一般的に見られる臍帯出血とは異なる症状の新生豚の臍帯出血が, 管内の一農場で集団的に認められ, 大きな被害を及ぼしたので, その発生状況, 臨床症状および血液検査所見について検討した。発生農場は, 管内で繁殖雌豚350頭飼養している一貫経営の養豚場であり, 1994年6月から1995年2月までに, 547腹中223腹 (40.8%) に臍帯出血が認められ, 83頭の新生豚が出血死した。疫学調査の結果から, 遺伝性疾患や感染症が原因とは考えられなかった。新生豚は, 出生直後は臨床的に異常は認められず, 臍動脈の収縮も良好であった。しかし, 次第に臍帯の腹側端から臍帯が充血し, 出生後1時間34分±45分で臍帯の断端から出血を認めた。その後, さらに充血が進行し臍帯は膨らみ, 断端のみならず臍帯の損傷部からも血液が漏出するようになった。血液凝固能検査では血小板, 出血時間, 凝固時間, APTT, およびPTは正常であったが, ブイブリノーゲンの減少が認められた。また, 病理学検査ではなんら異常は認められなかった。以上のことから, 本症の直接の原因は, 胎児期のブイブリノーゲンの不足による血液凝固不全であると思われた。
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