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クエリ検索: "ニシゴリラ"
55件中 1-20の結果を表示しています
  • *土田 さやか, 丸山 史人, MUJJWIGA Eddie W., NGUEMA Pierre P. M., 牛田 一成
    霊長類研究 Supplement
    2017年 33 巻 P01
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2017/10/12
    会議録・要旨集 フリー

    「ヒトにはヒトの乳酸菌」というように,動物種を特徴づける腸内細菌が存在している。我々は,野生

    ニシゴリラ
    ,野生マウンテンゴリラばかりでなく,飼育下の
    ニシゴリラ
    からも共通して分離される「ゴリラの乳酸菌」Lactobacillus gorillaeの研究を進めている。これまでの研究によって,ニシローランドゴリラ由来本菌株の表現形質は,飼育個体由来株にくらべ野生個体由株では植物の難消化性成分の分解能が高く,一方,飼育個体由来株は,野生個体由来株にくらべ高いNaCl抵抗性を示すことを明らかにした。これらの表現形質の違いは,飼育ゴリラの食事が飼料作物中心かつペレット給与などでミネラルバランスを十分維持している点,野生ゴリラは自然の植物を摂取しており,まれに昆虫食はするものの食事中のNa不足に常にさらされている点等の食事内容の変化に起因しており,同一種においても株レベルで飼育下への適応が始まっていると考えられた。本発表では,これまでの結果に加え,
    ニシゴリラ
    とは食性の異なるマウンテンゴリラ由来株の生理性状の特徴を示し,
    ニシゴリラ
    とマウンテンゴリラ由来株の表現形質の比較を行う。さらにこれらの菌株の全ゲノム解析の結果を示し,L. gorillaeの種内変異を明らかにするとともに,それぞれが宿主と共生関係を確立するための条件や,飼育下の食事内容に本菌が適応する条件等について考察する。

  • *長尾 充徳, 釜鳴 宏枝, 田中 正之
    霊長類研究 Supplement
    2011年 27 巻 B-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/08
    会議録・要旨集 フリー
     これまで野生の大型類人猿で報告された道具使用は、チンパンジーによるものがほとんどである。野性ゴリラについての報告例は少ないが、2005年にコンゴ共和国において、メス個体が沼地での水中歩行時に長い枝を杖代わりに使用したことや、水中の水草を長い枝で引っかけて採取するなどの報告がある。一方、飼育下では、海外の動物園において数例の報告がある。しかし、日本の飼育下ゴリラにおいては報告例がなく、エピソード的なものにとどまっている。
     本研究では、京都市動物園で飼育中の
    ニシゴリラ
    において観察された道具使用を、その習熟過程に焦点を当てて縦断的に調査した。対象はモモタロウと名付けられた10歳のオス個体で、2010年10月に恩賜上野動物園から来園した。来園後、簀ノ子下に入り込んだ餌を枝で掻き出す自発的な道具使用が観察された。そのため、この操作が引き出せるようなフィーダーを作製し、屋内展示室に設置した。観察は屋内に設置している監視カメラの録画記録を利用して行った。
     設置したフィーダーは、一辺の長さが約55cm、高さ約15cmの直方体の木枠を床面に固定し、透明ポリカーボネイトを天板として取り付けた。木枠の3辺に合計6か所(1辺各2か所)の取り出し穴(長さ約15cm、高さ10cm)を開けた。
     フィーダー内には、リンゴ、ニンジン、サツマイモなどの小片を合計約1000g入れた。室内にはこの他に葉物野菜や、カシの枝などを複数箇所に置き、夕方の給餌分とした。観察はフィーダーを設置した2011年2月2日から開始し、現在も継続中である。
     モモタロウは、設置初日から餌として与えているカシの小枝を払うなどの加工を施して穴に挿入し、餌を取り出す道具使用行動を見せた。道具使用を試みた時間は5日目から増加に転じ15日目以降は合計30分間でほぼ全ての食べ物を取り出せるようになった。観察の結果、モモタロウはフィーダーに対する座り位置がほぼ一貫しており、それに対して正面の穴に枝を挿入する回数が圧倒的に多く、その際にはほとんど左手を使った。しかし、向かって右側の穴には右手を使う割合が多くなり、場所によって道具を扱いやすい手に使い分けていることが示唆された。枝の使い方については、初日から18日間の観察で、力任せに枝を振る方法から、向かい側の穴に押し出したり、手前の穴に優しく引き寄せたりするなどの技術の向上や手順の確立が見られた。
  • 田中 正之, 前垣 慧, 伊藤 二三夫, 佐々木 智子, 長尾 充徳
    日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
    2015年 51 巻 1 号 55-
    発行日: 2015/03/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
  • 三家 詩織, 伊藤 二三夫, 佐々木 智子, 伊藤 英之, 長尾 充徳, 田中 正之
    日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
    2014年 50 巻 1 号 51-
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー
  • *長尾 充徳, *釜鳴 宏枝, *田中 正之
    霊長類研究 Supplement
    2013年 29 巻 B2-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     2011年 12月 21日,京都市動物園に於いて
    ニシゴリラ
    の雄個体が誕生した.この個体は国内初の飼育下第 3世代となる個体であり,飼育下生まれの両親をもつゴリラとしても国内初であった.母親は出産直後より赤ん坊を抱き,正常な育児行動が見られたが,母乳の分泌が不十分だったため,脱水状態となり衰弱し,生命保護のために出産 5日目より人工哺育となった.これまでに霊長類では,人工哺育による繁殖の弊害が数々報告されている.我々は,欧米の動物園での人工哺育個体群れ復帰事例を参考に,京都市動物園に於ける導入計画を作成し実行した.復帰過程を 5段階に分け,各過程における時間的制限は設けずに進めた.最終的には 1年から 1年半で群れ復帰させることを目標とした.生後約 1か月で両親の過ごしている施設への馴致を開始し,生後約 2か月からほぼ毎日,両親と対面する時間を設けた.対面開始当初から両親とも赤ん坊に優しく接したため,数日後より檻越しでの直接接触も開始した.対面と直接接触は徐々に時間を延長したが,その後も,両親とも攻撃的な行動をとることはなかった.環境,両親への馴致は段階通り順調に経過し,生後約 8か月で赤ん坊を戻す個体を母個体と決定し,生後約 10.5か月から母個体との同居を開始した.同居当初の母個体は,戸惑うように,赤ん坊に対し距離を置いていたが,攻撃的な行動は見られなかった.赤ん坊も人間から離されたことによるパニックは示さなかった.同居 2日目,赤ん坊から母個体の腕にしがみつく行動をきっかけに,母子の距離は急速に縮まった.生後約 11.5か月で雄個体とも平和的に同居が可能となり,群れ復帰が完了した.今回の事例で最も重要な要因は,人工哺育に至る経緯が,育児放棄ではなく子どもの衰弱によるもので,母個体が母性行動を示していたことだと考えられる.また,視覚的接触がない期間が約 1か月と短かったことも,母性を呼び覚ます大きな要素だった思われる.
  • *田中 正之, 櫻庭 陽子
    霊長類研究 Supplement
    2018年 34 巻 P22
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    Inoue and Matsuzawa(2007)で示されたチンパンジーにおける優れた作業記憶能力が,同じヒト科の近縁種である

    ニシゴリラ
    Gorilla gorilla)においてどの程度見られるかを,チンパンジーと同様の課題において調べた。対象としたのは,京都市動物園で飼育されている
    ニシゴリラ
    1個体(愛称:ゲンタロウ,2011年12月21日生,男)で,両親とともに3個体で暮らしている。研究は,ゴリラ舎屋内に設けられた多目的居室で行った。室内は15in.タッチモニターが壁面に固定され,万能給餌器とともにノートPCによりコントロールした。課題はアラビア数字を刺激とする系列学習課題であり,画面上に設けられた4列3段の12のセルにランダムに提示され数字を,小さい順に触れていき,すべての数字に触れることが強化された。触れる順序を間違えると画面がブラックアウトし,初期画面に戻された。数字は1から9までの一桁の数字からランダムに選ばれた4個,5個,6個の数字を用いて,最も小さい数字に触れたときに残りの数字がすべて市松模様で隠されるマスク条件と,隠されない非マスク条件の3×2条件で分散分析を行い,正反応数を比較した。1セッションは42試行とし,各条件20セッション行った。結果から,アラビア数字の個数によらず,非マスク条件がマスク条件に比べて成績がよかった。非マスク条件では,画面上の数字が4個と5個では成績に有意差はなく(77%と76%),6個のとき他の2条件と比べて有意に低下した(71%)。マスク条件では,4個(61%),5個(53%),6個(35%)と画面上の数字が増えるほど成績が下がり,各条件間で有意差が見られた。また,マスク条件では訓練効果も見られなかった。
    ニシゴリラ
    で見られた成績は,6数字のマスク条件においても,ランダムに数字を選択して正反応が得られる期待値(0.1%)よりもはるかに高く,高い作業記憶能力を持っていることが示唆された。

  • *岩田 有史
    霊長類研究 Supplement
    2011年 27 巻 A-04
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/08
    会議録・要旨集 フリー
     低地熱帯雨林に生息する
    ニシゴリラ
    Gorilla gorilla)は山地林に生息するヒガシゴリラ(Gorilla beringei)と異なり、季節的に多量の果実を採食することが知られている。しかし、その食性の相違にも関わらず、
    ニシゴリラ
    の社会構造はヒガシゴリラのそれと変わらず、一頭のシルバーバック(オトナオス)と複数のオトナメス並びにそのこどもとから成り立っている。また、グループサイズにおいても、ヒガシゴリラと
    ニシゴリラ
    の間で差はない。ゴリラの体サイズの性/年齢間での相違は非常に大きく、シルバーバックはオトナメスと比較して、その体サイズはほぼ倍である。同種の間でも、体サイズによって栄養要求が異なると考えられるが、常に群れのまとまりを維持しつつ遊動する中で、各個体はどのように栄養要求を満たしているのであろうか。
     調査地はガボン共和国ニャンガ州ムカラバ国立公園。調査機関は2006年8月から2008年5月までの22ヶ月である。採食品目の決定ならびに各品目の採食量に関しては、糞分析と遊動ルート上の食痕によって調査した。その他の行動に関しては直接観察により記録した。
     オトナの個体に比べてコドモの個体は糞中の果実割合が有意に高く、葉の割合は有意に低かった。シルバーバックとオトナメスの間には果実、葉、THVの糞中割合には有意な差が検出されなかったが、樹上で採食されることが多い果実に関してはオトナメスでの糞中で有意にシルバーバックより高かった。ムカラバのゴリラは体サイズごとに食物を食べ分け、競合のレベルを下げることで、ヒガシゴリラと同様な単雄複雌群を維持していることが示唆された。また、同時に同じ樹上で採食する個体数が少ないほど、採食継続時間は短かった。さらに、年長のコドモ個体は親と一緒に行動せず、コドモ同士で一緒に行動する傾向が見られた。このことは、少ない個体数で行動する際、群れからはぐれてしまわないようにする行動であると考えられる。以上のことから、ムカラバの
    ニシゴリラ
    は採食品目、並びに採食行動を体サイズや同時に採食する個体数に応じて変化させることで、ヒガシゴリラと同様の社会構造並びグループサイズを維持していると考えられる。
  • *田中 正之, 宝田 一輝, 長尾 充徳, 釜鳴 宏枝, 山本 裕己
    霊長類研究 Supplement
    2012年 28 巻 P-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     私たちは飼育下の
    ニシゴリラ
    の行動についての理解を深めるべく、これまで報告例のほとんどない、夜間の動物舎内での行動の観察をおこなってきた。対象としたのは、京都市動物園で飼育されている
    ニシゴリラ
    (Gorilla gorilla)2個体で、1年にわたる観察から、各個体の平均睡眠時間や睡眠時間の季節による変化などを見出した。さらに、飼育員が退室して消灯された後でも、夜中に起き出してきて、餌の残りを拾ったり、水を飲んだり、排便をしたりといった行動をおこなっていることも見出した。さらに、メスのゲンキは、2011年12月21日0時12分に出産をした。出産から4日間は赤ん坊を抱いていたが、赤ん坊の衰弱が激しく、やむなく母親から離して人工保育に切り替えられた。この機会に、出産前後に母親であるゲンキの夜間の行動がどのように変化していたかを分析した。観察には、ゴリラの居室に取り付けた監視カメラの映像を用いた。観察期間は、出産前の2011年12月9日から出産日である2011年12月21日まで、および赤ん坊を分離した12月25日から31日までであった。各日の夕方の17時から翌朝の8時までの15時間を、録画ビデオを再生するソフトウェア(QNAP VioStor Player)の動き検出機能を用いて、夜間に動きが検出された時刻を記録した。この記録をもとに、睡眠時間や夜間に起き出してくる活動内容、さらに寝ている姿勢から起き上がるといった大きな姿勢変化の間隔について分析した。その結果、出産の2日前にあたる12月18日の夜まで、各日の睡眠時間の平均値は12時間46分で、以前の観察時の結果と差はなかった。しかし、出産の前日の19日の夜になると、30分未満の短い間隔で寝たり起きたりを一晩中繰り返しており、まとまった睡眠時間をとっていなかったことがわかった。出産後の25日には、出産2日前以前の状態とほとんど変わりない状態に戻っていたことも分かった。これらの「平常時」の行動を分析すると、約59分(中央値)の間隔で姿勢変化が見られていた。
  • *田中 正之, *伊藤 二三夫, *佐々木 智子, *長尾 充徳
    霊長類研究 Supplement
    2014年 30 巻 P37
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/28
    会議録・要旨集 フリー
    現在,日本国内で飼育されているゴリラの人口は,わずか25人である。過去50年以上にわたる飼育の歴史の中で,日本では死産を含めてもわずか14人しか子どもが生まれていないことからも明らかなように,繁殖の失敗が主な原因である。しかし,最近5年間で見ると,5人の赤ん坊が生まれており,改善傾向にある。京都市動物園ではこれまでに,独自に物理的および社会的面からゴリラの飼育環境の改善に取り組んできた。屋外運動場ではゴリラが食べても遊んでも,つぶしてもよいような条件下で多種・多数の植物を植え,生育させてきた。2008年に京都大学との間で野生動物保全に関する連携協定を結んでからは,ゴリラの健康管理の取り組みとして,心音を記録・分析するなどしてきた。
    ニシゴリラ
    についてより深く理解するために,2010年には京都大学の山極寿一教授の協力を得て,飼育担当者がガボン共和国の国立公園を訪ね,野生ニシローランドゴリラの生態とその生息地の植生を観察する機会を得た。そこで見た野生のゴリラは,日中の多くの時間を樹上で過ごしており,これまでの動物園におけるゴリラ展示方法との違いを痛感した。京都市動物園では新しいゴリラの飼育施設「ゴリラのおうち~樹林のすみか~」を造るにあたり,屋外・屋内に樹上空間を模した複雑な3次元構築物を設けた。来園者は,野生のゴリラのように頭上の空間を移動するゴリラを見ることができる。さらに,屋内には比較認知科学研究のためのタッチモニターを設置した勉強部屋も用意された。来園者はチンパンジー同様にゴリラの知性の展示を見ることもできる。新しい施設は本年4月27日にオープンする。発表では,新施設におけるゴリラの環境利用状況も報告する。
  • 田中 正之, 松永 雅之, 島田 かなえ, 伊藤 二三夫, 佐々木 智子
    霊長類研究 Supplement
    2015年 31 巻 P18
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2016/02/02
    会議録・要旨集 フリー
    京都市動物園では,2008年より園で飼育する霊長類を対象に,アラビア数字を用いた系列学習課題に参加する機会を与え,その学習の様子を公開している。この学習課題には,本来高い知性をもつ霊長類に対して,彼らの知性を発揮する機会を与える認知エンリッチメントの側面をもつとともに,課題の成功時にわずかのりんご片を報酬として与えることで採食エンリッチメントの側面ももつ。また来園者に対しては,学習に取り組む様子を観察する機会を与えることで,霊長類のもつ高い知性を垣間見ることのできる「知性の展示」としての側面をもつ。対象としたは,京都市動物園で飼育されているチンパンジー6個体,
    ニシゴリラ
    3個体,シロテテナガザル2個体,マンドリル6個体の4種17個体である。課題は15インチタッチモニター上にランダムに提示されるアラビア数字を,昇順に触れていくことであった。初期画面では画面中央下に白い円が提示され,これに触れると,アラビア数字が提示された。正しい順序で触れた数字は消えてゆき,すべての数字が消えると,画面に「せいかい(正解)」という視覚的フィードバックが表れ,チャイムが鳴り,りんご片が報酬として与えられる。途中で間違った数字に触れると,画面がブラックアウトし,初期画面に戻る。学習基準を連続する100試行中75試行正解が2回続くこととし,基準に到達すれば,数系列を1つ増やした。2015年4月時点で,もっとも系列長が長い個体はチンパンジーの大人オス個体で,12数字の系列学習が規準に到達している。もっとも学習速度の速いのは,
    ニシゴリラ
    の子ども個体で,11か月間で10数字の系列を学習した。学習では種を問わず,子ども個体ほど初期の学習速度が速い「年齢効果」が顕著に見られている一方,到達レベルでは種による差はほとんど見られなかった。霊長類の学習の様子は,ガイドや講演などの教材として活用している。
  • 『霊長類研究』第14期編集委員会
    霊長類研究
    2017年 33 巻 1 号 43-44
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/27
    [早期公開] 公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー
  • 田中 正之
    日本野生動物医学会誌
    2014年 19 巻 1 号 1-7
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    現代の動物園には,果たすべき4つの役割があると言われる。保全・研究・教育とレクリエーションである。しかし,研究や教育の面では,日本の動物園はその役割を果たしているとは言い難い。京都市動物園では,2008年より京都大学と連携して,野生動物保全に関する研究や教育を共同で行ってきた。さらに2013年4月より新たなセクションとして,生き物・学び・研究センターを設置し,動物園が主体的に研究や教育を行う姿勢を明らかにした。本稿では,京都市動物園が現在取り組んでいる研究や教育の取り組み事例を紹介する。研究では,霊長類を対象にした比較認知科学研究と,ゴリラの妊娠・出産から人工哺育児を両親に戻すまでの過程を観察した研究を紹介する。教育としては,地元の中学校と連携した体験実習プログラムを紹介する。生き物・学び・研究センターでは,研究・教育を実施する上で必要な資金を,外部の助成金を獲得することでまかなっている。それら外部資金についても紹介し,その獲得の意義について,外部評価を受けるという視点から考察したい。

  • 長尾 充徳, 釜鳴 宏枝, 山本 裕己, 高井 進, 田中 正之
    霊長類研究
    2014年 30 巻 2 号 197-207
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2015/02/17
    [早期公開] 公開日: 2014/09/08
    ジャーナル フリー
    The purpose of this paper is to describe the early introduction protocols in a hand-reared Gorilla infant (Gorilla gorilla) that was introduced to biological parents at Kyoto City Zoo. The introduction process was initiated when the infant was one year old. In Dec. 21, 2011, an infant gorilla was born at Kyoto City Zoo. The infant is the first one who has captive-born parents, and the fourth generation of gorillas in Japan. The mother successfully held the infant, but could not give her milk enough to feed the infant. The baby showed dehydration and weakened. For the purpose of saving its life, we separated the infant from the mother and began to rear it. To avoid harmful influence of hand-rearing, we planned to reintroduce the hand-reared infant to its parents on the basis of successful cases in European and American zoos. We separated the processes of reintroduction into five steps, each of which had no time-limit, but totaled one, or one and half years. We started to show the infant to the parents when the infant was two months old. In the beginning, each of the parents showed a gentle attitude, and then started to directly contact with their infant. Habituation with the physical environment and the parents was going smoothly under careful observation. We returned the infant to its mother successfully at 10.5 months of age. Then, in its 11.5 months of age, we reintroduced the mother and the infant to the adult male (i.e., the father of the infant). Finally, the parents and the infant live together peacefully now. We thought of the processes of reintroduction and found one of the most important factors was that separation was attributed by not giving up nursing, but insufficiency of milk. Another factor may be that separation period was short enough to induce a sense of responsibility as a mother.
  • 竹ノ下 祐二
    霊長類研究 Supplement
    2015年 31 巻 P12
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2016/02/02
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに] 協同育児は人類の社会進化の基盤をなすとされる。その進化史を探るうえで、大型類人猿の非母とアカンボウ・コドモの関係は有用な示唆を与えてくれる。昨年度に引き続き、名古屋市東山動物園のゴリラのアカンボウ(キヨマサ)の母親、非母との近接関係と社会交渉を観察,分析した。本発表では、昨年度大会で報告した61~16ヶ月齢にひきつづき、18~28ヶ月齢での結果を報告する。[対象と方法] 2014年5月現在、東山動物園のゴリラの群れのメンバーは、観察対象のキヨマサ、母親のネネ(41歳)、父親でシルバーバックのシャバーニ(17歳)、ネネと別のオスとのムスメのアイ(11歳)の4頭で、アイとシャバーニのムスメのアニー(11ヶ月)が人工哺育されていた。直接観察とビデオ撮影によって行動を記録した。[結果] キヨマサとネネの接触は授乳時以外ではあまりみられなくなった。16ヶ月齢までと比べ、キヨマサとネネが3m以上離れる時間は増加したが、ネネはキヨマサが視界外に移動すると追従した。キヨマサはネネが自分に追従しなかったり、自分から離れると不安を示すことがあった。シャバーニ、アイとの遊びは頻度、時間ともに増加した。16ヶ月齢までと比べ、キヨマサから遊びを誘いかける場面が増加した。ひとり遊びの時間も増加した。母親のネネとの遊びはほとんどみられなかった。シャバーニとアイは、接近するキヨマサを払いのけることはあったが、明確な攻撃行動は示さなかった。ごくまれにネネとアイからキヨマサへの食物分配がみられた。2015年1月にアニーが群れに再導入されると、アニーともよく遊ぶようになった。[考察] ゴリラの非母は、アカンボウに母からは得られない刺激を提供する、子育ちに不可欠な存在だといえる。そして、母親はアカンボウにとってprimary caregiverであるだけはなく、非母-子の社会交渉を監視し調整するfacilitatorでもある。この、母親によるfacilitationは、協同育児の進化における前適応と考えることができる。
  • 黒鳥 英俊
    霊長類研究
    2017年 33 巻 2 号 79-89
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/19
    [早期公開] 公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー
  • 田中 正之
    動物心理学研究
    2016年 66 巻 1 号 53-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/27
    [早期公開] 公開日: 2016/06/19
    ジャーナル フリー
    Kyoto City Zoo has collaborated with the Wildlife Research Center of Kyoto University according to the partnership agreement on research and education in wildlife conservation since 2008. As a result of this collaboration, Kyoto City Zoo has established a new section, the "Center for Research and Education of Wildlife," to further promote research and education in the zoo. We have continued to run the "Exhibition of Intelligence" for more than seven years, with four species of primates: chimpanzees, western gorillas, white-handed gibbons, and mandrills. We have also observed various types of behaviors in giraffes, red pandas, Brazilian tapirs, and Humboldt penguins to understand the behaviors in each species. In November 2014, four Asian elephants were given to our zoo by Lao P. D. R. We have used this great opportunity to start various types of research on the elephants, collaborating with many university researchers. We also promote environmental education using this theme. I introduce the activities of research and education in the zoo from the perspective of the "four roles of modern zoos."
  • 藤野 健
    霊長類研究 Supplement
    2016年 32 巻 P40
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/21
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】ゴリラは幅のある樹幹上や地上では専らナックルウォーキングで水平移動するが、他方腕渡りが観察される機会は大変少ない。3歳7ヶ月齢のコドモ個体の腕渡りを動画撮影する機会を得たのでその特徴を報告する。【材料と方法】京都市動物園にて飼育される

    ニシゴリラ
    (G)コドモ雄(撮影は2015年7月)を、過去に撮影したキンシコウ(R)のコドモ雄、アカアシドゥクラングール(P)雌雄成体、シロテテナガザル(H)雌成体のビデオ画像と比較した。【結果】Gはケージ内に渡された全長約7mのロープを休み休みに緩慢に腕渡り移動した。両手でぶら下がり、後肢、特に下腿をぴょんと屈して幾らか重心を後方に移動させ、その反動で片手でぶら下がりを開始する際の推進力の足しにすると思われる独特な像を示す。これはブランコの漕ぎ始めの動作を連想させるが、前方推進力産生に寄与する効果は少ない様に見え、当個体が学習した動作の可能性もある。左右交互の前肢突き出しに伴い、顔面は前方を向くが、Hの様に頸部を迅速に回転させ常時顔を前方に向ける程では無い。体長軸回りの胸郭の回転発生に伴い。腰も位相差なく、つまり「胴体」が一体となり、左右に反復回転する。尚G成体に腕渡りは観察されなかった。【考察】Gの腕渡り動作には、Hの様な頭部、胸郭、腰間の逆回転性の発生は弱いか或いは観察されない。これに加え俊敏性と巧緻性に劣る点からもセミブラキエーターの腕渡りに類似する。但し手指で体重を支える能力は手足を用いて頻繁にぶら下がり遊びする点からも明らかにGが優れる。Gの胸郭形態と肩甲骨の背側配置は、祖先が腕渡りに相当程度進んでいた事を物語るが、観察された運動特性からもGがヒトと同様に、前方推進機能を低下させた腕渡り動物、即ち過去に獲得したブラキエーターとしての能力を失いつつある動物と理解可能である。

  • *斎藤 英彦, *山田 格, *川田 伸一郎, *田島 木綿子
    霊長類研究 Supplement
    2013年 29 巻 A1-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ゴリラの上肢で,肘レベルで正中神経の本幹から分岐し前腕前面を斜走して手関節尺側縁に至り,手掌深部に入って手内在筋を支配する尺骨神経深枝相当の比較的太い神経束が見られた.この神経束が腕神経叢のどの神経根・幹・束に由来するのか,尺骨神経を構成する神経線維束との関係を検討し,ヒトの正中・尺骨神経間の Martin-Gruber anastomosisと比較検討することである.
    【材料・方法】材料はメスの
    ニシゴリラ
    Gorilla gorilla(推定年齢 40歳)の頚椎外側縁で切断された右上肢である.骨・関節を抜いて神経根レベルから指先までの筋肉神経標本を作製した.手術顕微鏡視下でこの神経を近位方向に腕神経叢の神経根レベル迄可及的に神経上膜を除去して神経周膜に被覆された神経線維束を追究した.
    【結果】正中神経から前骨間神経が分岐する円回内筋レベルで,その尺側からこの神経束は分岐していた.前腕近位部で尺骨神経から分岐した細い枝が二分しこの神経束と交通していた.手関節尺側縁に達したこの神経束は有鉤骨鉤の尺側を回って手掌深部に入っていた.手掌深部で環・小指列の虫様筋,全骨間筋,母指内転筋を支配していた.この神経の神経線維束は前骨間神経,正中神経本幹の神経線維束と分離することができ,近位方向に追って行くと,大部分の線維束は内側神経束から来ていた.
    【考察】Raven(1950)の Plate 40には,今回見られた神経と同様な正中神経から分岐して手関節尺側縁に走る神経が描かれている.ヒトでは内側神経束から尺骨神経を経由して手の内在筋に至る神経線維束(深枝)が,内側神経束から正中神経に入りそこからこの神経を経由して手の内在筋に達している.Hepburn(1892)によれば,ある種の霊長類では正中神経と尺骨神経の交通は普通に見られるという.進化の一過程なのかもしれない.
  • *岩田 有史, 安藤 智恵子
    霊長類研究 Supplement
    2009年 25 巻 P-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/17
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    ニシローランドゴリラはヒガシゴリラと比較して季節的に,かなり多くの果実を食べることが知られている。果実は草本と比較して,パッチ状に分散しており,一日の遊動距離は主に草本を採食する山地林のヒガシゴリラと比較して長くなると考えられる。実際,ニシローランドゴリラの一日の平均遊動距離は他の亜種よりも長いことがこれまでの研究で分かっている。またニシローランドゴリラにおいては果実をよく食べる時期には,そうでない時期と比較して遊動距離は長くなり,遊動域も広がる傾向がみられる。これまでのムカラバでの研究で,ムカラバのゴリラも他の地域のゴリラと同様に果実の多い時期にはその食性の五割程度を果実に依存している。本研究では1:ムカラバのゴリラの日遊動距離は果実消費量と相関するのかしないのか。2:季節によって遊動域の利用の仕方がどのように変化するかの2点について考察する。
    月ごとの各カテゴリの糞中割合の変動をみてみると,果実と葉は月により大きく変動し,繊維は比較的,変動の幅が少ないことが分かった。次にゴリラの一日あたりの遊動距離を調べた。月ごとに遊動距離の平均をとり,糞中の月間平均果実割合と比較すると正の相関を示した。このことは果実食に移行するとともにゴリラの遊動距離が伸びることを示唆している。遊動面積の月平均と糞中の月間平均果実割合を比較するとこれにも正の相関が見られた。このことから,やはり果実消費量が増えるとゴリラが利用する土地の広さも広がることが判明した。遊動域の利用の仕方について,果実食傾向が強い期間と弱い期間の間で大きな差が見られた。果実食傾向が強い時期には広い面積を利用しながらも,ある特定の地域を頻繁に利用し,結果としてcore areaが小さくなる傾向を示した。逆に葉食の傾向が強い時期においては狭い面積を満遍なく利用し,その結果として比較的広いcore areaを持つ傾向がみられた。
  • *座馬 耕一郎, *西川 真理
    霊長類研究 Supplement
    2012年 28 巻
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/11/01
    会議録・要旨集 フリー
     「動物は,夜,何をしているだろう?」そんな興味を抱く人は多いだろう。たとえば昼行性霊長類を夜明けから日没まで調査している研究者の中には,調査を終えたあと真夜中に彼らの声や活動音を聞いた経験を持つ者も多いと思う。また動物園の飼育員は日中の業務を終えた後,動物たちが獣舎でどのように過ごしているか気になっていることだろう。1日の半分は夜である。その夜の動物を観察することで,昼間の動物とはちょっと違った新しい知見が得られるはずである。
     本自由集会では,夜の動物の行動研究について大きく2つの点について注目していきたい。ひとつは研究テーマである。夜ならではのテーマとして,まず睡眠が挙げられる。睡眠は哺乳類にとって「脳の脳による脳のための」活動であるとされているが,安らかに眠るために,動物たちはどのような寝相をとり,どれくらい眠っているだろうか? また夜の自然環境下には夜行性の動物や捕食者が活動している。ではそれらの動物に対して昼行性の動物たちはどのような行動をとっているのだろうか? そしてそもそも,夜は眠っているだけで,昼と同じ行動は見られないのだろうか?
    議論したいもうひとつの点は観察方法である。夜は暗く,新月の夜などは目の前にある手すら見えない。テーマがあっても観察する手段がなければ研究として成立しないが,夜間観察の方法にはどのようなものがあるだろうか。
     本自由集会では,現在おこなわれている飼育下および野生下の動物を対象とした先駆的な研究を紹介し,夜の動物の行動研究の意義やおもしろさについて情報交換をおこなう。

    話題提供者
     高木直子(京都市動物園)「飼育下のキリン,ゾウ」
     西川真理(京都大学人類進化論)「野生下のヤクシマザルとヤクシカ」
     持田浩治(琉球大学熱帯生物圏研究センター)「野生下のヤクシマザル」
     宝田一輝(京都大学野生動物研究センター)「飼育下の
    ニシゴリラ

     座馬耕一郎(林原類人猿研究センター)「飼育下と野生下のチンパンジー」
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