1.はじめに
本報告では、若年女性の
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不安について、質的アプローチを導入することによる新たな枠組みを提示した上で、
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不安と都市空間における行動制約や防犯対策との関係について、試論的に考察を加えるものである。
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不安がどのような社会的属性の人々に集中しやすいかは社会によって異なりうるが、重要な特徴のひとつとして、男女差の存在を挙げることができる。すなわち、他の諸要因を統計的にコントロールした上でも、女性のほうが男性よりも
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不安が高い傾向にあることが知られている(Ferraro 1995)。こうした男女差は、先進諸国において、比較的共通して観察されるパターンである。
一方で、
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不安は、主観的で多面的なものであり、生活世界を含めてその内実を深く知ろうとするほど、計量的手法だけでは、構造を解明する上で一定の限界があると考えられる。このため、質的手法が適する場合があり、諸外国においても、質的アプローチによる研究が行われてきた(若林 2009)。他方、吉田(2006)は、地理学におけるジェンダー研究を包括的に検討しつつ、育児等の再生産の舞台である郊外の住宅地における防犯のための監視性の高まりについて、ジェンダーの観点から考察を加えている。
2.先行研究
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学においては、
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や非行を犯す人間の心理や社会的環境要因に着目する
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原因論と、
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が起きやすい状況(場所、時間帯など)を生む条件や環境に着目する環境
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学の2つが、主要な説明理論として挙げられる。
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原因論はもとより、環境
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学においても、
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の被害に遭いうるターゲットが抱える
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不安や選択する防犯対策については、それほど考察がなされているとはいえない。
他方、小学生の防犯教育に関する実践的研究は比較的多くなされており、大西(2007)のレビューに詳しい。また、根岸(2011)は、公立高校の3年生(21名)を対象とする防犯の実験授業を実施しており、
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に関するリスクの情報を生徒に対して適切に伝達したり
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統計に関するリテラシーを身につけさせたりすることや
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不安の緩和などを目的とした、高校生の防犯に関するカリキュラム開発を行い、授業実践上の課題について明らかにしている。一方で、成人の
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不安や被害防止のためになされる防犯行動を空間との関わりにおいて検討した研究は、比較的少ないのが実状である。
3.研究の方法
以上のような問題関心にもとづき、報告者は、大都市および郊外地域に居住する若年女性を対象として、質的調査を実施した。具体的な内容としては、つきまといや声かけなどのヒヤリハット事案への遭遇経験、
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不安の状況や背景、防犯情報への接触、防犯のために講じている対策や行動などについて尋ねるものであり、これを半構造化面接によって実施した。この安全・安心に関する質的調査は、
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不安と若年女性の社会生活との関係などについても、把握しようとする内容であった。
本報告では、この調査について予備的な分析を行い、第1節で提示した問いに関して若干の考察を加えることとしたい。
参考文献
Ferraro, Kenneth F., 1995. Fear of Crime: Interpreting Victimization Risk, State Univ of New York Press.
根岸千悠, 2011, 「「
犯罪
について考える」授業の開発 ―
犯罪の実態と認識の乖離および環境犯罪
学に着目して―」『授業実践開発研究』4, 37-43.
大西宏治, 2007, 「子どものための地域安全マップへの地理学からの貢献の可能性」『E-Journal GEO』2, 1, 25-33.
齊藤知範, 2011, 「
犯罪
学にもとづく子どもの被害防止」『ヒューマンインタフェース学会誌』13, 2, 123-126.
若林芳樹, 2009, 「
犯罪
の地理学-研究の系譜と課題-」金沢大学文学部地理学教室編『自然・社会・ひと-地理学を学ぶ』古今書院, 281-298.
吉田容子, 2006, 「地理学におけるジェンダー研究-空間に潜むジェンダー関係への着目-」『E-Journal GEO』1, 22-29.
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