近年,遺伝子組換えや地球環境問題など,科学技術と社会に関する問題の複雑化に伴い,科学者,技術者,行政だけで容易に解決できないことが多くなってきた。そして一般の人々が科学技術に関する意思決定に参加することが求められていると言われる。このような中で,
コンセンサス会議
という新しい意思決定方式が注目を集めている。本論文では,第一にこの
コンセンサス会議
の概要を述べ,
コンセンサス会議
の仕組みはテクノロジーアセスメントの発展したものであり,また,パターナリスティックな政策決定を克服するために出現したことを論じる。その目的は,理想的なコンセンサスを得ることと考えられた。第二にしかしながら,このような
コンセンサス会議
への期待は,理論的な吟味の不十分さによるものであることを指摘し,実際にはその意義はコンセンサス作りというより,問題の民主的な可視化という意味が強いと解釈されるべきことを主張する。この主張は,日本で実際に行われた
コンセンサス会議
の状況から明らかにされる。
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