詳細検索結果
以下の条件での結果を表示する: 検索条件を変更
クエリ検索: "宮坂淳"
56件中 1-20の結果を表示しています
  • 島村 奈那, 大島 洋平, 佐藤 晋, 宮坂 淳介, 吉岡 佑二, 中谷 未来, 細江 拓也, 村尾 昌信, 濱田 涼太, 佐藤 寿彦, 伊達 洋至, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 P-RS-02-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    肺癌肺切除術後では運動耐容能が低下することが報告されている。癌患者において術後の運動耐容能を維持することはPerformance Status(PS)の維持に繋がり,術後の治療選択やQOLの維持に非常に重要な意味を持つ。運動耐容能の指標として,6分間歩行距離(6MWD)400mは屋外歩行自立可否の目安として実臨床で用いられているが,肺癌肺切除患者においても術後6MWDが400m以下の症例は退院後の活動性低下からPS低下の危険性が高いと考えられるため,運動耐容能が6MWDで400m以下に低下しないようにすることは重要である。そこで今回の研究の目的は肺癌肺切除術後患者の術後6MWDが400mを下回る症例の特徴を明らかとすることとした。

    【方法】

    対象は当院にて2015年1月~12月に原発性肺癌の診断にて肺切除術を施行した136名のうち,術前6分間歩行距離(6MWD)が400m以上であった90名とした。術後運動耐容能に影響する因子を,術前因子(年齢,BMI,性別,喫煙指数,術前6MWD,術前6MWT最低SpO2,DMの有無,術前Alb値,術前%VC,術前EFV1%,術前DLCO,術前PCF),手術因子(術式,手術時間,術中出血量,組織型,癌のstage),術後経過因子(術後最大CRP,術後Afの有無,術後3日目NRS)に分類し診療記録より後方視的に調査した。さらに退院時6MWDが400m以下であった群(A群)と400m以上であった群(B群)の2群に分類し比較した。統計には各評価項目の両群間の比較に対応のないt検定およびカイ二乗検定を用い,得られた結果にROC解析を行いカットオフ値を算出した。統計学的有意基準は5%未満とした。

    【結果】

    両群間の割合はA群32名(36%),B群58名(64%)であり,年齢,BMI,性別は両群間で有意差を認めなかった。各項目の2群間の比較では,術前6MWD(A群:470.8±49.5m,B群:523.5±56.7m,p<0.01),術前%VC(A群:98.6±14.6%,B群:105.8±12.2%,p<0.01),術前PCF(A群:308±70.1L/min,B群:354.8±104.6L/min,p=0.02)がA群と比較してB群で有意に高値であった。一方,その他の項目については,両群間で有意差を認めなかった。%VCのカットオフ値は104.0%(感度72.3%,特異度87.0%)であった。

    【結論】

    本研究の結果から,術前6MWD,術前%VC,術前PCFが低下している症例では,術後6MWDが400m以下に低下しやすく,退院後屋外歩行が困難となり活動性が低下する危険性が高まることが明らかとなった。%VCのカットオフ値は104.0%であり,感度と特異度が他の指標よりも高かった。そのため,特に肺活量が正常域でも低肺活量の症例では術後の運動耐容能低下およびPSの低下に注意する必要がある。

  • 梶川 裕子, 池田 光泰, 山川 理奈, 外丸 香織, 池部 晃司, 山本 加代子, 笹谷 真奈美, 水野 誠士, 藤井 隆, 櫻谷 正明, 吉田 研一
    日本農村医学会雑誌
    2016年 65 巻 4 号 843-849
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     Capnocytophaga canimorsus(以下C. canimorsus)は,イヌ・ネコの口腔内に常在する紡錘状の通性嫌気性グラム陰性桿菌である。C. canimorsusによる咬傷・掻傷感染症は極めて稀ではあるが,ヒトに敗血症を惹起する事があり,その致死率は約30%と高い。  全身倦怠感と発熱で来院した56歳男性。来院時に血小板数著減の精査で施行した末梢血液塗抹標本の無染色鏡検において菌体を認め,即時にグラム染色を施行し,紡錘状のグラム陰性桿菌を確認した。さらに飼猫の掻傷・咬傷の病歴より初期段階からC. canimorsus感染症を推定した。血液培養陽性検体から原因菌がC. canimorsusであることを早期に同定し,適切な治療により播種性血管内凝固症候群の状態を伴う敗血症から救命し得た。C. canimorsusの早期診断に末梢血液塗抹標本の鏡検(無染色)が有用であった。
  • ―初回移植と再移植の比較―
    濱田 涼太, 宮坂 淳介, 西村 純, 吉田 路子, 中谷 未来, 南角 学, 高折 晃史, 近藤 忠一, 池口 良輔, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 O-YB-06-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    造血器悪性腫瘍に対する造血幹細胞移植後の再発に対する治療選択肢は広がりつつあるが,再移植を行う場合には,初回移植の影響や再寛解を目指す化学療法のため治療期間が長期化する。そのため,再移植症例においては初回移植症例と比較して,移植前での身体機能や移植後の身体機能の回復状況に変化が生じている可能性が考えられる。再移植症例に対しても適切な理学療法を展開していくためには,それらを把握することが重要であるが,再移植症例の身体機能の回復を調査した報告は少ない。本研究の目的は,再移植症例における移植前時点での身体機能ならびに,移植後にどのような機能回復の特徴があるのかを初回移植症例と比較し明らかにすることである。

    【方法】

    対象は2010年8月から2016年5月までに当院にて造血幹細胞移植を施行し,移植前と退院時のデータに欠損がない70名(初回移植56名:A群,再移植14名:B群)であった。対象者は移植前後に同様のリハビリテーション介入を行っている。調査項目は,患者属性(性別,年齢,BMI,Hb,TP,%FEV1),移植後経過(GVHDの有無,生着日数,移植後在院日数),身体機能(握力,膝関節伸展筋力,6分間歩行距離)とした。膝関節伸展筋力はIsoforce GT330(OG技研社製)により等尺性筋力を測定し,トルク体重比(Nm/Kg)にて算出した。各測定項目の両群間の比較には,カイ二乗検定,対応のないt検定を行い,各群の移植前後の各測定項目の比較には対応のあるt検定を用いた。

    【結果】

    患者属性と移植後経過については,両群間で有意差が認められなかった。移植前の膝関節伸展筋力(A群2.09±0.72 Nm/Kg,B群2.61±0.78 Nm/Kg)は,B群のほうが有意に高い値を示した。また,各群の移植前後の各測定項目の変化として,A群のBMI(移植前21.8±3.0 kg/m2,移植後19.8±2.7 kg/m2),握力(移植前28.6±9.3kg,移植後24.5±7.8kg),TP(移植前6.4±0.5g/dl,移植後5.9±0.5g/dl)と,B群のBMI(移植前20.2±2.8 kg/m2,移植後19.2±2.3 kg/m2),握力(移植前32.5±7.7kg,移植後26.9±6.2kg)が有意に低下した。また,A群の膝関節伸展筋力(移植前2.08±0.70Nm/kg,移植後2.01±0.72Nm/kg)と6分間歩行距離(移植前492.3±94.3m,移植後471.8±95.7m)とB群の膝関節伸展筋力(移植前2.61±0.78Nm/kg,移植後2.34±0.66Nm/kg)と6分間歩行距離(移植前473.2±69.0m,移植後449.1±86.8m)は,両群ともに移植前後で有意差を認めなかった。

    【結論】

    本研究の結果では,両群間に生着日数,在院日数に有意差はなく,各身体機能の経過についても同様の変化を示した。よって,再移植症例に対してもリハビリテーションを実施することで,初回移植症例と同様の結果が得られることが示唆された。再移植症例において移植前時点の膝関節伸展筋力は高い値を示しており,影響を与えている因子を引き続き調査していく必要があると考えられた。

  • 濱田 涼太, 宮坂 淳介, 西村 純, 吉田 路子, 南角 学, 高折 晃史, 近藤 忠一, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2016年 2015 巻 O-YB-08-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】造血幹細胞移植(以下,HSCT)は造血器関連の腫瘍性疾患・遺伝性疾患に対する治療方法であり,移植後の生存率は長期化している。HSCT治療における無菌室(以下,CR)管理期間中では安静臥床を余儀なくされるため重度の廃用症候群を呈するリスクが高い。近年,HSCT患者の下肢を中心とした抗重力筋力の低下が指摘されており,予防を図るために多くの取り組みがされている。しかしながら,同じ抗重力筋に分類される体幹筋に着目した報告は少ない。本研究の目的は,HSCT後早期における体幹筋断面積と運動耐容能の変化を検討することである。【方法】当院にてHSCTを施行しCR管理前後にCT検査を施行した17名(男性13名,女性4名,年齢52.32±12.11歳)を対象とした。対象者は全例移植前よりリハビリテーション介入を行っている。体幹筋断面積はCT(Aquilion64,東芝メディカルシステムズ社)にてL3椎体レベルのaxial断面で腹直筋,側腹筋群(外腹斜筋+内腹斜筋+腹横筋),脊柱起立筋,大腰筋の筋断面積を画像解析ソフト(AquariusNETver4.4.6)を用い算出した。運動耐容能の評価として,CR管理前後に6分間歩行(以下,6MWT)を測定した。統計学的処理は,同一被験者内でCR管理前後の各体幹筋断面積,6MWTの比較としてウィルコクソンの符号付順位検定を用い,各体幹筋断面積と6MWTの関連性の検討にはそれぞれの変化率〔(移植後-移植前)/移植前*100〕を算出し,スピアマン順位相関係数を用いた。統計学的有意基準はすべて5%未満とした。【結果】本研究の対象者のCR滞在日数は,40.4±14.7日,CR管理期間中の理学療法の実施率は70±17%であった。脊柱起立筋の筋断面積はCR管理前1857.6±428.2mm2,CR管理後1590.6±379.0mm2で,CR管理前と比較してCR管理後では有意に低い値を示した。腹直筋,側腹筋群,大腰筋ではCR管理前後で有意差を認めなかった。筋断面積の変化率は腹直筋(0%),側腹筋群(-4.9%),大腰筋(0%),脊柱起立筋(-14.4%)であり,脊柱起立筋の筋断面積の変化率が有意に低い値を示した。6MWTはCR管理前476.6±96.5m,CR管理後388.6±74.2m,変化率-18.5%と有意に低下していたが,脊柱起立筋の筋断面積と6MWTの間には有意な相関は認められなかった(r=0.2)。【結論】本研究よりHSCT患者のCR管理前後における体幹筋の筋断面積の変化は,筋によって異なる傾向を示し,脊柱起立筋においてのみ有意な減少を示した。脊柱起立筋は抗重力筋に分類され,臥床による影響を受けやすい筋であることが先行研究で報告されている。身体活動性の低下が脊柱起立筋の筋断面積の低下に影響している可能性があり,今後の検討課題にしていく必要がある。また,脊柱起立筋の筋断面積の低下がCR管理後の運動耐容能に影響しているのかを検討したが関連は認めず,他の因子が影響していることが示唆された。
  • 大島 洋平, 長谷川 聡, 宮坂 淳介, 吉岡 佑二, 松村 葵, 中谷 未来, 玉木 彰, 佐藤 晋, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2016年 2015 巻 O-RS-05-3
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/28
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】欧米諸国の報告によると,肺移植後は肺機能が良好であっても骨格筋機能障害が長期的に遷延していることが多く,骨格筋機能の低下が運動耐容能を制限する主要因になっていると考えられている。しかしながら,本邦における肺移植は移植適応基準や術式等で欧米諸国とは相違があることから,運動耐容能を制限している因子が異なっている可能性があり,現行のリハビリテーション介入は科学的根拠に乏しい状況にある。本研究の目的は,本邦における肺移植患者の運動耐容能を規定している要因を検証することである。【方法】本研究は京都大学医学部附属病院における前向き観察研究からデータを抽出して横断的に解析を行った。対象は2008年6月から2014年10月までに肺移植術を受けた患者93例のうち,16歳以上で,かつ術前,術後3ヶ月・1年でのデータ(胸部CT画像,肺機能,膝伸展筋力,6分間歩行距離)に欠損がない42例(43±13歳,男性22例)とした。原疾患は間質性肺炎と閉塞性細気管支炎にて過半数を占めた。術式は生体肺移植22例(片肺移植1例),脳死肺移植20例(片肺移植12例)であった。調査項目は身長,体重,肺機能(%FEV1),膝伸展筋力(QF),脊柱起立筋の断面積および筋内脂肪変性の程度,6分間歩行距離(6MWD)とした。なお,脊柱起立筋の断面積(ESMCSA)は胸部CT画像を用いて第12胸椎椎体下縁レベルで評価し,筋内脂肪変性の程度は平均CT値(ESMCT)にて評価した。統計解析にはSPSS ver.18を使用し,術前,術後3ヶ月・1年の3時点において6MWDを従属変数とし,年齢,性別,BMI,%FEV1,QF体重比,ESMCSA体重比,ESMCTを独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。なお,有意水準は5%とした。【結果】術前の6MWDは275±131mであり,重回帰分析の結果から,6MWDに関連する独立因子は,年齢(β=-.32),%FEV1(β=.35),QF体重比(β=.46)が抽出された(調整済みR2=.34)。術後3ヶ月の6MWDは483±94mであり,独立因子は,%FEV1(β=.37),QF体重比(β=.54),ESMCT(β=.27)が抽出された(調整済みR2=.54)。術後1年の6MWDは530±93mであり,独立因子は,性別(β=.26),%FEV1(β=.60),QF体重比(β=.31),ESMCT(β=.39)が抽出された(調整済みR2=.54)。【結論】本邦における肺移植患者は最重症例が多いことや,生体間においてはunder sized graftである場合が多いことが,術後の換気能力の不足をもたらし,運動耐容能に影響を及ぼしていると予想された。そのため,本邦の肺移植患者に対しては,骨格筋機能だけではなく換気能力の改善にも着目したプログラムを構築し,術前から継続的に介入することが重要であると考えられた。また,術後は脊柱起立筋のCT値が運動耐容能との関連を認めており,骨格筋の形態的評価は断面積などの量的な指標だけではなく質的な指標も評価対象に加えて検討することの重要性が示唆された。
  • ―a longitudinal study―
    大島 洋平, 佐藤 晋, 宮坂 淳介, 吉岡 佑二, 中谷 未来, 島村 奈那, 玉木 彰, 陳 豊史, 伊逹 洋至, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2017年 2016 巻 O-RS-02-3
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/24
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    我々は第51回大会において肺移植後遠隔期の運動耐容能には肺機能に加えて骨格筋機能が重要であることを報告した。当院での肺移植後リハビリプロトコールでは筋力強化や身体活動性向上を中心とした介入を術後3ヶ月まで行っているが,地元への帰省に伴いフォローが終了となることから自宅での身体活動性が十分に確保できていない可能性がある。肺移植後の身体活動性は心身機能を良好に保つ上で重要であると考えられるが,その臨床的意義を縦断的に検討した報告は極めて少ない。本研究の目的は,1)肺移植後の身体活動性を明らかにすること,2)身体活動性が骨格筋の形態機能変化および運動耐容能の回復に及ぼす影響を縦断的に検討すること,の2点とした。

    【方法】

    本研究は当院における肺移植前後の前向き観察研究からデータを抽出して解析を行った。対象は2013年4月から2015年10月までに当院にて肺移植を施行した60例のうち,16歳以上かつ術後1年まで追跡可能であった32例(46±13歳,男性18例)とした。原疾患は間質性肺炎が約半数を占めており,術式は生体肺移植13例(両側12例),脳死肺移植19例(両側7例)であった。調査項目は,一般情報,肺機能(%FEV1),脊柱起立筋の断面積(ESMCSA)および筋内脂肪変性の程度,膝伸展筋力(QF),6分間歩行距離(6MWD),身体活動性(PAL)とした。なお,脊柱起立筋の定量評価には胸部CT画像を用い,ESMCSAは第12胸椎レベルにて,筋内脂肪変性の程度は平均CT値(ESMCT)にて評価した。身体活動性はOMRON社製の活動量計を用いて連続7日間における1日当たりの平均歩数を算出した。統計解析にはSPSSを使用し,術後の各パラメータの経時変化を検討し,PALと各パラメータの関連性について解析した。

    【結果】

    %FEV1は術後6ヶ月まで有意に改善し,6MWDは術後1年まで改善した。ESMCSA,ESMCTおよびQFは術後3ヶ月で低下し,ESMCSA,QFは術後6ヶ月以降で術前レベルに改善したのに対し,ESMCTは術後1年でも回復が遷延した。PALは術後入院期間中から術後3ヶ月までは対象者平均で5000歩以上を維持して推移したが,術後3ヶ月以降は有意に低下し,術後6ヶ月では平均で5000歩を下回った。術後3ヶ月および術後6ヶ月でのPALと同時期での6MWDには有意な正の相関を認め,術後3ヶ月で5000歩以上のPALが得られた症例の6MWDは450mを上回り,実用的な屋外歩行能力の獲得に至った。しかし,術後3ヶ月以降でPALが減少した症例ほど,ESMCTの低下が顕著であり,術後1年での6MWDの回復が遷延した。

    【結論】

    肺移植後は呼吸機能の改善に伴い,運動耐容能や身体活動性は早期に回復を認めた。しかしながら,身体活動性はリハビリ介入を終了した3ヶ月以降では減少する症例が多く,身体活動性の低下は骨格筋脂肪変性の進行を助長し,運動耐容能の回復を妨げる要因となっていた。肺移植後遠隔期における身体活動性の維持向上に向けた取り組みが必要である。

  • ―無作為化比較対照試験による検討―
    宮坂 淳介, 南角 学, 西川 徹, 田仲 陽子, 伊藤 宣, 布留 守敏, 藤井 隆夫, 橋本 求, 三森 経世, 柿木 良介, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 0877
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに,目的】関節リウマチ患者(以下,RA)に対する治療としては薬物療法,手術療法に加え,運動療法が重要とされている。これまでRA患者を対象としたエクササイズ効果として,筋力あるいは持久力の向上について報告されているが,適切な負荷量については一致した見解はない。近年,変形性関節症に対する下肢低負荷・高速度エクササイズが下肢筋力や動作能力の向上に有効であると報告されているが,RA患者においてその有効性は不明である。本研究の目的は,RA患者において高速度エクササイズが疼痛,筋力および歩行能力に及ぼす効果を明らかにすることである。【方法】当院通院中の女性RA患者16名(年齢57.3±14.9歳,身長157.0±5.5cm,体重51.4±10.4kg)を対象とし,無作為に低速度エクササイズ群(以下,低速度群)7名と高速度エクササイズ群(以下,高速度群)9名に群分けを行った。エクササイズ内容は,股関節外転,膝関節伸展および足関節底屈運動とし,それぞれエラスティックバンドを用いて自覚的強度にて「ややきつい」となる程度の負荷をかけた。高速度群では可能な限り速い速度でバンドを伸張,1秒保持,2秒でスタートポジションに戻る設定とし,低速度群では2秒でバンドを伸張した後は高速度群と同様の設定とした。1日10回を開始後2週間は2セット,3週間目からは3セット行い,合計8週間継続した。エクササイズ開始前と8週間の介入終了後に,Visual Analogue Scaleによる疼痛評価,股関節外転および膝関節伸展筋力測定,5回立ち座りテスト(以下,SST),Timed up and goテスト(以下,TUG)およびSF-36によるQOL評価を施行し,介入前後で比較した。なお,股関節外転および膝関節伸展筋力測定にはそれぞれHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)およびIsoforce GT330(OG技研社製)を使用した。各測定値の介入前後の比較には,ウィルコクソン検定を用い,有意水準を5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を得ており,各対象者には本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し,参加の同意を得た。【結果】基本属性(年齢,身長,体重)については,両群間で有意差を認めなかった。介入前の股関節外転筋力平均は高速度群0.77±0.39Nm/kg,低速度群0.87±0.19Nm/kgであり,介入後はそれぞれ0.99±0.45Nm/kgおよび1.08±0.23Nm/kgと有意に増加した。平均膝関節伸展筋力においても,介入前は高速度群1.35±0.66Nm/kg,低速度群1.79±0.78Nm/kgであったが,介入後はそれぞれ1.59±0.67Nm/kgおよび1.93±0.71Nm/kgと両群とも有意に増加した。SSTとTUGについては高速度群でのみ有意に改善した(高速度群SST;介入前10.01±1.89秒 介入後8.23±2.05秒,TUG;介入前8.05±1.88秒 介入後6.82±1.52秒,低速度群SST;介入前10.28±3.37秒 介入後8.62±2.85秒,TUG;介入前7.43±3.00秒 介入後7.07±3.27秒)。疼痛(介入前;高速度群1.62cm 低速度群1.43cm,介入後;高速度群1.47cm 低速度群1.17cm)およびSF-36の各尺度数値は,両群とも介入前後においては有意差を認めなかった。【考察】本研究の結果,下肢筋力については高速度群と低速度群の両群において有意な増加が認められ,加えて,SSTおよびTUGについては高速度群においてのみ有意な改善がみられた。高速度エクササイズにより筋力だけでなく歩行等の身体機能が向上するという本研究の結果は,高齢者あるいは下肢変形性関節症患者を対象とした先行研究と同様の結果であった。このことから,関節リウマチ患者に対する高速度エクササイズは立ち上がり,着座あるいは方向転換を伴う歩行等の基本動作能力を,疼痛を増悪させることなく,改善させる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,関節リウマチ患者の身体機能向上のための有効なトレーニング方法立案の一助となることを示唆しており,理学療法学研究として意義あるものと考えられた。
  • 西川 徹, 南角 学, 宮坂 淳介, 柿木 良介
    理学療法学Supplement
    2012年 2011 巻
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 人工膝関節置換術(以下,TKA)術後において多くの施設で在院日数の短縮が図られているため,術後最低限の日常生活動作(以下,ADL)を獲得して退院となることが多い.さらに,TKA術後の関節可動域や下肢筋力などの身体機能やADLの回復には,術後6ヶ月から2年を要することが報告されており,入院中の多くの患者は退院後にどの程度までADLが回復するかを不安に感じている.このため,TKA術後早期のリハビリテーションに携わる理学療法士は,術後のADLの長期的な回復状況を予測し,適切な退院後のADL指導を行う必要があると考えられる.特に,TKA術後の階段昇降能力に関しては,手すりを使用して二足一段で行うように指導して退院となるために,術後の階段昇降能力の回復を客観的に予測できる因子を明らかとする必要があると思われる.しかし,先行研究において,TKA術後長期的な視点での階段昇降能力の回復状況を予測できる因子を検討した報告は少ない.そこで,本研究の目的は,TKA施行患者の入院中の運動機能やADL獲得状況からTKA術後1年における階段昇降能力が予測できるかどうかを検討することである. 【対象と方法】 対象はTKAを施行された30名(男性5名,女性25名,年齢67.4±12.4歳,BMI 24.6±3.9kg/m2)とした.対象者の原疾患の内訳は,変形性膝関節症15名と関節リウマチ15名であった.対象者は当院のTKA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後4週で退院となった.測定項目はTKA術後4週の歩行能力,膝関節可動域,下肢筋力,片脚立位時間とした.歩行能力としてはTimed up and go test(以下,TUG)を測定した.TUG は3mの直線歩行路にて行い,椅子に座った状態から,合図によって立ち上がり,3m先に設置されている目印を回って再び椅子に座るまでの時間を測定した.膝関節可動域の測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展の可動域を計測し,5°単位にて記録した.下肢筋力は両側の膝伸展・屈曲筋力,脚伸展筋力とした.測定にはIsoforceGT-330(OG技研社製)を用い,等尺性筋力を測定した.筋力値として膝伸展・屈曲筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した.それぞれ2回測定し最大値を採用した.また,入院期間中の術後のADLの獲得状況として,術後から杖歩行獲得までの期間を調査した.術後杖歩行獲得期間は,TKA術後から理学療法士が病棟内杖歩行を許可した日数までの期間とした.さらに,TKA術後1年の階段昇降能力をKnee Society Scaleを用いて評価した.統計処理には,階段昇降能力と各測定項目の関連性の検討にはSpearmanの相関係数を用いた.また,階段昇降能力と有意な相関関係を認めた項目を説明変数,階段昇降能力を目的変数としたStepwise重回帰分析を行い,統計学的有意基準は危険率5%未満とした.【説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施し,各対象者に本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,参加の同意を得た.【結果と考察】 TKA術後1年の階段昇降能力の平均値は35.0±11.4であった.階段昇降能力の詳細は,手すりなしで一足一段にて昇降可能が6名,昇降のいずれかに手すりが必要なのが9名,昇降ともに手すりが必要なのが12名,手すりで昇段は可能で降段が不可能なのが2名,昇降不可能が1名であった.TKA術後1年の階段昇降能力と有意な相関関係を認めたのは,年齢(r=-0.52),TUG(r=-0.59),非術側脚伸展筋力(r=0.38),杖歩行獲得期間(r=-0.52)であった.さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後1年の階段昇降能力を決定する因子として術後4週のTUGが選択された.TUGの標準偏回帰係数は-1.54であり,この回帰式の修正済み決定係数はR2=0.47であった.以上より,TKA術後4週でのTUGが速い症例では術後1年の階段昇降能力が高くなることが明らかとなり.TKA術後4週におけるTUGは術後1年の階段昇降能力を予測する上で最も有用な評価項目であることが示された.【理学療法学研究としての意義】 TKA術後1年における階段昇降能力を術後4週のTUGから予測することができることが明らかとなった.このことは,TKA術後の退院後の適切なADL指導を行うための有用な情報であることから,理学療法研究として意義のある研究データであると考えられた.
  • 長谷川 聡, 大島 洋平, 宮坂 淳介, 伊藤 太祐, 吉岡 佑二, 玉木 彰, 陳 豊史, 伊達 洋至, 柿木 良介
    理学療法学Supplement
    2012年 2011 巻
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/10
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに、目的】 生体肺移植は,健康な二人の提供者(ドナー)がそれぞれの肺の一部を提供し,これらを患者(レシピエント)の両肺として移植する手術である.生体肺移植ドナーは肺の一部をレシピエントに提供することで呼吸機能が低下することは知られているが,手術における呼吸器合併症の発症や術後の呼吸機能,運動耐容能および健康関連QOLの中期的経過に関する報告は世界的にもあまりみられない.本研究の目的は,生体肺移植ドナーが手術を受けることによる術後の呼吸機能および身体機能,生活の質に与える影響を明らかにし,本手術施行におけるドナーの予後を検証することである.【方法】 2008年6月から2010年12月までの期間に当院で施行された生体肺移植術におけるドナー28名(男性9名、女性19名)を対象とした.尚,全症例に対して,術前後のリハビリテーションを実施した.術後の短期成績として,術後呼吸器合併症の発症を検証した.さらに,呼吸機能の評価として,術前, 3ヶ月,6ヶ月に努力性肺活量(以下FVC),1秒量(以下FEV1),肺拡散能(DLCO)を測定した.また,術前,術後1週,3ヶ月における6分間歩行距離(以下6MWD),および咳嗽時疼痛をNumerical Rating Scale (NRS)を用いて測定し,術後経過を検証した.手術における健康関連QOLに与える影響を検証するために,術前,術後3ヶ月,6ヶ月にMOS 36-item Short Form Health Survey (SF-36)を用いてQOL評価を行なった.測定値の各評価時期における平均値を算出するとともに,反復測定一元配置分散分析およびScheffe's法による多重比較検定を用い,各時期における平均値の比較を行なった.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭および文章にて本研究の主旨および方法に関するインフォームド・コンセントを行い,署名と同意を得ている.本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得ている.【結果】 術後呼吸器合併症(肺炎・無気肺)の発生症例は無かった.FVCは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の79.4±6.4%,86.1±7.0%の回復であった.FEV1は,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の81.8±7.8%,85.7±9.7%の回復であった.DLCOは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の80.0±1.0%,85.2±9.7%の回復であった.呼吸機能は,術後3ヶ月において有意に低下しており,術後6ヶ月経過しても完全には回復しなかった.術後3ヶ月における6MWDは,術前の101.2±7.7%まで回復し,咳嗽時疼痛はNRSで0.4±1.1とほぼ消失し,術前と比較して統計学的な差を認めなかった.QOLに関しては,SF-36の下位尺度は,術後3ヶ月では十分に改善せず,術後6ヶ月では,全項目で国民標準値を超えていたが,術前の得点にまでには改善しない項目がみられた.【考察】 呼吸機能は術後6ヶ月の時点においても術前と比較して機能低下は残存するものの,切除肺区画量から算出される予測機能低下よりもはるかに良好な値であった.運動耐容能は術後1週で,呼吸機能の回復よりも高い回復率を示し,術後早期から良好であり,さらに術後3ヶ月の時点で術前レベルに回復することが明らかとなった.これらの結果より,ドナーは少なくとも術後3ケ月経過すれば,呼吸機能低下の残存に関わらず,運動耐容能の結果からも術前の生活レベルには復帰できるが,健康関連QOLの観点からみるとまだ不十分であり,6ヶ月経過してもQOLの改善は完全ではないことが示唆された.本研究の結果より,術前後のリハビリテーションを実施した生体肺移植術ドナーは,術後呼吸器合併症を発症することなく,安全に術前の運動耐容能を取り戻すことが出来るが,健康関連QOLは術後半年経過しても完全には回復しておらず,継続的かつ包括的な治療介入が必要であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 生体肺移植手術は,脳死肺移植手術とともに,難治性の呼吸器疾患患者の生命予後を改善する非常に有用な先端医療であり,本邦においても今後様々な施設において手術施行例が増加すると思われる.レシピエントに対するリハビリテーションにおける臨床研究は,無論,重要であるが,ドナーに関しても,臨床研究を進めるとともに,手術における身体機能やQOLへの影響を検証し,我々理学療法士がエビデンスに基づき適切に介入していく必要がある.本研究はこのような新たな視点を示した点で意義深く,重要な研究である.
  • 西川 徹, 南角 学, 西村 純, 宮坂 淳介, 布留 守敏, 伊藤 宣, 栗山 新一, 柿木 良介, 松田 秀一
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 0959
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)は変形性膝関節症や関節リウマチによる膝関節の疼痛や変形に対する治療として,医師立脚型評価における除痛,膝関節機能や歩行能力の改善効果に優れた手術療法である。しかし,患者立脚型評価における,それらの評価は必ずしも高くなくその原因は明らかとなっていない。TKA術後患者の立脚型評価に関わる運動機能の因子を明確にすれば,より効果的な介入が可能となり患者の満足度の向上につながると考えられる。特に,術後の回復過程にある術後早期の患者では,患者立脚型評価と運動機能の関連を明らかにすることでより有効な介入が可能になると考えられる。しかし,術後早期の患者立脚型に関わる運動機能などの客観的な評価項目を検討した報告は少なく,不明な点が多い。そこで本研究の目的は,TKA術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間に関連する運動機能を検討することとした。【対象と方法】対象はTKAを施行された76名(男性11名,女性65名,年齢72.4±7.8歳,BMI 25.9±5.7kg/m2)とした。対象者は当院のTKA術後プロトコールに準じてリハビリテーションを行い,術後3週で退院となった。測定項目はTKA術後3週の歩行能力,術側の膝関節可動域,下肢筋力,片脚立位時間とした。歩行能力としては10m歩行時間を測定した。10m歩行時間は,12mの直線歩行路を設け前後1mを除いた10mの所要時間を測定した。膝関節可動域の測定は,日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて術側の屈曲と伸展の可動域を計測し,5°単位にて記録した。下肢筋力は両側の膝関節伸展・屈曲筋力,脚伸展筋力とした。測定にはIsoforceGT-330(OG技研社製)を用い,等尺性筋力を測定した。筋力値として膝関節伸展・屈曲筋力はトルク体重比(Nm/kg),脚伸展筋力は体重比(N/kg)を算出した。それぞれ2回測定し最大値を採用した。また,患者立脚型評価として,2011 knee society scoreを用いてTKA術後3週の主観的な歩行時の疼痛と連続歩行時間を評価した。統計処理には,TKA術後3週の連続歩行時間と各測定項目の関連性の検討にはspearmanの相関係数を用いた。また,連続歩行時間と有意な相関関係を認めた測定項目を説明変数,連続歩行時間を目的変数としたstepwise重回帰分析を行い,統計学的有意基準は危険率5%未満とした。【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施し,各対象者に本研究の趣旨と目的を詳細に説明し,参加の同意を得た。【結果】TKA術後3週の連続歩行時間の平均値は7.1±3.4点であった。連続歩行時間の詳細は,歩くことができないのが5名(6.6%),0~5分が6名(7.9%),6~15分が36名(47.4%),16~30分が19名(25.0%),31~60分が6名(7.9%),1時間以上が4名(5.3%)であった。TKA術後3週の連続歩行時間と有意な相関関係を認めたのは,術側の膝関節伸展可動域(r=0.27),膝関節伸展筋力(r=0.33),脚伸展筋力(r=0.36),片脚立位時間(r=0.49),10m歩行時間(r=0.40),歩行時の疼痛(r=0.48)であった。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後3週の連続歩行時間を決定する因子として歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力が有意な項目として選択された。標準偏回帰係数は,歩行時の疼痛は0.54,片脚立位時間は0.08,脚伸展筋力は0.51であり,この回帰式の修正済み決定係数はR2=0.39であった。【考察】本研究の結果より,TKA術後早期において下肢筋力や歩行能力さらに片脚立位バランス機能が良好かつ歩行時の疼痛が低い症例ほど主観的な連続歩行時間が長くなるという相関関係を認めた。さらに,重回帰分析の結果より,TKA術後患者の主観的な連続歩行時間に関わる重要な因子として,脚伸展筋力と片脚立位バランス機能と歩行時の疼痛が抽出された。この結果から,主観的な連続歩行時間の向上とともに術後の患者満足度の向上を図っていくためには,術前や術後早期からバランス機能や多関節運動による筋力の改善を目指したトレーニングプログラムの遂行と術後の疼痛管理が重要であることが示唆された。今後の課題として,術後早期における片脚立位バランス機能や荷重位での筋力の向上に対してより有効なトレーニング方法を確立していく必要があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】TKA術後早期の主観的な連続歩行時間は,TKA術後早期の歩行時の疼痛,片脚立位時間,脚伸展筋力と関連することが明らかとなった。この結果は,TKA術後早期の患者立脚型評価における連続歩行時間の向上を目指すためのトレーニング方法を立案していくための一助となり,理学療法研究として意義のある研究データであると考えられた。
  • *宮坂 淳介, 市橋 則明, 池添 冬芽, 中村 孝志
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 392
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高齢者の歩行能力に関しては、歩行と筋力との関係を考察している報告は多くみられるが、バランス能力との関係を考察した報告は少ない。本研究の目的は、施設に入所している虚弱高齢者を対象に、歩行能力と静的・動的バランス能力および下肢筋力との関連について明らかにすることである。
    【対象と方法】ケアハウスに入所している歩行自立レベルの高齢者31名(男性12名、女性19名、平均年齢84.2±6.1歳、平均身長148.7±11.0cm、平均体重49.9±8.4kg)を対象とした。静的バランス能力については、静止立位時の重心動揺、開眼および閉眼での片脚立位保持時間を測定した。動的バランス能力については、最大随意重心可動距離、Functional Reach(以下FR)およびBalance Reach Leg(以下BRL)を測定した。なお、静止立位時の重心動揺はアニマ社製重心動揺計を用いて開眼・閉脚立位にて20秒間保持した際の重心動揺総軌跡長および面積を測定し、最大随意重心可動距離は同じく重心動揺計を用い開脚立位で前後・左右方向にできるだけ大きく重心移動した際の足圧中心最大振幅値(以下、前後および左右の最大重心可動域)を測定した。BRLは一側下肢を前方、後方および側方へ最大リーチさせた際の距離を測定した。また、下肢筋力については、膝関節屈曲および伸展筋力を椅座位膝関節90°屈曲位で、股関節伸展筋力を股関節0°伸展位でそれぞれ最大等尺性収縮にて測定した。歩行能力として10m最大歩行時間を測定し、10秒以内に歩行できるか否かで高速群(n=18名)と低速群(n=13名)の2群に分類し、各バランス能力および筋力についてそれぞれ対応のないt検定を用いて統計処理した。
    【結果と考察】対象者の10m最大歩行時間は10.6±4.6秒であった。歩行高速群と低速群との間に有意差が生じたのは、静的バランス能力では重心動揺面積、開眼片脚保持時間のみ、動的バランス能力ではすべての項目、すなわち前後および左右最大重心可動域、FR、前方・後方・側方BRL、そしてすべての下肢筋力(膝屈伸筋力・股伸展筋力)であり、いずれも高速群の方が成績は良かった。静的バランス能力である重心動揺総軌跡長や閉眼片脚保持時間では歩行高速群と低速群との間に有意差はみられなかった。本研究の結果、施設入所高齢者の歩行能力には下肢筋力とともに、バランス能力、特に随意的に重心移動をコントロールする動的なバランス能力が必要であることが示唆された。
  • *三好 圭, 横川 吉晴, 大平 雅美
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 391
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】高齢者の転倒の一因として姿勢制御能力の低下があげられる.この姿勢制御機能に作用する運動として,不安定板が簡便かつ有効であるとされているが,高齢者にとって不安定板に乗ることは高度な技能を必要とし転倒の危険性が一層高くなると思われる.また,介入期間に関しては数週間から数ヶ月の介入を行うことで身体機能が改善したとする報告も多いが短期介入の効果を報告したものは少ない.本研究の目的は,不安定板よりも神経-運動器協調運動の容易なバランスマットを用いて短期間の介入効果を確認することである.
    【対象】2006年2月に、長野県M市における老人大学を受講した59人に対して,文書を用い口頭で説明した。本研究に対する同意書を頂いた33名のうち疾病のリスクの高い1名をのぞく32名(男性11名,女性21名)を対象者とした.
    【方法】対象者は無作為に対照群(C群)とバランスマット使用群(M群)に分け,足指の運動,四つ這い位保持,ステッピング運動など全7種類の運動をC群は床上で,M群はバランスマット上で約30分間実施した.運動は1回のみ実施した。バランスマット((株)豊田合成)はポリウレタン材で厚さ8cm、タテ60cmヨコ60cmを2枚連結したものを使用した.測定項目は,運動実施前に1)転倒経験,2)老健式活動能力(TMIG),3)姿勢変換時の困難感,4)服薬や通院の有無,5)年齢などを調査した.また,運動前後に6) 全身動作反応時間(RT、竹井機器),7) 開眼片脚立位保持時間(OL),8)重心動揺軌跡長(LNG),9)重心動揺面積(AREA)を測定した.7)は左右行い60秒を上限とした.8),9)はWin-Pod((株)フィンガルリンク)を用い30秒間測定した.解析は男女別に、2群を独立変数、RT,OL,LNG,AREAを従属変数とした反復測定分散分析をおこなった.
    【結果】介入前のC群とM群で,転倒経験,TMIG,姿勢変換時の困難感,服薬や通院の有無,年齢に有意差は認められなかった.解析対象を性で層別化したところ、女性のRT(p<0.05)とLNG(p<0.01)では,マットの有無と時間の交互作用が認められた.他の項目で差は認められなかった.男性では差を認めなかった。
    【まとめ】女性において、C群のRTとLNGは短縮し、M群は遅延傾向にあった。バランスマット上の運動を週1回90分8週間実施した場合は10m歩行速度,全身動作反応時間,最大一歩幅に有意な改善を認めたとの報告があるが,今回のように1回の運動では有意な改善は認められなかった.これは,高齢者は刺激に対する適応能が低いため即時性の効果は期待できなかったためと思われる.また,全身動作反応時間がバランスマットよりも床上で運動した群の方が低下したのは,バランスマット上での運動が高齢者にとっては過負荷であったため,疲労の影響が出てしまったためと考えられる.従って,高齢者を対象に運動の介入効果を検討する場合,1回の介入では効果が得られにくいことが示唆された.
  • 関節可動域運動の工夫と実際
    *前田 慎太郎, 石川 大樹, 露木 敦志, 浅野 晴子, 谷川 直昭, 中澤 加代子, 野島 明日香
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 918
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    膝後十字靭帯(PCL)再建術は骨孔の方向や固定法の違いにより膝前十字靱帯(ACL)と比べ手術手技が確立されていない.また,関節可動域(ROM)や全荷重開始時期などの術後リハビリテーション(リハ)に関しても統一した見解が得られていない.またPCL再建術後,膝関節屈曲120°獲得時期が早い群ほど骨孔拡大を示す例が多くなり臨床成績が劣ることが報告されている. 我々は,骨孔の角度が極力移植腱にストレスを与えない外側ルートを用いてPCL2重束再建術を行い(石川,2005),それに加え比較的ゆっくりとした関節可動域運動(ROM-ex)を行っており,良好な成績が得られているため以下に報告する.
    【対象および方法】
    2003年10月から2006年5月までに外側ルートを用いたPCL再建術を行った15例を対象とした.男性13例,女性2例,手術時年齢18~60歳(平均32.5歳)であった.
    術後リハビリテーションは1週で1/6荷重開始,3週で1/3荷重,4週で2/3荷重,5週で全荷重を許可した.ROMは4~5週で屈曲90°伸展0°,10週で屈曲130°を目安とした.また,knee braceは3ヶ月間使用した.これらの症例に対し,1.KT-2000(AP total laxity患健側差;30lb,70°屈曲位) 2.Lysholm score 3.術後ROM 4.再鏡視所見,以上4項目を評価した.
    【結果】
    1.KT-2000は術後0.75±1.15mmであった.2.Lysholm scoreは術前平均56.4点が術後平均94.5点に改善した.3.ROMは平均で145°,伸展0°,伸展制限は存在しなかった.4.再鏡視所見は前外側枝は全例でボリューム,緊張ともに良好であったが後内側枝に若干ゆるみのある症例が3例あった.
    【考察】
    PCL再建術後に生じるROM制限(特に屈曲制限)に対し術後早期より無理なROM-exを行うと,再建靭帯および移植腱-骨孔間に大きなストレスが加わり,骨孔拡大や移植腱の断裂など様々な合併症を生じる可能性がある.PCL再建術後,屈曲120°獲得時期が早い群ほど臨床成績が劣ることが報告されているが,当院では屈曲90°獲得までを特に慎重に行っている.
    学会ではPCL再建術後のROM-exの工夫と実際および術後成績を発表する.
  • 筋力テスト・パフォーマンステスト・バランステストの比較
    *西村 純, 市橋 則明, 長谷川 聡, 南角 学, 森 公彦, 宮坂 淳介, 中川 泰彰, 中村 孝志
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 917
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】足関節捻挫はスポーツ活動で多く見られる外傷の1つであるが、不十分な治療のまま、テーピングや装具を着用することで競技復帰している例も多い。そのため、足関節捻挫を繰り返すこともあり、競技復帰には足関節を含めた下肢機能の十分な回復が不可欠である。しかし、例えば競技復帰のための基準など、評価方法は明確にされてはおらず、足関節捻挫後に競技復帰を果たした選手が機能回復しているかは明らかではない。本研究では、足関節捻挫がラグビー選手の運動能力に及ぼす影響を明らかにするため、足関節捻挫受傷の有無で下肢筋力・下肢のパフォーマンス・バランス能力を比較・検討した。
    【対象と方法】対象は大学ラグビー部に所属する33名とした。1シーズンでの足関節捻挫の有無を調査し、捻挫受傷後、受傷日以降に練習もしくは試合を休む必要のあったものを捻挫群(3名、年齢:20.3±2.1歳、身長:177.9±8.0cm、体重:84.6±2.9kg)とし、受傷しなかったものを非捻挫群(30名、年齢:20.5±1.1歳、身長:173.3±4.7cm、体重:74.5±8.9kg)と分類した。シーズン終了時に運動能力テストを行った。なお、テスト時には足関節捻挫を受傷した全選手が競技復帰を果たしていた。種目は、筋力テスト、パフォーマンステストおよびバランステストとした。筋力テストはMYORET(川崎重工業株式会社製、RZ-450)を用い、60・180・300deg/secでの膝関節屈伸筋力およびストレングスエルゴ(三菱電機株式会社製)を用い、40・60・100deg/secでのペダリング力を測定した。パフォーマンステストは片脚でのSide Hop、6m Hop、垂直跳び、幅跳び、3段跳びとした。Side Hopは30cm幅を片脚にて、側方に10回跳び越える時間、6m Hopは片脚跳びにて前方へ6mを進む時間、3段跳びは助走せずに片脚にて3回連続で前方に跳んだ距離を測定した。バランステストは重心動揺計(アニマ社製、G-5500)を用い、開眼および閉眼片脚立位での総軌跡長を測定した。
    【結果と考察】筋力テストは、膝関節屈伸筋力およびペダリング力ともに、全速度で大きな差は認められなかった。パフォーマンステストは、Side Hopでは捻挫群は3.95±0.23秒、非捻挫群は3.39±0.18秒で、捻挫群が16.6%高い値を示し、側方への敏捷性の低下が認められた。一方、6m Hop、垂直跳び、幅跳び、3段跳びでは捻挫群は非捻挫群に比べて大きな差はみられなかった。バランステストは、片脚立位での捻挫群の総軌跡長は非捻挫群より開眼で22.3%(捻挫群:143.7±42.3cm、非捻挫群: 111.7±24.5cm)、閉眼では17.9%(捻挫群:277.5±76.1cm、非捻挫群:227.9±74.8cm)それぞれ高い値を示し、片脚立位でのバランス能力の低下を認めた。足関節捻挫を受傷後、競技復帰を果たした選手の中には、筋力、前方への敏捷性、ジャンプ能力に大きな差がなくても、片脚立位でのバランス能力や側方の敏捷性が低下していることが示唆された。
  • 歩行速度の異なる2種類の通常歩行との比較
    *下井 俊典, 上田 和磨, 加藤 隆文, 木元 優香里, 平山 尚美
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 638
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】一般的に, 歩行速度の減少に伴い, 1歩行周期に対する同時定着時期比率, 立脚相比率は延長する. 継ぎ足歩行と通常歩行の歩行周期を比較した我々の先行研究で, 継ぎ足歩行は通常歩行に比べて歩行速度が遅いものの, 同時定着時期比率, 立脚相比率に違いがみられなかった. そこで本研究では, 通常の歩行速度による通常歩行に加え, 歩行速度を継ぎ足歩行と同様とした歩行と継ぎ足歩行との歩行周期を比較し, 継ぎ足歩行の特徴を, より明らかにすることを目的とした.
    【方法】下肢に障害のない健常男子学生11名(年齢21.4±0.9歳)を対象とした. まず, 6mの継ぎ足歩行(以下, tandem)と10mの通常歩行(以下, normal)の歩行速度を測定した. 次に, 予め裸足になってもらった被験者の両足底(踵部, 母趾球部)に感圧センサ(DKH社製S100)を貼付し, 得られたon/off信号をA/D変換器(Power Lab/8SP)を介し, パーソナルコンピュータに記録した.得られた継ぎ足歩行の歩行速度と同じ速度による歩行(以下, slow)と, tandem, normalの3条件の歩行課題をランダムに選択し, 歩行周期を測定した.尚, 歩行周期の測定対象側は, 利き足の反対側とした.継ぎ足歩行は, 幅2cm, 長さ3mのテープ上から足部を逸脱させずに, 爪先に他側の踵を付けて接地させた.記録したon/off信号から, 1歩行周期, 同時定着時期, 立脚相, 踵接地‐足底接地, 踵接地‐踵離地を同定し, 各相の1歩行周期に対する比率を算出した.
    【結果】歩行速度, 1歩行周期時間について, normalはtandem, slowと比べて有意に速かった(p<0.05).同時定着時期比率, 立脚相比率について, slowはtandemとnormalに比べ有意に延長していた(p<0.05).踵接地‐足底接地比率については主効果を認めなかった.踵接地‐踵離地比率は、tandem, slow, normalがそれぞれ56.0±4.2%, 49.7±4.9%, 42.0±4.7%となり, それぞれに有意差を認めた(p<0.05).
    【考察】歩行速度を継ぎ足歩行と同一とした歩行との比較において, 継ぎ足歩行の同時定着時期比率, 立脚相比率がそれぞれ短縮し, 踵接地-踵離地比率が延長することが認められた.
    【まとめ】継ぎ足歩行の歩行周期の特徴として, 歩行速度が遅いにもかかわらず, 通常歩行速度の歩行と同様の同時定着時期比率, 立脚相比率となることが明らかとなった. さらに, 継ぎ足歩行は, 一側の下肢を踏み出して支持基底面を変更してから, 重心を移動するという順序が明確であるため, 通常歩行と比べて踵接地-踵離地比率が延長するという特徴を有していることが明らかとなった.
  • *森 公彦, 市橋 則明, 建内 宏重, 宮坂 淳介, 西村 純, 中村 孝志
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 637
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】骨格筋に対する振動刺激は筋紡錘の一次終末を興奮させ、伸張反射による筋活動を誘発するとされている。これは緊張性振動反射とよばれ、この特性を利用して近年筋力強化を目的とした振動刺激装置が開発され、海外ではその有用性が報告されつつある。しかし、スクワット動作時に振動刺激を与えた報告は少なく不明な点が多い。本研究の目的は、スクワット肢位における振動刺激が下肢筋活動に及ぼす影響を明確にすることである。
    【対象と方法】本研究に同意した下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常成人男性13名(平均年齢は28.3±4.3歳)を対象とした。筋電図(ニホンサンテク社製)の測定筋は、右下肢の大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、内側ハムストリングス(MH)、前脛骨筋(TA)、腓腹筋 (GC)、ヒラメ筋(SO)の6筋とした。表面筋電図を双極導出するために、2個の表面電極を各筋線維に平行に電極中心間隔20mmで貼付した。測定は左右交互振動式の振動刺激装置(エルクコーポレーション社製G-Fitness)上で、両脚スクワット肢位を膝屈曲角度60度、体幹を垂直、足圧中心位置を前方位、中間位、後方位で保持して行った。また測定条件として、振動数を振動なし(0Hz)、18Hz、30Hz、上下最大振幅を4.15mm、8.30mmと変化させた。各筋電図測定値は最大随意収縮時のRoot Mean Square(RMS)振幅値を100%として正規化し、%RMSとして表した。統計処理は反復測定分散分析およびTukeyの多重比較を用いた。
    【結果と考察】振動数の変化に関しては、すべての筋で有意差が認められ、0Hzから30Hzと高振動となるにしたがって筋活動は有意に高くなった。さらに振幅の変化に関しては、4.15mmよりも8.30mmの高振幅で筋活動は有意に高くなった。また足圧中心位置の変化に関しては、すべての筋で有意差が認められGC、SOは前方位で有意に高く、RF、VM、MH、TAは後方位で有意に高かった。振動数0Hzでの各筋の測定値は、RF(前方位6.4%、中間位10.9%、後方位11.6%)、VM(17.4%、25.4%、24.2%)、MH(2.7%、2.4%、2.6%)、TA(1.7%、12.7%、32.5%)、GC(11.1%、5.0%、5.4%)、SO(29.1%、11.1%、6.9%)であった。一方、振動数30Hz、振幅8.30mmでの各筋の測定値は、RF(前方位17.4%、中間位23.2%、後方位31.6%)、VM(42.1%、66.7%、77.9%)、MH(11.8%、13.1%、22.3%)、TA(14.0%、26.7%、60.7%)、GC(43.0%、30.6%、36.2%)、SO(78.5%、48.1%、39.3%)と振動なしのスクワットに比較し2~3倍大きくなった。一般にスクワット動作中の筋活動を増加させるためには、バーベルスクワットや片脚スクワットなどのように下肢への負荷量を増加させることが多いが、本研究結果から、振動刺激を用いることにより下肢への負荷量を増加させることなく筋活動を高められることが示唆された。
  • *大畑 光司, 市橋 則明, 南角 学, 三戸 由美子, 高木 彩, 森 公彦, 宮坂 淳介
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1248
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】底屈制動短下肢装具Gait Solutionは脳卒中後片麻痺患者の歩行改善のために開発された油圧制動式短下肢装具である。この装具の特徴は油圧による抵抗モーメントによって,立脚初期の前脛骨筋の遠心性収縮を補助し、下腿の前方へ円滑な引き出しを補助することである.しかし足関節の制動が行える他の装具との比較やGait Solutionがどのような歩行で適応となるかについてなど実際に使用する上での指針となる報告は少ない.本研究の目的はGait Solutionと他の装具を装着したときの筋活動変化から,各装具の特性についての知見を得ることと,Gait Solutionの歩容による変化を調べ,この装具の適応について考察することである.
    【方法】対象は健常成人6名(男性4名,女性2名,平均年齢26.8±3.9歳、身長169.7± 5.3cm,体重59.3±4.41kg)を対象とした.被験者にトレッドミル上で2km/hで歩行させ、装具なしで歩行した場合と,固定装具(以下SB),底背屈制動短下肢装具(オルソ製Dream Brace以下DB),底屈制動短下肢装具(川村義肢社製Gait Solution Design:以下GS)を使用した場合の筋電図を測定した。Gait Solutionについては油圧ダンパーの抵抗値を4段階に変化させ、それぞれの筋電図を測定した。また,Gait Solutionを用いて,外旋歩行(足角を45度以上にした歩行),前揃え歩行,後揃え歩行,および小刻み歩行の4条件で歩容を変化させたときの筋電図も同時に測定した.筋電図測定にはニホンサンテク社製筋電計を用い,右下肢の前脛骨筋(TA),腓腹筋(GC),ヒラメ筋(SO)の筋電図を測定した。筋電図と同期してフットスイッチを踵と母趾に貼付し,歩行の周期を同定した.筋電図は50msの積分筋電図とし,立脚期における各筋の最大値を求め,最大等尺性収縮を100%としたときの割合で表した.装具および歩容による立脚初期の積分筋電図値の変化をFriedman検定により比較した.
    【結果と考察】足関節周囲筋の筋活動の装具による変化はTAにのみ有意に認められた(p<0.05).装具無し歩行のTAが13.9%となったのに対し,SBが5.5%と最も低くなり,次いでDB9.1%となった.GSは油圧の段階に応じて変化し,1段階目では11.9%,2段階目では10.1%,3段階目では6.6%と順に低下していた.歩容を変化させた場合,外旋歩行や前揃え歩行ではGSにより前脛骨筋活動が低下する傾向にあるが,後揃え歩行や小股歩行ではGSによる変化は少なかった.油圧で抵抗値を変化させられるGSはより患者の特性に合わせた調節が可能であるが,同時にGSを効果的に使用できる歩行の仕方についての指導が重要であることが示唆された.
  • オートエスティマティクス(Auto-estimatics)による分析
    *田上 幸生, 西尾 幸敏
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1247
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】オートエスティマティクス(Auto-estimatics,AE)という評価法では、運動認知という概念を取り入れ、パフォーマンスと随意性の両方を一度に評価できる。すなわち、量的にどの程度できたかでパフォーマンスを、質的に思い通りにできたかで随意性を評価する。今回は、AEを用いて片麻痺患者と大腿骨頸部骨折患者におけるパフォーマンスと随意性の変化を比較してみる。
    【方法】片麻痺患者25名(CVA群)、大腿骨頸部骨折患者12名(FNF群)の合計37名(男性19名、女性18名、平均年齢67.6±12.2歳)にAEの中でも代表的な跨ぎ課題を、4週間にわたり実施した。課題の手順は次の通り;(1)被験者のつま先に置かれたテープを徐々に遠ざける、(2)被験者が失敗せずに跨ぎ越せると思う一番遠い距離を見積る(見積り距離)、(3)実際にそのテープを跨ぐ(実際距離)、(4)課題に成功したかどうかを記録する。実際距離と成功率について週毎の平均値を算出し、それぞれについて時間経過と群分けを因子とした2元配置の分散分析を実施した。
    【結果】実際距離とその変化のパターンについては両群間で有意差はなかった。成功率については、両群の変化のパターンに有意差が認められた(p<0.01)。FNF群では、1週目から2週目にかけての改善が大きく、2週目以降ほぼ横這いに推移したのに対し、CVA群では1週目から2週目にかけて大きく、その後も比較的緩やかながらも改善を続けた。4週目には両群間に大きな差はなかったが、全体的にCVA群の方が成功率は低い傾向にあった。
    【考察】実際距離はパフォーマンスを、成功率は随意性を表す。今回の結果では、跨ぎ動作において片麻痺患者と大腿骨頸部骨折患者とで、パフォーマンスとその改善のパターンに差はなかった。一方、随意性の改善のパターンは異なっており、初期には後者より前者の方が随意性は低く、改善にも時間を要していた。障害による身体の変化が、後者では比較的局所的であるのに対し前者ではより全体的であるため、その使い勝手が適切に了解されるまでにより多くの時間を要するのかもしれない。また後者においても、前者ほどではないが初期には随意性の低下が認められた。整形疾患といえども、障害によって変化した新しい自分自身の身体を動作レベルで思い通りに動かせるようになるためには、実際に動いてみるという運動経験が、短期間とはいえ必要なのかもしれない。
    【まとめ】AE跨ぎ課題を用いて片麻痺患者と大腿骨頸部骨折患者におけるパフォーマンスと随意性の変化を比較した結果、以下の可能性が示唆された。(1)パフォーマンスとその改善のパターンは両者の間で差はない。(2)随意性の改善のパターンは両者で異なり、後者では早期に改善し、前者では比較的長い期間を要する。(3)後者においても、初期には随意性の低下は起こり得る。
  • *西村 純, 市橋 則明, 南角 学, 森 公彦, 宮坂 淳介, 中村 孝志
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 692
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】スポーツ選手において、下肢筋力は競技上重要であり、臨床では外傷後の競技復帰の基準に用いられることが多い。しかし、下肢筋力とパフォーマンスの関連性は一致した見解が得られていない。本研究の目的は、パフォーマンスと下肢筋力の関連性を明らかにすることである。
    【対象と方法】対象は大学ラグビー選手45名(平均年齢:20.8±1.4歳、身長:173.1±5.1cm、体重:74.4±8.5kg)とし、パフォーマンステストおよび下肢筋力測定を行った。パフォーマンステストは片脚でのSide Hop、6m Hop、垂直跳び、幅跳び、3段跳びとした。Side Hopは30cm幅を片脚にて、側方に10回跳び越える時間とした。6m Hopは片脚跳びにて前方へ6mを進む時間とした。3段跳びは助走せずに片脚にて3回連続で前方に跳んだ距離とした。下肢筋力測定は等速性筋力、等尺性筋力、ペダリング力とした。等速性膝屈伸筋力はMYORET(川崎重工業株式会社製、RZ-450)を用い、低速(60deg/sec)・高速(300deg/sec)で測定した。等尺性筋力はアイソフォース(OG技研社製)を用いて等尺性膝屈伸筋力および等尺性脚筋力を測定した。ペダリング力はストレングスエルゴ(三菱電機株式会社製)を用い、低速(40r/m)・高速(100r/m)で測定した。各下肢筋力の結果を体重で除し、体重比を求めた。パフォーマンスと下肢筋力の関係を調べるために、ピアソンの相関係数を求め、危険率5%を統計学的有意とした。
    【結果と考察】Side Hopは高速での膝伸展筋力(r=-0.35)のみと、6m Hopは高速での膝伸展筋力(r=-0.33)と屈曲筋力(r=-0.38)のみと有意な相関を認めたが、その他の筋力とは有意な相関は認められなかった。垂直跳びは高速での膝伸展筋力(r=0.61)・屈曲筋力(r=0.46)だけでなく、低速での膝伸展筋力(r=0.33)や等尺性膝伸展筋力(r=0.33)と有意な相関を認めた。幅跳びは低速での膝屈曲筋力(r=0.34)、高速での膝伸展筋力(r=0.53)・屈曲筋力(r=0.52)と有意な相関を認めた。3段跳びは低速での膝屈曲筋力(r=0.32)、高速での膝伸展筋力(r=0.51)・屈曲筋力(r=0.57)だけでなく、ストレングスエルゴでの低速(r=0.45)・高速(r=0.45)のペダリング力と有意な相関を認めたが、低速での膝伸展筋力、等尺性筋力には有意な相関は認められなかった。本研究の結果から、300deg/secという高速での膝伸展筋力は全てのパフォーマンスに関与していることが明らかとなった。また、Side Hopや6mHopなどの速度を測定するパフォーマンステストは筋力の影響を受けにくく、その他の距離を測定するパフォーマンステストは筋力の影響を受けやすいことが示唆された。
  • *武井 圭一, 杉本 諭
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 691
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】筋力の測定方法は、従来の徒手筋力検査(MMT)に加え、握力計や徒手筋力計(Hand Held Dynamometer:HHD)による定量的な測定が定着してきている。しかし、体幹筋についてはトルクマシン以外による定量的測定は実用化されていない。本研究の目的は、HHDを用いて座位における体幹屈筋力測定の信頼性の検討、および座位と背臥位での体幹屈筋力測定時の筋力および筋活動の関連を検討することである。
    【方法】対象は、本研究に同意の得られた健常学生21名(男性12名、女性9名)とした。体幹屈筋力は座位と背臥位の2条件で測定し、座位での測定はバックレストの角度調節付の椅子を用いて骨盤後傾10°位とし、背臥位での測定はMMTによる体幹屈曲測定方法に基づいた肢位とした。測定にはμTas F-1(アニマ社製)を用いてセンサーと胸部の間に市販のスポンジで作成した5cm厚の弾性材を挟み、胸骨角直下の高さに設置した。センサーはそれぞれの肢位での等尺性最大収縮が測定できるように、ベルトを用いてバックレストおよびベッドと固定した。また、測定時の股関節屈曲を防ぐため検者は被検者の両側大腿部を上方から固定し、両上肢は胸部の前で組むように指示した。測定は、3秒間の最大努力での等尺性収縮力を十分な休憩を入れながら3回施行し、座位での測定は1週間後に再び施行した。筋活動の測定は、本対象者のうち男性10名に対し、筋電計(NORAXON社製、MYOSYSTEM1200)を用いて右側の腹直筋上部、下部および大腿直筋に対して筋力測定時の活動を測定した。データ処理は、安定した2秒間の実効値を求め3回の平均値を算出した。分析方法は、座位測定方法の信頼性について、連続測定および日の違いによる測定に対し級内相関係数(ICC)を用いて検討した。筋活動については、ピアソンの相関係数による分析と対応のあるt検定を用いて測定肢位別の筋活動の関連および変化を検討した。尚、解析ソフトにはSPSS for windows ver.14.0を用い、有意水準は5%とした。
    【結果】座位測定の信頼性分析の結果、連続測定によるICC値は0.97、日の違いによる測定のICC値は0.92であり、いずれも有意な強い相関を認めた(p<0.01)。肢位別の各筋活動の相関分析の結果、腹直筋上部0.43、腹直筋下部0.92(p<0.01)、大腿直筋0.16であった。また、肢位別の筋力の相関は0.79(p<0.01)であった。対応のあるt検定の結果、腹直筋は有意差を認めず、大腿直筋は座位で有意に強い筋活動を認めた(p<0.05)。
    【考察】連続測定および日の違いによる測定においてICCに有意な強い相関を認めたことから、今回の測定方法は信頼性の高いものであると考えられた。また、臨床で多く用いられているMMT体幹屈曲測定との比較から、座位体幹屈筋力測定の特性として股関節屈筋群の影響を伴った、主として腹直筋下部の評価に有効な方法であると考えられた。
feedback
Top