親潮海域がなぜ生産力が高いのか. この問題を定量的に解明するため, 塩分, 溶存酸素, 硝酸態窒素の鉛直分布, セディメントトラップで測定された懸濁物と沈降を釣合いの式にあてはめ, 年間平均の窒素の鉛直循環を解析した. 計算された深層における湧昇速度 (1.7×10
-5cm sec
-1) と鉛直拡散係数 (2.1cm
2 sec
-1), 有光層における一次生産 (44mgNm
-2day
-1) と二次生産 (4mgNm
-2day
-1) は既往の値とほぼ一致した. 計算された窒素の鉛直循環からは, 深層大循環による補給 (6mgNm
-2day
-1) に伴い, 表層から中層にかけて他海域への分散 (5mgNm
-2day
-1) が生ずるので, ニュープロダクション (22mgNm
-2day-
1) は懸濁物の沈降 (10mgNm
-2day
-1) と溶存有機物と懸濁物の鉛直拡散 (7mgNm
-2day
-1) の和を必ず上回ることが推察された. また, 深層大循環, 冬季の対流混合, 中・深層における生物活性の有光層における生物生産を維持するために果たす役割が, 定量的にあきらかにされた.
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