来院する方に、読み書き、歩行、ADLなどのロービジョンケアも行う。しかしロービジョンケアのみで全ての日常生活の不便さがなくなるわけではなく、生活していく上には地域福祉サービスを利用する必要もある。今回、1事例を通してロービジョンケアの福祉サービスの中での役割について考えてみた。〔事例〕60代前半、女性、網膜色素変性症、無職、息子との二人暮し。2004年2月頃より急激に視力が低下し(右=手動弁、左=光覚弁)、家事が行えなくなり、週3回ヘルパーに全てのことを依存し生活していた。失明への恐怖や自信喪失のため、引きこもり状態になり、家族およびヘルパーの勧めで8月に当科へ受診した。家庭復帰を目標に、入院でのロービジョンケアを実施した。ADLが改善するにつれ、家庭生活していく自信を回復し12月に退院した。退院後は自分でできる家事を行いながら、週3回ヘルパーも利用している。また当科へはヘルパーとともに来院し、本人のニーズを確認しながら支援を続けている。〔結果および結論〕入院前と後では、福祉サービスの利用頻度に変化はないが、ロービジョンケアを受けたことで、患者自身が眼の状態や自分の「できること」「できないこと」を理解し、全てを福祉サービスに任せるのではなく、自分が「できないこと」を補うために福祉サービスを主体的に利用するように変化した。このようにロービジョンケアは、地域福祉サービスを受動的に利用する立場から、主体的に利用する立場になるよう支援する役割もあるといえる。
  • 日本ライトハウス「エンジョイ!グッズサロン」の取り組み
    岡田 弥
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    日本ライトハウス「エンジョイ!グッズサロン」は、視覚障害者用具・便利グッズ・電子機器・家電品・パソコンなどのグッズの常設展示・紹介・販売の場として、2001年5月に、盲人情報文化センター内に開設された。普段はなかなか手の取ることのないさまざまなグッズを体験し、説明を受けることができるということで、来室者は徐々に増え、今では年間の来室者は延べ4千人に達しようとしている。
     「エンジョイ!グッズサロン」は、単にグッズの展示・販売にとどまらず、福祉制度や関係団体等の情報提供やリハビリテーションへの入り口としての相談窓口としての役割も大きい。
     「更正相談に行くのはちょっと気が重い」「自分はリハビリを受けるほど眼が悪いわけではない」という人でも「面白いグッズがあるらしいから見に行こうか?」と来室したり、「こんなことができるグッズはないのか?」と問い合わせをしたりするのは気軽にできることが多い。こうした「敷居の低さ」がグッズ展示・販売の持つ強みであるとも言える。
     実際、来室者には手帳を所持していない人や受障後間もない人も多く、グッズの利用によって可能性が広がり自信を取り戻す人や、福祉制度や関係団体の情報などを得てその後リハビリテーションに取り組むという人も少なくない。
     グッズ販売に関しては、公的な助成が全くないという問題点もあるが、利用者が気軽に利用できるこうした窓口は非常に重要なものと考える。
  • 「平成16年度障害者雇用職場改善好事例」から
    岡田 伸一
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構実施の障害者のための職場改善のコンテストである「平成16年度障害者雇用職場改善好事例[視覚障害者]」の応募データから、最近の視覚障害者のための職場改善や就労支援機器利用、さらには雇用管理上の配慮等の状況について整理分析する。
  • 工藤 良子, 荒川 和子, 工藤 翔子
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害発生時の年令をみると、40歳から60歳代が最も多い。
     壮年期は子育てや仕事の充実の時期であり、将来の人生設計を考えていく時期でもある。
     社会的役割が大きいこの時期に視覚障害になると、心理的に不安定になるばかりではなく、家庭や社会における役割の遂行が困難になる。先行文献では障害者自身の不安の内容は明らかになっている。
     しかし、視覚障害の場合、障害の程度が外見上わかりにくく、共に生活している家族でさえもどのくらい見えているのか理解しづらい状況にある。そのため、家族は、どう接したらいいのか悩み、苦しみ、日常的な生活を送る基盤をも揺るがせかねないほど心理的に不安定になる。つまり、今後の生活や仕事のことで悩むことは障害者本人だけではない。
     トーマス・キャロルは「失明」のなかで、“家族に対する援助”をあげ、「失明者の家族も過酷な打撃に苦しみ、多くのものを失ったという事実」にも着目しなければならないとし、家族に対する援助の必要性を述べている。
     看護の対象は、患者とその家族をも含むことから、看護者には障害者本人とその家族に対して看護を展開することが求められる。
     しかし、現状では、障害者本人に対する訓練や支援はプログラム化され行われているが、家族の問題に対するケアはほとんど行われていない。障害者本人を支える連携を考えるとき、最も身近にいる家族が安心して障害者本人と向き合えることが必要である。
    そこで、家族が抱える問題および家族が求めているものは何かを明らかにし、家族へのケアについて考察する。
  • 國見 ゆみ子, 仲泊 聡, 伊藤 裕之, 吉川 マミ, 中村 泰三
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】重症のロービジョン患者は、不完全な視覚情報の入力を駆使して生活している。この保有視覚をいかに利用できるようにするかがロービジョンケアの基本になっている。しかし、姿勢制御においてもこの保有視覚は有効に活用されているといえるのであろうか。また、開瞼と閉瞼との違いは視覚の有無というだけのことであろうか。この点を考慮して、われわれは、重症ロービジョン者を含む視覚障害者の明所開瞼時と閉瞼時における重心動揺を測定し比較した。
    【方法】対象は、H14年1月からH17年2月に七沢ライトホームに入所した患者のうちの40名(28歳から80歳、平均52歳、男性55名、女性48名)と年齢をおよそ揃えたコントロールとしての晴眼男性ボランティア9名(37歳から56歳、平均48歳)であった。重心動揺の評価として被験者が床反力計上で30秒間起立姿勢を保った時の床反力作用点中心変動を利用した。コントロール群の暗所開瞼にはロービジョンシミュレーションゴーグルに完全遮蔽版を入れて完全遮光した状態で開瞼するように教示した上で行なった。重心動揺の程度は前後方向と左右方向の変動幅とそれから得られる面積を用いて検討した。明所開瞼時と閉瞼時で重心動揺の程度が異なる症例について各患者の視力と視野とその原因疾患について検討した。
    【成績】コントロール群の暗所開瞼時と閉瞼時での面積比は1.1であった。一方、明所開瞼時と閉瞼時では1.5であった。
    コントロール群同様に明所開瞼時の方が閉瞼時よりも重心動揺が少なかった症例は16例であった。逆に明所開瞼時の方が閉瞼時重心動揺が多かった症例は23例であり、視野が求心性あるいは島状で半径20度から10度の症例にその傾向が強かった。
    【結論】一般に視力が正常の場合、重心動揺は開瞼時の方が閉瞼時に比べ少なく、姿勢は安定する。これは、姿勢保持に視覚が重要な役割を担っていることをしめす証拠である。特に小脳失調や迷路障害を有する患者では、閉瞼時に姿勢保持が著しく不安定になり、これを神経学的にはRomberg陽性という。今回みられた閉瞼時の姿勢の安定は、逆Romberg陽性であるが、なぜ視覚障害者にこれが生じるのであろうか。原因究明には多角的な検討が必要ではあるが、保有視覚が姿勢保持にむしろ有害な影響を与えているという可能性も現時点では否定できない。
  • 仲泊 聡, 斎藤 奈緒子, 渡邊 公恵, 渡辺 文治, 末田 靖則
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】一般に、読書中の眼球運動を観測すると、主に衝動性眼球運動が観察され、きわめて短い時間にある範囲を読み取っているということが知られている。このような短時間提示された視標を瞬時にして視認する能力が、動揺視患者においてどうなっているかは大変に興味深い。なぜなら、もしそのような能力が高いのであれば、文字を瞬間提示することによりエイドを作成することができ、逆に低下していれば、この現象を用いて動揺視の程度の評価を行うことが可能であると考えられるからである。今回、我々は、これを確かめるために動揺視患者の視覚短期記憶を測定した。
    【方法】対象は、異常眼球運動を有する脳幹出血・梗塞患者6名、両側迷路障害患者2名、大脳性動揺視患者1名と正常コントロール6名であった。全症例に簡易視野検査にて視野欠損のないことを確認したうえで視覚短期記憶検査を行なった。視覚短期記憶検査は、白背景に130msの間、黒点を提示し、この数を答えさせ、数を増減して臨界算定個数を測定した。また、刺激提示直後にランダムドットマスクと刺激黒点を多数提示するマスクを提示し、これらの条件での測定をも行なった。各マスク条件における正常群と動揺視群の平均値の差を検定した。
    【成績】全被験者において視野障害はなかった。正常者における平均臨界算定個数はマスクなし8.8、ランダムドットマスク6.3、黒点マスク3.6であった。一方、動揺視患者における平均臨界算定個数は同様に5.4、3.8、1.9であり、すべてのマスク条件において、正常群に比べ動揺視群では、臨界算定個数が有意に低下していた。【結論】動揺視患者の視覚情報処理障害の一側面として視覚短期記憶の障害が認められた。この現象のメカニズムについては明らかではないが、その異常は極めて明瞭であり、動揺視の程度判定の視標として視覚短期記憶の程度を示す臨界算定個数が有用であることが示唆された。
  • 齋藤 奈緒子, 渡邊 公恵, 仲泊 聡, 渡辺 文治, 末田 靖則, 吉川 マミ, 伊藤 裕之
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】異常眼球運動などに伴う動揺視は、程度が大きくなると視力低下をきたす。しかし、視力低下をきたさない程度であっても、読字が困難であると訴える患者はまれではない。MNRead-Jを用いて測定される「読書視力」は、一般に近方視力とほぼ等しい。また、「臨界文字サイズ」は、それよりもやや大きな文字サイズになる。動揺視があると近方視力がよくても、読む文字サイズが小さいときに読書速度が低下しているということが予測される。このため、「臨界文字サイズ」が通常に比べて大きくなるのではないかと考え、これを検証するための実験を行った。
    【方法】対象は、動揺視を有する脳幹出血・梗塞患者4名と両側迷路障害患者2名と正常コントロール4名であった。実験は、ENGによる正中固視における異常眼球運動の測定、近方視力検査およびMNRead-Jによる「読書視力」と「臨界文字サイズ」の測定を行なった。正常群では、4種類のローパスフィルターを用いて、読みにくい状態での「読書視力」と「臨界文字サイズ」の測定を合わせて行なった。各被験者の「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差に注目し、統計学的に二群の差を検定した。
    【成績】正常コントロールにおける「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差は、平均0.32 (標準偏差0.08)logMARで、読みにくさによらず、ほぼ一定であった。これに対し、動揺視患者における「読書視力」と「臨界文字サイズ」の差は、0.40 (標準偏差0.14) logMARであった。これら二群の間での平均値の差の検定をMann-Whitney U検定で行なったところ、有意差は認めなかった。
    【結論】少数例のため、統計学的には有意差は認められなかったものの、相対的な「臨界文字サイズ」が、動揺視患者において大きくなっている傾向が示された。今後、症例を重ね、再検討を行う予定である。
  • 河野 恵美, 阿佐 宏一郎, 小田 浩一
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】
    日本では約50年前に盲ろう児の先駆的な教育が行われた(文部省,1970)。中島(1981)は、盲ろう児の言語獲得において、身振りサインやそれ以前の日常生活の基本的習慣付けなどの行動形成が重要であると指摘している。一般的に、視覚を活用することができる聴覚障害児でも、音声言語を獲得していない状態での文章の読み書き能力の発達は非常に難しいとされている。そこで記号操作を含む高度な言語能力を習得しつつあると思われる盲ろう児Aの事例について報告する。

    【方法】
     対象児Aは、男子、先天性の盲ろうでそれ以外の疾患、障害は特定されていない。視経験、聴経験共になく、音声言語の活用は困難、点字を使用していて墨字の知識はほとんどない。日常会話は、触手話、触指文字、指点字で行っている。
     ここでは、電子メール活用を開始した小学部5年6月時から8ヶ月間の電子メールの文章を検討し、Aの言語習得の過程を分析した。電子メールの文章の読み書きはAが独力で、その他のパソコン操作は母親が行った。

    【結果と考察】
     (1)手話的表現、点字表記、日本語表記の3つが文章の中に存在している。(2)手話的表現よりも日本語表記の割合が増えている。(3)初期は手話表現に影響されたと思われる助詞の欠落、不適切な活用が見られた。(4)中期以降は動詞の適切な活用、語彙の増加、それらの応用ができるようになっている。(5)口語表現と文語表現の使い分けができるようになっている。(6)手話にはない書き言葉特有の技巧である「読み返しと校正」を始めている。(7)句読点(句読点、括弧、横棒など)を応用し、特定の文の強調ができるようになっている。
     視経験、聴経験共になく、音声言語、墨字が使用できない先天性盲ろう児であっても、文章の中に手話的表現と点字表記、日本語表記が混在している期間を経て、書き言葉を習得していくことができるということがわかった。
  • 青木 成美, 工藤 正隆, 高野 清
    セッションID: SL1
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    I.研究の目的
    ホームページ及びタッチパネル式ディスプレイの「見やすさ」を調査し、視覚障害者のアクセシビリティを検討した。
    II.方法
    JIS規格を参考にして、画面表示のコントラスト、文字フォントを調査した。調査は盲学校71校中67校のホームページ、仙台市内の銀行及び郵便局のATMを10機種、東京近郊の鉄道会社の券売機を7機種である。
    III.結果
    画面表示の見やすいコントラストは、JIS規格等を参考に50以上を合格基準とした。ホームページは、背景と学校名、学校名とハイパーリンク、背景とハイパーリンクを調査し、基準を満たさないものが62.1%あった。タッチパネル式ディスプレイは、背景とボタン、ボタンとボタン内文字を調査し、基準を満たさないATMが42.9%、券売機が70%であった。
    文字フォントはHTMLの基準を参考にし、見やすい文字はゴジック体の13p以上を合格基準にした。ホームページはハイパーリンクのフォントサイズを調査したが、この基準を満たさないものが全体の26.9%あった。タッチパネル式ディスプレイはフォントサイズが不明のため調査できなかった。
    結論として言えることは、見やすさという観点からのアクセシビリティはまだ十分とは言えない。
  • Adobe Acrobat 7.0によるアクセシブルなPDF文書の作成
    山口 俊光, 渡辺 哲也
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    PDF(Portable Document Format)はAdobe社が提唱する電子文書フォーマットの一つである。インターネット上で流通する文書の一形式として広く利用されている。一般企業での利用に加えて,政府・自治体が提供する公的な文書でもPDFが使用されることが増えている。これらPDF文書はWeb上で公開・提供されることが多いため,Webアクセシビリティの問題の一部であるともいえる.米国でリハビリテーション法508条が施行されたことを受け,Adobe社が提供するPDF文書作成・編集ツールAdobe Acrobat 7.0では,PDF文書を視覚障害者が利用しやすいものにする機能が強化された。これらの機能は日本語版でも利用可能となっている。そこで,本稿では2年前に報告したアクセシブルなPDF文書の作成方法を改めて調査し,報告することとした。アクセシブルなPDF文書を作成する際の留意点について,以下に挙げる2つの段階に沿って解説する。「スクリーンリーダを使用して閲覧可能なPDF文書を作成すること」これはPDF文書のアクセシビリティに関する解説である。紙媒体で存在する文書をPDF化する場合や,画像を含んだ文書をPDF化する場合,スクリーンリーダで文書の一部または全体が読み上げ不能となる場合がある。それに対処するためには,電子化された原稿の準備と画像に対する代替テキストの付与が必要となる。これはアクセシブルなWebコンテンツを作成する際の配慮と共通する。「スクリーンリーダを使用して閲覧しやすいPDF文書を作成すること」これはPDF文書のユーザビリティに関する解説である。文書中の文字情報がすべて読み上げ可能で,画像に適切な代替テキストが付与されている場合でも,文書が持つ構造に関する情報がPDF文書に含まれていないと,文書の読み上げ順序が不適当になる場合がある。この問題は表組みや段組み,数式などが文書中で使用されている際に発生する。
  • 佐藤 哲司, 関 喜一
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     視覚障害者の歩行に関する客観的な評価については、生理指標、行動面での評価等いくつかの試みがなされている。しかし、主観的な視覚障害者の歩行に関する評価はほとんどなされてない。そこで、本研究では、歩行技能及び歩行時の不安の主観的評価について評価尺度を作成し、評価の信頼性・妥当性を検討した。
    方法
     それぞれの評価尺度は2件法(○又は×)。評価項目数は両評価とも50項目。被評価者は45名(視覚障害学科学生及び卒業生31名(約6ヶ月間(週2回)の歩行経験)、視覚障害者(全盲者)6名(歩行歴25年から43年、平均:32.2年±6.2年、週5日以上単独歩行)、歩行未経験の晴眼者8名)。晴眼者はアイマスクによる遮眼時設定で評価を行った。
    結果
     技能評価、不安評価ともに、主因子法、バリマックス回転による因子分析を行った。その結果、技能評価では5因子(抽出基準は寄与率5%以上)が抽出された。信頼性係数を見ると、クローンバックのα係数が0.924(n=45)、ガットマンの折半法信頼係数が0.884(n=45)とそれぞれ高い数値が出た。不安評価では、7因子(抽出基準は寄与率5%以上)が抽出された。信頼性係数を見ると、クローンバックのα係数が0.939(n=45)、ガットマンの折半法信頼係数が0.867(n=45)とそれぞれ高い数値が出た。
     それぞれの尺度の相関関係では、相関係数は-0.82であり、有意であった(F(1,43)=88.42,p<0.0001)。説明率は、67.24%であり、両変数には強い負の相関があるといえる。
    結論
     これらの結果、作成された主観的歩行技能評価及び不安評価尺度は十分に信頼性が高い、内的一貫性が高い尺度であるといえる。また、両尺度の相関関係を考慮すると、技能が低ければ不安が高い或いは技能が高ければ不安が低くなるという経験的な要素を考慮すると、妥当性の高い尺度であるということができる。
     今後はどの技能(因子)がどの不安(因子)と相関が強いのか分析し、ある特定の技能に着目し、その技能に特化したプログラムを歩行訓練の際に導入していくことが可能であると考えられる。また、LV者なども含めた当事者を被検者として、さらに項目数・項目内容の検討を行っていく予定である。
     なお本研究は、厚生労働科学研究費補助金「3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム(H15-感覚器-006)」の助成を受けた。
  • 雪道歩行環境整備のための基礎調査
    安部 信行
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    多雪国である我が国において、冬期の歩行環境整備は重要な課題である。視覚障害者の歩行においても単独歩行する際には多数の問題が生じるが、雪道の歩行空間は普段の歩行環境とは全く異なったものとなり、幾多も問題が生じる。本研究では、昨年度実施した視覚障害者の歩行事故全国調査の結果からの冬期歩行事故に関する考察を含め、豪雪都市青森市を例とした視覚障害者のヒアリング調査、追跡調査、さらに雪道の現地調査について報告する。雪道では歩行中の重大事故が発生しており、その対応が望まれるが、歩行事故は全国各地で発生しており、雪がめったに降らない地域においても冬道歩行に関する対策が必要である。また、盲導犬による雪道歩行には様々な問題があり、雪道における歩行訓練も考慮しなければならない課題である。例えば、盲導犬が誘導を誤ったために、側溝に転落し大ケガをしたケースがみられた。また、盲導犬の性格にもよるが、雪を見ると雪を怖がって動かなくなってしまうケースや、指示が困難になるケースもみられる。また、融雪時の雪道においては、盲導犬が汚れるために、その後始末が大変であるという意見も寄せられている。ヒアリング調査からは、交通や雪道に関する情報入手の困難な問題が確認された。また、現地調査、追跡調査からは、都市の中心部でも豪雪時には除雪が追いつかず、視覚障害者にとっては歩行困難な状況が多数確認され、郊外では全く歩行困難な状況も確認された。 以上のように、雪道での歩行には様々な問題があることが分かった。雪処理に関しては、整備、設備の充実や除雪の徹底等が求められる。しかし、整備には限界があり、融雪に関しては多大なエネルギーの消費など環境への影響も懸念される。整備の充実は勿論であるが、それだけではなく周りの人と人とが助け合って雪を克服していくことも重要である。
  • 中野 泰志, 大河内 直之, 布川 清彦, 井手口 範男, 金沢 真理
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    目的:
    マンホール(manhole)とは、掃除や点検等のために、人の出入りができるように作られた穴のことである。下水道用マンホールは雨水や汚水の排除を目的として設けられるため、いったん人が中に転落すると、人命にかかわる事故となる場合がある。本研究では、視覚障害者のマンホール転落事故事例の分析を行い、原因と対策について検討を行った。
    方法:
    事故に遭遇した視覚障害者1名に対して、事故直後に面接法によるヒアリングと実地検証を、また、怪我の完治後、精神的に落ち着いた時点でヒアリング調査を実施した。実地検証は、事故当時現場にいた関係者(被害者、作業員3名、現場監督1名)と面接者、記録者の7名により、事故現場で行った。ヒアリングと実地検証の場面は、全員に了解をとった上で、VTR、ICレコーダー、デジタルカメラで記録した。また、測地にはメジャーとハンディ型レーザー距離計(Leica製DISTOclassic5)を用いた。
    結果・考察:
    ヒアリングの記録と測地データを対象として分析を行った。被害者は日常的に単独歩行を行っている30歳代の全盲男性(先天性緑内障による視覚障害で、4歳のときに網膜剥離を起こして光覚になり、11歳のときに光も失い全盲になった)で、事故は通い慣れた通勤路で起こった。白杖を利用して歩道を歩いてる最中、蓋のあいているマンホールに気づかず、左足より落ち込み、深さ約70cmのマンホールに転落し、左大腿外側擦過傷を負った。分析の結果、あけたままのマンホール(開口部)に、注意喚起を促す人員も配置せず、マンホール周囲にも囲いを設置していなかったことがわかった。これらは「マンホールふたの施工要領」で注意喚起されている事項であり、工事実施者のヒューマンエラーであることがわかった。転落事故は命にかかわる大事故につながりかねないため、今後、ヒューマンエラーが起こったときの二重三重の安全対策を同時に講じる必要がある。
  • 布川 清彦, 中野 泰志, 井手口 範男
    セッションID: P_II_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    目的:
    視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)は2001年に形状がJIS(T9251)化されたが、その発見のしやすさは、個々人の足裏の触覚特性、靴や靴下、踏む方等によって影響を受けることが考えられる。そこで、本研究では、これらの要因が、点字ブロックの発見のしやすさにどのような影響を及ぼすかを検討した。
    方法:
    1)ソールの厚さと圧力分布の関係に関する実験;靴底の厚さと重量を系統的に変化させ、足裏に伝わる圧力分布をタクタイルセンサF-スキャンモバイル(ニッタ)を用い計測した。2)実際の歩行時に足裏にかかる圧力分布の変化に関する計測実験;人間が実際に点字ブロックを踏んだときに、足裏の圧力がどのように変化するかを体重の異なる歩行者12名を対象にタクタイルセンサで実測した。3)靴底の厚さと発見のしやすさの関係に関する実験;日常的に点字ブロックを利用している視覚障害者を対象に、ソールの厚さを変化させたときに点字ブロックの形状認知に影響があるかどうかを心理実験により確認した。
    結果・考察:
    1)重量の違いによる圧力分布実験から、重量に応じて荷重値が増えていること、ソールの枚数が増える程、荷重値が減少すること、ソールの枚数が増えると重量の効果が減少することがわかった。2)歩行時の圧力分布実験から、点字ブロックの位置に相当する圧力分布が確認できること、点字ブロックの形状の違いに相当する圧力分布が確認できること、靴裏と比較すると足裏では圧力が分散し形状が確認しにくくなることがわかった。しかし、体重やソールの枚数と荷重値の間に一定の関係はみられなかった。したがって、体重ではなく、歩行者の歩き方に依存している可能性が大きいことが予想できた。つまり、靴底が厚くなると踏み方を変化させることで、点字ブロックの発見や弁別をしやすくしていることが予想される。
ポスターセッション_III_
  • 川嶋 英嗣, 川瀬 芳克, 高橋 伸子, 高橋 啓介
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】短波長をカットする遮光眼鏡は,中間透光体の白濁による光散乱によって起こるグレアを軽減する効果があると考えられている.本研究では人工的に白濁させたフィルタを晴眼者が装用したとき,低コントラスト視力が遮光眼鏡の使用によってどのように変化するかを検討した.
    【方法】晴眼者7名を対象とした.プラスチックレンズにサンドペーパーをかけることで製作した白濁フィルタを1条件使用した.遮光眼鏡は東海光学社製CCPシリーズのLY, YL, OY, RO, YG, UG, BRの7種類を用いた.低コントラスト視力測定はナイツ社製CAT2000を用いて,昼間視条件の輝度コントラスト5条件(100, 25, 10, 5, 2.5%)について実施した.測定は白濁フィルタ装用条件と装用しない晴眼条件の2条件でおこない,それぞれで遮光眼鏡を使用したときと,しないときの低コントラスト視力の比較をおこなった.
    【結果】白濁フィルタ装用条件では2.5, 5, 10%の低コントラスト視力が晴眼条件に比べて有意に低下していた.しかし,どの種類の遮光眼鏡を使用した場合でも,各被験者間で共通した視力値改善の傾向は見出されなかった.同様の結果は白濁フィルタを装用しない晴眼条件でも得られた.
    【考察】今回の実験では,白濁フィルタ装用時の低コントラスト視力が遮光眼鏡の使用で改善するという予測を支持する結果は得られなかった.これは低コントラスト視力測定装置の刺激呈示領域の背景輝度が低かったことや,白濁フィルタの透過率の設定条件が関係しているかもしれない.
  • 川瀬 芳克, 川嶋 英嗣, 高橋 伸子, 高橋 啓介
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
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    【目的】
    混濁下での視機能および羞明の評価を目的に白濁の程度の異なるフィルタを試作した。このフィルタの作成方法と分光透過率について報告する。

    【フィルタの作成方法】
    屈折度数ODである同一の眼鏡用プラスチックレンズを粗さの異なる5種類のサンドペーパーをかけることにより5段階の白濁フィルタを作成した。シミュレーションゴーグル(高田製)に装着して使用するためフィルタ径はゴーグルの径に合わせた。

    【フィルタの分光透過率】
    各フィルタとも360nm以下の波長では透過していなかった。360nmから400nmの間でほぼ線形に透過率が上昇し、400nmから800nmの間ではほぼ同一の透過率を示した。この透過率特性はおもに眼鏡レンズ素材に起因すると考えられる。

    【考案】
    可視光線領域で分光透過率が一定である5種類の白濁レンズを用いることにより、波長特性を持つレンズの評価が可能となり、従来自覚的な評価に留まっていた羞明の計測や波長特性を持つレンズの評価に有用であると考えられる。
  • 内田 教子
    セッションID: SL1
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】高齢視覚障害者が地域でいきいきと在宅生活を継続していくための支援をしていくことを目的に、2004年7月にデイサービス施設「サポーター・ミズキ」を開設し、デイサービスを利用しやすい工夫と支援を行っている。当施設におけるQOLの向上に結びついた事例を通して、高齢視覚障害者に対する効果的なデイサービスでの支援内容について報告する。
    【事例1】70歳男性。網膜色素変性症。光覚弁。白杖使用を拒み、単独歩行は自宅内のみ可能であった。デイサービス利用開始となり、外出訓練と日常生活上の様々な用具の使用訓練を行った。結果、外出時に自らの意思で白杖を使用し始め、携帯電話を購入し使いこなすようになった。
    【事例2】66歳女性。網膜色素変性症。指数弁。夫の介助で家事をこなしていたが、夫婦間の口論が多かった。夫婦の気分転換と本人の生活能力向上目的で、デイサービス利用開始となった。音声パソコンや用具の使用訓練・図書館等地域の公共施設への外出訓練を行った。結果、図書館から好みの音楽CDを借り、パソコンで聴く楽しみが増えた。
    【事例3】69歳単身男性。糖尿病網膜症。全盲。他人との口論などのトラブルが多く、懇談を楽しむ外出先に乏しい生活をしていた。デイサービスで他の利用者等との会話を楽しむようになり、他人への対応に和やかさが増えてきた。
    【まとめ及び考察】デイサービス施設内での移動などにおいて、視覚障害特性に対応した工夫が必要である。視覚障害者が外出に意欲を持つためには、安全な歩行に配慮し、地域の公共施設の利用など生活に関連した外出を重ねると効果的である。対人関係がうまくいかない視覚障害者の気持ちが和むためには、同じ障害のある人や障害に理解のある人との会話の機会を重ねることが有効であると考えられる。用具利用を定着させるためには使い方の練習も必要である。
  • 藤田 博子, 菊入 昭
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者は受傷後どのようなときに「困り感」を感じ、2)どのような契機でピア(同じ病気の人)と交流することになり、3)それによって何を得ているのかについて検討した。【方法】国立身体障害者リハビリテーションセンター更生訓練所に在籍する網膜色素変性症による視覚障害者のうち9名に半構造化面接を実施した。所要時間は各々90分から120分だった。調査期間は2004年12月から2005年2月までであった。内容は、基本的な状況(生年月日、視力/視野/まぶしさなど、障害者手帳の等級、補助具、他の障害の有無、家族構成、家族内の障害者の有無)、ピアとの関わり、そして視覚障害に関することを中心に子ども時代から現在までの流れを尋ねた。調査者は対象者の「語りの流れ」をさえぎらないように努めた。【結果】小学生頃に、すでに暗い所での見え辛さを経験していた。しかし、医療機関の受診はそれよりも後であり、交通事故や仕事・勉学上での困難を経験したときであった。診断時に医師から行われた説明は、病気の予後と原因が中心であった。その後、患者は患者本人がリハビリテーションの必要性を強く感じた時に再受診している。_丸2_ピアと交流する契機は、医師からの紹介又は患者自らが探して患者会に参加した場合と同胞や親戚の者にピアがおりその者と連絡を取り合った場合とがあった。交流は長期間継続して必要というよりは障害について自覚した時期に必要としているようである。_丸3_ピアとの交流では、就労や経済的な課題など福祉に関する情報交換、病気の概要、治療、遺伝などに関する医学的な情報交換と同時に、他の視覚障害者の姿を直接知ることを通してより現実的な自己の将来像を得る機会となっているようである。【考察】患者が視覚障害のある状態について理解し自己決定を行えるよう支援するために、障害を自覚した時期にピアとの交流できるよう情報や機会を提供する必要性があると考える。
  • 広義な視覚障害リハビリテーションの模索
    山口 里子
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    諸所で活動する視覚障害リハビリテーションワーカーがいるが、その中の一例として、点字図書館での活動を紹介し、広義の視覚障害リハビリテーションを模索する。
    1) 活動の分類 ■直接のリハビリテーション・白杖歩行 特に、長期訓練が難しい、あるいは必要のない単発的な訓練や、就学中の児童への支援など・日常生活相談 パソコン講習や日常生活用具の販売を通しての情報提供■視覚障害者の環境に対しての活動・ガイドボランティア養成(約10件/年)、ガイドヘルパー養成(約30件/年)・接客にかかわる一般企業職員に対する接遇研修(ホテル・鉄道会社・遊戯施設など)・パソコンサポートボランティア養成・公共交通機関へのハード面、ソフト面の改善提案・視覚障害者が就労する企業への環境アドバイス■リハビリテーションに関する新しい企画・ITバスによる出張パソコン講習・視覚障害者の啓蒙に関するビデオの作成
    2) 活動を通して感じること 視覚障害者の社会参加において、自身へのリハビリテーションの必要性とともに、環境(ソフト面、ハード面)にたいするアプローチがまだまだ必要であることを痛感している。リハビリテーション施設に従事していないリハビリテーションワーカーがその専門知識を生かし、広義な視覚障害リハビリテーションを進めることの有用性を深めていきたい。
  • 在宅生活訓練事業報告
    内田 まり子, 中村 透, 山縣 浩, 佐藤 幸子, 浅野 真晴, 秋保 明, 阿部 直子
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成13年11月から平成17年3月まで、仙台市による地域リハビリテーションモデル事業の一環である中途視覚障害者生活訓練事業の委託を受け、訪問による視覚障害リハビリテーションサービスを実施した。このサービスを利用した仙台市民の人数は、平成13年度および平成14年度は16名、平成15年度は16名、平成16年度は23名であった。のべ55名のケースについて、支援に関係した施設および機関は、当訓練センターのみではなく、地域に存在する複数だったケースが大半を占めた。その他、ケースの概要と傾向をまとめ、地域にある複数の関係機関どうしの関わりや支援システムの動きなどについて報告する。 また、受傷後およそ3年間、引きこもりに近い生活をしていたケースが地域のデイサービス利用をきっかけに視覚障害リハビリテーションサービスを利用し、交流会(「仙台市における中途視覚障害者リハビリテーション支援システム第3報」にて発表)にも参加を始めたケースを報告し、地域に住む視覚障害者に提供できるリハビリテーションサービスについて考察したい。
  • 日本におけるブラインドサッカーの現状について
    井口 健司, 細川 健一郎, 田中 重雄
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    イギリスで生まれたサッカーは、20世紀を通じて、世界文化というべきものに発展しており、今や、全世界で2.5億人のサッカー人口がいると言われているまでに発展した。 視覚障害を持つアスリートたちも、これには無関心ではなかった。視覚障害者のサッカーは、視覚障害者スポーツの中でも、最も自由に動き回れる競技で、このサッカーは「ブラインドサッカー」として広まっていった。今回、日本におけるブラインドサッカーの現状について報告し、今後の課題を検討する。
     ブラインドサッカーはIBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)によって国際ルールが決められ、視覚障害者が健常者に近いサッカーを行うことが可能となると同時に、安全性を考慮したものとなっている。コートはフットサル用の小さなコートを壁で囲み、晴眼者のゴールキーパーや、相手ゴールの後ろで味方選手のシュートを声で誘導するコーラ-と呼ばれる者を置くことなどをして、ゲームの娯楽性や安全性を保っている。
     この、ブラインドサッカーは1980年代スペインで始まり、その後ヨーロッパや南米を中心に広がった。1998年にはブラジルで、2000年にはスペインで世界大会が開催され、現在は30カ国以上でこの競技が実施されている。そして、2004年にはアテネパラリンピックで正式種目となった。日本では、2001年、日韓共催ワールドカップに先駆けて、日本と韓国の交流の一環として、ブラインドサッカーが日本に伝えられ、それをきっかけに、日本各地に広まった。
     わが国では、数年前から組織的な活動を進めており、講習会の開催や競技規則の整理、そしてリーグ戦の開催など、各地域の地道な活動を続け、今日の普及につながっている。今後、さらなるブラインドサッカーの普及・発展、競技力の向上を目指し、多くの人がブラインドサッカーに親しみ、選手・チームが育つことが課題として挙げられる。
  • -- 模擬体験を通じた正しい理解のために --
    島田 仁美, 小川 喜道
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    視覚障害者の理解を深めることを目的として、アイマスクを着用による視覚障害者の模擬体験が一般的には行われている。しかし、本当に正しい理解に結びついているのか検証する機会もなく、議論されることもなかった。
     筆者は、福祉を志す学生に対する実習や視覚障害者ガイドヘルパー養成講習会の演習において受講生にアイマスク体験を実施している。慎重に導入したつもりでも、受講生の反応は多様であり、視覚障害者にマイナスイメージを強くする場合もあれば、肯定的に受け止めて適切な支援につながるであろうと予想される場合もある。
     そこで、アイマスク体験の前後にアンケートを実施し、視覚障害者に対するイメージがどのように変化するのかを調査した。調査期間は約1年間。調査対象は大学生130名、講習会受講生200名。大学生の多くは福祉に関して学び始めたばかりであり、視覚障害に関しての知識・関心が高いとは言えない。一方、講習会受講生は資格取得を目的としており、ホームヘルパーもしくは介護福祉士の資格を持つ者がほとんどである。また、大学での実習は時間数も大変短く、十分な体験を行うことはできないが、講習会においては10時間近くの演習時間が与えられており、様々な場面でアイマスク役・介助者役を体験することができる。年齢・目的など背景の異なる二つの集団において、アイマスク体験が彼らの視覚障害者感にどのように作用するのか、学生・受講生の記述を元に分析して報告したい。
     また、実際には視覚障害者の多くはロービジョンであるにも関わらず、視覚障害者=全盲=アイマスクという短絡的な発想による、模擬体験について再考する機会としたい。
  • 菅原 美保, 中村 透
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成15年より視覚に障害を持つ子供を対象としたサマースクールを開催している。大自然の中、子供達は虫を探して走り回ったり、ゲームの勝敗に一喜一憂したり、涙が出るほど笑ったりと生き生きとした表情を見せていた。「ワン!ぱくっ子サマースクール」とは、「さまざまな体験することで自分の可能性を再発見すると同時に、多くの人との交流をはかり共に楽しむこと」を目的とし、視覚に障害を持つ子供のみではなく、その両親や兄弟にも参加してもらい、3泊4日の泊り込みでいろいろな体験をしようというものである。参加した視覚障害児は盲学校に通う児童ばかりではなく、弱視学級に在籍している児童、普通学級に在籍している児童など幅広く、保有視覚も個々さまざまである。内容としては、野菜の収穫、渓流釣りなどで自然を体験したり、買い物や調理、犬の手入れや盲導犬との歩行体験などさまざまである。その中で、実際に包丁を握ったり、マッチを摺ったり、魚をさばいたりという経験をした。基本的には親兄弟ばらばらのチームを作り、子供同士がペアを組んで行動し、寝る時も親とは別の部屋で子供たちだけで泊まった。普段は自分の親や兄弟が常にそばにいる状況で生活している子供達が親と離れて活動することで、自分自身で考えて行動したり子供同士協力して活動できるようになることを目指した。また、親は自分の子供とは別のチームで行動し、できるだけ手や口を出さずに見守るというルールのなかで生活することで、自分の子供を客観的に見る機会を得られるようにした。そのよう中で得られた参加児童への効果、親への効果などを考察したい。
  • 障がいを持つ学生の入学
    成澤 俊輔
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    序論:私が、網膜色素変性症をかかえながら大学に入学したことで、医療保健福祉を目指す大学の学生並びに教員に制度・サポートだけでなく多岐に渡る経験を共にした。それは、社会で障がいを持つ人が与える影響と似ている。共生をすることで見える物を、明確にする必要がある。目的:高齢社会や医療技術の進歩に伴い、障がいを持ちながら生活する人が増えている。そのような社会で、認識の違いや環境によって捉え方が異なる。入学し、共生している学生がどのように認識しているか調査することで、ハード面を変え、次に入学する障がいを持つ学生へのサポート体制の充実につなげる。これは在学する大学のためでなく、広義的に教育機関や各種企業など集団で構成している社会に生かすことが目的である。方法:在学一年目に、私の障がい並びに障がいに対する認識を目的にしたアンケートを実施。結果を分析し、大学におけるサポート体制、学生の手助け等を照らし合わせた。アンケート内容:サークル活動(サッカー)で意思疎通がよく取れている上に私の障がいを意識する機会の多い学生、講義のみを同じく受けている学生の二つの対象を比較し、調査する。障がい者に対する認識、経験、考え方を自由に記入してもらう形式で実施する。結果:本調査は、学術的に調査対象の制限や管理のなさで統計的に比較することはできないが、学生の意識を調査する意味で意義ある物になった。対象二群のうち、医療保健福祉を目指す学生であるので意識は高いのは明確であった。しかし、サークル活動を共にした学生の方が、具体的に私へのサポート、障がいを持つ方への積極的な印象を持っていた。考察:今回の調査研究は、私のことを大学の学生や教員が認知するという意味もあったが、社会における障がいを持つ方への認識形成の一流れを明確に示している。この研究が、障がいを持つ方だけでなく、共生社会の一助になれば光栄です。
  • キーボードによるWindowsの基本操作を中心に
    和田 浩一
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    視覚障害のために画面の情報を視覚によって確認できないパソコンユーザは、画面読み上げソフトで画面情報を音声で確認しながら、キーボードによる操作を中心にパソコンを利用している。このような音声ユーザのパソコン操作においては、キーボードのタッチテクニックが重要であり、反射的に指が動くようにするために繰り返して練習することが必要である。また、音声読み上げによる操作では、Windowsの基本操作に必要な概念を身に付けることに困難を感じる初心者も多い。そこで、学習者のペースで繰り返し練習して、キーボードによるWindowsの基本操作を徹底して学習できる音声ユーザのためのパソコン用学習ソフトウェアを開発したので紹介する。
  • 新 移動パソコン教室(ITバス)のご紹介
    山口 里子, 藤川 かおり
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    1、趣旨 パソコンの操作を取得できること!これは「情報弱者」と呼ばれる視覚障害者の方々の情報環境を広げるための大きな一歩です。ITキャラバンは機動性を生かし、移動パソコン教室として地域に取り残されている(支援の手が届いていない)視覚障害者の方々にパソコンとの出会いをお届けし、多くの情報と共に多くの可能性をお届けすることを目的としております。今回は、平成15年度に発表したITバスの活動報告と今年度8月より起動している新ITバスのご紹介をいたします。
    2、旧ITバス 出動報告○出動先:延べ約25ヶ所○講習回数:延べ約240回○受講者数:延べ約1000人○講習内容・パソコン入門・各アプリケーション体験_から_操作習得・ホームページ作成・Webアクセシビリティ評価
    3、新ITバスの仕様大きさは、長さ7.0_m_、幅1.9_m_、高さ2.7_m_。パソコンは、受講者用のパソコン5台に講師用のパソコン1台の計6台。エンジンとは別に、2.8KWの消音型発電機を搭載し、エンジンを止めた状態で、パソコンや周辺機器、エアコンの動作が可能。ウィンドウズ画面音声化ソフトの搭載はもちろん、PHSを使って、すべてのパソコンが、インターネットに接続することができます。後部のリフトを使用し、車椅子での乗降が可能。2台分の車椅子スペースを確保。
    4、新ITバスの活動展開視覚障害者へのIT支援のほか、ボランティア活動支援、一般向けのパソコン講習など、多義に渡る活動を展開していく。
  • 氏間 和仁, 和田 浩一, 小田 浩一
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】現在,e-Learningが普及し、企業教育、小中高教育では理解を促す効果のあるアニメーション教材の利用が進んでいる。鍼灸教育で、この分野の開発は黎明期といえる。そこで、鍼灸教育の導入段階の基礎医学のアニメーション教材の作成と評価を行った。
    【方法】解剖・生理の分野から5つの単元を抽出し、Flashアニメーション教材を作成した。その際の要求仕様は、(1)見やすさの項目、(2)理解を促す項目、(3)操作性を向上する項目の3点を立てチームで開発した。
    【結果】要求仕様を満たす教材を作成し、サーバで公開した。仕様(1):文字の大きさはXGA解像度での実測結果、本文の高さは5.7cm、確認テストは3.2cmであった。コントラストはマイケルソンの法により算出し白、青,赤,黄,黒の各色で,背景が黒の場合99%、92%、97%であった。仕様(2)(3):図の単純化,アナウンス・効果音の挿入、マウス操作とキーボード操作の実現を行った。授業後、5件法アンケートにより調査し、「とても良い」、「良い」が大半であった。
    【考察】仕様(1)は文字の大きさ、コントラストは大半の弱視者をカバーできる結果であると考える。仕様(2)は、効果音や声によるガイドで実現され、アンケート結果から効果は支持される。仕様(3)はキーボードとマウスの操作を可能にし操作性の向上を図った。アンケート結果からも効果は支持される。仕様(1)から(3)は概ね充たされた結果である。
    【結語】基礎医学の5項目を要求仕様に沿って教材化し評価し良好な結果を得るに至った。今後、臨床医学、東洋医学,実技などでの開発も進めたい。また、多くの養成学校と連携した取組が望まれる。本研究は上月情報教育財団、科学研究補助金の援助を受けた。
  • ForeFinger-Mの最適文字サイズと凸高
    小田 浩一, 金川 妙子
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】触覚での読みに適したForeFinger-M(小田, 2001)を実際に浮き出し文字として表示する際の適切なサイズと浮き出し高さ(以下凸高)について検討する。【方法】ForeFinger-Mのカタカナ清音46文字の中から、以前の研究で比較的読み誤りの多かった20文字をアクリル板に立体彫刻機(Roland DG 社製CAMM-2)で彫刻した。文字サイズは、5mmから0.1 log unitずつ拡大して2cmまで7段階、凸高は0.06, 0.13, 0.25, 0.5, 1mmの5段階であった。被験者は19 歳から23 歳までの触覚の正常な男女15人で、日常的に視覚でカタカナ文字を読んでいたが、浮き出し文字を触覚で読む経験はなかった。25℃程度の室温の明室で、被験者はアイマスクをし、刺激文字を1文字ずつ左手人差し指で触ってできるだけ速く正確にその文字が何であるかを読み上げた。1文字読み取るのにかかった時間と反応が記録された。また、主観的にどの凸高と文字サイズが読みやすいと感じたかを聞いた。【成績】正答率について文字サイズと凸高の二要因による分散分析を行った結果、それぞれ主効果が有意(F(6,35)=22.62, p<0.01、F(4,35)=29.7,p<0.01)、で交互作用はなかった(F(24,35)=1.57,p=0.11)。読み速度についても同じであった。凸高0.25_から_1mmでは、文字サイズ2cmまで単調に正答率が上がり、以前の結果と同様2cmで正答率はほぼ100%になった。凸高0.13ではサイズ1cmまで成績が伸びるが、それ以上では頭打ちになった。凸高0.06mmでは、文字サイズに関わらず成績は5%程度であった。【結論】ForeFinger-Mの最適文字サイズは2cmで、凸高は1mmが望ましいが、0.25mm以上あればそれほど成績の低下がないと結論する。
  • 日野 あすか
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、一昨年前行った「日本の盲学校における美術・造形教育の実態調査」の結果から、今後期待される盲学校の美術教育に対し、教師と視覚障害者双方の意見の上位2つに絞り、改めて盲学校に調査をしたものである。美術鑑賞教育については、晴眼児童・生徒に対してもここ何年か力を入れられていることであり、日本の美術教育全体を改革していく上でも重要な教育である。また、視覚障害者障害児・者に対しても触察のあり方や芸術作品に触れる機会など、幼少時から様々な環境に触れることが将来的にもプラスになる。観賞といっても立体から平面、その他いろいろあるが、まずは自分が作った作品の理解、そして友だちの作った作品の鑑賞、など身近なところから作品鑑賞を行うことが大切である。コンピューターグラフィクス教育については、美術の授業の中で取り入れている学校は少なくはないが、弱視の児童・生徒がいる学校では大変有効な美術教材と言える。部分的な拡大や塗りなおしなどいくらでもでき、簡単な操作のものなら小学校の低学年でもできる。使われているソフトなどは特別なものではなく、現存している請願者も使っているソフトを使用している学校がほとんどである。本研究では、調査から分ったことを、できるだけ情報化し、盲学校および弱視学級に在籍している児童・生徒の美術教育に役立ててもらえることを望んでいる。
  • 関 喜一, 佐藤 哲司
    セッションID: P_III_
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/07/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    歩行訓練初心者にとって、実環境での歩行における危険や恐怖心の軽減のために、仮想環境でのシミュレーション訓練を併用することは有効であると考えられる。本研究は、3Dサウンドによる仮想音響環境を用いて、音源定位や障害物知覚などの「聴覚空間認知」の技能の獲得、および聴覚空間認知に基づき歩行する技能の修得を支援するための訓練システムを開発することを目的とする。
    【方法】
    本システムでは、頭部伝達関数(ヒトの頭部・耳介・外耳道等の音響伝達特性)をデジタル信号処理でシミュレーションすることにより仮想音響環境を3次元的に作り出す「3Dサウンド技術」を採用した。これにより被訓練者は、自動車や建造物が存在する仮想環境をヘッドホン聴取で安全に体験することができる。本システムはさらに、頭部位置センサからの情報を基に、被訓練者の頭部が動いた場合、仮想環境の音像の相対位置をその逆方向に移動する制御を行う方式を採用した。これにより、あたかも絶対位置が固定された環境の中にいるかのような没入感を作り出すことができ、被訓練者が自分の頭部の動きによる周囲の音の聞こえ方の変化を学習することができる。
    【成績】
    2005年6月にシステムVer 1.0が完成し、現在、複数移動音源に対する音源定位訓練環境や壁に対する障害物知覚訓練環境、及びこれらを組合せた総合的な訓練環境が再現可能である。また記述できる仮想訓練環境の要素は現在のところ、音源、道、壁、および目印(ランドマーク)の4つである。
    【結論】
    3Dサウンド技術を用いた聴覚空間認知訓練システムの開発を行った。システムは既に可動状態であり、今後は訓練プログラム(佐藤ら、2004)をXML化してシステムに搭載し、今年度中に被験者による評価実験を行う。
    なお本研究の一部は、厚生労働科学研究費補助金「3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム(H15-感覚器-006)」の助成を受けた。
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