防災教育学研究
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2 巻, 2 号
防災教育学研究
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 田中 綾子, 前林 明日香, 柴田 真裕
    2022 年 2 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、アンケート調査により、兵庫県におけるハザードマップと防災教育との関連、活用 の状況、課題について分析する。そして、これからのハザードマップの利用の質と量の向上につ いて考察することを目的とする。結果は次のとおりである。 まず、防災教育を受けた人ほど、ハザードマップを使っている傾向が見られる。つぎに、ハザー ドマップを利用している人のほとんどが災害対応のためにハザードマップが必要であると捉えて おり、その傾向は被災経験者の方が被災未経験者より強い。そして、ハザードマップの利用場面 は非常時と平常時があるが、平常時に利用されている場合が多い。また、利用されている情報の 内容は、本人や家族に対する災害リスクの確認と身の安全の確認に関するものが多くを占めてい る。 さらに、現在使用しているハザードマップの問題点については、「全体としてわかりにくい」 が最も多く、この全体のわかりにくさは「色がわかりにくい」、「情報量が多すぎる」ことから生 じていると考えられる。これらの問題を解決するには、兵庫県のCGハザードマップなどのデジ タルハザードマップの普及が求められる。 ハザードマップ利用の普及とわかりやすさの向上をめざすためには、紙とデジタルとの使い分 けが有効である。具体的には紙媒体は非常時、デジタルは平常時の活用を想定する。ただし、ス マホの機能などを駆使すれば非常時にもデジタル化したハザードマップは有効となるであろう。 すでに、兵庫県では全ての市町でハザードマップが整備されており、「兵庫県CG ハザードマッ プ」(デジタル)が公開されている。これらの利用を推進すれば、兵庫県の地域防災力の強化に つながる。
  • ―博物館を活用して―
    望月 大, 村越 真
    2022 年 2 巻 2 号 p. 11-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では「リスク認知」と「自己効力感」を高め,豪雨災害時の避難行動意図を促進するため, 山梨県立博物館の水害についての展示資料を活用した小学校社会科の防災授業の開発を目的とす る。本稿は,社会科第4 学年の単元「自然災害から人々を守る活動」の1時間として実施した。 授業の目的を次のように設定した。(1)博物館の展示や所蔵資料を使って,学区内では,どんな 災害がおこりやすいか学び,「リスク認知」を高める(2)警戒レベルやハザードマップなどの「災 害情報」の活用方法を学び,実際に居住する地域で豪雨災害発生の危険性が高まった時に「いつ」 「どんな行動をとるか」という避難プランを考えることで,「自己効力感」を高めることをめざした。 授業を実施した3 校で,授業前後に行なった調査票により効果を検証した。その結果,授業には「リ スク認知」を高める効果が確認された。また「リスク認知」の高まりが「避難行動意図」を促進 する効果が認められた。「自己効力感」については,授業前から高く有意な変化が見られなかった。 「自己効力感」の「避難行動意図」への影響も見られなかった。「自己効力感」の「避難行動意図」 への作用を精緻化し,災害情報の活用を加味した「自己効力感」の測定方法や, 低い「自己効力感」 を持つ児童に対して低かった授業効果を高めるための授業内容の再検討が課題である。
  • - 全国規模調査から見た現状について-
    柴田 真裕, 田中 綾子, 諏訪 清二
    2022 年 2 巻 2 号 p. 23-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,全国の小学校127 校,中学校207 校,高等学校243 校,特別支援学校32 校の計 609 校を対象に防災マニュアルと防災訓練の現状について調査したものである。 防災マニュアルについて,高等学校,特別支援学校では他の学校種と比較し防災マニュアルの 設置が進んでいない状況が明らかとなった。防災訓練については,小学校は他の学校種と比較し, 1 年に複数回数の実施が多く,「1 回」だけの実施は少ない。その一方,高等学校は「1 回」のみ の実施が多く,「3 回」,「5 回以上」といった複数回数の実施は少ない結果が得られた。 本研究結果から,学校種が進むにつれ,防災に対する取り組みが疎かになっており,また,「防 災マニュアル」,「防災訓練」で学校現場が感じている課題は外部組織等との連携によって解決に 導く事ができる可能性が示唆された。
  • 正木 詔一, 川村 教一, 矢ケ﨑 太洋, 藤岡 達也, 小長谷 誠
    2022 年 2 巻 2 号 p. 35-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは兵庫県北部を流れる円山川による水害に関して、初等・中等教育向け防災教育の改善を図るために、2004 年の水害の被災地跡を中心に、豊岡市内の円山川流域の微地形や土地利用を観察した。その結果を踏まえて水害に関する防災教育の改善のために、フィールドワークを導入した学習の推進、身近な地域の学習地、高等学校向け教材の開発、教員研修としてのフィールドワークの実施を筆者らは提案する。
  • 古山 暢尋, 冨永 良喜
    2022 年 2 巻 2 号 p. 45-51
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    文部科学省は防災教育において生徒に防災に関する「行動」を身に付けることがねらいである としている。しかし、災害発生時の防災行動に関する効力感尺度は冷静な行動への自信を問う尺 度は開発されているが適切な防災行動への効力感尺度は見当たらず、その評価尺度の開発が望ま れる。そこで本研究では、中学生を対象とし、地震・津波・豪雨における適切な防災行動への効 力感に焦点を当てた評価尺度を開発した。その評価尺度を用いて394 名の中学生を対象に調査 を行った。質問項目の因子分析を行った結果、「そのとき防災行動」は1 因子で構成された。α 係数は.84 で、信頼性が確認された。また、生徒の防災教育に関する経験についての外部基準と の関連を分析した結果、妥当性が確認された。それらの結果から、防災教育の効果検証の可能性 及び活用方法に関して考察した。
  • 鈴木 光, 村上 正浩
    2022 年 2 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、主体的な学びに繋がる防災教育を支援するため、学びのプロセスに着目した教育 方法の枠組みを提示することを目的とした。まず、防災関連学会の学術論文から防災教育に関す る文献を収集し動向を整理した。次にアクティブラーニングの視点から、4つの防災教育のモデ ル事例を分析した。その結果、「プロセス」「学習行動」「ねらい」「内容」「方法」「工夫」からな る主体的な学びを支援するための教育方法の枠組みを示した。
  • ─ GigaPan 画像による土石流災害地の遠隔観察─
    岡田 大爾, 澤口 隆, 井山 慶信, 川村 教一, 岡田 寛明
    2022 年 2 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    全国各地で土石流災害が発生しているものの、被災地が狭い範囲に限定されるため、遠方の場 合は直接観察することが難しいという現実がある。そこで、高解像度の露頭画像を自由に拡大縮 小して探究的に観察するシステムをウェブ上に構築し、大学生に観察させた。各項目の観察内容 から目的とする教育効果を上げるとともに、システムそのものに対する評価も概ね良好であった。
  • 高校生向けの鬼界アカホヤ火山灰の教材化
    香田 達也, 田口 瑞穂, 川村 教一, 佐野 恭平
    2022 年 2 巻 2 号 p. 75-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは、鹿児島県に給源火山があり、縄文時代に本州の広い範囲に降灰した鬼界アカホヤ火 山灰を教材として、高校生向けの火山防災学習を兵庫県の高等学校で実践した。授業では火山灰 を観察させて、現代社会における大規模噴火の災害を予測させた。その結果、活火山から火山灰 が吹き流されることによる火山災害を認識する生徒をある程度増やすことができた。ただし、一 部の生徒は、それは近傍の火山によるものと考えており、活火山とそれ以外の火山の区別をして いないと考えられる。このことから、火山噴火に関する学習の改善が必要である。
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