神経理学療法学
Online ISSN : 2758-0458
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研究論文(原著)
  • 武田 祐貴, 鈴木 英樹
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2023 年 3 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、繰り返し転倒するパーキンソン病(PD)者について、PDの重症度や運動機能、認知機能などを用いる従来の方法に、意思決定機能を測定できるIowa Gambling Task(IGT)を含めて検討することである。対象は在宅生活中のPD者16名とした。対象者を過去1年間の転倒回数が2回以上の繰り返し転倒群(10名)と1回以下の非繰り返し転倒群(6名)に分け、属性、H&Y分類、MDS-UPDRS、MMSE、TMT、FAB、MFES、IGTの成績、IGTの各Deckの選択回数および20施行ごとのIGTの成績を比較した。結果、繰り返し転倒群では非繰り返し転倒群に比べて有意にH&Y分類が重度でTMTが速いことに加え、IGTにおいて有意にギャンブル性の高いDeckの選択回数が多く、IGT最終盤における成績が低いことが示された。このことは、繰り返し転倒するPD者が大きなリスクを避けず、かつ罰や失敗から学習することが困難であることを示唆している。今後もPD者の特徴を踏まえた検討を行っていく必要がある。

症例報告
  • 海津 陽一, 大塚 勇輝, 田屋 七海, 宮田 一弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 3 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的:本症例報告の目的は、バランス機能低下を認めた症例に対し、Berg Balance Scale(BBS) Keyformを用いた理学療法の経過について記述することであった。

    症例:右被殻出血後にバランス機能低下を認め、保存加療を受けた50歳代の男性である。

    方法:BBS Keyformを使用した評価は49〜91病日まで2週間に1度実施し、至適難易度のバランス課題の選択を行った。また、選択された課題に対する問題点抽出、統合と解釈により介入内容を再検討した。

    結果:BBS Keyformを使用した介入開始1カ月後(77病日)、BBSは49病日時点の41点から52点へと11点の向上を認め、補装具を用いず歩行自立となった。91病日のBBS測定では56点と満点に達し、退院時評価(113病日)では、日常生活動作も全自立であった。また、Keyformの使用は理学療法の内容や時間配分に影響を与え、患者の主観的なバランス改善の認識も得られた。

    結論:BBS Keyformを用いた理学療法の実践方法と治療経過を記述し、バランス機能の改善や理学療法の内容や時間配分の変化が認められた。

  • 松本 拓也, 植田 耕造, 西本 和平
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 3 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的:多様な歩行課題という可変性の要素を含んだ高強度の歩行練習は歩行機能の改善が大きいことが示されているが、本邦での実践報告は見当たらない。この歩行練習を先行研究は10週間で合計40回実施しているのに対し、本邦の365日体制であれば同じ回数を約半分の6週間で実施可能である。今回、亜急性期脳卒中患者に対し同じ回数を約半分の6週間で実施した結果を報告する。

    方法:症例は右脳梗塞後93病日目の50歳台女性。希望は屋外見守り歩行であった。目標達成のために歩行持久性の改善が必要であると推察し、可変的な中高強度の歩行練習を40日間連続で実施した。

    結果:6分間歩行距離は臨床的に意義のある最小変化量以上の改善を認め、屋外歩行見守りという希望は達成できたが、先行研究と同程度の改善には至らなかった。

    結論:本練習を約半分の期間で同じ回数実践しても臨床的に意義のある最小変化量以上に歩行機能が改善する可能性があることを示した。

  • 桑田 麻由子, 深田 亮, 但木 亮介, 髙瀬 慶太, 赤坂 朋世, 古矢 丈雄, 村田 淳
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 3 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的:脊髄髄内腫瘍摘出術後に脊髄後索障害の乖離と視覚情報では代償が困難であった感覚性運動失調を認めた症例を経験した。

    症例:第1頚髄髄内腫瘍手術例の58歳男性である。

    経過:術後の神経学的所見では、両下肢の振動覚、表在感覚の重度鈍麻、しびれの神経脱落症状を認めた。母趾の位置覚は正常であり、後索障害に乖離を認めた。足趾手指試験が陽性で、歩行は視覚による足元の確認と両脚支持期の延長による歩行速度の低下を認めた。術後4日目、トレッドミル歩行を開始し、即時的に視覚による足元の確認と両脚支持期の延長が改善を示し、歩行速度の改善を認めた。

    結果:術後15日目に自宅退院となった。自宅退院時の評価では脊髄後索障害は後遺し、足趾手指試験は陽性であったが、屋外移動は独歩で自立となった。

    結語:脊髄後索機能障害に乖離を認めたことから、脊髄後索は機能的層構造を考慮し複数の検査で評価する必要がある。

実践報告
  • 石原 匠, 北川 崇, 福田 大輔
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 3 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    目的:脳卒中片麻痺者に対して、歩行補助ロボットを用い、その経過の中で難易度調整の工夫を行い、異常歩行パターンの改善を認めたため報告する。

    対象:17病日に当院の回復期リハビリテーション病棟へ入院された右視床出血を呈された40歳代男性である。

    方法:歩行補助ロボットを用いた歩行練習を中心に理学療法を実施し、短下肢装具(以下、AFO)に移行する過程で、異常歩行パターンが再び出現したため、難易度調整として膝ロックを解除した長下肢装具(以下、KAFO)を使用した。

    結果:麻痺側の筋力やバランス機能は改善し、72病日に杖歩行自立となり、歩行速度や歩容も改善した。

    結論:歩行補助ロボットによる歩行練習は、歩行の再獲得に貢献した。ロボットを使用した歩行から、AFOによる平地での歩行に移行する際の難易度調整の方法として、膝関節のロックを解除したKAFOを用いることは有効な一つの手段として思われた。

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