運動部をめぐる様々な問題の背景として、
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至上主義の蔓延が挙げられることがある。
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至上主義については、
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に最上の価値を見出す状態であるという一般的な捉え方に加えて、神谷の
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以外に追求すべき教育内容が明示されていない状態であるという捉え方もある。そこでは、
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以外に追求すべき教育内容の1つに自治的な活動が考えられている。しかし、運動部活動において「
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」と「自治」を同時に追求することは難しいと考えられてきたし、全国大会出場チームほど自治的な活動が行われていないことも報告されている。このような運動部活動における「
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」と「自治」の関係性を検討するにあたって、過酷な猛練習に代表されるように
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を追求し、かつ選手監督などを中心に自治的な活動を行ったとされる旧制高等学校の運動部活動の在り方は検討の対象になりうるだろう。本研究では、そのように自治的な活動を行ったとされる旧制高等学校の運動部の中でも、高専柔道大会での優勝を目指して特に
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を追求していたと考えられる旧制第六高等学校柔道部を対象とし、「
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」と「自治」の追求がいかなる関係にあったのかを検討した。
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