洞結節細胞におけるNa電流 (I
Na) の存在につきいくつか報告はあるが, I
Naの解析と生理的機能の詳細な検討はないためこれを調べた.家兎洞結節より
ペースメーカー
細胞を単離し, 細胞全膜電位固定法 (20mM [Na
+]
0, 22~24℃) でI
Naを解析した.またナイスタチン法を用い生理的条件下 (130mM [Na
+]
0, 35~37℃) で, 自発性活動電位 (SAP) に対するテトロドトキシン (TTX) の影響を調べ, 鋸歯波電位固定 (+0.11 V/sec) での膜電流に対するTTXの影響と, 活動電位固定でのTTXによる補償電流 (I
Na, comp) を測定した.電流-電圧曲線での閾値は-63.8±1.8mV (n=12) で, 定常状態における窓電流は-63~-43mV間に存在したが, 1pA以下であった.浅い保持電位 (-88~-68mV) での閾値は-63~-48mVへと逐次陽性側に変移した (n=4) .さらに, 非定常状態 (250msecの条件付け電位) における易利用度-電圧曲線も陽性側に変移した.SAPの0相への発火電位は-42±2mV (n=10) で, 鋸歯波電位固定での閾値は-42±4mV (n=4) であった.TTX (20μM) は0相最大立ち上がり速度を12.0±1.0から5.1±0.5V/Sec (n=15) へ有意に減少させたが, 自動能に有意な変化はなかった.I
Na, compは0相 (-41±3mV) で+7.0±1.0pA/pF (n=12) 認めたが, 4相には認められなかった.洞結節細胞のI
Naが-64mVで活性化されるのに, SAPで0相にのみ関与する結果は, 生理的自動興奮時には活性化電位が-40mV近傍へ陽性偏位している可能性がある.
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