【はじめに、目的】
平成25年度、埼玉県地域リハ支援体制整備事業のモデル事業が開始され、翌年度から本事業となり、当院は「地域リハ・ケアサポートセンター」を受託し、政令市のさいたま市を担当している。さいたま市は、人口129万人、10区の行政区、27か所の地域包括支援センターを有する大きな自治体である。27・28年度、さいたま市から「地域リハ活動支援事業」のモデル事業を受託、29年度本事業となり、市内3か所に「地域リハ活動支援拠点」を設置した。同年度「いきいきサポーター等推進事業(自主グループ支援含む)」を県PT士会が受託、各区PT等2名を配置、養成講座の実施・自主グループ立ち上げ支援を開始した。この5年間を振り返り、さいたま市における地域支援事業への理学療法士の活動を報告する。
【方法】
26~29年度の地域支援事業へのPT等派遣件数・人数を集計した。29年度開始の「いきいきサポーター等推進事業」内の養成サポーター数、立ち上げ自主グループ数、「地域リハ活動支援事業」は依頼内容を分類化して集計した。
【結果】
派遣件数(人数)は、介護予防サポーター養成講座0(0)→30(51)→66(109)→98(195)、介護予防教室等7(9)→83(164)→134(162)→320(434)、地域ケア会議17(26)→28(58)→7(10)→6(6)、その他の会議・研修会等16(29)→41(72)→31(58)→74(159)であった(26~29年度の順に表示)。
養成サポーター数283名、立ち上げ自主グループ数118と目標を大きく上回った。参加者数は約2000人以上であった。
地域リハ活動支援事業の依頼内容は、体操教室等への支援(介護予防講話・体操・体力測定)が125件(77.6%)と圧倒的に多く、次いで、認知症関連15件(9.3%)、ケアマネジメント関連10件(6.2%)、摂食嚥下関連が6件(3.7%)であった。
【結論】
政令市での地域支援事業の課題は、一つ目は、広域なためPT数が飛躍的に増加する点であった。「地域リハ支援体制整備事業」によってPT等を活動できる体制があった事が極めて重要であった。又、PT士会等が多数の人材育成研修会を開催したことが後押しとなった。二つ目は市・区・地域包括支援センター3者間の合意形成が必須で、地域へ広がるまでの労力が大きい点であった。全市的な視点からコーディネーター役としてのPTが必須で、各区の地域診断・課題抽出に多く関わる必要性があった。
立ち上げ自主グループ数・参加者数は、厚労省が示す高齢者人口の10%にはまだ開きがあるが、初年度としては良好と思われた。
地域リハ活動支援事業は、自主グループの立ち上げを意識して関連する依頼を促し、事業連携を図ったので、体操関連が占めた。今後は認知症、ケアマネジメント、摂食嚥下に関する依頼を誘導し、予定している自立支援型地域ケア会議を意識した事業としたい。今後も、埼玉県と協働し、市内各事業の連動を意識した地域支援事業が可能となるようPTとして参画したい。
【倫理的配慮,説明と同意】
派遣件数・人数等について、派遣した医療機関等や個人のPT等が特定されないよう配慮した発表を行うことを説明して同意を得た。
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