コオニユリの種子は風散布で,散布後の発芽は翌春に見られ,気温により発芽が抑制されていることが考えられた.子葉は先端部だけ吸収器として種皮内にあるネギ型で, 2 年目になると葉のみからなる個体および地上茎を有する個体が現われ,成長の早い個体では 3 年目に開花に至ることが明らかになった.この間,直立根茎は認められず子球(木子)が形成されることはなく,子球の形成はより成熟した個体において形成されるものと推測された.また,鱗茎の分球は鱗茎葉の増加の際に隙間ができ,その後,さらに鱗茎葉が増えることで生じることが明らかになった.
花は茎の最下位に位置するつぼみから生じ,開花は暗期から生じていたが葯が裂開する時間帯は明期で,これらは花粉媒介昆虫であるアゲハチョウ類の行動に合わせたものと推測された.撮影した画像をもとにアゲハチョウ類の同定を行ったところ,当地域ではキアゲハおよびミヤマカラスアゲハの 2 種が認められ,花粉を媒介する上で重要な役割を果たしていることが示唆された.
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