横光利一研究
Online ISSN : 2424-2462
Print ISSN : 1348-1460
2022 巻, 20 号
横光利一研究
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
『横光利一研究』第二〇号記念座談会
自由論文
  • ──蔵原惟人の感覚論との比較を通して──
    大久保 美花
    2022 年2022 巻20 号 p. 52-65
    発行日: 2022/03/17
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー
    本稿では横光利一のマルクス主義思想の受容と感覚概念の形成を検討した。その際、マルクス主義思想では本来、批判の対象であるはずのフェティシズムを横光が好意的に捉える理由に着目し、そのこととプロレタリア文学者の蔵原惟人によるフェティシズム批判を比較した。蔵原は物質に階級格差を見出し、感覚という語を階級意識という意味で用い、思想の伝染性を駆使して階級闘争の実現を図る。一方、横光は人間や物質間で伝染しあう感情の知覚を重視する。ここから二人は物質主義及び感情・思想を伝染という観点から捉える点で接近するが、文学を大衆啓蒙の手段とする蔵原に対して、対象との一体感自体を言語化しようとする点に横光の感覚概念の独自性があると結論づけた。
  • ──同時代言説の中の「馬車」──
    小林 洋介
    2022 年2022 巻20 号 p. 66-79
    発行日: 2022/03/17
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル フリー
    横光利一は、「馬車」執筆に際し、群馬県草津温泉のハンセン病患者居住地区「鈴蘭村」、および、そこで看護を行った三上千代について何らかの情報を得ていたものと考えられる。さらに、遠藤隆吉の著作を含む同時代の易関連の文献を参考にしていた可能性も非常に高い。また、「馬車」における易の問題は、横光の心身一元論的な人間観の延長線上に位置している。〈西洋対日本〉という構図に回収されない、易という〈日本以外の東洋〉の思想への関心が伺える点にこそ、横光文学全体の中での「馬車」の特異性が認められる。「馬車」に描かれているのは、西洋近代科学を完全に信頼することはできず、他方では〈個〉の運命を予言する易という東洋の思想体系を信じ切ることもできない近代人の姿である。
横光利一文学会第二〇回大会報告
書評
クローズアップ横光
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