地方自治体においては、財務や事業についての監査の制度として、監査委員による監査がある。監査委員監査には行政監査、住民の直接請求による監査などの監査の取組みがあるが、地方自治体の行政サービスや行政運営における重要な基盤(インフラ)であるICT 領域については十分な監査が実施できているとはいえない現状にある。
ICT が高度化・多様化する今日、ICT を適正に利用し、住民への行政サービスを向上させ、行政コストや業務の効率化に資すること、また一方で、住民情報の漏えいなど情報セキュリティを確保することは、地方自治体に課せられた命題であり、それらを監査委員の立場から検証する、ICT 監査の役割は非常に大きいものがある。
本稿では、大阪市におけるICT 監査の取組事例などに基づき、地方自治体におけるICT 監査の更なる取組みに向けて、各地方自治体が考慮すべき点などについて提言する。
なお、本提言は、大阪市監査委員及び監査委員事務局としての公式見解ではなく、あくまでも筆者自身の実務経験と研究に基づく個人的見解である。
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