日本海洋学会誌
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24 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 加藤 喜久雄, 北野 康
    1968 年24 巻4 号 p. 147-152
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    20℃における海水中の無定形ケイ酸の溶解度は85mg-SiO2/lで, 蒸留水の113mg-SiO2/lよりは小さい. 溶解速度は溶液に存在するケイ酸の量と溶解度に制約される. 海水における溶解速度は蒸留水におけるより遙かに大きい. 溶解速度が大きいときは, 溶解過程において無定形ケイ酸の溶解量は極大値を示すことを知った.
    海水と蒸留水中における溶解度と溶解速度の違いは溶液のpHにはよらず, 溶存塩の量および種類によるものと思われる.
  • 角皆 静男, 西村 雅吉, 中谷 周
    1968 年24 巻4 号 p. 153-159
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    海水のカルシウムおよびマグネシウム含量を測定した. 西部北太平洋において, 平均濃度は, 塩素量19.00‰の海水で, カルシウムについて0.4049g/kg, マグネシウムについて1.2684g/kgであった. また, カルシウム/塩素量比, マグネシウム/塩素量比の平均値は, 0.02131および0.06676であった. カルシウム/塩素量比は深さと共に増大するばかりでなく, 表面水でも水塊によって異なることがわかった. それゆえ, カルシウム/塩素量比は水塊のトレーサーとして使うことができる. そのような傾向はマグネシウム/塩素量比ではみられなかった.
  • 山本 善一
    1968 年24 巻4 号 p. 160-166
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    七尾湾西湾, 南湾, および北湾から採取した21個の浅海底土試料中の微量元素, ニッケル, コバルト, 銅, 亜鉛, 鉛, カドミウム, クロム, バナジウム, モリブデン, ジルコニウム, ガリウムを定量した. これらの微量元素のうち'ニッケル (平均値14±5ppm), コバルト (平均値6±2ppm), 亜鉛 (平均値51±7ppm), バナジウム (平均値39±6ppm), モリブデン (平均値0.5±0.3 ppm) は遠洋深海堆積物ほど, これらの浅海堆積物には濃縮されていない. ガリウム (平均値12±3ppm) は両堆積物中にほぼ同じ程度の存在量を示す. 鉛 (平均値55±6ppm) とジルコニウム (平均値101±46ppm) は本州, 朝鮮沿岸およびParia湾からの浅海堆積物に比較すると, 七尾湾堆積物にかなり多い点が注目される.
    また七尾湾浅海堆積物と深海堆積物の赤粘土を比べると両者のニッケルとコバルト含量に大きな差異があるにもかかわらず, Co/Niの比がほぼ一定であることがわかった.
    ニッケル, 亜鉛, ガリウム含量とアルミニウ含量との間には正の相関々係があり, またバナジウム含量と硫黄含量との間にも同様の関係が認められる.
  • 日高 孝次
    1968 年24 巻4 号 p. 167-172
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    粘性流体運動の方程式の変形に依り, 鉛直方向の流動すなわち, 湧昇流, 沈降流の速度と鉛直渦動粘性係数の鉛直変化を計算出来る式を導びいた. ただし, 海中の圧力分布と実測の水平方向の海流速度及びその水平傾度がわかっていることが必要である. この様な条件を満すものとして1961年赤道太平洋東部の数か所で行なわれたSwan Song探検で得た海流の直接測定結果を用い, この海域における湧昇流と沈降流の速度を計算した. 結果は連立方程式の解において分母が0に近くなるため誤差の方が大きく影響するためか, 性来正数であるべき鉛直渦動粘性係数に多数の負値が現れている. これを物理的に説明する人もあるが, ここでは数値計算の誤差, 海流と圧力傾度とが同時に測定されていないこと, また赤道域で海流の変動等が極めて激烈であること等が主な原因であろうと解釈しておきたい.
  • 古賀 文洋
    1968 年24 巻4 号 p. 173-177
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    九州北西海域において夏から秋に多数出現する暖水系種のU. vulgarisの3期のnaupliusをえた. これらのnaupliusがLEBOUR (1916), MARSHALL & ORR (1955), とSφMME (1934) 等が記載したC. finmarchicus, C. helgolandicusC. hyperboreus, そしてCAMPBELL (1934) が記載したC. plumchrusと同様, Fig. 1に示すように初期では1対のfeelersを持ち, 後期ではこのfeelersの外, end, lateralとventral hooks, や又多くの微細なとげを持つdorsoventral flexureを持つCalanus typeを示した. U. vulgarisのnauplius期の特徴は他のCalanus typeのnauplius同様, 第1触角の末節の刺毛の数によって決定される. 又各期におけるU. vulgarisの特徴については本論の中で述べ, 上記の種と共にkeyを与えた.
  • 日本海沿岸の高潮
    磯崎 一郎
    1968 年24 巻4 号 p. 178-190
    発行日: 1968/08/31
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1953年より1962年までの10年間の潮汐記録を用いて日本海沿岸の高潮の一般的特性を明らかにした.
    日本海沿岸では風の吹き寄せ効果は小さく, したがって海岸に直角方向に吹く北西風では顕著な高潮は起つていない. 海岸に平行に吹く強い南西風は岸に向かう水の輸送を強制し海岸で潮位が上昇する. 反対に, 強い北東風では沖に向って水の輸送が起り, 海岸での潮位は低下する. このような性質から, 目本海岸の顕著な高潮は台風や低気圧が日本海中部を南西から北東に通過する時に起っている. 気圧低下による潮位の上昇はほぼhydrostaticと考えてよい.
    東支那海方面から日本海に侵入する高潮があると, これは山陰沿岸を3~4m/secの非常に遅い速度で伝播する. これはROBINSON (1964) のshelf waveのモードで進む自由波であると考えるとよく説明される.
    台風が九州の南方約300km位に接近すると日本海沿岸全般に潮位の下降が始まる. 台風からの距離が非常に遠いので, 台風の直接の効果とは考えにくいが, その機構はまだよくわからない.
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