市立大町山岳博物館研究紀要
Online ISSN : 2432-1680
Print ISSN : 2423-9305
2 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 山岳博物館の魅力、遠くて近い友の会からの学び
    麻田 玲
    2017 年 2 巻 p. 1-7
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    人口減少や過疎化が顕著な地域の活性化に対して、人口や経済活動を外部から参入させることにその解決策を求める政策は多い。そのためか、内部にすでにある資源を活用する視点は抜け落ちやすい。また、行政や地域が特徴を認識し資源として捉えていても、実際に活用され資源が顕在化するには魅力を捉えるというステップが必要である。本稿では、長野 県大町市の地域活性化における山岳博物館の活用を事例にして、特に博物館を長年支援する友の会に注目する。博物館と物理的には距離の近い市民にとって見えにくいその魅力を、市民および友の会会員に対して実施したアンケート結果から分析し、会員が捉えている博物館の魅力を抽出した。その結果、友の会会員は、定期的に情報を受け取ることによって博物館に対して身近さや親近感を強く感じており、これらが魅力の認識に繋がっていることが明らかとなった。特徴ある資源を地域の活性化に生かすために、その魅力をどう捉え、生かすか、資源の活用と顕在化について提案する。
  • 矢野 孝雄, 小坂 共栄, 原山 智, 宮澤 洋介, 竹下 欣宏, 近藤 久雄, 勝部 亜矢
    2017 年 2 巻 p. 9-18
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    山地周辺に堆積した礫質堆積物は,山地の隆起プロセスを解明するための重要な手がかりになる.北アルプス(後立山連峰)東麓における借馬トレンチ礫層(3,000~4,000年前)から採集された礫3139個を分析した結果,ほとんどが, 山地の上部斜面に露出する爺ヶ岳-白沢天狗複合カルデラ埋積層下部および底付花崗岩体に由来することが明らかになった.より古期の2層準の礫層(約80万年前および170~220万年前)の主な給源は,それぞれ,カルデラ埋積層上部ならびにカルデラ外輪山地の先新第三系基盤岩類であることが知られている.カルデラ埋積層は230~160万年前に形成されたもので,60万年前までには東へ70°~80°も傾動した(原山ほか 2003).これらの事実から,最初の給源変化(150~100万年前)はカルデラの傾動隆起の開始に,第2の変化(70~10万年前)は隆起後のカルデラ埋積層の侵食作用に起因すると推論される.
  • 西田 均, 鹿島槍ヶ岳カクネ里雪渓(氷河)学術調査団
    2017 年 2 巻 p. 19-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    市立大町山岳博物館と国立大学法人信州大学、長野県環境保全研究所、富山県立山カルデラ砂防博物館の4者は「カクネ里雪渓(氷河)学術調査団」を組織し、北アルプス後立山連峰・鹿島槍ヶ岳カクネ里における学術調査に着手した。 想定を超えたアプローチルートの困難性や気象の影響により、当初予定した調査課題の完了には至っていないが、一定 の成果を得た中で調査団としての活動は本年度をもって終結する。 ついては、本稿にて調査団の活動概要を報告する。 なお、調査の学術的成果に関する論文・報告は次号以降において投稿いただく予定としている。
  • 日本産草本植物の生活史研究プロジェクト報告第8報
    千葉 悟志, 尾関 雅章
    2017 年 2 巻 p. 27-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    居谷里湿原における,ミズバショウLysichiton camtschatcense (L.) Schott の種子散布は6月下旬~7月中旬で,7月下旬に散布された種子の発芽は8月上旬に認められた.種子は浮遊した状態でも発芽し,凍結しない環境であれば,浮遊の状態でも越冬ができ,長期間にわたり,生存が可能であることが示唆された.博物館で発芽した個体は,開花までに8年を要したが,流水および水温などの生育環境が共通する居谷里湿原においても同様の期間を要するものと推測された. ミズバショウは,寒冷な地域に分布する植物であるが,本研究から,決して耐寒性の高い植物ではなく,夏に涼しく,冬に暖かい条件が整う環境にのみ,生育が可能な植物であることが,自生地を限定する要因に繋がっているのではないかと考えられた.
  • 佐藤 真
    2017 年 2 巻 p. 35-42
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    絶滅が危惧される日本のライチョウLagopus muta japonicaの生息域外保全において,将来的な野生復帰のために再導入に耐えうる個体の創出が必要であるが,現段階では飼育個体数が少ないため、飼育繁殖技術の向上を目的とした飼育方法がとられている.野生下とは栄養条件や運動量が異なることから,飼育個体の成長は野生個体と異なることが予想される.野生個体と飼育個体の成長過程を比較することで飼育方法改善の指標とすることができるが,野生下および飼育下のライチョウの成長様式や形態的特徴に関する報告は少ない. そこで萌芽的な調査として,日齢が既知である飼育下の雛の形態に焦点を当て,成長曲線の推定を行った.対象個体には,東京都恩賜上野動物園,富山市ファミリーパーク,市立大町山岳博物館で飼育されている35日齢までの雛の形態情報を用い,体重,嘴長,自然翼長,跗蹠長の平均値についてLogistic成長曲線,Gompertzの成長曲,Bertalanffyの成長曲線を当てはめ,モデル選択を行った. その結果,雛の体重(オスのみ)の成長をGompertzの成長曲線で、嘴長の成長をBertalanffyの成長曲線で説明できることを示唆した.自然翼長及び跗蹠長について,より尤もらしい成長曲線の推定のために,データの収集を継続し、再検討する必要がある.本報告は,飼育個体に対する精緻な栄養管理や早期の獣医学的ケアを可能にし,野生個体の成長様式が明らかになった際に,野生への再導入に向けた飼育手法の改善に寄与する.
  • 内田 木野実, 佐藤 真
    2017 年 2 巻 p. 43-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    ライチョウLagopus muta japonicaは2015年に生息域外での飼育が開始し,飼育繁殖技術の確立や,野生への再導入を目指すために,今後飼育個体数の増加が期待されている.しかし,過去の飼育例では30日齢までの死亡率が高かったことから,飼育個体数を増やしていくためには,育雛期の死亡リスクを高める様々なストレス要因の排除が必要であるが,ストレス要因として飼育者の存在が考えられる.本研究は,市立大町山岳博物館で飼育されているライチョウ4羽を対象に,育雛期のライチョウに対する飼育者の影響について空間利用を指標として評価を行った. まず,映像による行動記録から,ぬいぐるみを設置した温源室の利用割合が高くなり,成長にともなって温源室の利用割合が減少傾向にあることが明らかとなった.次に,飼育者の有無によって空間利用に違いがあるか検証したところ,各部屋の利用割合に差はなかったが,飼育者がいる場合に飼育者から離れた空間の利用割合が有意に高くなった.このことは,ライチョウの雛は飼育者を認識することで,より飼育者から離れた空間を利用したことを示唆する.
  • 浜田 崇, 佐藤 真
    2017 年 2 巻 p. 49-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
  • 後立山連峰の登山史に関する文献資料調査
    関 悟志
    2017 年 2 巻 p. 55-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/10/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    市立大町山岳博物館がこれまでに編集・出版した3巻からなる冊子『北アルプス登山史資料1~3』(2010~2017年)の目次を一覧にして記した。目次で示した内容は、各冊子に収録した北アルプス後立山連峰の各山域における登攀史を含む登山史上、重要と目される約150の登山記録であり、それらの報告が掲載された文献資料の一覧となっている。一覧としてまとめることは、後立山連峰における登山史研究で必要不可欠な文献資料の書誌目録としても有用である。これによって、当館で継続的に実施してきた関連登山史の文献調査及び収集の成果を示すとともに、出版した各冊子の今後さらなる利活用の推進に結びつけたい。
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