【問題と目的】
ワーキング・プア、ニート問題に代表されるように、今日、若年層の働き方が問題になっている。大学卒業後、就職も進学もしない者は平成19年度学校基本調査によると12.4%であり、就職をしたとしても、「7・5・3現象」といわれるように、大学卒業者の3割が3年以内に離職してしまう。また企業が求める人材や採用方法も従来とは変化し続ける中で、大学における出口教育は非常に重要な課題となったのである。そしてそれと同時に、いまや全入時代は現実のものとなったため、大学進学者の中には、入学動機を明確にもたないまま、また自分の今後の生き方について全く考えたこともないままに入学した者も多いと予想される。つまり今、大学では、本来の高等教育に加えて、入口教育と出口教育を行わなければならなくなった。これが大学において
キャリア教育
を推進することになった経緯であろう。しかし
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は大学という教育機関でのみ行っても効果は薄いと考える。
平成11年度に中央教育審議会が小学校段階からの
キャリア教育
の実施を提唱し、文部科学省は平成16年度から「新
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プラン推進事業」を、平成17年度から「
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実践プロジェクト」を開始し、
キャリア教育
の推進に向けての具体的取り組みが始まった。この取り組みの中心になるのは小・中・高等学校であるが、ここから一貫した
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を実施することの重要性がみてとれる。ただし、これは初等教育と中等教育における
キャリア教育
の継続であり、大学までの
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の継続については言及されていない。今後、初等中等教育で培われた
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が大学という高等教育段階で分断されないような
キャリア教育
の実施が望まれる。
そこで本研究では、私立大学の家政・生活科学系学部における
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に焦点をあて、どのような
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が実施されているのか、また
キャリア教育
の高大連携はどのように行われているのか等、
キャリア教育
の動向を明らかにし、
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に対する高大連携の課題を検討することを目的とし、
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の先進大学への面接調査を実施した。
【方法】
調査対象者 家政・生活科学系学部を有している私立大学4校を対象に、
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に携わっている教員3名、事務職員4名の合計7名に1時間~2時間程度の面接調査を実施した。
質問項目 キャリア教育
の必要性、
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の内容、
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の高大連携等。
実施時期 平成19年9月~12月。
【結果】
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の開始時期 1997年~2007年と10年間の幅があったが、
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に本格的に取り組むきっかけになったのは、いずれも「文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(以下、現代GP)に申請し採択されたから」というものであった。
キャリア教育
の内容 キャリア教育
に対して先進的な取り組みを行っている4つの大学に協力を得たため、カリキュラムの中に
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が体系的かつ継続的に位置づけられていた。
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の必要性 7名中6名がその必要性を認めていた。
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が必要だと考える理由としては、「全入時代なので、学部学科を選択する際に、あまり深く考えなくても入学できるため、卒業後の進路を安易に考えている」や「大学時代は4年間しかないけれど、その後の人生のほうがはるかに長いので、自分を見つめる機会を大学時代につくる必要がある」などであった。
キャリア教育
に対する高大連携 現代GPに採択されたプログラムにはすべての大学で
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の高大連携が組み込まれていた。高大連携については各大学で実施されていたが、
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に対する高大連携に関しては、調査時に実施していたのは2校だけであった。そのうちの1校は中学校や高等学校の教員を対象に
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の講演会を実施しており、直接的に生徒に関わっているわけではないため、
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に対する高大連携については今後の課題としていた。もうひとつの大学では、系列校である中学校、高等学校との
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の連携を実施していた。ただし大学との連携プログラムの中で
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を実施するのは非常に難しく、特定の教科の中で行うことが現実的であるとの意見であった。以上の結果のように、高校と大学における
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の連携については、課題が多い。まずは、家庭科という教科の中での
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の連携を今後模索したいと考える。
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