国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
12 巻
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  • 日中サービス支援型共同生活援助の位置づけに着目して
    古屋 和彦, 日詰 正文, 岡田 裕樹
    2019 年 12 巻 p. 1-8
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,平成30(2018)年度より障害者福祉サービスにおける共同生活援助の新類型として,利用者の重度化・高齢化を想定した「日中サービス支援型共同生活援助」が創設されたことを鑑み,全国のグループホーム6,570事業所を対象に,郵送方式のアンケートによるグループホームの実態調査を実施した.アンケート調査の内容は,日中サービス支援型共同生活援助の主な加算の項目を基に,①グループホーム利用者の実態,②グループホームの職員の実態,③グループホームの加算取得実態とした.日中サービス支援型共同生活援助は,①重度化・高齢化が進んで,現状のグループホームでは適切な支援が受けられなくなった利用者の移行先,②身体的・医療的な支援の必要度が高い利用者でグループホームを退所していたが,再度利用したいと考えている場合の受け皿及び,③障害者支援施設に入所していて,通常の共同生活援助では地域移行が困難な高齢・知的障害者の地域の住まいとしての役割が期待されるが,今回の調査結果を見ると,現時点ではグループホーム全体の利用者のうち,日中サービス支援型共同生活援助の対象者は22.7%という状況であった.

  • -自立生活援助に関する自治体の指定状況と事業所の現状について-
    岡田 裕樹, 日詰 正文, 古屋 和彦
    2019 年 12 巻 p. 9-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,平成30(2018)年4月より新たに創設された自立生活援助について,自治体における指定の状況や,自立生活援助事業所での利用者の状況や支援の内容など,サービスについての実態把握と効果の検証を目的とし,自治体での指定状況等の把握と,サービスを提供している事業所でのサービスの実施状況や課題等について調査を行った.研究方法は,都道府県,政令指定都市,中核市を対象とした指定状況のアンケート調査及び指定事業所を対象としたサービスの実施状況,利用者の状況等についてアンケート調査を実施した.その結果,指定事業所が1事業所以上あった自治体が半数以下で,指定事業所は約150事業所であった.利用者は精神障害,知的障害の人が大半で,利用者の年代は精神障害の方が知的障害よりも高く,支援の状況では,定期訪問,随時通報を受けた訪問,同行支援加算に係る支援の回数は,いずれも知的障害の方が多かった.

  • 岡田 裕樹, 日詰 正文, 古屋 和彦
    2019 年 12 巻 p. 17-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,平成30(2018)年4月よりサービスの対象が拡大し,医療機関に入院時の支援が可能となった重度訪問介護について,サービス提供者である居宅介護事業所や知見のある障害者団体,サービスの利用者等を対象に,対象拡大したサービスについての実態把握及びその効果の検証を行うことを目的として実施した.研究方法は,障害者団体やサービス提供事業所等へのヒアリング調査を行った.その結果,サービスを活用することによって入院が円滑に進んだ事例もある一方で,入院時の利用に際して様々な課題があることが把握できた.具体的には,「サービスについての周知の不足」や「医療機関側の対応の格差」があった.

  • 古屋 和彦, 日詰 正文, 岡田 裕樹
    2019 年 12 巻 p. 23-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,重度障害者等包括支援(以下,重度包括支援という)の次期報酬改定を踏まえ,重度包括支援の実施事業所等における利用実態を調査し今後の課題を明らかにし,重度の障害者が利用しやすい制度に改定するための基礎資料とすることを目的とした.WAM NETに記載された36指定事業所のうち,指定休止していない26事業所に対し電話調査を行った.その上で利用者のいる事業所のうち,平成28(2016)年度より利用者が増加または3人以上の利用者が継続利用している6事業所に対しヒアリング調査を実施した.その結果,改善が求められる課題として,制度面,報酬面が多く出されたが,一方,この制度の使いやすい点として,重度の利用者のその時々の状態像に併せてサービスを柔軟に使えることなど,その強みも多く把握できた.今後の課題として,重度包括支援の現状で可能な課題の解消を進めていくことが求められると考えられる.

  • 岡田 裕樹, 日詰 正文, 古屋 和彦
    2019 年 12 巻 p. 29-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,障害者の日中活動,福祉的就労の場として中心的役割を担っている生活介護事業所,就労継続支援B型事業所について,指定権限がある全国の都道府県,政令指定都市,中核市を対象としたアンケート調査を行い,生活介護,就労B型の各自治体における状況について把握することを目的とした.具体的には,自治体が実施した実地指導・監査の結果や,地域から寄せられる生活介護,就労B型に係る問い合わせ等について尋ねた.その結果,生活介護,就労B型において,基準省令の遵守はさることながら,利用者の権利擁護や利用者個々の特性に合わせた支援の実施が十分に行われていない状況であり,これらが今後のサービスの質の評価に関わる重要な要素であると言えると考えられた.さらに,地域の社会資源の不足や地域間の社会資源,サービスの格差が課題であり,地域ごとの障害ある人たちのニーズに即した社会資源やサービスの在り方の検討が重要であると考えられた.

  • 佐々木 茜, 日詰 正文, 村岡 美幸
    2019 年 12 巻 p. 39-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    強度行動障害者支援のための研修事業として,強度行動障害支援者養成研修(以下,強行研修)がある.平成27(2015)年度の報酬改定によって強行研修修了者による支援が加算要件となり,さらに平成30(2018)年度の報酬改定により,加算対象事業に生活介護,障害児通所支援,計画・障害児相談支援が新たに追加されたことで,強行研修の受講希望が高まっている.各自治体が強行研修を運営する際に感じている課題や工夫を明らかにし,より効果的な研修内容や運営方法を探ることを目的に,全国の強行研修を主管する担当者を対象としたアンケート調査を実施した.調査の結果,現行の強行研修カリキュラムに対して改善の必要性を感じている自治体担当者は3割程度であった.具体的には,特に基礎研修では「経験年数の浅い受講者でも理解できる内容にしてほしい」というニーズが多かった.また,強行研修のほかに,受講者や支援現場のフォローアップの必要性を感じている自治体が多くなっていた.現在の課題として,主に「受講希望者が多い」,「講師確保が困難(特に医療の講義)」,「受講者の経験格差」があげられた.

  • 64
    村岡 美幸, 岡田 裕樹, 日詰 正文, 谷口 泰司, 服部 森彦, 中島 秀夫
    2019 年 12 巻 p. 64-90
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,重度障害者の虐待の早期発見や権利擁護ために必要な現状把握の方法について,全国の自治体で活用できる手引きの作成を行うことを目的に,自治体を対象にした悉皆調査及び,先駆的な取り組みを行っている自治体のヒアリング調査を行った.その結果,障害者手帳所持状況と福祉サービス等利用状況のデータを突合する形で重度障害のある住民の現状把握をしている自治体は,3割程度に止まっていた(回収率65.0%).現状把握の具体的な方法は,「保健師等による訪問」,「データの突合」,「多職種からの情報提供」,「調査」等であった.一方,把握できるがしていない自治体は5割に及んでおり,その理由は「必要性を感じない」,「事務量的,人員体制的に困難」等であった.本稿は,現状把握をしていない自治体が現状把握の取り組みを検討する際の基礎資料となるよう,自治体が現状把握することの根拠,現状把握の方法,現状把握の方法と自治体規模の関係,現状把握後の自治体の動きについてまとめたものである.

  • 古屋 和彦, 水藤 昌彦, 脇中 洋, 相馬 大祐
    2019 年 12 巻 p. 91-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    地域生活定着支援センターのコーディネートによって,主たる支援の役割が地域の支援者に移行されるはずの特別調整対象者に対して,定着支援センターが主になって関与し続けている事例が一定数あることが,先行研究の結果より明らかになっていることから,役割移行に至るまでの流れに関連して,対象者が矯正施設入所中に定着支援センターが行うべき業務内容を再検証するとともに,その実態を明らかにしたうえで,対処方策を示すことが求められる.本研究では,①定着支援センターの業務の課題に関する先行研究の検討,②全国の定着支援センターへのアンケートによる実態調査,③定着支援センターへのヒアリング調査による先駆的な事例の収集の3つの手順で調査を行った.その結果,「業務を円滑かつ効果的に実施するための業務」が定着支援センターの主な業務を下支えしている構造があると考えられた.そして,下支えしている業務とは,「内部の体制構築(支援員の支援力,専門性の向上等)」「地域支援ネットワーク構築(機関間の相互理解等)」の2つに大別された.この結果より,定着支援センターの評価にあたっては,従来から用いられている量的指標に加えて,内部の体制構築及び地域の支援ネットワーク構築等の質的に評価する指標を用いることが必要であると考えられる.

  • 実施後1年を経過しての状況報告
    金子 暁, 山田 悠太
    2019 年 12 巻 p. 107-111
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    のぞみの園では,利用者の高齢化に伴い機能低下が問題となっている.加齢に伴い運動量が減少し、日中活動への参加ができなくなることが一因と考えられる。そこで平成30(2018)年4月から健康増進プログラムを導入し,利用者の健康増進に努めている.短期間での評価では有意差が見いだしづらいことが想定され、5年にわたり効果を検証していくこととした.今年度は開始から1年の状況を報告するものである.効果の検証については,一定量の運動を継続して行え,かつ簡単なコミュニケーションが図れる利用者を対象に,身体機能や精神機能での変化を評価した.結果としては,身体機能では顕著な変化はみられなかったものの,精神機能では様々に活性している人もみられた.

  • -群馬県内の対象者の把握と支援事例の収集―
    児玉 彩, 佐藤 美沙, 平岡 ちひろ, 涌永 兼史
    2019 年 12 巻 p. 112-121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,生活場面での支援の中で,特に食事場面での偏食や服薬拒否,盗食,早食い等の行動について,群馬県内の障害者支援事業所における支援状況を明らかにし,支援が必要な行動の見られる利用者の現状や状態像を把握するとともに,支援事例を収集し,今後の実践の参考となる基礎資料とすることを目的とした.アンケート調査の結果,行動自体へのアプローチではなく,環境設定や利用者との関わり方の工夫など,利用者本人を取り巻く環境へのアプローチが共通的に実践されており,行動の改善にも概ね有効であることが示唆されていた.本人の行動や意識から完全に行動をなくすことは困難であり,本人を変える支援だけではなく,環境を変える支援を行うことが効果的であり,そのため,本人の様子をアセスメントして支援の検討を継続することが重要であると考えられる.また,偏食等の行動に対して,何をもって改善されたというのか,支援者の都合になっていないか,といった課題があることが回答からうかがえ,支援結果の評価方法を検討することが重要であると考えられる.

  • 福島 愛美, 倉澤 正典, 篠崎 貴之, 登坂 庸平, 四方田 武瑠, 堀川 慶太, 村岡 美幸, 古屋 和彦
    2019 年 12 巻 p. 122-127
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/15
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    国立のぞみの園では認知症の罹患者が増加傾向にある中で,周辺症状が現れる前に認知症の発症に気づくなど,早期発見が喫緊の課題となっている.そこで2010(平成22)年から開始したDSQIIDの調査結果を用いて,全入所者を対象とした2017(平成29)年1月と2018(平成30)年1月の調査結果を分析し,早期発見の効果的な方法を検証した.その結果,重度の知的障害があっても「情緒が不安定になる」,「今までにできていたことができなくなる」,「活力が低下した印象を受けるようになる」,「動作が緩慢になる」といった兆候が見られたときには,認知症を疑いつつ,支援方法や支援計画を見直していくことの必要性が示唆されたと同時に,DSQIIDを最重度の知的障害者の認知症の早期発見に活用できることが明らかになった.

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