北海道と本州の
アザミ
属(キク科)に5 新種と1 新品種を記載した.いずれもナンブ
アザミ
節Sect.
Onotrophe (Cass.) DC. の種でいずれも狭分布種である.
テングハラアザミ
Cirsium kubikialpicola Kadota(ダイニチ
アザミ
亜節Subsect.
Praticola Kadota)は頸城山地の天狗原山(新潟県と長野県の県境に位置する)の固有種で,
ダイニチアザミ
C. babanum Koidz. から,全体小型で雌性両全性異株であること,総苞片が5–6 列であることなどで異なる.両者には生育地にも違いがみられ,テングハラ
アザミ
は中性の高山草原に生えるのに対して,ダイニチ
アザミ
は池畔や湿地に生える.染色体数2n=34.天狗原山の群落には白花をつける個体が見出され,新品種
シロバナテングハラアザミ
C. kubikialpicola f.
albiflorum Kadotaと名付けた.
レンゲアザミ
C. rengehydrophilum Kadota(カガノ
アザミ
亜節Subsect.
Reflexae (Kitam.) Kadota)は新潟県糸魚川市の蓮華温泉周辺の固有植物で,
ミョウコウアザミ
C. myokoense Kadota から,全体小型で茎の分枝が少なく,総苞が狭筒形で,総苞片が11–12 列で,痩果が淡黄色で長さ2.5 mm,表面は平滑であることなどで異なる.染色体数2n=34.
チタアザミ
C. muramatsuiKadota(ヒメ
アザミ
亜節Subsect.
Tuberosae Kitam.)は愛知県知多半島の固有種で,
スズカアザミ
C. suzukaenseKitam. から,雌性両全性異株であり,総苞片が11–12 列で,小花が小さいことで区別される.染色体数2n=68.
ゼンプクジアザミ
C. verum Kadota(キタカミ
アザミ
亜節Subsect.
Nipponocirsium Kitam. emend. Kadota)は東京都杉並区善福寺の東京女子大学構内とそこから移植された善福寺公園にのみ知られている
アザミ
で,この亜節では総苞片が11–12 列で雌性両全性を示す点で
マルモリアザミ
C. yukiuenoanum Kadota に似るが,中部の茎葉の葉身が羽状中裂~粗い鋸歯縁となり,葉柄の基部が耳状には抱茎せず,分枝した枝が鋭角的に斜上し,総苞が筒形~鐘形で,痩果がより小型であることで区別される.染色体数2n=68.
カリウスアザミ
C. yachiyotakashimae Kadota(チシマ
アザミ亜節コバナアザミ
列Subsect.
BorealicolaKitam. Ser.
Glandulosae Kadota)は北海道標津町・伊茶仁カリカリウス遺跡付近の固有種で,近縁な
コバナアザミ
C. boreale Kitam. から,総苞片が6–7 列で斜上~開出し,総苞と小花が小さいことで区別される.カリウス
アザミ
の生育地は夏緑樹で被われたうす暗い湿地である.染色体数2n=68.
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