市立大町山岳博物館研究紀要
Online ISSN : 2432-1680
Print ISSN : 2423-9305
1 巻
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  • 森川 篤平, 小坂 共栄, 高浜 信行
    2016 年 1 巻 p. 3-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    飛騨山地北部は,古くからしばしば地すべり・山崩れ・雪崩等の自然災害に見舞われてきた地域である.日本三大崩れの一つとして名高い「稗田山崩れ」は,調査地域の南部に位置する.これらの災害の多くは,この地域の持つ複雑な地質学的条件に起因しているが,1996・1997年の小谷村の豪雨災害では多くの人命が土石流の犠牲になっている. 本報告では,この地域の自然災害の素因について検討し,「白馬大池角礫層」の存在が重要な役割を担っていることを明らかにした.この礫層は,姫川層群・蛇紋岩・来馬層・石阪流紋岩などの西南日本内帯を構成する古期岩類を不整合におおい,第四紀の白馬大池火山岩層に不整合におおわれて本地域一帯に広く分布する.岩相やその層序的な特徴から,この礫層は,氷期の周氷河環境下で形成された可能性が高い.また,この礫層の岩相や分布の特徴からみて,この礫層は本地域における第四紀の造構作用や火山活動の影響を強く受けたものと思われる.本地域の急峻な山地斜面に広がるという本礫層は,豪雨や地震などの影響を受けやすい不安定な条件下にあることを意味している.
  • 原山 智, 小坂 共栄, 棚瀬 充史, 佐々木 孝雄, 水落 幸広, 南 雄一郎, 宮澤 洋介, 信州大学震動調査グループ
    2016 年 1 巻 p. 25-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    2014年11月22日に発生した長野県北西部を震源とする地震(M6.7)では,神城断層に沿う地表各所に変位が出現した.われわれは神城断層の地下への延長を検討するために,最も被害が大きかった白馬村堀之内地区で地表の変位を横断する測線でのチェーンアレー方式による微動アレー探査と2地点で多重アレー方式(SPAC法)による探査をおこなった. 地表変位をはさむ延長117mのチェーンアレーにより得られた位相速度断面と近傍でおこなわれた既往のボーリングおよびS波反射法地震探査から,地表変形につながる低角度の断層と湖成堆積物の変形構造が明らかになった. 神城断層の傾斜方向にあたる東側でおこなった2地点での微動アレー探査により,最大800mまでの深度のS波速度が解析され,各速度層は全体に西側に向かって深くなることが明らかになった. 地震の余震分布や微動アレー探査による速度層の変位を説明するために,微動アレーをおこなった2点間に高角度の逆断層が想定され,神城断層はその前縁派生断層である可能性が示唆された.
  • 関 悟志, 西田 均
    2016 年 1 巻 p. 41-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    市立大町山岳博物館が収蔵する美術資料の山岳風景画(山岳画)10点について、山座同定を中心に描画風景と山岳風景との同定を行い、作画モチーフとなった山岳風景および描いた地点を推定するに至ったので、その内容について詳述した。これは、2015(平成27)年度に当館で開催した企画展「山岳風景画の世界 ―“山博”収蔵コレクション―」にともなって実施した山岳画に関する現地調査等をもとにしたものである。 描かれた個々の山岳風景を詳細に確認することで、作画モチーフとしたと推定される実際の山岳風景が各作品の画面の中に忠実に再現されていたことが示された。このような収蔵美術資料に関する情報はこれまで不足するものであったが、今回の同定によって各資料情報を蓄積することができた。それにより、当館の収蔵資料のうち、山岳画という分野でのコレクション化が一層図れ、ひとつの資料群として資料価値を高めることにつながった。
  • 北アルプス山麓の人々に信仰された仏像からみた仏教信仰の変容
    清水 隆寿
    2016 年 1 巻 p. 53-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿では、古代から江戸時代以前の北安曇地域(大町市及び北安曇郡)に残された仏教信仰の対象となった仏像について、当該地域の仏像の研究史を踏まえて集成・編年化するとともに、集成された北安曇地方に残された仏像を足掛かりに、中世に当地域を統治した仁科氏の創始と庄園の開始時期について推定を行うとともに、当該地域の古代から江戸時代以前の時代による様式の変化や仏像制作に関わる地域的特徴を述べる。
  • 日本産草本植物の生活史研究プロジェクト報告第7報
    千葉 悟志
    2016 年 1 巻 p. 63-69
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    アカバナ属アカバナEpilobium pyrricholiphumは,湿地にみられる多年草植物で,種子繁殖する一方,匐枝を伸ばして繁殖する半地中植物とされる. しかしながら,一連の生活史を細部にわたり紹介した例はこれまでにないことから,アカバナの生活史をはじめ,開花および結実の繁殖特性について,観察を進めたところ,秋播きおよび春播きに関わらず,発芽後,成長の早い個体では1年目で開花個体に至り,夏から秋にかけて地上茎の節から対角線上に匐枝を伸ばして,複数のラメットを形成する一方,親個体はその年に枯死することが明らかになった.また,花は開閉花であることが明らかになったが,訪花昆虫相に貧しいうえ,訪花頻度も低く,また,1個花のみであっても結実するほか,隔離した個体にも結実が認められることから,自家和合性であることが考えられた.
  • 佐藤 真
    2016 年 1 巻 p. 71-74
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    市立大町山岳博物館付属園では2005年よりキジ(Phasianus versicolor)の飼育を行っている. 本稿では, 性成熟後のメスにおいてオスの形態的・生態的特徴を呈することを雄変と定義し, 当館付属園の飼育下個体における雄変の報告及びその原因と雄変の適応的意義について考察した. 当館付属園では, 主に雌雄同居の平飼いを行っており, これまでに計13羽を飼育し, 自然繁殖によって第2世代までみている. 2014年7月16日に雌雄ペアで飼育していたメス個体の頭部にオス特有の羽装色が見られた. また, 同個体は2013年まで放卵を行っていたが, 2014年以降には放卵は行っていない. 雄変の原因として, 先天性である遺伝子疾患や発現異常なども考えられるが, 少なくとも当館付属園の飼育個体においては, 野生由来の卵から孵化し産卵経験もあるため, 老齢化によって内分泌系やホルモン機能環に異常が生じた可能性が最も高い.
  • 関 悟志
    2016 年 1 巻 p. 75-80
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    市立大町山岳博物館が収蔵する博物館資料の推移をふまえ、公開中の「人文科学系収蔵資料目録」(2015年3月作成版)をもとに、現在の人文科学系収蔵資料における各資料群の内容や特徴について概要を記した。目録は120頁にわたる大部なものであるため、その内容等を要覧としてまとめることは各資料群の具体像と特徴の把握・理解に有用である。これによって、より細分類した資料群化や各資料群の価値向上へつながる資料情報の収集等において参考に資するとともに、博物館利用者が収蔵資料に関わる照会を行う際の参考に供することで収蔵資料の今後さらなる利活用へ結びつけたい。
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