国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
15 巻
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 岡田 裕樹, 日詰 正文, 内山 聡至, 髙橋 理恵
    2022 年 15 巻 p. 1-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,国立のぞみの園が令和2(2020)年度の研究において開発した強度行動障害PDCA支援パッケージを実際の支援現場で試行し,効果や課題を収集することを目的として,強度行動障害者支援に取り組んでいる事業所を対象とした調査等を行った.調査対象は,一次調査として14カ所,二次調査として国立のぞみの園が実施した「実践検討・意見交換会」に参加した29カ所とした.結果として,「強度行動障害の状態にある者の全体的な理解と情報の整理」,「効率的な記録と分析」,「支援計画の作成と見直し」等に効果があることがわかった.強度行動障害PDCA支援パッケージを活用することで,行動の背景要因を見つけることや支援の記録と分析を迅速に行うこと等の強度行動障害者支援の課題を改善することが期待できると考えられた.
  • 岡田 裕樹, 日詰 正文, 根本 昌彦
    2022 年 15 巻 p. 22-32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,知的・発達障害者の加齢に伴う変化の実態について把握し,若年期から終末期までの心身の状況や支援について概観できるライフマップを作成することを目的として,高齢期の知的・発達障害者を支援している事業所を対象に,加齢に伴い変化が起こった事象や支援が必要になった年齢などを把握するための調査を行った.調査で得た103名分のデータより,40~50歳代には,健康状態では,生活習慣病に関する疾病,認知機能の低下,心身機能・身体構造では歩行の不安定,活動では,移動や食事,排泄などのADLの低下,参加では,日中活動や仕事,行事などの参加の制限,環境因子では,居住場所の変化や福祉器具等の使用等による生活環境の変化が見られた.本人の全体を捉えた上でライフステージごとに起こりうる状況に対して適切な対応を行っていくために,今回の暫定的に作成したライフマップを,今後もデータを多く収集し,改訂を重ねていくことが必要であると考えられた.
  • 岡田 裕樹, 日詰 正文
    2022 年 15 巻 p. 33-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,国立のぞみの園が令和2(2020)年に作成した「高齢知的・発達障害者向け行動・心理症状ケアプログラム」の効果や課題を把握することを目的として,高齢知的・発達障害者を支援する事業所8カ所を対象とした支援現場での試行と意見の収集のための調査を行った.調査の結果,行動・心理症状ケアプログラムは「見立てや仮説が立てやすくなり,背景要因を気づくきっかけとなる」「課題の見える化,焦点化ができ,課題の抽出がスムーズになる」「ニーズを構造的に捉えられ,支援の方向性,優先順位を示しやすくなる」「会議の効率化が図れ,支援者間で共有しやすくなる」等の効果があり,知的・発達障害者支援において有効であることが確認できた.行動・心理症状ケアプログラムが障害福祉分野で普及していくことにより,一般高齢者を対象とした介護保険分野と共通のツールを使用することによる支援者間の交流や研究の進展などが期待されるようになると考えられた.
  • 内山 聡至, 日詰 正文, 村岡 美幸, 古屋 和彦
    2022 年 15 巻 p. 41-53
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    高齢期の発達障害者に関する相談への対応について,発達障害者支援センター等の障害関係機関と高齢・生活困窮等の相談機関との連携体制は十分とはいえない現状がある.そこで,本研究は,地域の関係機関における高齢期発達障害者支援の役割および連携に必要な視点や在り方等について明らかにすることを目的に,障害,高齢,生活困窮等の相談機関を対象としたヒアリング調査を行い,高齢期の発達障害者支援を先駆的に行っている相談機関の実践事例を収集した.その結果,個々の機関としては自らの分野の制度や専門性を活かした対応を行いつつ,必要な機関と適宜連携を取りながら支援を行っていたが,関係機関間での相談事例の共有は十分ではない現状が明らかとなった.地域連携の在り方として,①高齢分野の支援者等への障害者支援機関の役割の周知,②分野を超えた支援の役割分担を行う調整役の必要性,③多分野多職種を対象とした発達障害に関する研修・事例の共有等について今後の充実が必要であると考えられた.
  • 岡田 裕樹, 日詰 正文, 佐々木 茜
    2022 年 15 巻 p. 54-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,基幹相談支援センター及び相談支援事業所と地域生活定着支援センターとの入口支援等の現状を明らかにするとともに,協働して入口支援等を行った事例を把握し,連携を中心とした障害者の入口支援等を効果的に実施する方法について検討することを目的として,基幹相談支援センター及び地域生活定着支援センターを対象としたアンケート調査,ヒアリング調査を実施した.調査の結果,基幹相談支援センター,地域生活定着支援センターや関係機関が地域において連携を効果的に行うために,①入口支援の周知,②役割分担と情報共有,③顔の見える関係づくり,④「非行・犯罪行為をした障害者」に対する考え方が重要であると考えられた.
  • 佐々木 茜, 古屋 和彦, 皿山 明美, 水藤 昌彦, 脇中 洋, 大村 美保
    2022 年 15 巻 p. 69-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    矯正施設を退所した知的障害等のある女性の中には,被虐待などトラウマティックな体験から,地域生活継続のために精神科医療や心理的ケアニーズの高い者がいることが明らかとなっている.本研究では,矯正施設退所後の地域生活支援における福祉と精神科医療連携の現状についてヒアリング調査によって明らかにし,連携のあり方について検討した.調査の結果,矯正施設を退所した知的障害等のある女性のうち,特に精神科医療ニーズが高いのは「依存症」「トラウマ」「愛着」の課題がある女性であるが,医療と連携しながらトラウマ等のある女性を支援している社会資源は限られていることがわかった.また,司法-福祉-医療の多機関連携において,組織と組織をつなぐ役割を持つ「対境担当者」の重要性が示された.「対境担当者」は医療機関においてはPSW(ワーカー)が担っていたが,矯正施設および障害福祉サービス事業所においては役割を担う者が不在もしくは内容が限定的であることがわかった.
  • -フィリピン共和国の発達障害者支援の取り組み-
    鈴木 さとみ, 日詰 正文, 佐野 竜平
    2022 年 15 巻 p. 84-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     本研究は,ASEAN加盟国の発達障害児者に関する保健医療政策を日本の政策と比較検討するものである.本稿では,文献調査とインタビュー調査を通して,フィリピン共和国における発達障害者に関する政府の支援の概要と現状を整理した.  文献調査の結果,フィリピン共和国では日本の「発達障害者支援法」に定義される発達障害の概念はなく,廃案になった自閉症ケア法草案の内容などを含め,自閉症等の療育や啓発活動,政策は米国の影響が強いことが分かった.インタビュー調査からは,フィリピン共和国では,障害者法や関連する法律は比較的整備されているものの,自閉症などの発達障害者は既存の法律にアクセスが困難な場合が多く,地域間格差も著しいために実効性を欠いていることが分かった
  • 星野 亜希子, 友野 佳代子
    2022 年 15 巻 p. 92-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    国立のぞみの園が行っている児童発達支援センター(児童発達支援事業,保育所など訪問支援事業)および放課後等デイサービス事業(通称「れいんぼ~」)において,Vineland-Ⅱをアセスメントツールとして活用している.また,Vineland-Ⅱは今後,適応行動の指標として療育手帳判定の際にも使用されることが見込まれ,児童相談所以外の障害児支援事業所でもアセスメントを行い,その情報を提供することが求められる可能性がある1).そこで本研究ではVineland-Ⅱの実施機関拡大や児童福祉サービスの質の向上のための基礎資料とすることを目的に,Vineland-Ⅱをすでに導入している群馬県内の事業所に対してヒアリング調査を行った.その結果,Vineland-Ⅱの導入により療育の質の担保,保護者支援での活用での有効性が確認できた.その一方で検査を実施する際の報酬や加算,研修機会の少なさなどが今後の課題として明らかになった.
  • -重度知的障害者の与薬事故と支援の現状をとおして-
    内山 聡至, 根本 昌彦, 清水 康平, 駒井 香菜子, 塩ノ谷 智恵美
    2022 年 15 巻 p. 97-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     筆者らは令和元(2019)年に障害者支援施設における服薬管理方法(服薬のための準備)に関する調査を実施したが,与薬支援の現状・課題について明らかにしている研究はほとんど見られていない.本研究は,障害者支援施設における安全な与薬支援方法を検討することを目的に,高齢障害者を多く支援している4施設の支援員8名にヒアリング調査を実施した.調査の結果,薬の管理については看護師や薬剤師等の医療専門職が携わっていた施設があったものの,どの施設においても与薬支援は支援員が担っていたことが分かった.回答を分析した結果,安全な与薬支援方法・誤薬対策の視点として,①「負担の軽減」,②「業務に集中できる環境設定」,③「組織的な改善・チェック体制の構築」,④「薬に関する専門性」の4項目が導き出された.
  • -食の好みの把握に関する取り組みについて-
    松浦 敏幸, 青木 朝子, 戸塚 さゆり, 堀越 史彦, 和多 亜緒里
    2022 年 15 巻 p. 106-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     障害者支援施設Aでは,①利用者の「食」の好みについて経時的な把握が十分にできていない,②日常的な食事場面における「食」に関するアセスメントを丁寧に行えていない,③支援員と栄養士の連携が十分でない等の課題があった.本研究は,障害者支援施設利用者のうち,高齢で重度の利用者の「食」の好みの把握方法および,支援員と栄養士の連携のあり方を検討する際の基礎資料の作成を目的に,障害者支援施設3カ所の支援員および栄養士を対象にヒアリング調査を行った.その結果,「食」の好みの把握方法は,本人や家族からの聞き取りや支援員による食事場面の観察,行事食等からの把握等となっていた.連携方法は,随時情報共有を行っていたものの,「食」の好みよりも健康面に関する情報共有がメインとなっていた.「食」の好みの効果的な把握・活用のためには,ICF(国際生活機能分類)シートの活用やライフストーリーワークの実施,健康面だけではない「食」の好みの日常的な情報共有などが有効であると考えられた.
  • 髙橋 理恵, 根本 昌彦
    2022 年 15 巻 p. 114-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/17
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     A園では,新型コロナウイルス感染症の感染対策を発生当初から実施してきたが,令和3(2021)年5月中旬に複数の支援員と事務員が新型コロナウイルス感染症に罹患し,濃厚接触者として利用者も隔離(寮閉鎖)が必要となる事態になった.新型コロナウイルス感染症対策を知的障害者の特性に合わせつつ行うことは困難であり,この状況から得た知見は,知的障害者の感染対策に必要な情報となると考え調査を行った.  調査結果をカテゴリ分けし分析した結果,「備品・物品に関する困りごと」「仕組みに関する困りごと」「支援員の状況に関する困りごと」「利用者と家族の困りごと」の4つのカテゴリに分けることができた. さらに,知的障害者の特性に応じた対策,設備の工夫,専門品の開発,ICTの活用等が必要であることが明らかとなった.以上の内容は積極的に解決策を検討することが求められている.
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