電磁調理器は容器 (なべ) 自身の発熱によって容器内の物質を加熱する, いわゆる火を使わない, したがって排ガスや空気汚染のない調理器として, また熱効率のきわめて高い省エネルギーの調理器として注目されている.しかし容器の底がどのように発熱しているかは明らかでなかったし, また熱効率の算出法もまだJIsによっては確立されていない.
そこで本報告ではフライパンでパンケーキを焼いたときのパンケーキの焼き色を測定し, フライパンがどのように発熱しているかその熱分布を調べ, また熱効率算出の方法についても検討を行って, 次のような結果を得た.
1) フライパンでパンケーキを焼いた場合のパンケーキの焼き色を測定して, パンケーキの焼き面には, 電磁調理器の数イルの形に似たパンド状 (環状) の, 焼き色の異なる薄い色と濃い色の部位の生ずることを認めた。これを焼
きむ
らと呼んだ場合, 焼
きむ
らの形状から, 容器底の鉄板の発熱による熱分布も, ほぼ同様のパンド状を呈し, バンドの中心部が最も高い温度になることがわかった.また焼
きむ
らを小さくする調理特性の立場からはフライパンの底の厚さが1.3mmと3.4mmのものを比較すると, 焼
きむ
らは肉厚のフライパンのほうが, また火力については「強」よりも「弱」にしたほうが, 小さくなることを明らかにした.
2) 同じ電力容量の電気コンロと, 電磁調理器で湯をわかした場合に電磁調理器はきわめて短時間に湯をわかすことができ, 消費電力量120W・hrにおける熱効率はそれぞれ約52%, 82%であった.
3) (社) 日本電機工業会の示した自主基準 (表2) では, 熱効率の算出にあたって, なべの重量としてふたの重さを加えているが, 筆者らは実験の結果から, ふたとなべ本体とは別に取り扱い, 材質, 重さ, 形状の決まった特定のふたを使用したなべによって, 熱効率は算出されるべきであることを提唱した.
本報告の一部は, 昭和60年度日本家政学会年次大会 (第37回) で発表した.
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