横光利一研究
Online ISSN : 2424-2462
Print ISSN : 1348-1460
2020 巻, 18 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特集「横光利一と小林秀雄」
特集論文
  • 田口 律男
    2020 年 2020 巻 18 号 p. 1-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/27
    ジャーナル フリー
  • ──創(きず)あるいは創(はじ)まりとしての接点──
    井上 明芳
    2020 年 2020 巻 18 号 p. 8-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/27
    ジャーナル フリー
    本論は、横光利一にとっての小林秀雄の意味を考察している。横光は小林をほぼ一貫して高く評価する。しかし単一的であり、内容は乏しい。それは芥川龍之介へのそれぞれの評価に表れる。横光は芥川を失うが、小林は断絶している。これは既成的な横光と既成外の小林との違いであり、既成外の新しさを横光は評価したのである。が、その小林が横光「機械」を新しいとし、作家横光像を作った。その像は横光を創(きず)つけ、虚構の作家横光としての生を創(はじ)めさせた。晩年横光は『夜の靴』に小林の名を記すが、それは物語の中で小林を虚構として受けとめたことを意味する。二人の接点は虚構として成立し、そこに生きる「私」として文学的に再生するのである。
  • ──自意識から日本主義へ──
    綾目 広治
    2020 年 2020 巻 18 号 p. 23-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/27
    ジャーナル フリー
    小林秀雄は、横光利一の「機械」を自意識の文学として高く評価したが、その判断は小林の読み間違いであった。「機械」は当時の小林が考えていたような自意識の文学、すなわち意識に対してのメタ意識の問題が表現されている文学ではなかった。しかし小林の評価に使嗾された横光はやがて、自意識の問題と通俗文学の興隆という当時の文学状況の問題とを統合した「純粋小説論」を述べる。ここで重要だったのは、物語性の強い通俗文学的要素の、純文学への組み入れという提言にあったが、それを「私小説論」の小林は理解しようとしなかった。両者はここで擦れ違ったが、日本主義の問題に対しては、どちらも見当外れの対応という点では共通していた。
  • ──小林秀雄と横光利一──
    位田 将司
    2020 年 2020 巻 18 号 p. 37-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/27
    ジャーナル フリー
    小林秀雄は横光利一の小説「機械」(『改造』1930・9)を、評論「横光利一」(『文芸春秋』1930・11)において高く評価した。しかし、小林の「私小説論」(『経済往来』1935・5~8)の発表前後から、小林の横光への高い評価は変化を見せ始める。 このような評価の変遷はなぜ生じ得たのだろうか。本論ではその評価の変遷を分析すべく、まずは小林による「機械」への高い評価の理論的な解明を試みる。そこでは二人を接近させる、マルキシズム及びカント(新カント派)の理論的な連関を見出すことになるだろう。その理論的連関を通して、小林は横光の「機械」の中に〈様々なる意匠〉を発見することになるのである。
研究展望
自由論文
  • ──横光利一『上海』における女性共産党員をめぐって──
    王 洋
    2020 年 2020 巻 18 号 p. 63-78
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、横光利一『上海』における「芳秋蘭」のモデルを検証したうえで、そういった女性像の真実性と虚構性について考察を行った。今まで虚構性の強い架空人物だと思われてきた「芳秋蘭」は芥川龍之介が描出した中国女性像を原点として、「五・三〇運動」に大いに貢献した中国の女性党員楊之華、鐘復光の経歴に基づいて造形された人物像だと結論付けた。また、『上海』決定版にある「芳秋蘭」のスパイ性の増幅が蒋介石の反共クーデターの後で白熱化したスパイ戦と呼応しているものと思われる。一方で、革命者「芳秋蘭」の恋愛描写に非合理性があるものの、それはプロレタリア文学に定着した「恋愛と革命」の図式化への横光利一のアンチテーゼとも読み取れる。
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