目的 我々は高等学校家庭科で実施する染色教材の開発研究を行ってきている。家庭科における染色の変遷を明らかにし
(1),今の時代を反映した染色教材を開発するための視点を検討
(2)した。実践的な教材開発をするために先行研究を検討した結果,教材として「玉ねぎ外皮染め」を選定し,染色実習の標準条件を決定した
(3)。高等学校家庭科「フードデザイン」で実践した結果,教員1名でも工夫によって1クラス40名の染色実習が可能であった
(4)ことから,必修科目である「家庭基礎」50分授業でも実践・検証し
(5),質問紙調査と授業観察によって染色教材の考察を行った
(6)。一方,玉ねぎ外皮による染色教材では,大量の外皮を必要とするため,その入手方法が課題となっている。そこで実践的な視点から,一度使用した染色液を再度染色に使用した場合の染色布の色相に及ぼす影響を調べた
(7)。さらに本報では,同じ玉ねぎ外皮から二度染色液を抽出して染色した場合の,色相への影響について検討した。
方法 =玉ねぎ外皮抽出液の調製=白布と同重量の未抽出玉ねぎ外皮をナイロンネットにいれ,玉ねぎ外皮に対し浴比1対50となるように水を加え,20分間煮沸抽出し1回目の抽出液を得た(1番皮抽出液)。次に,取り出した玉ねぎ外皮に1回目と同量の水を加え,20分間煮沸抽出し2回目の抽出液とした(2番皮抽出液)。さらに,未抽出の玉ねぎ外皮と,1回抽出後の玉ねぎ外皮を乾燥時の重量比が1対1となるように混合し,1番皮抽出液と同様に抽出を行った(混合皮抽出液)。
=染色操作=染色用白布は,関西衣生活研究会のさらし金巾を使用した。抽出液はそれぞれ室温まで放冷し,綿白布に対して浴比1対50となるように,水を足して浴比調整した。綿白布を入れ加熱し,沸騰後30分間染色した。染色布は取り出した後軽くすすぎ,風乾した。染色布の色相測定には,測色色差計である,日本電色製スペクトロフォトメーターNF333を使用した。
結果 前報
(7)で,同一染色液を繰り返し使用した場合の染色布の反射率を調べたところ,後媒染を行った結果,媒染剤の種類によってa*値の変化に差がみられた。そこで,今回は,濃色効果を調べるために,未媒染で比較した。同一染色液を繰り返し使用した場合の未媒染の染色布の反射率は,1回目染色布,2回目染色布はほぼ一致した。従って,染色液の再利用は可能と考えられる。
一方,玉ねぎ外皮を繰り返し抽出した場合の染色布の反射率は,1番皮抽出液,混合皮抽出液,2番皮抽出液の染色の順に増大し,浅色になった。480nmで反射率の差は11.4%と最大となった。
波長により,反射率の差が異なったことから,L*値,a*値,b*値を求めた。染色布のa*値は,1番皮抽出液,混合皮抽出液,2番皮抽出液の染色の順に減少し,赤味が減少したことがわかった。b*値も同様の順で減少したが,その差はわずかであった。
引用 (1)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家庭科教育学会第50回大会研究発表要旨集,116-117(2007).(2)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家政学会東北・北海道支部第52回研究発表会研究発表要旨集,28(2007).(3)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家庭科教育学会第51回大会研究発表要旨集,164-165(2008).(4)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家政学会東北・北海道支部第53回研究発表会研究発表要旨集,30(2008).(5)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家庭科教育学会第52回大会研究発表要旨集,56(2009).(6)駒津順子,小松恵美子,
森田みゆき
,日本家政学会東北・北海道支部第54回研究発表会研究発表要旨集,27(2009).(7)小松恵美子,駒津順子,
森田みゆき
,日本家政学会第62回大会研究発表要旨集,印刷中(2010)
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