マストパラン(MP)は,14アミノ酸よりなるハチ毒由来のペプチドである。ホルモン分泌など様々な生物活性を有するが,そのメカニズムは必ずしも十分に解明されていない。本研究では,MPの種々の誘導体を合成し,その赤血球溶血作用および牛副腎クロム親和細胞からのカテコールアミン放出作用を測定し,その構造と活性の相関を検討した。誘導体は天然に存在するマストパラン類ペプチドのアミノ酸配列で保存性が高い部位に着目し,デザインした。その結果,(1)マストパランの14位のLeu
残基
およびC末端アミドは溶血作用およびカテコールアミン放出作用の発現に必須な構造であること,(2)マストパランの4,11,12位のLys
残基
は溶血活性およびカテコールアミン放出活性作用に大きく影響すること,特にカテコールアミン放出活性では,その側鎖の構造が重要と思わる。(3)三つのLys
残基
をOrnに置換した[Orn^<4,11,12>]-MPは,赤血球溶血作用は非常に弱いが,カテコールアミン放出作用は保持され,両作用が分離可能であることを明らかとした。特に,[Orn^<4,11,12>]-MPは分泌メカニズムを解明するためのツールとしてもきわめて有用と思われる。
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