日本体育学会大会予稿集
Online ISSN : 2424-1946
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第67回(2016)
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一般研究発表(03) 体育心理学
  • 東山 明子, 東 亜弓, 土屋 裕睦, 丹羽 劭昭
    p. 124_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     企業スポーツトップリーグのAチーム所属選手46名(男子、年齢27.43 ± 3.92歳)を対象にパーソナリティ特徴を把握し、試合出場や試合内容等を評価基準に高、中、一般の3群に分け、高群13名と一般群15名のパーソナリティ特徴を検討した。対象チームはトップリーグ16チーム中で該当年度リーグ戦順位はベスト8以内であった。パーソナリティ検査は内田クレペリン検査とYG性格検査を用いた。内田クレペリン検査の人柄類型では、8類の個性派が41.3%と多く、素直派と真面目派がほぼ同数であったが、元気派はいなかった。精神健康度では中度が43.5%と最も多く、次いで高・中上度であった。作業量段階では最上段階が41.3%、次段階が39.1%で大半が上位段階であった。曲線傾向は平坦が50%と多かった。これらは一般のスポーツ選手とほぼ同様の結果であった。YG性格検査ではD類が41.3%と最も多かった。高群と一般群の比較では、YG検査のC類が一般群は7%であったが高群は38.5%と多く、B類とD類は一般群80%と比較して高群は38.5%と少なかった。日本の企業スポーツチームにおいては、試合出場が多く試合内容の良い選手は情緒安定社会的内向傾向であることが示唆された。

  • 奥田 援史, 堀井 大輔
    p. 124_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     スポーツタレントの発掘・育成事業が全国各地域で実施されている状況を鑑みると、運動優秀児の心理的特徴を明らかにすることは有用である。そこで、本研究では人格診断の投影的手法であるバウムテストにおける運動優秀児の特徴について検討した。調査対象者は、小学6年生の運動優秀児(おおよそ平均値+2標準偏差以上に属する)24名(男12名、女12名)である。バウムテストは、「実のなる木を一本描いてください」と教示して、A4版用紙を用いて集団一斉式で実施した。そして、A4版用紙を縦20 ×横14= 280のマス目に分割し、そのマス目を用いて、描かれた樹木画の大きさを指標とする空間領域の使用量について分析を行った。その結果、津田(1992)のデータと比較すると、本研究での運動優秀児においては空間領域の使用量の多い傾向が認められた。つまり、描かれた樹木画のサイズが大きいということであり、この結果から、精神生動性(Lebhaftigkeit)が活発で自己拡大的、自己主張的、積極的(津田、1992)であるといったことが運動優秀児の特徴として示された。

  • 吉原 啓, 相川 昌巳, 土屋 裕睦
    p. 125_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     福盛・森川(2003)が体験過程尊重尺度(以下FMS)を作成して以来、フォーカシング的態度を測定する尺度の開発が行なわれてきている。本研究では、FMSの改訂版として作成されたFMS改訂版(森川ら、2014)の大学生アスリートへの適用可能性の検討を行なった。対象者は、A体育大学運動部に所属する122名(男性80名、女性42名、20.2 ± 0.1才)であり、質問紙は、FMSとFMS改訂版、心理的競技能力診断検査(徳永・橋本、1988)(以下DIPCA)を使用した。結果は、FMSの下位因子のα係数0.549~0.744、尺度全体のα係数0.868であり、FMS改訂版の下位因子のα係数0.704~0.784、尺度全体のα係数0.857であった。また、DIPCA総得点とFMS総得点(r=.356、p<.001)、FMS改訂版の総得点(r=.335、p<.001)との間に有意な正の相関が認められた。従って、FMS改訂版は、FMSの項目数23より少ない18項目でありながら、下位因子の項目数のバランスが改善されており、内的整合性や妥当性が示され、FMS改訂版の大学生アスリートへの適用可能性が確認された。

  • テニスのボール拾いを課題として
    武田 守弘
    p. 125_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     テニスの練習場面では、技術向上のために数多くボールを実打し、そして拾う。ボール拾いを素早く行えば、その時間を有効に活用できる。しかし実際の練習風景を見ていると、選手は複数でボールを拾う際には、それだけの人数がいるにもかかわらず余計に時間を費やしているように感じる。つまり集団での作業時が1人での作業時と比べて個人の努力量を低下させてしまう傾向とされる社会的手抜き行為が生じているように感じる。そこで、テニスの練習中のボール拾い行為に、社会的手抜き行為が生起しているか確認すること、合わせて手抜き行為を率先して行う者を加えた場合の影響を、被験者個別の努力量と個性をもとに検討することを本研究の目的とした。大学テニス部員6名を被験者とし、実打終了後ボールを拾ってカゴに入れるという課題を行わせた。1人、2人、3人、6人と順に人数を増やし、その際の個人が拾った数と所要時間を計測した。結果から、人数の増加に伴いボール拾いの所要時間は徐々に増加し、社会的手抜きが確認された。また、手抜き行為を率先して行う者を加えた場合では、所要時間はさらに増加し、社会的手抜きがより生起されることが確認された。

  • 清水 聖志人, 島本 好平, 河野 隆志, 久木留 毅, 土屋 裕睦
    p. 125_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     日本レスリング協会(以下、JWF)では、新たな発掘・育成システムの構築を推進している。JWFの発掘・育成においては、「インテリジェントレスラーの育成」を理念としている。各プログラムにおいては、ライフスキル(以下、LS)の獲得に着目することで、我が国のエリートスポーツにおいて二律背反として捉えられてきた競技力向上とキャリア形成の双方にとって有益となるよう構成された教育プログラムを提供している。本研究においては、各世代の国内育成キャンプがLS獲得に与える影響について検討を試みた。調査対象者は、2015年度に育成キャンプに参加した各世代のトップレベルタレント計139名(男性90名:女性40名)であった。各世代の育成キャンプの事前事後に、アスリートに求められるLSを評価する尺度(島本ほか,2013)を用いて育成キャンプがLS獲得に与える影響を測定したところ、男子カデット世代においては「目標設定」「考える力」「体調管理」の3側面が有意に向上したことをはじめ、各世代において複数のスキル側面が有意に向上していた。また、育成キャンプの中で同一の教育プログラムを受講したにもかかわらず、性差により獲得されるスキル側面が異なることも示唆された。

  • 教員採用試験の合格群・不合格群における検討
    福井 健人, 島本 好平, 山本 浩二
    p. 126_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究では、教育大学の学生アスリートのライフイベントである教員採用試験に焦点を当て、合格群と不合格群それぞれにおけるライフスキル(以下、LS:Life skills)間の関連性を明らかにすることを目的とした。4回生の学生アスリートに対し、2015年7月に「大学生アスリート用LS尺度」を、同年11月に「ライフイベントに関するアンケート」をそれぞれ実施した。両調査への回答者を合格群(n=26)と不合格群(n=16)の2群に分類し、LS間の相関分析を行い、両群の比較を行った。両群とも強い相関係数が認められたのは、「責任ある行動」と「考える力」の間であった。両側面とも合格群の方が高い値を示しており、採用試験に取り組む中で重要な能力となる可能性が示唆された。一方で、両群で異なる傾向がみられるものもあり、合格群では「謙虚な心」と「最善の努力」との間で、不合格群では「目標設定」と「体調管理」との間で高い相関係数が認められた。すなわち、合格群の学生は自らの能力に過信することなく努力していること、不合格群の学生は体調管理をうまく行いながら目標設定を日常的に意識して取り組んでいることが示唆された。

  • 男女別にみる相関分析
    鈴木 拓磨, 島本 好平
    p. 126_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、大学生アスリートを対象にレジリエンスとライフスキルとの関連性について、横断研究を通じて明らかにすることであった。調査は2016年4月に、国立・私立大学の運動部に所属する大学生アスリート150名を対象に行った。アスリートにおけるレジリエン(上野ほか、2012)とアスリートに求められるライフスキルを測定することのできる尺度(島本ほか、2013)からなる調査票を用いて郵送法により行われた。男女別で相関分析を行った結果、男女ともにライフスキルの「ストレスマネジメント」と、レジリエンスの「部員からの心理的サポート」、「友人からの心理的サポート」との間に強い正の相関関係が見られた(男子:r=.81、女子:r=.66、いずれもp<.001)。上記の結果から、悩み事をうまく打ち明け、周囲からの心理的サポートを活発にとることができ、他者との相談を通じて、部活動や日々の生活における悩みを緩和していくことで、ストレスマネジメントを高めることができると考えられる。また、情報交換等をすることにより、新たな目標設定を得ることもできるだろう。

  • 女子大学生スポーツ競技者を対象として
    伊藤 詩織, 佐々木 万丈, 北村 勝朗
    p. 127_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     女性スポーツ競技者にとって、月経期間に痛みや症状があることは、競技力向上を目指す上でストレッサーとなることが予測される。本研究は経血の処置方法に着目し、布ナプキンの使用を女子大学生スポーツ競技者に適用することで、月経症状に対する意識に変容が見られるか検討をおこなった。A大学で部活動やクラブチームに所属している学生7名を対象とした。1か月目の月経期間は市販ナプキンで過ごし、その後3か月の月経期間は、ガーゼとコットンを体調によって組み合わせて使用し、月経期間が終了する毎にアンケート調査をおこなった。分析の結果、市販ナプキンの使用時に自覚された「ムレ」「かゆみ」などの不快感が有意に低減し、また認知的評価では、日常生活における月経随伴症に対するコントロール感の向上が示された。これらの結果から、市販ナプキンよりも通気性や保温性のある布ナプキンを使用することで、月経症状に対する意識が改善したと考えられる。さらに、月経による愁訴の一つである「集中力の低下」が低減したことも示され、布ナプキンを使用することが、より競技に集中することができるなど、競技力向上の一助となる可能性のあることが考えられる。

  • 体育系大学生の学年による認識の違い
    阿江 美恵子
    p. 127_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     2013年にスポーツ指導者の体罰が問題になってから、学校運動部活動での暴力指導(体罰)は禁止された。しかし、完全になくすには継続的に調査を実施し、指導者の暴力を監視することが必要であると思われる。さらに、指導者を目指す体育系学生には、暴力否定の理念を教育することが必要であると考えられる。そこで、本研究では体育系女子大学学生408名(1年309名、上級生99名)に指導者の暴力に関する調査、暴力否定教育後の認識の変化調査を行った。 対象者は1年生では187名のうち17.2%が高校3年生時点で指導者の暴力を体験していた。また、指導者の暴力を少し必要だと1年生15%、4年生10%が回答した。1年生で1名「とても必要」と回答した。暴力否定教育を3コマ(90分×3)実施し、効果を検討した。ディスカッションの結果、わからない、仕方ないが43%であった。競技成績の結果の影響は大きいと考えられた。

  • ジュニアサッカー場面に着目して
    北村 暢治, 森 司朗, 中本 浩揮, 幾留 沙智
    p. 127_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     論理的に考え表現することはサッカーの上達において重要だと考えられており、客観的な思考に基づく論理的思考やコミュニケーションスキルからなるロジカルコミュニケーションスキルが必要だと考えられている。しかしながら、ジュニア期でのロジカルコミュニケーションスキルの習得とメタ認知との関係に関しては明らかにされていない。そこで本研究では、ジュニア期の論理的思考とコミュニケーションスキルの習得の程度がメタ認知に与える影響を明らかにすることを目的とした。対象はサッカーチームに所属している小学4、5、6年生103名とし、測定は論理的思考を測定する児童・生徒用批判的思考尺度(武田、2011)とコミュニケーションスキルを測定するENDE2(堀毛、1994)、メタ認知尺度(石井,2007)をサッカーに関するものに改変して作成した3つの尺度を用いた。結果、批判的思考尺度とコミュニケーションスキル尺度の両尺度が高い群は両尺度が低い群と比べ、メタ認知尺度が有意に高いことが示された(p<.01)が、学年間での差は認められなかった。今回の結果は、批判的思考やコミュニケーションを行う経験がサッカーに関するメタ認知の獲得に影響を与えていたことが示唆された。

  • 西村 拳弥, 豊田 則成
    p. 128_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の関心事は、運動遊びに取り組む中で子どもの心理的側面がどのように変容しているのかにある。そこで、「どのように子どものやる気に拍車がかかるのか」というリサーチクエスチョン(Research Question以下:RQ)を設定し、質的にアプローチし、発展継承可能で有益な仮説的知見を導き出すことを目的とした。週に一度鬼ごっこなどの運動遊びの指導を行っている小学校において継続して観察を行い、6年生の男子児童1名を主な観察対象とした。得られたデータは質的研究法の代表的手法である、エピソード記述、複線経路・等至性モデル、グラウンデッド・セオリー・アプローチの3つの手法を採用し、組み合わせて分析を行った。分析の結果、上記のRQに対し『【①運動遊びを始める】ものの、やる気にブレーキが掛かるようなことがあると、【②運動遊びから離れていってしまう】。しかし、自分が注視されているということに気が付くことがきっかけで、【③遊びの場に入っていく】様になる。そして、【④積極的に遊ぶ】中で楽しい経験を積み重ねることによって、【⑤もっと遊びたいと思うようになる】』というプロセスでやる気に拍車が掛かるという仮説的知見を導き出した。

  • 運動動作修正時における身体感覚への気づきに着目して
    伊藤 真之助, 吉田 聡美, 蓑内 豊
    p. 128_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     スポーツ選手における怪我は、外傷・傷害の2つに大別されるが、繰り返し加わる身体へのメカニカルストレスによって引き起こされる傷害は、「なぜ、そこにストレスが加わっているのか」そしてそれは、「どのようにすれば早期に改善出来うるのか」という観点が非常に重要になる。スポーツへの早期復帰や再受傷のリスクを低下させるためには、このような視点の養成や具体的な取り組みに時間を費やしたいことの一つである。この問題の解決方法の一つとして、新旧対照法(old way/new way)がある。これは、癖のついた悪い動作の修正に有効とされる手法である。本研究は、フォームに問題があることでスポーツ傷害を受傷し、復帰を目指し整形外科にてリハビリテーションを実施する学生アスリートに対し、Lyndon(1989)が提唱する新旧対照法(old way/new way)を活用した動作修正プログラムを実施することで、傷害の原因となった動作を認識し、正しい動作をより早く身に付け、競技復帰を目指したものである。

  • 永田 直也, 山内 賢, 佐々木 玲子, 加藤 大仁, 近藤 明彦
    p. 128_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     体育の授業では、履修者が授業に対して熟達志向的雰囲気を感じることで、運動やスポーツ活動に対する動機づけが高まることが示されており、そこには教師が大きな役割を果たすことが示されている。大学における教養体育においても同様のことが考えられるが、大学生や成人を対象とした動機づけ雰囲気測定尺度や教師の指導・関わり方を評価する尺度は作成されておらず、明らかにされていない。そこで我々は、教師の指導・関わり方に着目した大学教養体育における動機づけ雰囲気測定尺度の作成を目指し作成を進めてきた。本発表では、その研究のうち、作成した尺度案の信頼性・妥当性の検証を報告する。検証では、永田ほか(2015)が作成した大学教養体育における動機づけを高める教師の指導・関わり方評価尺度、藤田・杉原(2008)が使用した動機づけ雰囲気に関する質問6項目を使用した。検証は、選択体育を履修した321名(個人種目:208名、集団種目:113名)を対象に実施した。検証の結果、2つの尺度における熟達志向的な因子間と成績志向的な因子に中程度(r = .49 - .63)の相関が認められた。その他の結果については、発表において報告を行う。

  • 石原 端子
    p. 129_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究は、小学生年代のスポーツ指導者の悩みについて、その実態を明らかにすることを目的とした。調査対象者は、沖縄県内で小学生を対象にコーチングを行っているコーチ70名(男子61名、女子9名)、調査期間は、2015年7月から11月であった。質問紙調査の自由回答によって得られたデータは、KJ法によって整理し、集約した。分析の結果、コーチの悩みについては、9つのカテゴリー(①選手不足、②保護者への対応、③家庭環境を含めた生活面での指導、④学業を両立させるための指導、⑤指導者としての能力、⑥指導体制の充実、⑦古い指導者への対応、⑧心理的スキルトレーニングに関する知識、⑨フィジカルトレーニングに関する知識)に集約された。求めるサポートについては、5つのカテゴリー(①保護者の協力、②練習環境の確保、③他のコーチのサポート、④メンタルの専門家からのサポート、⑤フィジカルの専門家からのサポート)に集約された。これらの結果から、小学生年代のスポーツ指導者のサポートネットワーク構築に必要な要素の一端が明らかとなった。

  • 安部 久貴
    p. 129_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、指導者のコミュニケーション能力向上に資する基礎的資料を得るために、中学校の部活動における生徒に対して抱く教員(指導者)の期待と指導者の声かけの関係性について明らかにすることであった。本研究では、一校の中学校のサッカー部を対象として、そのチームの指導者である教員の指導場面をVTR撮影し、生徒に対する指導者の声かけを分類した。声かけの分析には、「コーチの発話の質的分析のための7指標」(梅崎、2010)を参考にして研究者自身が作成した分類指標を用いた。指導者の声かけは8週の調査期間中、週1回程度(計10回)の練習および試合を記録して分析した。指導者が各生徒に対して抱いている期待は、「サッカー指導者による選手の競技力評価尺度」(安部・落合、2012)を用いて定量化した。その結果、指導者の期待値の高低によって分けられた2群間の指導行動の合計頻度において、高群が低群に比して有意に高い頻度を示したことから、部活動中の指導者は期待している生徒に対して、より積極的に指導を行っている可能性が示唆された。

  • 高橋 信博, 渡部 悟, 水落 文夫
    p. 129_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     レジリエンスは困難な状況にさらされて、ネガティブな心理状態に陥っても重篤な精神病理な状態にならない、あるいは回復できるという個人の心理面の弾力性(無藤ほか、2004)とされている。スポーツ領域でも心理的ストレスを起因としたバーンアウトやドロップアウトを抑制する効果があるとして注目されている。昨今の研究では、横断的研究を中心として研究が行われている。その大半が質問紙による自己報告法である。レジリエンスについて評価するうえで、客観性を高める試みは、Morgan et al.(2004)がコルチゾールとDHEAを用いてレジリエンスを測定しており、レジリエンスに対応する生理的指標となりえることを示唆している。また、小塩ほか(2002)は、レジリエンスの概念を一過性の不適応状態からの回復としており、レジリエンスは、一過性のストレス刺激に反応するものと考えられる。しかし、現状でレジリエンスに対する生理的な指標の研究例は少ない。本研究では、被験者に対して一過性のストレス課題(TSST)によるストレス刺激をあたえ、レジリエンス、唾液コルチゾール、DHEAを測定し、レジリエンスマーカーとしての有用性を検討した。

  • 競技種目と性別の違いによる検討
    山田 快
    p. 130_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     スポーツ選手にとって、メンタルヘルスは日常、競技の両生活における基盤をなすものであり(内田、2011)、その良し悪しが競技パフォーマンスの出来を左右することは周知の通りである。したがって、多くの選手がチームを単位として活動していることを考慮すると、彼らの心理支援策について検討する場合、所属チームの全体性に目を向けることが重要であり(中込、2014)、そこから新しく、かつ有効な支援策を見出すことが必要になろう。 そこで、本研究では、メンタルヘルスの改善に貢献するとされる(小林・西田、2009)レジリエンスを媒介要因に位置づけ、スポーツチームの一要因である一体感が選手のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか、またその影響過程には選手の属性による違いがあるのかについて検討した。 大学の運動部に所属する626名の学生スポーツ選手を対象とした質問紙調査の結果、チームの一体感が増すと、選手(メンバー)のレジリエンスが強化され、メンタルヘルスが改善する可能性があることが明らかになった。また、その影響過程と変数間の効果量には、競技種目(集団、個人)および性別による違いがあることが示唆された。

  • 日比 健人, 佐久間 春夫
    p. 130_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     これまでスポーツ傷害受傷後の回復過程における心理状態や心理社会的要因の影響についての研究は比較的多く行われている(青木・松本、1999)が、予防に関する心理学的要因の研究は少ない。特に、スポーツ傷害の発生の予防に関しては、Andersen & Williams(1988)が「ストレス-スポーツ傷害モデル」を発表して以来、その検証やモデルの修正が多く行われているが具体的な心理学的介入の方法が確立されていないことが課題となっている。本研究では、この「ストレス-スポーツ傷害モデル」を用いて、モデルの一部である、ストレス反応と傷害の発生機序の関係性、ならびにストレス反応と対処資源の関係性を検証し、スポーツ傷害の予防に効果的な心理学的介入法について考察を行った。その結果、①ストレス反応の因子である、無気力と抑うつ・不安の2つの因子が傷害発生の有無と関係していること、②対処資源である集中力と自己コントロールの2つの因子がストレス反応に影響を与えていることが明らかになった。これらの結果より、スポーツ傷害の予防に対しては、呼吸法や身体的アクションなどの集中力や自己コントロールに対しての心理学的介入が有効であることが示唆された。

  • 障がいの程度によるクラス分けに着目して
    筒井 香, (田中)ウルヴェ 京
    p. 130_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     アスリートの心理を考える際に、競技特性や個人特性を考慮する必要性が指摘されているが、パラリンピック競技を対象とした研究はオリンピック競技のそれ以上に不足している。本研究では、男子車椅子バスケットボール日本代表選手を対象に日本語版Athletic Coping Skills Inventory-28(大場・田中ウルヴェ、2002)を用いて試合中のストレスに対処するコーピングスキルを測定した。その結果、総合得点はレギュラー選手7名が48.7、ベンチ選手5名が50.4であり、その差は1.7であった。一方、障がいの程度(重度1.0~軽度4.5)によるクラス分けで、3.0以上の5名は46.8、3.0以下の7名は51.3とその差は4.5であった。先行研究では競技レベルの差異に着目した結果が示されているが、本研究では障がいの程度によるクラス分けの差異の方がその差が大きいことが明らかになった。さらに、障がいの重い選手は動きが制限されるため、やるべきことの整理をつける習慣があり、それがコーピングスキルの向上に関係しているという仮説のもと、チームのメンタルトレーニング指導士にコメントを求め、数値による結果と合わせて各選手の心的過程を明らかにした。

  • 西貝 雅裕, 来田 宣幸
    p. 131_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     スポーツの審判員は試合で重要な役割を果たしており様々なプレッシャー等を受けるが審判員の心理的特性については不明な点が多い。そこで本研究では野球の審判員を対象として定量的に心理的特性を評価することを目的とした。70名の野球審判員を対象として審判の心理的スキルを評価するために開発された24項目(6因子×4項目)の質問紙を用いて、5件法で回答させた。その結果、各因子の平均点は、自己コントロール3.4±0.7点、表出力3.6±0.6点、意欲4.4±0.5点、自信3.2±0.7点、コミュニケーション4.2±0.4点、集中力3.8±0.6点であった。審判資格の有無による違いを検討した結果(有資格者22名)、有意な差はみられなかったが、自己コントロールでは有資格者が約1点高い値であった。また、有資格者は得点と年齢および審判歴に有意な相関は示さなかったが、資格を保持しない審判員では自己コントロールと年齢に有意な正の相関がみられ、コミュニケーションおよび集中力と年齢に正の相関の傾向がみられた。このことから、野球の審判有資格者は年齢や経験年数によらず心理的なスキルを保持していることが示唆された。

  • トップアスリートにおけるスポーツ傷害の意味
    辰見 康剛, 坂口 尚希, 土屋 裕睦
    p. 131_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     【目的】トップアスリートを対象に負傷による競技中断に伴う心理的問題と、その背景について検討することを目的とした。【方法】1名を対象に約60分間の1対1による半構造化インタビューを2回実施した。初めに負傷時から復帰直後までを5つの期間に分類、各期間について気分の変化、リハビリへの専心度、周囲からの支援などについて得点化をし、これらを基に聞き取りを行った。その後、全ての語りを逐語化し、カテゴリー別に分類、周囲との関わりなどを含めて考察を行った。【事例の紹介】男性、30歳、各年代の日本代表や全国優勝も3度経験。社会人になってからも日本のトップとして活躍をしていたが、海外へのチャレンジを目前に負傷、リハビリを実施したが目標期間内での復帰は叶わなかった。その後は心身症を発症、競技中断を余儀なくされた。【結果と考察】競技活動が自己そのものであり、その喪失感は計り知れない。また、その背景にはトップアスリート特有の周囲からのプレッシャーや自己欲求の高さなどが影響していると推察された。負傷後は身体だけではなく、心理的な支援も必要であると報告されているが、本事例によりその必要性を改めて認識することとなった。

  • 引退後のキャリアビジョンに困惑するアスリートを対象に
    豊田 則成
    p. 131_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、アスリートが引退後のキャリア形成に向けてのどのような体験をしているのかについて、個性記述的なモデルを提示し、検討することにある。本研究の対象となったアスリート(女性:年齢不詳)は、国内トップ級の競技実績を有するものの、競技成績の不振から競技引退に直面してく中で、自身の引退後のキャリア形成について困惑していた。そこでのリサーチクエスチョンは、「アスリートは自身のキャリアをどのように語るのか」と設定した。そのような中、1対1形式の半構造化インタビューが、10ヶ月間に10数回実施された。各セッションは1~2時間程度で、予め承諾を得た上で、会話の内容をICレコーダーに収録した。その後、その音声を逐語化し、インタビュー資料と位置づけることとした。次に、このインタビュー資料についてM-GTA(修正版グラウンデッドセオリーアプローチ)を用いて分析を行った結果、14カテゴリーを生成するに至った。このように、本研究は構造構成主義(西條、2008)の立場から質的な分析を行い、アスリートのキャリア形成に伴う心理変容プロセス(仮)を構築し、発展継承可能な仮説的知見を導き出すことを目指している。

  • 大久保 瞳, 高井 秀明, 坂部 崇政
    p. 132_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、タイムプレッシャー(以下:TP)がN-back課題遂行時の処理資源に及ぼす影響を事象関連電位(以下:ERP)から検討することを目的とした。実験参加者は、体育専攻学生10名(平均年齢:20.21 ± 0.79歳)であった。課題には、TPの有無の両条件下でN-back課題(0—3back課題)を利用した。TPあり条件では制限時間を550msとし、実験参加者には制限時間内に反応できなかった場合にフィードバック音が鳴ることを事前に教示した。制限時間については、白石・宮谷(2005)のTP研究での中程度のTP(550ms)を採用した。一方、TPなし条件では制限時間を教示せず、次の刺激に切り替わるまでに反応できなかった場合にはフィードバック音が鳴らないよう設定し、できる限り速くかつ正確に反応するよう事前に教示した。そして、両条件ともに課題遂行中のERPを測定した。その結果、行動測度である反応時間は、TPによって有意に短縮し、TPによって正答率は有意に低下した。生理指標であるERPをみると、TPあり条件はTPなし条件よりP300振幅が有意に増大した。以上から、TPという負荷が加わることで、課題遂行時により多くの処理資源を要していることが明らかとなった。

  • 物体の運動予測における見越距離短縮錯覚のメカニズム解明の一考察
    新井 健之, 竹市 勝
    p. 132_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     球技に必要とされる捕捉動作(捕球や打球)では、物体の運動知覚が必要となる。さらに、身体の運動制御を行うために一定時間が必要であり、物体の運動知覚情報を基に、物体の運動予測を行う必要がある。我々は物体の運動予測において、距離を呈示した時刻予測(TTCや速度見越検査など)はほぼ正確に回答できるが、時間を呈示した距離予測は大幅に短く錯覚することを報告し、この錯覚を、見越距離短縮錯覚(予測速度低下減少と同等)として報告している。運動予測実験における呈示時間と予測距離には強い正の相関があり、回帰直線で近似される。傾きが呈示物体の運動速度よりも著しく小さいことから、あたかも予測している物体の運動速度が低下しているかのようになる。その際、回帰直線の切片は、ほぼ正の値となり、物体消失後の進行方向への位置錯覚であるRepresentational Momentum同様の現象、もしくは、遮蔽開始時刻を錯覚している可能性がある。そこで本研究では、遮蔽開始時刻を回答させることにより、遮蔽開始時刻の錯覚を確認した。結果、遮蔽開始時刻(75試技平均)は、-0.015 ± 0.026 s(n=7)とほぼ正確に回答でき、遮蔽開始時刻の錯覚では無いことが示唆された。

  • 髙野 淳司
    p. 132_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は高等専門学校の学生を対象に、運動部に所属し日常的に活動している群(運動群)と特に日常的に運動を行っていない群(非運動群)に分け、視空間性ワーキングメモリテストの正答率の差の比較を試みた。視空間性ワーキングメモリの評価にはn-backテストを使用し、その正答率を対応のないt 検定で比較した結果、運動群と非運動群に正答率の差は見られなかった。次にn-backテストのバック数による差について検討を試み、「日常の運動経験(運動群、非運動群)」、「バック数(1、2、4バック)」を各要因とし、2元配置の分散分析および多重比較を行った結果、両群ともにバック数が増加するに従い正答率が下がり、2バック条件でのみ運動群と非運動群の正答率に差が見られることがわかった。正答率に差が見られた2バック条件での成績と身体的特性(身長、体重)および新体力テスト各種目の成績の相関をみたところ、両群においていずれも相関はみられなかったことから、2バック条件での成績差は身体的特性あるいは特定の運動能力による影響によるものではなく、日常の運動量の影響が大きいことが示唆された。

  • 井川 純一, 水落 文夫, 鈴木 典
    p. 133_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     クロスカントリースキー競技は、コースに応じて効率のよい滑走動作を選択することが競技パフォーマンスを規定する要因の1つとされる。選手は効率のよい滑走動作を獲得するために、自身で感じる滑走感覚(感性)と実際の滑走動作との差異を探りながら滑走する。感性とは「複数の情報を統合して、無自覚的に、瞬時に状況に合った判断を行う能力」と定義される(三浦、2006、2010)。クロスカントリースキーレースで、選手は変化する競技環境の中で長時間の滑走を行うため、その滑走に関わる感性が、効率のよい滑走を実現するために重要となる。そこで本研究では、クロスカントリースキー選手が重要視している滑走に関する感性の要素を面接法により調査した。また、語りの内容からレースにおける滑走動作の映像解析項目を設定し、感性と実際の滑走動作との誤差を検討した。その結果、成績上位選手と下位選手では、感性を基にした自身の滑走動作の評価と映像解析による動作の変化との関係に差異があり、それが競技パフォーマンスにも影響を与えていると示唆された。本報告では、ほとんどの選手が重要視していた身体重心と腰のポジションに関わる感性を中心に分析結果を報告する。

  • 小谷 泰則
    p. 133_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     ウエイトリフティングにおいてはバーの軌跡を視覚的に捉えることができれば、フォーム改善に用いることができる。しかしこの様な映像システムは高価であり入手が困難である。本研究では、バーの軌跡を描けるようなアプリケーションを開発し、ウエイトリフティングの選手がこれらを容易に入手できるようにすることを目的とした。アプリケーションはiPhone用とMac用の2種類を開発した。アプリケーションでは、バーの軌跡・移動距離・速度等を表示できるようにした。作成したアプリケーションの一部は無料でダウンロードできるようにし、ウエイトリフティング選手が容易に用いることができるようにした(AppStore: WeightLifting Motion、WeightLifting Motion X)。これまでは高額であったバーの軌跡を描くシステムを安価に提案できるシステムを構築することが可能になった。

  • 金城 岳野, 菊池 諒, 西 純平, 岡本 直輝
    p. 133_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     これまで、バッテリー間で意識の差が生じる場面が存在する。指導者は、試合中のピンチを防ぐためにバッテリーでの意識および目的についての意思疎通を向上させるような指導を行う必要がある。指導者は技術指導や戦術確認のために映像を用いて指導することによって、選手らの技術向上や内容の理解につながると報告されている。しかし、ピンチ場面を回避する意思疎通の向上を目的とする映像を用いたミーティング及び練習法については報告されておらず確立されていない。そこで本研究は、バッテリーを対象とした試合映像を用いたミーティング法を考案し、その効果について検討することを目的とした。野球選手(バッテリー)を対象に、試合から抽出した場面についてミーティングを行った。場面の抽出について、鳥越(2014)の状況別得点確率に基づいて場面抽出を行った。試合の中で生じた場面の中から得点確率が50%以上を示す場面と最も得点確率が低かった場面に抽出し、バッテリーに画像を見せ、それぞれの場面についての危機感や意識について質問紙を用いて回答させ、その効果について検討する。

  • 増澤 拓也
    p. 134_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     近年様々なバランストレーニングが行われているが、その中の1つとしてスラックラインと呼ばれる2点間に張った平たいテープ上でバランスをとる綱渡りのようなスポーツが、バランス能力を向上させるトレーニングとして注目されている。また、姿勢安定には体幹部の堅牢性が重要視されており、体幹部のトレーニングとして自重を用いた不安定環境にて負荷をかけるサスペンショントレーニングに関心が集まっている。本研究の目的は、スラックラインを用いた基底面動揺トレーニングおよびサスペンショントレーニングを用いた体幹トレーニングが姿勢安定性向上に及ぼす影響を明らかにすることである。実験参加者を基底面動揺トレーニング(BT)群と体幹トレーニング(CT)群に配置し、週3回のペースで合計10回のトレーニングを実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。BT群では体幹部を積極的に動かすことで姿勢制御し、CT群では体幹部を動かないように保持することでバランスを安定させることが示唆された。

  • 伊藤 友記, 得居 雅人, 仲里 清
    p. 134_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     野球の指導現場では、投手や野手に「相手の胸やミットをめがけて投げること」、即ち目標とする標的を注視することがよく強調される。しかし、大学生及びプロ投手を対象とした投球時の視線探索に関する実験からは、投球時に必ずしもミットを注視し続けているわけではないことも示唆されている(仲里ら、2013)。それが投球技術の習熟や洗練によってもたらされるのか、技術習得の初期においても指導法の中で意識させるべきポイントなのかは検討の余地があろう。まずは、現場における指導法の実態、特にジュニア期の野球指導者が投手の投球時の視線配置をどのように指導しているのかを明らかにすることは、今後の投手育成に有用な情報をもたらすものであろう。F県内のジュニア期チームの野球指導者(274名)を対象としたアンケート調査の結果、投球技術を指導する際の特に視線に関するポイントは、①捕手を注視させる(73.1%)、②捕手または打者をぼんやり意識させる(23.1%)、③バッターを目標物として意識させる(3.7%)、であった。これより、ジュニア期の投手の投球技術指導において、捕手を注視させる指導が多く行われている実態が明らかとなった。

  • 林 悠子, 松本 清, 佐久間 春夫
    p. 134_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     運動イメージを想起する際、自分自身がその運動を行っている内的視点イメージ(一人称イメージ)と、自分自身がその運動を行っているのを第三者的に見ているような外的視点イメージ(三人称イメージ)が存在し、これらのイメージの効果は運動学習の重要な鍵となることが知られている。本研究では、運動部に所属する健康な女子大学生56名(バスケットボール部26名、ソフトボール部30名、18~21歳)を対象に、運動イメージ質問紙JMIQ-R(Movement ImageryQuestionnaire-Revised日本語版;長谷川、2002)を用いて、イメージ想起の際の体験イメージ(すなわち内的視点イメージ)と観察イメージ(すなわち外的視点イメージ)のタイプを調査した。総合得点はバスケットボール部(49.13 ± 7.21点)とソフトボール部(48.08 ± 5.42点)で所属部間に差は見られなかったが、さらに、モーズレイ性格検査(MPI)による個人の性格特性やこれまでの運動経験等から、運動イメージ想起能力としてのイメージの視点について特徴を分析した。

  • 大林 和香那, 中田 大貴
    p. 135_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     スポーツ選手が競技中に受けるストレスは心理的なものだけではなく、観客からの声援や野次等の環境ストレスも、その内の一つに挙げられる。背景音(ホワイトノイズ)とパフォーマンスとの関連性において、中程度の大きさのホワイトノイズによって記憶パフォーマンスや認知機能が向上することが示されており、その原因は、ノイズによって信号が強まり、脳活動が向上する現象である「確率共鳴」によるものであるとされている。本研究では、スポーツ活動における、ホワイトノイズと運動パフォーマンスとの関係性に関する基礎的な神経メカニズムを明らかにすることを目的とした。被験者は3条件(35dB、55dB、75dB)のホワイトノイズを聞きながら体性感覚刺激Go / No-go課題を行い、その際の反応時間などの行動指標と事象関連電位を測定した。その結果、N2d成分の振幅において55dB条件が75dB条件よりも有意に大きくなった。このことから運動抑制過程において、55dB条件でホワイトノイズによる確率共鳴が起きることが示唆され、その原因は中脳黒質/腹側被蓋領域から分泌されるドーパミンであると推察された。

  • 田中 雅人
    p. 135_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     運動の実践や指導場面において、ことば(記号表現)による動きのイメージの形成が重要な役割を担っていることから、本研究では、動きの調節をあらわすことばと力学的変数との関連性を検討した。実験参加者は1軸ストレインプレート上に立ち、モニターに呈示された動きの空間的・時間的・力動的調節をあらわす18のことばをイメージして跳躍動作を行った。その後、動きの調節の難易度について回答した。跳躍高(空間的変数)において、空間的なことばによる差異がみられ、力動的なことばでも同様であったが、時間的なことばでは差異がみられなかった。また、「ちいさく」「はやく」では値のばらつきが大きく、「おおきく」「たかく」では小さかった。動き始めから離床までの時間(時間的変数)の違いから「ゆっくり」「ゆるやかに」「しずかに」「やわらかく」などの時間的・力動的なことばは、動きの時間的調節に関わっていることを示したが、空間的なことばには同様の傾向はみられず、ことばによるイメージ形成の特徴が明らかとなった。なお、難易度の評価は、空間的なことばで低く、「ゆるやかに」「なめらかに」などの円滑さを表すことばで高くなる傾向がみられた。

  • 沖 佳織, 筒井 清次郎
    p. 135_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     筋運動感覚残効と呼ばれている錯覚は、スポーツや運動場面において古くから知られており、スキル習得やパフォーマンスに密接に関係する。しかし、走トレーニングにおいて使用されるトウ・トレーニングは牽引の適正強度と即時効果に関する検討がなされていないのが現状である。このことから負荷の異なるトウ・トレーニングを行うことによって生じる筋運動感覚残効が、パフォーマンスと心理面に及ぼす影響について検討することを目的とした。トウ・トレーニング前後に実施したプレテスト及びポストテストでの全力疾走(50m)のタイムを測定し比較した。トウ・トレーニングでの負荷は適正牽引力を推定する目的で、個々が心地よいと感じる負荷を適正負荷とし、その適正負荷-1mを弱め、適正負荷+1mを強めと設定し、3種類の牽引力を設定した。また参加者に筋運動感覚残効について、ポストテストはプレテストに比べて、走りやすくなったか、速くなったと感じたか、についての5段階の主観的判断を求めた。実験の結果、負荷の異なるトウ・トレーニングを行うことによってパフォーマンスの即時効果は見られなかったが、心理面では走りやすく速く走れたと感じることが示された。

  • 手・足写真刺激を用いた課題から
    上田 遥菜, 成瀬 九美
    p. 136_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     メンタルローテーション(以下MR)は、頭の中で思い浮かべたイメージを回転させて操作する心的活動である。身体部位を用いたMRでは運動イメージが関与し、実際に姿勢をとることが難しい生体力学的な制約が生じる角度では反応時間の延長が報告されている(積山、1982)。本研究では、手(背・掌)・足(背・底)の写真を刺激とするMR課題を行い、運動イメージの関与について反応時間を比較し検討する。被験者は、健常な女子大学生および大学院生31名(平均年齢21.5歳)のうち右利きである者を対象とした。MR課題の刺激として、それぞれの左右の写真を60°ずつ回転させた画像を用いた。結果、手足の背側の反応時間は生体力学的制約の影響を受けず180°を頂点とする対称的な山形となり、文字刺激を用いたMR課題の特徴と類似した。一方、掌・底側刺激の反応時間は背側と比較して延長し、橈屈方向の回転角度においてその傾向が顕著であった。この異なる傾向から、日常的に目にする頻度が高い背側のMRには視覚的運動イメージが用いられたと考えられ、視覚的経験が少ない掌・底側のMRにおいては、筋感覚的運動イメージが用いられたと考えられる。

  • 自律神経と主観的運動強度への影響
    飯塚 駿, 遠藤 俊郎, 池田 志織, 田中 博史
    p. 136_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究はスポーツにおける音楽聴取によるメンタルマネジメントに関する一資料を得ることを目的とした。女子大学生競技者18名(競技名:バレーボール8名、剣道5名、陸上競技5名、平均年齢:19.44±1.3歳、平均競技経験年数:9.77±3.07年)を対象とした。これらの被験者に対し音楽を聴きながら自転車運動をする音楽聴取実験と自転車運動のみの無聴取実験を実施した。また、自律神経の測定方法として自律神経測定器TAS9 VIEW(YKC社)を使用し、主観的運動強度の測定法としてBorg G、(1970)のRPEスケールを使用した。その結果、交感神経活動指標において無聴取実験より音楽聴取実験の方が高い傾向が認められ、運動後の主観的運動強度は、音楽聴取実験より無聴取実験の方が有意に主観的運動強度が高かった。このことから、音楽の効果は生理心理的効果のみならず運動パフォーマンスや身体的な影響への可能性があると推察される。

  • プレッシャー下のプレーに着目して
    富岡 亜祐美, 水落 文夫
    p. 136_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     試合中のプレッシャーを受ける場面では、強いプレッシャーによる感情の変化とプレーの精度の低下が考えられる。例えば、周囲の期待を感じながら、短い時間の中で実行される選択的注意と判断の認知プロセスは、それらのプレッシャーによる感情の変化に影響される。そして、選手は様々なプレーの選択肢がある中で、リスクの高いプレーを選択しやすいといわれる。本研究では、関東学生ラクロス2部リーグに所属する女子ラクロス選手22名を対象とし、試合中の選手のシュート場面の気分状態を評価した。その気分状態とプレー選択の正誤(対象選手22名による正選好—誤選好の5件法判定)との関係を検証した。そして、試合終盤の時間帯、点差、試合序盤1本目のシュートの状況が選手へのプレッシャー要因になりうるとして、それらが気分状態に変化を与え、その変化がプレー選択に影響を与えるかどうかを検討した。その結果、3つのプレッシャー要因の状況で、気分状態の低下とプレー選択の誤選好の傾向が認められた。それらの状況が選手にプレッシャーを与える要因となり、気分状態の変化とともに、選手にリスクの高いプレーを選択させたと示唆される。

  • 大学生アスリートを対象として
    熊谷 史佳, 菅生 貴之
    p. 137_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、競争場面における「優勢」と「劣勢」のどちらの状況の認知がその後の競争課題に対するフロー感覚とそれに伴うパフォーマンスを促進させるのかを検討することを目的とした。実験対象は大学生アスリート40名であり、2人1組でタッピング課題を実施した。課題は2回行い、TASK1終了時に結果のフィードバックを行い、優劣状況を認知させ、TASK2の課題を開始した。パフォーマンスの指標にはタッピングの回数を、フロー感覚の評価には、Sport Flow Scale(谷木・坂入、2009)を用いてTASK1、TASK2の比較を行った。その結果、パフォーマンス指標では、競争中の状況を「優勢」、「劣勢」のどちらの認知をしてもTASK1からTASK2にかけてタッピング回数が有意に増加した。しかし、フロー感覚は、競争中の状況を「劣勢」と認知した実験参加者のみ、TASK1からTASK2にかけてフロー得点が有意に増加した。このことから、競争場面において、対戦相手と同等のパフォーマンスを発揮したとしても、優劣状況の認知の違いにより得られるフロー感覚は異なり、競争状況を「劣勢」と認知した方が次のパフォーマンス発揮時により高いフロー感覚を得ることが示唆された。

  • 深見 将志, 柴原 健太郎
    p. 137_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     今日のスポーツメンタルトレーニング(以下、SMT)では、ピークパフォーマンス(以下、PP)を理解するための教示のひとつとして逆U字理論が用いられている。競技場面においては、選手の感じる緊張度が高すぎても、低すぎてもPPを発揮することが困難とされている(日本スポーツ心理学会、2005)。またPPは、競技や個人によっても異なることが報告されている(上田、2000)。これらを鑑みると、選手が求めているサポートの構築には、選手自身がPPを把握することはもちろん、さらには選手をサポートするスタッフが選手のPPを把握することが必要となろう。しかしながら、これまでのSMTに関する報告には、PPを評価しSMTへ取り入れたものはみられない。このことから、選手のPPを理解する評価シートを作成することは、SMT研究の新たな試みといえる。本研究では、A大学運動部に所属する大学生を対象にアンケート調査を実施し、逆U字理論を用いたPP評価シートの作成、ならびに信頼性・妥当性の検討について報告する。

  • 状態自尊感情を媒介変数として
    山越 章平, 土屋 裕睦
    p. 137_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、特性的反すう・省察がストレス反応、および主観的幸福感に与える影響を状態自尊感情が媒介するというモデルについて構造方程式モデリングを用いて検討した。対象者は170名の大学生アスリートであった(男性120名、女性50名、平均年齢19.35歳)。共分散構造分析の結果、GFI=.93、AGFI=.87、CFI=.95、RMSEA=.08であった。否定的な情報に繰り返し注目していることを特徴とした反すうは直接的にストレス反応に正の影響を与え、主観的幸福感に負の影響を与えていた。また、反すうは状態自尊感情に負の影響を介してストレス反応に正の影響を、主観的幸福感に負の影響を与えていた。一方の、自己に関する新しい認知の探究を目的とした省察は、直接的に主観的幸福感に正の影響を与え、さらに状態自尊感情に正の影響を介すことで間接的にストレス反応に負の影響を、主観的幸福感に正の影響を与えていた。これらの結果から、反すうが高い、または省察が低いアスリートにおいては、状態自尊感情を高めることでメンタルヘルス向上に繋がる可能性が示唆された。

  • 新海 陽平, 荒牧 勇
    p. 138_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、脳構造の特徴が精神力のバイオマーカーになる可能性を検証するために、アーチェリー選手の試合での実力発揮能力と脳の灰白質容積の関係を調べた。22名のアーチェリー選手について、MRIを用いてT1強調画像を撮像した。試合時の最高得点(CS)と練習時の最高得点(PS)を取得し、試合時のスコア低下(Decrease in score in a competition, DSC)を(CS-PS)/PSとして計算し、実力発揮能力の指標とした。Voxel based Morphometryの手法を用いて、脳の灰白質容積とDSCの相関を解析した。加えて、心理的競技能力の質問紙(DIPCA.3)とDSCの相関も調べた。解析の結果、左右島皮質において、DSCとの有意な負の相関がみられた。これは、島皮質の容積が大きい人ほど、試合での実力発揮が阻害されることを示している。一方、DIPCA.3の点数とDSCの相関はみられなかった。本研究は、島皮質の灰白質容積が、試合での実力発揮能力を予測するブレインバイオマーカ—となり、質問紙と比較してより客観的な評価を行える可能性を示した。

  • 山本 浩二, 島本 好平, 永木 耕介
    p. 138_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、柔道授業における学習内容の順序が学習成果に与える影響を検討することであった。調査は、柔道初心者の中学1年生2クラス61名(男子:36名、女子25名)において、2015年の秋季に授業担当教諭(教育歴20年以上、専門的な柔道経験なし)と本研究者(柔道4段)が共同で実施した8時間の単元後に、生徒の心理社会的学習成果(護身・協同学習・礼儀作法・学習規範の遵守)を評価する20項目を用いて実施された。また、調査対象の2クラスのうち、1クラスは単元序盤に「投げ技」、終盤に「固め技」を実施し(投げ技開始群)、もう一方は反対に「固め技」、「投げ技」の順序で実施し(固め技開始群)、単元後の学習成果をt検定によって検討した。その結果、学習成果の全てで「固め技開始群」の得点が「投げ技開始群」よりも高く、特に「護身」と「学習規範の遵守」においては有意差が認められた(護身:t(59)=2.91、p<.01、学習規範:t(59)=3.48、p<.001)。学習成果の護身は相手の様々な動きや技に対応する、学習規範の遵守は授業中のルール等の遵守をそれぞれ表しており、これらの学習成果は単元序盤に「固め技」を学習した生徒の方に得られていることが示された。

  • 奥田 愛子, 中込 四郎
    p. 138_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     後年の競技へのコミットメントの様式と自伝的記憶(原風景、スポーツ原体験、等)との関係性について明らかにすることを目的として、これまで本研究者らは多様な角度から検討を加えてきた。本研究では、成人期まで同一のスポーツキャリア経験(ともに同一種目において思春期から大学卒業後の企業所属のアスリートとして活躍)を重ねてきた2組(A・B)の一卵性双生児アスリートの自伝的記憶について、質問紙ならびに面接を通してその特徴を検討した。その結果、2組の双生児間での原風景は同一で、それは高い力動性を伴う活動であり、相互のかかわり合いが認められる内容であった。また、スポーツ原体験では達成感や競合へのモチベーションの体験が語られ、幼少期の体験をその後の身体活動への興味関心へとつなげていた。つまり、後年まで継続されるキャリアと同様に自伝的記憶においても強い重なりが認められた。さらに競技キャリアでの双生児間の関係性について、「一人よりは二人の方が頑張れる。心強い存在」(A)、「二人で一緒に頑張るという姿勢はずっとある。<略>お互いにライバルという感じはなかった」(B)と語っており、そこでもまた重なりが認められた。

  • 資質的・獲得的レジリエンスの観点から
    榎本 恭介, 金城 光, 荒井 弘和
    p. 139_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究の目的は、スポーツ経験と資質的・獲得的レジリエンスの関連を検討することである。本研究では、レジリエンスを資質的・獲得的観点から測定する平野(2010)の二次元レジリエンス要因尺度、スポーツ経験を質的に測定するための葛西・澁江・宮本・松田(2010)のスポーツ成長感尺度、また、スポーツ経験を量的に測るために部活動やクラブに所属しスポーツ活動を行った年数、その他行っていたスポーツの種目などで質問紙を構成した。対象者は部活動もしくはクラブなどに所属し、1年以上のスポーツ経験のある大学生または大学院生175名(男性89名、女性86名)で、平均年齢は21.37歳、SDは1.26であった。分析の結果、スポーツの経験年数と資質的・獲得的レジリエンスに相関は見られず、スポーツ成長感と資質的レジリエンスには中程度の相関が見られた。このことから、ただスポーツ活動年数を重ねる、というスポーツの量的な部分は2つのレジリエンスと関連せず、スポーツ活動を通した成長感と資質的レジリエンスの関連が示された。

  • 二重課題を用いて
    成瀬 九美
    p. 139_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     身体的コミュニケーションの特徴はコミュニケーションを媒介するチャンネルの多様さと発信者が受信者になる双方向性や同時性である。近年、音楽演奏や演劇における即興性に着目し協調パフォーマンスに及ぼすリーダーやフォロアーの役割を実験的に分析する研究がみられる。本研究は二者の協調動作時に、リーダー・フォロワーの役割をあらかじめ決めておいた場合と、役割を決めない場合のパフォーマンスを、回転盤を回転する課題を主課題、ランダムに発生する刺激音に対してボタンを押す反応課題を従課題とする二重課題を用いて比較した。性格検査としてENDCOREsとMPIを実施し、各条件における回転速度および反応時間との相関を求めた。役割あり・フォロアー条件(相手の速度に合わせる)時の回転速度の変動係数は高く反応時間は遅かった。リーダー(自分の速度を保持する)との回転速度差の大きさ、つまりフォロワー役を与えられた場合のパフォーマンスの悪さ(同調しにくさ)と「自己主張」スキルの高さとの間に正の相関が認められた。役割なし条件時の反応時間が長い人、つまり主課題への集中が高い人は「自己主張」「自己統制」やMPIによる「外向性」が低い傾向が得られた。

  • 指導者の志向性からの検討
    平山 浩輔, 高井 秀明
    p. 139_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     運動部活動は運動部員が自主的に取り組む中で人間的な成長を図る教育活動である。しかし、運動部経験者が指導者から勝利を志向した指導を受けた場合、プロセスを志向した指導を受けた場合より社会的スキル得点が有意に低かった(平山ら、2015)。この結果は指導者の志向性が運動部経験者に影響を与える可能性を示した。では、運動部経験者は指導者の志向性についてどのような印象を抱いているのだろうか。そこで、本研究は指導者の志向性が運動部経験者の対人認知に及ぼす影響について検討することを目的とした。調査は2015年7月から2016年4月にかけて首都圏の大学4校で実施した。分析対象者は高校時において運動部に所属していた大学生1056名であった。その結果、運動部経験者は勝利を志向する指導者よりプロセスを志向する指導者に対して「人がよい」「社交的」などの肯定的な印象を示した。しかし、運動部経験者はプロセスを志向する指導者より勝利を志向する指導者に対して「短気」「不親切」などの否定的な印象を示した。よって、運動部経験者はプロセスを志向する指導者を肯定的に認知し、勝利を志向する指導者を否定的に認知していることが明らかとなった。

  • 鈴木 郁弥, 荒井 弘和
    p. 140_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
    会議録・要旨集 フリー

     医療機関に受診していないアスリートの存在が報告されている(飯出ほか、2012)。こうした問題の背景には対人的な問題が関連していることが指摘されている(Kroshus et al、2015)。そこで本研究では、アスリート間の心的距離と受傷した際の意識に関連が見られるかを明らかにすることを目的とした。体育会部活動に所属する大学生345名を対象としてそれぞれ個別に調査をおこなった。その結果、チームメイトが受傷した場合には、ポジティブ意識とチームメイトとの心的距離との間に有意な相関が見られ、受傷したチームメイトとの心的距離が近いほどチームメイトを気遣う意識を抱くが、否定的な意識は対象との心的距離に関わらずほとんど抱かれないことが示された。一方、自分が受傷した場合では、ポジティブ意識・ネガティブ意識の両方において心的距離と有意な相関が見られ、チームメイトとの心的距離が近いほど自分が心配されていると感じ、また心的距離が遠いほど自分が否定的に思われていると予測していた。

  • 中澤 史
    p. 140_2
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     中澤・上野(2015)の研究では、半期で15回実施するスポーツ演習の授業プログラムが受講生の社会的スキル向上に資する可能性が示された。しかし、1週間に1回実施する授業では、受講生の社会的スキル向上に資する他の要因の影響力が無視できない。本研究では、社会的スキルの尺度としてKikuchi's Scale of Social Skills(以下KiSS-18、菊池、1998)を用い、50名の受講生(男性21名、女性29名、平均年齢18.18 ± 0.56歳)を対象に社会的スキルに影響すると思われる環境要因とKiSS-18との関連について検討した。種々の環境要因とKiSS-18との関連を検討するためにPearsonの積率相関係数(r)を算出した結果、スポーツ演習の授業プログラムとKiSS-18の総得点、問題解決、トラブル処理、コミュニケーションとの間で正の関連が確認された。また、大学での交友関係とKiSS-18の総得点、問題解決、コミュニケーションとの間で正の関連が確認された。このことから,スポーツ演習の授業プログラムも受講生の社会的スキル向上にポジティブな影響を及ぼす可能性が示唆された。

  • 近藤 みどり
    p. 140_3
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     スポーツには誇りを喚起する多くの場面がある。有光(2007)によれば、誇りとは「優れた目標の達成など他者から賞賛を受けるような自分または他者の成功の結果生じる自己効力感の高まりと穏やかな興奮を伴う肯定的情動」と定義されている。誇りには個人に対して感じるもの(Herrald & DeSteno、2008)と集団に対して経験するもの(Hart & Matsuba、2007)がある。スポーツ場面では、選手はチームに所属していることが多く、さらに集団スポーツでは集団の誇りを喚起する場面が多いと考えられる。スポーツを通じて喚起される誇りは比較的身近な感情であるが、その喚起状況は未だ明らかにされていない。そこで、本研究では体育系大学生を対象に、誇りを経験した出来事について記述を求め、スポーツにおける誇りの喚起状況について検討し、個人と集団の誇りについて考察した。

  • 性別に着目して
    除補 千可保, 壺阪 圭祐, 島本 好平
    p. 141_1
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/24
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     本研究は、高校生年代のアスリートを対象とし、運動部活動におけるどのような経験が、高校生アスリートのレジリエンス(Resilience:以下、R )に影響を与えるのかについて検討することを目的とした。対象は兵庫県内の高校生アスリート236名(男子147名、女子89名)(有効回答率86.8% )であった。調査内容はRを測る尺度として、小塩ら(2002)が作成した精神的復力尺度、運動部活動の経験を測る尺度として、島本・石井(2008)が作成した運動部活動経験評価尺度を用いて、2015年11月に実施した。重回帰分析にて検討を行った結果、男子学生のみにおいて、運動部活動経験の「周囲からのサポート」が、Rの「新奇性追求」に正の影響を与えていることが示された(β= .21、p< .05)。男性の脳にある脳梁は女性に比べ細いため、男性はより論理的に物事を考える傾向にある(林、2010)。そのため男性は周囲からのサポートを受けることにより、論理的に理解し、様々なことにチャレンジするという「新奇性追求」に結びついたと考えられる。女性に関しては特質した正の影響関係は見られなかった。

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