【目的】
社会の急速な発展に伴い,文部科学省は教育の情報化を進めており,「教育の情報化に関する手引」や「教育の情報化ビジョン」等でICTの活用について言及している。家庭科の被服製作の効果的な指導を行うために高橋らは
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教材を製作し,
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教材導入の効果について検証している。その
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では,まつり縫いのみ右利き,左利き両方の縫い方が説明されていた。本研究ではインターネットによる基礎縫い
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の実態を把握し,右利き用・左利き用両方の
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を作成した。また,作成した
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の理解度を調査するとともに,大学生を対象として基礎縫い技能の実技調査を行い,教材の有用性を検証した。
【方法】
(1)
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を作成するにあたり,インターネット(msn japan,YouTube)による基礎縫い
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の掲載内容に関する実態調査を行った。
(2)基礎縫いに関する
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(玉結び,玉どめ)を作成し,大学生98名に視聴させ,
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への理解度についてアンケート調査を行った(2017年6月)。
(3)(2)のアンケート結果を踏まえて
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を改善し,再度大学生125名を対象に
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への理解度についてアンケート調査を行った(2017年10月)。同時に,玉結び・玉どめについて実技調査を行った。その際
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を視聴しながら玉結び・玉どめを作製させた。実技調査は,各自にフエルト(10cm×10cm),縫い針,手縫い糸,糸切りばさみ,針さしを配布し,玉結び・玉どめのできばえ評価(3段階)を行った。
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を視聴しなかった状態で実技調査を行った(2016年10月大学生150名)結果と比較検討した。
【結果】
(1)基礎縫いに関する
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はmsn japanが7件,YouTubeが12209件投稿されていた。しかし,左利き用の基礎縫い
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が非常に少なかった。右利きの人・左利きの人両方が理解しやすい内容にするため,右利き・左利き両方の説明を行う
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を作成することにした。
(2)縫製の基礎となる玉結び,玉どめの方法について右利き用・左利き用両方の
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を作成した(玉結び約10秒,玉どめ約30秒)。大学生を対象に基礎縫いに関する
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の理解度について調査を行ったところ,66.0%の人は「理解できた」と回答した。改善点として「
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の下に説明文をつけること」,「
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のスピードを遅くすること」,「指先をもっと見えるようにすること」が挙げられていた。
(3)(2)の改善点を踏まえ,玉結び,玉どめ,なみ縫いについて右利き用・左利き用両方の
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を作成した。大学生を対象にこの
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への理解度について調査を行ったところ,91.2%の人は「理解できた」と回答し,その理由として「映像だけでなく,文字があったから」,「右利き用・左利き用両方の説明があったから」といった内容が挙げられていた。改善点を記入した人は3名であり,その内容は「
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のスピードをもっと遅くすること」,「
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の下の説明文をわかりやすい言葉にすること」であった。
基礎縫いに関する
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の視聴の有無による実技調査の評価結果について,平均の差の検定を行った。玉結びについては危険率1%においてt=4.19となり,
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を視聴しなかった場合より視聴した場合の方が評価が高い。玉どめについては危険率1%においてt=3.15となり,
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を視聴しなかった場合より視聴した場合の方が評価が高い。つまり,基礎縫いに関する
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を視聴することで,正しい玉結びや玉どめを作製することができるようになった大学生が増加した。
【参考文献】
高橋美登梨,西村綾世,川端博子(2016)針と糸を使った製作学習におけるICT活用の提案,日本家庭科教育学会誌,59(3),135-143
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