山地周辺に堆積した礫質堆積物は,山地の隆起プロセスを解明するための重要な手がかりになる.北アルプス(後立山連峰)東麓における借馬トレンチ礫層(3,000~4,000年前)から採集された礫3139個を分析した結果,ほとんどが, 山地の上部斜面に露出する爺ヶ岳-白沢天狗複合カルデラ埋積層下部および底付花崗岩体に由来することが明らかになった.より古期の2層準の礫層(約80万年前および170~220万年前)の主な給源は,それぞれ,カルデラ埋積層上部ならびにカルデラ外輪山地の先新第三系基盤岩類であることが知られている.カルデラ埋積層は230~160万年前に形成されたもので,60万年前までには東へ70°~80°も傾動した(原山ほか 2003).これらの事実から,最初の給源変化(150~100万年前)はカルデラの傾動隆起の開始に,第2の変化(70~10万年前)は隆起後のカルデラ埋積層の侵食作用に起因すると推論される.
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