症例は44歳, 男性. 1996年1月, 全身倦怠感, 体重減少を訴え, 内科受診. 高度の貧血, Cr値の上昇を認め, 当科紹介入院となった. 入院1か月後, 下血を認めたため消化管の精査を行ったが, 出血源は確認できず外来経過観察となった. 6月全身倦怠感, 食思不振, 間歇的な上腹部痛を訴え再入院となった. 入院時, Cr10mg/d
l, BUN165mg/d
lと腎不全が進行しており血液透析に導入した. 便潜血陽性で, Hb3g/d
l, Ht12%と高度の貧血を呈していた. 小腸透視にて径約3cmの腫瘍病変が認められた. 造影後, 2日目より持続的な上腹部痛が出現, 腹部CTを施行したところ口側の拡張した空腸に続いて外筒に陥入した内筒からなる浮腫状の腸管の拡張を認めた. 小腸透視と腹部CTの所見より
小腸腫瘍
による腸重積と診断し開腹手術を施行した. トライツ靱帯より約60cmの部位に約40cm程度の空腸一空腸重積を認め, 整復すると先進部に漿膜浸潤を有する鶏卵大の腫瘍を触れ, これを含めて約90cmの空腸切除, 腸間膜のリンパ節の郭清を行った. 切除標本では3cm×3cmの腫瘍を認めた. 病理組織学的には分化型腺癌であった.
小腸腫瘍
は稀な疾患で診断は非常に困難であるが, 出血源不明である消化管出血と高度な貧血を伴った腎不全患者においては小腸の腫瘍も念頭において十分な消化管の精査をしなければならないと思われた.
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