監査人の交代に関する情報は,株主や投資家にとって極めて重要な情報である。しかし,開示された交代理由の多くは,「任期満了」と記載されるのみである。このような監査人の交代理由に「任期満了」と開示する企業には,どういった傾向があるのであろうか。あるいは,監査人の交代に関する理由を開示する企業との違いはどこにあるのであろうか。
そこで,本稿では,監査人の交代時に「任期満了」と理由を開示している企業に焦点をあて,交代理由を明示している企業との比較を通じて,「任期満了」と開示する企業の特徴を明らかにするとともに,「任期満了」と開示する企業における監査人の交代理由の要因を検証した。
その結果,監査人の交代理由を「任期満了」とする企業の特徴は,交代理由を明示している企業と比べて,交代後の監査報酬が減少し,前年度に損失を計上している割合が低い企業であった。
また「任期満了」を理由として開示する監査人の交代の要因として,監査報酬の減額や大規模監査法人からその他の規模の監査事務所への交代が行われていることを明らかにした。
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