一般および簡易臨床検査所見の質的データによっては, 数量化理論II類の方法を応用することにより, 血液生化学的検査所見の量的データによっては重判別分析法を応用することにより, それぞれ乳牛の肝臓脂肪沈着が診断できることをすでに報告した。今回, 数量化理論II類の判別分析で得られる個体得点 (サンプルスコアー) を用いることにより質的データを量的データに変換した。そして, すべての検査所見を総合的に解析することにより, より精度の高い診断法を求めることを第一目的とした。さらに, 臨床に応用が可能な診断法とするために, 逐次データを追加しながら段階的に診断することを第二目的とした。
段階的に検査項目を追加しながら4つの判別式を作成し, その診断精度を調べた。一般および尿検査17項目の所見を用いて作成した判別式Iの調査牛による正診率は69.2%, 新たな個体による正診率は53.3%であった。簡易血液検査所見4項目を追加して作成した判別式IIの調査牛による正診率は78.5%, 新たな個体による53.3%であった。判別式IIで求めた個体得点にT.Bil値を追加して作成した判別式IIIの調査牛による正診率は77.9%, 新たな個体による正診率は60.0%であった。さらに, GOT値を追加して作成した判別式IVの調査牛による正診率は79.5%, 新たな個体による正診率は64.4%であった。この結果, 質的データに量的データを逐次追加しながら総合的に診断することによって診断精度は臨床への応用が可能な程度に高まったと考える。
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