Complex regional pain syndrome (CRPS) は部分的な神経損傷や骨, 筋肉組織の損傷によって引き起こされる感覚神経, 運動神経, および自律神経・免疫系の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群である. CRPSにはI型 (CRPS type I) とII型 (CRPS type II) があり, 以前からそれぞれ反射性交感神経性ジストロフィー (RSD) とカウザルギーと呼ばれていたものである. CRPSは身体に外傷などの侵襲が加わったことを契機に発症し, 一般には末梢神経損傷, 骨折, 軟部組織の損傷, ギブス固定, 帯状ヘルペスなどに引き続き起こる. しかし, ごくまれには原因になるようなものがなくても発症することがある. CRPSは末梢性および中枢性因子が相互に絡み合って悪循環を形成し, 疼痛などのさまざまな臨床症状を出現させていると考えられている. 中枢神経性因子としては, 脊髄の役割とその重要性がよく解明されてきたが, 脳も広範囲にわたって関与しており, その役割はきわめて大きいことが最近明らかになりつつある. また, 以前は交感神経性因子が重要視されていたが, 最近では慢性炎症性因子の関与が注目されてきている. さらに, CRPSが慢性化すると情動的, 精神的な変調が起こり, 症状はより複雑で難治性となる. このようにCRPSの病態は, 炎症性因子に基づくもの, 末梢・中枢神経系の機能異常に基づくもの, および情動・精神的変調に基づくものから構成される.
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