NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
26 巻, 2 号
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  • 葛巻 清吾
    2021 年 26 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     高齢ドライバーによる悲惨な事故が後を絶たない.本論文では,昨今の高齢ドライバーによる事故の特徴および傾向について分析するとともに,それらの事故を防ぐためのトヨタの取り組みについて,最新の安全運転支援システムである「急アクセル時加速抑制システム」を中心に説明する.

  • —地方大学病院におけるプロトコール導入による成果と課題—
    横山 昇平, 中川 一郎, 朴 憲秀, 古家一 洋平, 佐藤 文哉, 木次 将史, 高村 慶旭, 山田 修一, 齋藤 こずえ, 杉江 和馬, ...
    2021 年 26 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     脳梗塞急性期の血栓回収療法の有効性が示され血栓回収機器の進歩により再開通率が改善した現在,発症から再開通までの時間短縮が治療予後を左右する大きな要因となっている.当院では2017年10月に脳卒中センターを開設し,来院から治療までの時間短縮を達成するための院内体制強化を目的に2018年4月に血栓回収プロトコールを導入した.今回我々は院内プロトコール導入に伴う時間短縮の取り組み強化の成果と今後の課題について検証した.2016年10月から2020年4月に当院で血栓回収療法を施行した149例中,経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第4版の適応基準を満たす,発症後8時間以内,発症前mRS ≦ 1,頭蓋内内頚動脈または中大脳動脈M2近位部までの主幹動脈閉塞患者68例においてプロトコール導入前後で再開通時間,治療予後等を後方視的に検証した.結果はプロトコール導入前後で年齢,性別,搬送手段,重症度,DWI‒ASPECTS等の患者背景に有意差は無くrt‒PA投与例の割合も同等であったが,TICI 2b/3の再開通率は75%から96%に有意に増加した.さらに各行程の所要時間の中央値は来院からMRI撮像(45分→34分),rt‒PA投与(95分→75分),動脈穿刺(119分→97分),再開通(163分→126分)で有意に短縮し,発症3ヶ月後のmRS ≦ 2の患者は40%から69%に有意に増加した.横断的な院内プロトコール導入により来院から診断,各部署への連絡,rt‒PA投与の開始,経皮的血栓回収療法までの行程が整備され,各行程の時間短縮が得られ治療予後も改善した.血栓回収療法の治療適応が拡大され今後更に治療症例の増加が見込まれる中,院内体制を一層強化しさらなる時間短縮と治療予後改善に努める必要がある.

  • 荻野 達也, 進藤 孝一郎, 立田 泰之, 櫻井 卓, 遠藤 英樹, 上山 憲司, 瀬尾 善宣, 大里 俊明, 中村 博彦
    2021 年 26 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     当施設における低DWI‒ASPECTS症例に対する血栓回収療法の成績を明らかにする.2016年4月から2019年3月に単一施設で実施した脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法127例のうち,内頚動脈または中大脳動脈閉塞,かつMRIでのASPECTS評価を行った101例について,DWI‒ASPECTS5点以下と6点以上の2群に分け,後ろ向きに比較検討を行った.101例のうちDWI‒ASPECTS 3‒5点の群が29例,6‒10点の群が72例であった.DWI‒ASPECTS 3‒5点の群vs. 6‒10点の群において,3‒5点の群で来院時NIHSSは有意に高く(中央値22 vs. 16,p=0.001),内頚動脈閉塞が有意に多かった(48% vs. 19%,p=0.003).3‒5点の群でTICI 2b‒3が有意に少なかった(62% vs. 88%,p=0.004).全頭蓋内出血は3‒5点の群で有意に多く(59% vs. 25%,p=0.001),症候性出血に有意差は認めなかった(3% vs. 0%).7日後mRS(中央値5vs. 2,p<0.001),90日後mRS(中央値4vs. 1,p<0.001)ともに3‒5点の群が有意に不良であった.3‒5点の群の90日後mRSは,0‒2が24%,0‒3が31%であり,4が31%,5が31%,6が7%であった.3‒5点の群においては,90日後mRS 0‒2の転帰良好群は,mRS 3‒6の群より内頚動脈閉塞が有意に多く(86% vs. 36%,p=0.023),多変量解析では内頚動脈閉塞(オッズ比15.230,p=0.034)は転帰良好予測因子であった.DWI‒ASPECTS 3‒5点の群は,6点以上の群と比較し有意に転帰不良であったが,90日後の歩行自立は31%に認めた.DWI‒ASPECTS 3‒5点の内頚動脈閉塞例においても,必ずしも転帰不良ではない可能性も示唆された.

  • 鈴木 一秋, 若林 健一, 橋田 美紀, 山本 諒, 清水 大輝, 伊藤 真史, 雄山 博文
    2021 年 26 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     急性硬膜下血腫は予後不良な疾患である.本疾患に対する標準的治療は大開頭による開頭血腫除去術であるが,併存症が多く耐術能の低い高齢者に対しては手術侵襲が高く,その適応に悩むことがある.近年急性硬膜下血腫に対する神経内視鏡を用いた治療の有効性が報告されている.今回2017年4月から2020年3月の期間に当院(豊橋市民病院)にて治療した高齢者急性硬膜下血腫患者のうち,内視鏡下血腫除去術を施行した6例を対象として,患者背景,転帰,治療内容について検討し,文献を交え内視鏡手術の有効性と問題点について考察を行った.6例(男性4例,女性2例)の平均年齢は77歳(70‒87歳),抗血栓薬は3例(抗凝固薬1例,抗血小板剤2例)で服用していた.受傷機転は,転倒・転落5例,交通事故による高エネルギー外傷が1例であった.発症前modified Rankin Scale(mRS)は平均2.2(0‒4),術前Glasgow Coma Scale(GCS)は平均7.8(4‒12)であった.麻酔方法は全身麻酔が5例,局所麻酔が1例.平均手術時間は94分(67‒110 分)であり,同時期に当院で高齢者急性硬膜下血腫に対して行った開頭血腫除去術12例(平均手術時間154分)と比較して有意に手術時間が短かった(p<0.05).術後出血は認めなかった.3ヶ月後のmRSは平均3.3であった.止血,脳腫脹に十分注意を払うことで安全かつ有効に内視鏡下血腫除去術が遂行でき,症例によっては局所麻酔下の手術が可能であった.内視鏡下血腫除去術は高齢者の急性硬膜下血腫に対する1つの治療選択肢となり得ると考えられ,さらなる適応の拡大が期待される.

  • 塩川 諒治, 須磨 健, 吉田 宏一朗, 根岸 弘, 熊川 貴大, 角 光一郎, 五十嵐 崇浩, 茂呂 修啓, 大島 秀規, 渋谷 肇, 吉 ...
    2021 年 26 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     PCAの解離性脳動脈瘤は稀な疾患である.今回,PCAの破裂解離性脳動脈瘤に対して,術前に3DRAで穿通枝を同定し,亜急性期にステント併用コイル塞栓術を施行したので文献的考察とともに報告する.症例は,46歳,男性.意識障害で発症し,Hunt and Kosnik grade IVのくも膜下出血で入院した.脳血管撮影で右PCAの解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血と診断し,保存的加療を行った.発症12日目の脳血管撮影で動脈瘤の増大を認めた.3DRAで動脈瘤の近傍より穿通枝が動脈瘤拡張部位とは離れて分枝していることを確認し,発症14日目にステント併用コイル塞栓術を施行した.脳動脈瘤の再増大や治療に伴う脳梗塞は認めず,mRS 1で自宅に退院した.術前3DRAで解離性脳動脈瘤近傍の穿通枝を確認することによって,虚血性合併症を認めず治療を行うことが可能であった.

  • —経脳室アプローチの有用性—
    小野寺 康暉, 竹林 誠治, 櫻井 寿郎, 小林 徹, 小林 理奈, 栗栖 宏多, 後藤 秀輔, 瀧澤 克己
    2021 年 26 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     鋳型状脳室内血腫を伴った大型前交通動脈瘤破裂による高齢重症くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)症例に対しての低侵襲治療戦略を示す.Kocher’s pointを中心に小開頭を行い,側脳室前角に脳室ドレーンを挿入する.マイクロ下に脳室ドレーンをガイドとして側脳室内に至り,脳室内血腫を可及的に洗浄除去した後に,そのまま動脈瘤にもアプローチしてclippingを行う.動脈瘤の処置ではcomplete clipにはこだわらず,破裂点の確実な閉鎖に主眼を置く.重症くも膜下出血に対する急性期手術では,再破裂予防の動脈瘤処置のみでは不完全であり,重症化の原因となっている病態の改善がより重要となる.患者の転帰は一次脳損傷の程度に依存するため,一次脳損傷を最小限に抑え,新たな脳損傷を回避できた場合にのみ良好な転帰の可能性が見い出せる.大型,高位の前交通動脈瘤に対する開頭術ではinterhemispheric approach (IHA) が選択される場合が多いが,前頭洞の開放やアプローチの困難さ,等のため手術には時間を要し侵襲も大きい.本アプローチでは前頭洞開放のリスクやinterhemispheric fissureの開放操作がないため,短時間・低侵襲で急性期処置(脳室内血腫の除去による病態改善と動脈瘤処置による再破裂予防)が可能となる.適応に関しては,術前の画像所見を十分に検討し,新たな脳損傷をきたさずに経脳室的に動脈瘤へのアプローチが可能かどうかの判断が重要となる.

  • 高木 悠輝, 堤 佐斗志, 寺本 紳一郎, 野中 宣秀, 大倉 英浩, 鈴木 隆元, 石井 尚登
    2021 年 26 巻 2 号 p. 184-188
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     既往に高血圧がある51歳男性.起床後からの左半身脱力と構音障害を主訴に同日当院救急搬送となった.診察時血圧高値,左片麻痺,構語障害を示し不穏状態であった.採血上はD‒dimerが上昇していた.頭部CT上右前頭葉にmass effectが小さな最大径38×34 mm大の皮質下出血を認めた.頭部単純CT施行後から胸痛の訴えあり,直後に心肺停止となった.速やかに心肺蘇生を開始,直後の胸部X‒p上心胸郭比の増大を認めた.心肺蘇生への反応はなく90分後に死亡確認となった.来院から死亡確認まで3時間の経過であった.Autopsy imagingを施行したところ上行大動脈壁の破綻と心囊液貯留の所見を認めた.以上から,皮質下出血発症後短時間でStanford Type Aの大動脈解離を併発,心タンポナーデを起こし死に至ったと考えた.急性大動脈解離は脳出血急性期に併発し得る病態である.大動脈解離を想定するには患者の訴えに対する可能な限りの傾聴,及び脳神経系由来ではない病態が合併する可能性も念頭に置いた注意深い症状観察が肝要である.

  • 原 睦也, 熊谷 廣太郎, 山本 崇裕
    2021 年 26 巻 2 号 p. 189-196
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     後頚部痛で発症した神経学的無症候性の両側椎骨動脈解離が進行性に狭窄をきたして症候性となり,優位である左椎骨動脈にステント留置術を施行した症例を報告する.症例は51歳女性,後頚部痛が主訴でMagnetic resonance angiography (MRA) にて両側椎骨動脈解離と診断され入院した.神経学的異常所見はなく降圧のみの内科的治療を行った.脳血管造影施行後,経時的にMRAのフォローアップを行った.入院後10日目にめまいが出現し,Magnetic resonance imaging (MRI) で右小脳半球に梗塞を認め,MRAで右椎骨動脈は閉塞し,左椎骨動脈は高度狭窄を呈していた.その後患者は傾眠となり,脳幹の虚血症状と判断された.入院後12日目に脳血管造影で優位側の左椎骨動脈はnear occlusionの状態で順行性の血流は乏しく,内科的治療の強化でも改善は困難と考え,ステント留置術を行い,転帰は良好であった.頭痛発症や虚血性の椎骨動脈解離の場合,閉塞性変化は少なく,内科的治療が奏功することが多いが,両側にきたし,症候性となった場合血管内治療による血行再建術は治療の選択肢になりうる.

  • 松崎 遼, 根本 匡章, 桝田 博之, 三海 正隆, 中田 知恵, 渕之上 裕, 内野 圭, 寺園 明, 原田 雅史, 近藤 康介, 原田 ...
    2021 年 26 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     慢性硬膜下血腫(CSDH)を合併した特発性低髄液圧症候群(SIH)において治療に難渋し,切迫脳ヘルニアに陥った一例を経験したので報告する.症例は45歳男性,起立時の頭痛を主訴にSIHを疑って入院となった.CT上,両側CSDHを認め,ガドリニウム造影MRIで硬膜は均一に増強された.脳槽シンチグラフィーでは上位胸椎レベルでの髄液の漏出が疑われた.安静と点滴による保存的加療を行ったが意識障害をきたし,硬膜外カテーテルからの生理食塩水注入と自家血注入を行い意識清明となった.しかしその後に再び意識障害が出現したため硬膜外自家血注入療法を行うも意識は改善せず,切迫脳ヘルニアに陥った.CSDHによる頭蓋内圧亢進が原因と考え,穿頭洗浄術を施行したところ意識清明となり独歩退院した.本例の病態として,初期にはSIHによる頭蓋内圧の低下が主であり,CSDHの圧により頭蓋内圧の均衡が保たれていたが,CSDHの増大に伴って頭蓋内圧亢進に転じたものと推測される.そのため硬膜外自家血注入療法によって漏出部位を閉鎖させたことが急速な頭蓋内圧亢進をもたらし,切迫脳ヘルニアを誘発したと推測される.本例のごとくCSDHとSIHの合併例では両者を同時に治療することを考慮すべきであろう.

  • 菊地 亮吾, 唐津 皓介, 中村 明義, 宮崎 宏道
    2021 年 26 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

     不随意運動が継続した頚動脈高度狭窄に対しstaged angioplastyを施行した一例を経験したため報告する.症例は70歳男性.一過性の不随意運動が出現し,20日後に左上下肢の不随意運動が続き転倒し,救急搬送された.精査にて亜急性期脳梗塞と右頚部内頚動脈高度狭窄を認め,右中大脳動脈領域の循環遅延を認めた.抗血小板療法を開始し,不随意運動は軽快するも残存した.頚動脈高度狭窄に対し経皮的血管形成術を施行し,循環遅延は回復し,不随意運動も消失した.脳循環の改善に伴って消失したため,不随意運動はlimb shakingであったと判断した.血管形成術の10日後に頚動脈ステント留置術を施行し,後遺症なく退院した.不随意運動の鑑別として,頻度は少ないものの脳血管障害も鑑別におく必要があり,脳循環遅延を認める場合には早期の外科的介入を含めた積極的な治療が求められる.

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