ツツガムシ病
は,
ツツガムシ病
リケッチア(Orienta
Tsutsugamushi:以下OT)を保有するツツガムシの幼虫
の吸着・刺咬によって発症する。福島県は,
ツツガムシ病
の好発地域であり,届出患者数は2005年と2006年がそれぞ
れ38人,45人で全国1位であり,2007年と2008年はそれぞ
れ44人,67人で鹿児島県に次ぎ全国2位であった。当科で
も,毎年10名前後の患者を診察治療しているが,2008年は
11例の患者が当科を受診した。これらの11例の症例の特記
事項を紹介・報告するとともに,過去の報告例を踏まえ若
干の考察を試みた。男女比は5:6であり,このうち前医
で
ツツガムシ病
として治療された例は2例。前医でツツガ
ムシ病以外の疾患として治療された例は4例。残り5例は
初診で当科を受診し
ツツガムシ病
として治療された。皮疹
は,辺縁が不鮮明な紅斑が全身性に播種性に散在するのが
特徴であるが,紅斑の数が少なく淡いために見逃されて診
断が遅れた例や,紅斑の数が多く濃いために薬疹と誤診さ
れた例もあった。刺し口の数は,1個が9例,2個が0
例,3個が2例であった。刺し口の形態は,痂皮形成が9
例,皮膚潰瘍形成は2例であった。一度吸着したツツガム
シは,移動して吸着を繰り返す事はない。また,OT を含
有していないツツガムシに刺されても刺し口は生じる。こ
のため,刺し口が複数の場合,全ての刺し口からOT が刺
入されたかは不明である。特記すべき症例として58歳女性
の例を紹介する。初診時のIgM 抗体はGilliam 型,Karp
型,Kato 型の全てが陰性(<40倍)であったが,IgG 抗
体はKarp 型が80倍,Kato 型が160倍と陽性であった。1
週後にはIgM 抗体がGilliam 型(80倍),Karp 型(640
倍),Kato 型(640倍)の全てで陽性となった。このこと
は,本例が過去に
ツツガムシ病
に罹患し今回再感染したこ
とを裏付けている。しかし,問診上
ツツガムシ病
の罹患歴
はないため,前回は不顕性感染の可能性も考えられた。
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