富栄養化の進んだ下田湾において, 湾内より湾外の黒潮反流域に至る6点で, ATP, 蛋白質, RNA, DNA, クロロフィルα, 全細菌数, 懸濁態有機炭素及び粗繊維の鉛直分布を調べた. クロロフィルα量および全細菌数は, 表層水中と稲沢川河口域で高く, ATPの分布とは必ずしも一致しなかった. これに対して, ATP, RNA, DNAおよび蛋白質はおおむね同じ分布様式を示した.
これら生体物質の測定値をもとに, 培養微生物で得られた変換係数を用いて, 海水中の微生物現存量を算出し, 各推定値間の比較を行った. 各推定値はおおむね同じオーダーであり, 特にRNAおよびDNAに基づく推定値はATPに基づく推定値とよい相関を示し, 富栄養化の進行した水域では核酸類を用いても一応微生物現存量の推定が可能である事が示された. ただし, この場合変換係数についてはさらに詳細な検討が必要である.
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