サーベイランス
は「結果 (outcome) を改善することができる人々に必要な情報を提供できることを目的として, 特定の疾患や出来事 (event) についての発生分布や原因に関するデータを, 収集, 統合, 分析する組織的な手法」と定義されている. 病院感染の
サーベイランス
にあたっては, 感染率を算出するための分母となるべき母集団のデータと, 分子である感染例のデータをとって分析する. その目的は, 感染率を現場にフィードバックし, 対策を施すことにより, 提供する医療ケアの質を向上させ, 究極的には感染率を低下させることである.
病院感染
サーベイランス
を実施することで病院感染が減少するというevidenceが存在する.それを根拠にしてアメリカでは1970年代から全国的な病院感染
サーベイランス
が展開されている. その展開の過程で, 費用対効果の面から全病院的
サーベイランス
は捨て去られ, 感染発生頻度が比較的高い項目, 感染制御による利益が大きい項目, 等に焦点を絞った対象限定
サーベイランス
が行なわれている. ヨーロッパやオーストラリアなどでもアメリカと同様の全国的病院感染
サーベイランス
が確立されつつある. 日本でも諸外国の経験というevidenceに基づき, しかも日本の現在の医療システムに適した全国的病院感染
サーベイランス
の確立へ向けて着実に前進していかねばならない.
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