【目的】
現在,情報化が進展する中,視覚障害者は視覚を通した情報を得られず,必要な福祉資源を十分に活用できないと予想される.行政から発信される情報によって,その認識率・利用率に格差が見られる(上野ら,2005).その要因として,対象者の年齢,家族構成,性別などに関連する個人的要因などが関係すると考えられる. 例えば, 水野(1998)は,「視覚障害者の中でも特に年齢の高いものや障害発生時期の遅いものは,視覚障害者対応商品に関する知識が少ない」と述べている.今回は,視覚障害者が享受できる福祉制度の認識率と利用率が,年齢や受傷経過年数等と関連するかどうかを検討した.
【方法】
調査対象は,A眼科クリニック(T市)を受診した51名の視覚障害者(男性16人,女性35人,平均年齢70歳)であった.いずれも,視覚障害を原因とした身体障害者手帳を所持する者および,手帳取得に該当する者であった.また,眼科クリニックに来院した際に,本調査の説明を十分に行い,実施について同意を得た.調査内容は,基礎調査(年齢,性別,手帳の有無等)および福祉制度に対する視覚障害者の認識率,利用率などであった.基礎調査は,主治医の問診およびカルテ診療録の情報を基に実施した.認識率,利用率に関する調査は,菊入(2000)を参考に17項目(福祉制度の認識率,利用率等)で構成した.個室で面接者と対象者との1対1の面接法で実施し,口頭で行う指示的面接調査法で行った.
【結果と考察】
主な結果として,5項目(医療費助成,税の減免,公営住宅優先入居,日常生活用具)について,高年齢群(65歳以上;38人)に比べ,低年齢群(65歳未満;13人)の認識率は有意に高かった(p<.05).65歳未満の年齢層は,家庭や社会的にも現役あるいは主要な立場にあり,制度の認識率あるいは利用率においても高くなると考えられる.しかし,65歳以上の高齢者が増加している現状を考えると,彼らのQOLの向上にはより制度の浸透率を高める必要がある.
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