重度肢体不自由を呈する神経疾患患者にとって,意思を表出する手段の確保は非常に重要である.本研究は,事例研究による前頭前皮質を関心領域とした光トポグラフィーに基づく脳活動状態の判別性能の調査を目的とした.意思疎通能力が残存する神経疾患患者3 名を対象に,安静状態および暗算遂行状態の脳活動を近赤外分光法にて計測した.取得した生体信号から統計量に基づく特徴量を抽出し,機械学習手法を用いて脳活動状態を判別した.判別モデルによる予測の正答数は,参加者Aが36 回中30 回(
p < .01),Bが24 回中18 回(
p < .05),Cが60 回中48 回(
p < .01)であり,偶然確率との正確二項検定でいずれも有意差を認めた.以上から,脳活動状態と意思との対応を規定することで,脳活動状態に基づき意思を表出するBrain-Computer Interfaceへ応用できる可能性が示唆された.
【キーメッセージ】1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか? 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?→光トポグラフィーを用いて神経難病患者の脳活動状態を判別可能か事例研究によって調査することをテーマとしている.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?→ 重度運動機能障害によって意思表出の手段を絶たれた患者のコミュニケーションへの応用が期待できる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?→年齢や病状の変化によって生じる生体信号変動を考慮した頑健性の高いシステム構築が必要である.
抄録全体を表示