中小企業については,その企業属性等に応じ,中小企業の実態をより適切に示した財務諸表の方が,社会的信頼性を高めることができると考えられるので,大
企業会計基準とは別個の中小企業会計
基準が必要である。これに関して現在,日本商工会議所等が公表した「中小企業の会計に関する指針」等が並列して存在しており,いわゆる「会計基準の多様化」が見られる。これらの我が国の中小
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基準については,概念フレームワークが明示的に示されていないが,内的整合性のある一貫した会計基準を設定するためには,これらの中小
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基準を基礎づける概念フレームワークが重要であると考えられる。
本稿では,米国公認会計士協会(AICPA)が公表した「中小企業のための財務報告フレームワーク」(中小企業版FRF)を参考にして,我が国の状況を考慮に入れながら,いわゆる「中小
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要領」にとって最適な概念フレームワークを提言することを目的としている。このために,まず中小
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基準の設定アプローチについて検討する。そして,この中小
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基準の設定アプローチとして適切なアプローチを採用していると考えられる米国の中小
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基準の概要とAICPA の中小企業版FRF の概念フレームワークの内容を検討する。最後に,これらのことを考慮し,かつ我が国の状況を加味して,「中小
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要領」にとって最適な概念フレームワークを提言している。
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