医療サービスの重要な特性は医療サービスはニーズに基づいたサービスであることである. したがって, 医療の場合には, 消費行動に特徴がある. すなわち, 医療という財の消費がニーズに基づき, かっそのニーズの発生が予測できないために, 事前にその消費者が消費を予測できない. そのような特徴のために医療提供者はマーケティングを軽視していたと想像される. しかし, 米国ではすでに, 医療機関が広報・広告を含むマーケティングの部署をつくり, 数名の人員を配置することが常道になっている.
今回, 日本での医療機関におけるマーケティングの実態を明らかにする上でアンケート調査を企画した.
病院へのアンケートは, 調査対象は病院団体では最大である日本病院会の会員病院 (2,621施設) 事務長および院長とし, 調査方法は無記名式郵送質問紙調査, 送付は平成13年10月18日, 対象は2,621 (ただし各病院2通) 病院回収: 1,090通であった.回収率は21%であった.
マーケティング専門部署をおきたいという意図がある病院が165病院あった. 投書箱については, 本調査では利用に関してはさほど積極的ではない. 患者のデータベース管理についても現状でも行っている病院は100病院にとどまった. マーケティング専門の部署をおきたいという変数を被説明変数, 病院の基本属性を説明変数として判別分析を行ったところ, 標準化された正準判別関数係数は, 許可病床, 一般病床でそれぞれ, 1.77,-2.13であった.
したがって, 許可病床数が多いほどマーケティングへの関心が高いが, 一般病床数が多いほど関心が低いという結果が得られ, ニーズに基づいたサービスが中心の急性期病床である一般病床は, 慢性期の病床よりもマーケティングに対する関心が少ないことを示す結果が得られた.
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