国際貿易は国家間の経済的な不均衡を是正した。他方で,貿易の自由化は発展途上国の一部の自然資本を減少させている。また,感染症に関して,パンデミック時には人的資本の保護が経済活動の維持よりも福祉(well-being)を高め,さらに,その伝播の程度にも自然資本が影響する。今後,持続可能な社会とするには包括的な富を考慮した投資が貿易に関連することであっても必要となる。
本稿では,国境炭素調整措置(Border Carbon Adjustments: BCAs)の導入背景や制度について概観し,国際貿易理論の分析枠組みを用いて国境炭素調整措置の効果を分析する。欧州連合(EU)が導入を計画している炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism: CBAM)では,輸入炭素関税のみを実施することが提案されているが,輸出還付金も同時に導入すべきだとの意見もある。そこで,国際貿易論の寡占モデルを用いて,国境炭素調整措置の導入根拠とされるカーボンリーケージ防止やCO2排出量削減の観点から,輸入炭素関税だけでなく輸出還付金を国境炭素調整の制度に含めるべきかを考察する。企業の排出削減技術(炭素集約度)や輸出市場の規模が,輸出還付金導入の是非を判断する際に重要であることを示す。
21世紀の国際社会において気候変動問題は大きな課題の1つとしての認識が広まっている。特にブラジルのGHG(greenhouse gas:温室効果ガス)排出量の源は,土地の利用転換(森林の農地・牧草地への転換)が半分近くを占めており,これに農業部門を合わせると全体の8割弱にあたる。そこで本稿では,ブラジルが気候変動問題や森林破壊問題に対してどのようにアプローチをし,また各国とどのような関係性を築いてきたのかを考察する。
為替レートの決定要因については膨大な先行研究が存在するが,依然コンセンサスは得られていない。その背景には,理論が想定する為替市場が現実から乖離していることや,データの不足があるとみられる。本稿の目的は,為替市場の構造を特定した上で,新たなデータセット(CLSのフロー・データ)を用いて,より現実に即した新たなモデルの構築に向けた道筋を示すことである。
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