市立大町山岳博物館研究紀要
Online ISSN : 2432-1680
Print ISSN : 2423-9305
6 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鈴木 啓助
    2021 年 6 巻 p. 1-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    ここ数年は、大町市のみならず全国的にも気温が高めに推移し、冬期の降積雪量も少ない傾向が続いている。降積雪量の変動は、豊富な水資源を有する大町市にとっても重要な関心事である。そこで、気象庁によるアメダス気象観測所でのデータを用いながら、大町市および周辺地域での近年の気候変動について検討を行う。過去は未来を写す鏡であると言われるように、これからの大町市での気候はどうなるのかを考える際には、これまでの観測データを参考にすることが有効なためである。
  • 太田 勝一
    2021 年 6 巻 p. 7-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    佐野坂丘陵は大小の岩塊からなる崩壊堆積物からなり,かつての姫川を堰き止めて青木湖を形成したと考えられている.しかし,その形成過程には不明な点が多かった.たとえば,① 佐野坂丘陵の西側山地に位置する明瞭な崩壊崖の中軸に比べて,崩壊堆積物の位置は約200 m北側に偏り,また,② 崩壊堆積物の構成岩石は崩壊崖の地質構成と異なるなどの問題点が残されている.その原因として,崩壊崖の最大傾斜方向に対して崩壊堆積物が斜め北方向に移動した可能性や,未知の横ずれ断層により崩壊堆積物が北側に変位した可能性などが考えられる.活断層が関与した場合,断層活動と地震により大規模崩壊が発生し,その後の断層運動と崩壊の繰返しにより,現在の青木湖と佐野坂丘陵が形成されたと考えられる.これらの問題について,崩壊崖と崩壊堆積物の地質調査を実施し,既存のデータと統合して,今後の研究のための予察検討を行った.
  • 日本産草本植物の生活史研究プロジェクト報告第12報
    千葉 悟志
    2021 年 6 巻 p. 17-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    観察から,発芽した実生は一年目から匍匐根茎による交代型仮軸分枝によるクローン成長を行い,開花は実生からクローン成長した娘ラメットで翌夏に生じた.花梗や花柄は花序の下部で対生につくが,上部になるに従い左巻きの螺旋状となる傾向にあり,花弁や萼片においても左巻きの片巻き状で葉序においても左巻きの螺旋葉序と捉えられた.開花は天候に左右されずに生じ,寿命は2 ~ 3日でその間,わずかに花弁の開閉が生じた.花にはミツバチ上科とヒラタアブ亜科が訪れていたが,行動からミツバチ上科が花粉媒介に関与するものと考えられた. 蒴果は熟すまでに約 3 ヶ月を要し,完熟種子を乾燥下で低温処理を施さず翌春に播種した実験では,短期間のうちに相当数の発芽が生じた.これは,種子が二次休眠に誘導されない状態で越冬し,低温により発芽が抑制されているのだろうと考えられた.
  • 藤田 淳一
    2021 年 6 巻 p. 23-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
  • 長野県松本市における観察記録と市立大町山岳博物館収蔵の大町市及び小谷村の標本記録
    栗林 勇太
    2021 年 6 巻 p. 25-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    ブッポウソウは近年個体数が減少し,絶滅が危惧されている.長野県内においても観察や繁殖記録が減少し,絶滅危惧ⅠA類と評価されている.本稿では,2020年に得られた松本市北部において初とみられる目撃情報と,当館収蔵の当該種のはく製の情報について報告する.これは,広く生息情報などの情報を共有することで,当該種の情報の蓄積を行い,種の保全に貢献することを目的とするものである.
  • 鈴木 啓助
    2021 年 6 巻 p. 29-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    真っ白な雪は、とても綺麗で繊細なことから、山部赤人による「田子の浦ゆ 打ち出でて見れば 真白にぞ 富士の髙嶺に 雪は降りける」(万葉集)のように歌に詠まれ、絵画や楽曲など広く芸術の素材となり、古今東西で人々に親しまれています。雪の結晶は、六角形を基本としながら様々な形で降ってきますが、それぞれの雪結晶の形には、雲の中の情報が暗号文として記されているのです。雪は大気中の塵や埃などを付着させながら降ってくるので、空の掃除屋さんとも呼ばれています。地上に積もってから、しまり雪、ざらめ雪、さらには、しもざらめ雪などに変態していきますが、降る途中で大気中から付着させた化学物質も、雪粒子が変態し融けるまでに不思議な振る舞いをします。日本は比較的低緯度で標高が低いにもかかわらず、大量の雪が降るのは、シベリア高気圧、チベット・ヒマラヤ山塊、暖流の日本海、そして脊梁山脈の絶妙な地理的配置の賜なのです。脊梁山脈に降る雪は「白いダム」と呼ばれ、水資源としての貴重な役割を担っています。さらには、大量の降雪が雪渓や氷河の涵養源となっています。しかし、一方では、大雪による災害を引き起こすこともあります。 2020年10月3日から2021年1月17日に開催された企画展「雪が織りなす物語」の展示内容を、ここでは記録として残します。
  • 2020年度 企画展「博物学と登山」展示資料
    関 悟志
    2021 年 6 巻 p. 41-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本書簡は2020(令和2)年度に市立大町山岳博物館が開催した企画展「博物学と登山 ―大正登山ブームと信州理科教育のさきがけ―」における展示資料で、2016(平成28)年の同館収蔵以降、これが初めての展示公開となった。これは1905(明治38)年に牧野が志村に宛て執筆した書簡で、その内容は、かねてから依頼を受けていた植物標本の同定に関した連絡などである。このとき志村が牧野に同定を依頼していた標本というのは、志村が1904(明治37)年に白馬岳等で採集したヒメウメバチソウとシロウマオウギの高山植物2種であった。両種は牧野によって、いずれも新種として植物学分野の学術誌に記載されている。本書簡について詳細な画像や翻刻等を掲載することで、その資料情報を広く共有したい。
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