【目的】
注意欠如多動症
(attention deficit hyperactivity disorder ; ADHD) 児の外傷予防に向けて, ADHD児の協調運動機能を調べるとともに, それらが環境下での行為選択に与える影響を検討した. 【方法】ADHD児35名と定型発達児51名とした比較対照実験を行った. 各児の協調運動機能をThe Movement Assessment Battery for Children Second Editionによって評価した. また, 高さが可変する水平ロープを通り抜ける際に, 「またぐ」 か 「くぐる」 かの行為を選ぶ実験課題を通して, 環境下での行為選択を評価した. それぞれの成績について群間比較を行うとともに, 行為選択に与える要因を検討した. 【結果】定型発達児に比して, ADHD児は, 協調運動機能が低く, 特にボール運動・バランスが低成績であった. 行為選択課題では, ADHD児はロープが低い位置にあるにもかかわらず, くぐろうとする行為が多くみられた. これらの行為選択には, 協調運動機能の影響は少なく, 注意機能の影響が強く認められた. 【結論】本邦のADHD児では粗大運動や道具を使用した運動に困難さが認められた. 彼らの非効率な行為選択には, 環境や身体図式に注意を向ける弱さが影響しており, 外傷予防には運動機能に加えて, 注意機能への配慮が必要と示唆された.
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