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  • −中国の国立公園の登山道の現状調査から−
    *渡辺 悌二, 常 亮, 柯 建
    日本地理学会発表要旨集
    2021年 2021s 巻 376
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/29
    会議録・要旨集 フリー

    はじめに

    山岳国立公園の

    登山道
    は公園内の移動に必要な中核施設である。山岳国立公園の訪問者のほとんどは,自然を求めていわゆる登山(英語のtrekkingやhiking)をする。したがって
    登山道
    を歩く際には,侵食や泥濘の発生による自然体験の質の低下を軽減することが求められる一方で,可能な限り人工的な構築物を
    登山道
    に用いないことも望まれる。

    こうした利用者側と管理側の多様度を確保するために,大雪山国立公園では「大雪山グレード」と呼ばれる

    登山道
    のグレード区分が行われている。利用者が多い登山口の近く(グレード1や一部のグレード2の区間)では侵食軽減の管理を行う一方で,利用者の少ない登山口の遠く(グレード4や5の区間)では可能な限り自然の状態に近い
    登山道
    を維持しようという考え方である。このような管理の考え方は,グレード区分の有無は別として,多くの先進国の山岳国立公園で受け入れられている。

    一方で,中国の国立公園(国立森林公園および国立ジオパーク)では,基本的に管理のための予算が中央政府から配分されないため,利用者から多額の入園料を得て維持管理を行うことが求められている。このため多くの利用者は入園料に見合った快適性を求め,一般に国立公園の

    登山道
    は舗装化などによる管理が常識になっている。しかし,その実態はほとんど研究されていない。本研究では,中国の国立公園の一つである翠華山国立ジオパークで
    登山道
    の現状を明らかにし,中国の山岳国立公園の
    登山道管理のあり方から世界の山岳国立公園の登山道
    管理について考える。

    調査対象地域と調査方法

    翠華山国立ジオパーク(面積32 km2)は,西安市の南20 kmに位置している。翠華山国立ジオパークは広大なグローバル・ジオパークの一部で,西安市に近いことからきわめて多くの市民が利用している。

    公園内の

    登山道
    すべてを歩き,
    登山道表面の物質により登山道
    を敷石と敷石の間をコンクリートで埋めた「コンクリート型」,敷石で全体を埋めた「敷石型」,巨礫を並べた「巨礫型」,
    登山道
    表面の一部に植生が残る「草地型」および「裸地型」の5つに区分し,208カ所で
    登山道
    の幅と最大侵食深,複線化の有無などを記録した。この際,
    登山道
    を含めた地図が存在していないため,ハンディーGPSを用いて
    登山道
    地図を作成した。

    結果

    登山道
    の総延長は29.14 kmであった。5つの
    登山道
    区分のうちコンクリート型,敷石型,巨礫型が人工処理をした
    登山道
    で,総延長の86.8%あり,実に総延長の65.1%(18.9 km)がコンクリート型
    登山道
    であった。自然の
    登山道
    は13.2%に過ぎなかった。人工的な
    登山道
    では侵食は認められなかったが,自然の
    登山道
    では草地型で最大5.5 cm深,裸地型で最大12.6 cm深の侵食が認められた。

    山岳国立公園の

    登山道
    はどうあるべきか

    欧米や日本を中心とした山岳国立公園では

    登山道
    侵食が大きな問題となることが多い。
    登山道侵食の発生を止めるには登山道
    表面を舗装などで処理するのが最も効果的である。しかし先進国でそのような
    登山道
    が好まれているという事実は聞かない。では,
    登山道
    の侵食問題にはどのような管理によって取り組むべきであろうか。

    中国のように舗装化によって山岳国立公園の

    登山道
    管理をすることは,先進国では容易には受け入れられない。しかし,翠華山国立ジオパークでの調査結果からわかるように,舗装などの人工的処理は
    登山道
    侵食に対して絶大な効果を有していることは否定できない。したがって「中国方式」をすべて否定するのではなく,山岳国立公園に「大雪山グレード」のような
    登山道
    の区間区分を設けて,グレードの低い登山口近くでは,より積極的に「中国方式」を導入し,グレードの高い区間では自然をより徹底的に守るといった,メリハリのある維持管理が求められるといえる。

    中国の山岳国立公園で求められているこうした

    登山道
    の管理が,先進国においてどれくらいの割合の
    登山道
    区間で許容されるのかは今後の課題である。また,翠華山国立ジオパークのように9割近くの
    登山道
    区間が人工的に処理されている状況は,中国の利用者の間でも議論されるべきであろう。

  • *小林 勇介, 渡辺 悌二
    日本地理学会発表要旨集
    2016年 2016s 巻 P040
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/08
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに 大雪山国立公園では、主な
    登山道
    の表層は火山性の脆い物質に覆われ、さらに融雪期と登山シーズンが重なるという地域性から、
    登山道
    上の侵食が深刻な問題のひとつとなっている。そのため1980年代の終わり頃から
    登山道
    上の侵食を計測した研究が行われてきた。これらの研究では、おもにアメリカの国立公園管理の手法を倣った計測方法が採用されたが、この手法は簡便なものであるため精度に問題があった。そこで本研究では、近年、地理学の分野においても計測方法に採用されるUAVおよびSfMを用いて
    登山道
    上の侵食を計測し、侵食量や侵食形態について明らかにする。 2. 調査対象
    登山道
    本研究では、大雪山北海岳から白雲岳方面にかけて広がる緩斜面上を南北に走る
    登山道
    を対象とした。また、西から東へ吹き抜ける卓越風のため植生はまばらである。大雪山国立公園の中でも、深さ1 m規模の大きな侵食が多発している区間である。 3. 計測方法 今回、6箇所の
    登山道
    上の侵食を計測した。ひとつの侵食の全体を計測できるよう、侵食の始点から終点の間に複数個のGCP(地上基準点)を設置し、トータルステーションで地上座標を得た。UAVにはDJI Phantom2+Visionを、空撮用カメラにはRICOH GRを用いた。また写真測量解析にはAgisoft Photoscanを、土量計測にはArc GISおよびEasy MeshMapを用いた。 4. 結果と考察 計測対象とした侵食群の中で、最も規模の大きな箇所の侵食量は274.67 m3であった。各計測箇所においては、全体の侵食量と
    登山道
    の傾斜度に明瞭な関係は見られなかった。
    登山道
    には実際の荒廃状況に応じた歩行パターンがみられた。
    登山道
    を区分すると、
    登山道
    表面を流れる表流水の水道と登山者の歩行道に分けられる。登山者が荒廃を嫌い、歩きやすい歩行道を求めた結果と考えられる。そのため、
    登山道
    の断面形による局所的な解釈では、
    登山道
    の断面形態と侵食形態にはふたつのパターンがみられた。[1]
    登山道
    が急傾斜であるとき、
    登山道
    の断面形の底面はV字形であり下方侵食が進行しているように思われる。そのため登山者は、
    登山道
    の脇にそれて植生を踏みつけ、
    登山道
    の複線化を引き起こす。[2]
    登山道
    が緩傾斜であるとき、
    登山道
    の断面形の底面は四角(箱型)に近い形状で、側方侵食が進行しているように思われる。 現在、大雪山国立公園では近自然工法に基づく
    登山道
    補修が積極的に行われている。実際の施工に際し、水道となる微地形の見極めが必要となることから、UAVおよびSfMを用いた計測は
    登山道
    管理において有効であると考えられる。本研究の実施には科学研究費補助金「持続的観光への展開を目指した協働型
    登山道
    維持管理プラットフォームの構築」(課題番号15K12451,研究代表者:渡辺悌二)を使用した。
  • *藤田 剛
    日本地理学会発表要旨集
    2009年 2009f 巻 P919
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/11
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに

     近年, 百名山ブームや健康ブームに伴い中高年を中心に山岳利用が活発になっている. その一方で,
    登山道
    の過度な利用が進み, 全国各地で
    登山道
    の荒廃が報告されている.
     これまでに
    登山道
    の荒廃に関して多くの研究がなされ, 特に
    登山道
    の荒廃を抑制するため, その要因が探られてきた. しかし, こうした既存研究のほとんどは高山帯を対象としており, 森林に覆われた亜高山帯より低所の山における研究例はあまりない. 特に利用者が多い大都市周辺の山における研究は少なく,
    登山道
    の保全を考える上で, こうした地域の
    登山道
    荒廃の実態も明らかにする必要がある (中村 2000). また,
    登山道
    の侵食パターンには山毎に異なる地域的な特徴が影響する (依田・小野 1991). これまでに山毎の侵食パターンについて比較検討した研究はほとんどなく, そのため山毎に卓越する侵食パターンに対応した適切な施策の必要性を提示できてこなかった (渡辺 2008).
     そこで本研究では, 利用者の多い首都圏周辺に位置する3つの山 (丹沢山地の塔ヶ岳, 箱根山地の金時山, 奥多摩地域の大岳山) において, それぞれにおける
    登山道
    の侵食パターンを示し, その要因を明らかにすることを目的とする. そして, 山毎に異なることが予想される
    登山道
    の侵食パターンやその要因に応じた施策の必要性について言及する.


    2.調査地と方法

     本研究では首都圏から日帰りで登山が可能な丹沢山地の塔ヶ岳, 箱根山地の金時山, および奥多摩地域の大岳山の三ヶ所を調査地とした. また, それぞれ現地調査は調査対象とした
    登山道
    に一定の標高ごと (塔ヶ岳 - 50m毎, 金時山・大岳山 - 25m毎) に設けた調査地点で行った.
     
    登山道
    で観察される土壌侵食のパターンを明らかにするために, 各調査地点において
    登山道
    の侵食幅, 侵食深, および侵食量を計測した. また,
    登山道
    の侵食パターンに影響する要因を明らかにするため, 周辺環境である傾斜角, 土壌硬度, リターの厚さ, そして周辺植生について調査した. 解析には重回帰分析を用いた.


    3.結果と考察

     侵食パターンは山毎に差異がみられた(図1). 塔ヶ岳では侵食幅が拡大する侵食パターン, 金時山では侵食深が深くなる侵食パターン, そして大岳山では総じて侵食が抑制されるパターンをそれぞれ示した. 重回帰分析の結果から, 侵食パターンに関わる共通の要因として,
    登山道の傾斜角と登山道
    内におけるリターの厚さが抽出できた. それぞれの侵食パターン毎では, 塔ヶ岳でみられたような
    登山道
    の拡幅化が目立つ侵食パターンには, 共通要因に加え周辺植生タイプおよび
    登山道
    外におけるリターの厚さが関わっており, 金時山で顕著に生じていた侵食深が目立つ侵食パターンには土壌硬度と周辺植生タイプが形成要因となっていた.
     これらのことから,
    登山道
    の土壌侵食に関わる要因の地域的な差異が山毎の侵食パターンの違いを生じさせていると推察できる.したがって,それぞれの地域に卓越する侵食パターンおよびその形成要因に合致するような対策の実施の必要であると考えられた.


    4.引用文献

    中村洋介. 2000. 丹沢における
    登山道
    荒廃の過程とその要因. 地域学研究 13: 25-48.
    依田明美・小野有五. 1991.
    登山道
    の侵食について. (第二報) . 地形 12: 76-77.
    渡辺悌二. 2008. 国内外にみられる既存のおもな
    登山道
    整備工法. 渡辺悌二編著『
    登山道
    の保全と管理』古今書院.
  • *太田 健一
    日本地理学会発表要旨集
    2004年 2004f 巻
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに大雪山国立公園では,近年の登山ブームによる登山客の増加により,土壌侵食による
    登山道
    の荒廃が問題となっている.これまで,後藤(1993),渡辺・深澤(1998),沖(2001)らの研究によって
    登山道
    における土壌侵食のメカニズムや,侵食に影響を与える環境因子との関係が解明されてきた.それにより,
    登山道
    のきめ細かな維持管理の必要性が議論されるようになった(沖,2001)が,国立公園内全域に渡る
    登山道
    の現状把握調査や適切な侵食対策に関する議論はまだ行われていない.そこで本研究では,大雪山国立公園の中でも多くの登山者が利用すると思われる,旭岳,間宮岳,裾合平,沼の平,愛山渓を結ぶ
    登山道
    の侵食状況を明らかにし,適切な侵食対策について考察を行った.2.調査地と方法調査地である大雪山国立公園は,北海道の中央に位置し,総面積226,764 haにおよぶ日本最大の国立公園である.調査は2003年8月_から_9月にかけて行った.調査対象地域は,旭岳ロープウェイの終着駅がある姿見を起点として,姿見_-_旭岳山頂_-_裾合平_-_間宮岳山頂_-_沼の平_-_愛山渓を結ぶ
    登山道
    約12 _km_とした.この
    登山道
    は標高1230 mから2185 mに位置する.この
    登山道
    上のほぼ100 mおきにプロットを設置し,各プロットにおいて
    登山道
    の両側にアルミアングルを打ち込み,
    登山道
    の形状を測量した,測量は,近年,注目を浴びているデジタル写真測量を行った.これは,写真測量の応用で,_丸1_市販のデジタルカメラを用いて被写体を2方向から写しこみ,_丸2_得られたステレオ写真を三次元計測ソフトに入力し三次元座標計算を行い,_丸3_
    登山道
    の三次元モデルを作成して断面図を出力し,断面積を求める,という方法である.この測量法は,_丸1_ある区間の侵食量を体積で示せる,_丸2_高い精度が期待できるという利点がある.本研究では,多くの三次元計測ソフトの中でも最も信頼性が高いといわれている倉敷紡績株式会社製の三次元計測システムKuraves-Kを使用した.次に,現地踏査および地形図を用いて
    登山道
    が位置する斜面形を谷形斜面,平滑斜面,尾根形斜面の3タイプに区分し,さらに
    登山道
    の横断面形をその形態的特徴から平型,ガリー型,谷型,複合型の4タイプに区分した,3.結果と考察 調査の結果,AからHまでの8コース計108地点についてステレオ写真が得られた.それより,Kuraves-Kを用いて各プロットの侵食量を求めた.侵食量は,
    登山道
    の両側にあるアルミアングル同士を結んだ線を中心として,
    登山道
    の平面図上にアングル幅×1 mの方形区を想定し(図),方形区内における
    登山道側面の植生と裸地の境界から下の部分の体積を登山道
    の侵食量として算出した.その侵食量は最大で3453657.4 _cm_(裾合平,D-10),最小で1248.6 _cm_(沼の平,G-10)であった.B,C,Dコース(裾合平_-_間宮岳)において侵食量が大きく,A,Gコース(旭岳,沼の平)において侵食量が小さい傾向が示された.また,コースごとに
    登山道
    幅と侵食度合い(侵食量/断面積)を平均し散布図を作成したところ,F,Hコースは
    登山道
    幅が狭いにもかかわらず侵食を受ける強度が強く,B,Cコースは
    登山道
    幅が広い上にある程度の侵食を受けやすいことが示唆された.これらの
    登山道
    には早急な対応策が必要である.
  • *内山 雄介, 竹本 太郎
    日本森林学会大会発表データベース
    2023年 134 巻 P-033
    発行日: 2023/05/30
    公開日: 2023/05/30
    会議録・要旨集 フリー

     国内の主要な山岳地域の多くが国立公園に指定されている。公園内の

    登山道
    は行政機関や山小屋、民間団体等の多様な主体の整備により維持されている。それら主体の関係性を、リスク管理の面や、意思決定・コンフリクト調整の面から見る研究などがされてきた。環境省や県が取りまとめた
    登山道
    管理のあり方に関する報告書類からは、
    登山道
    の管理主体が持つ管理責任の懸念の大きさや主体の連携を目指してきた経緯などが分かる。

     発表者は南アルプス国立公園を事例に、自然保護官事務所と県、市町村の行政機関、山小屋と地元団体の民間事業者への調査から、国立公園の

    登山道
    管理に対する各主体の方針や取り組みを把握した。県や市町村が最低限としながらも安全管理に注視していることや、行政が管理(事業執行)していない
    登山道
    を山小屋が自主的に整備していることが分かった。また、特に市町村は、民間事業者と情報共有の面で繋がりが強いほか、民間事業者が整備する
    登山道
    の土地の契約等に関して、他の行政との仲介の役割を果たしていた。さらに、県、市町村は担当部署が細分化されており、
    登山道
    を管轄する部署が協議会等に参加していない現状なども分かった。

  • 土榮 拓真
    地理学論集
    2010年 85 巻 1 号 37-41
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
     大雪山国立公園・表大雪山域において
    登山道
    周辺の残雪分布の推移を求めた。その結果,黒岳においては
    登山道
    利用が盛んになる時季にはすでに残雪がなくなっている一方で,裾合平においては,高山植物の見頃季であり
    登山道
    利用が盛んである7月に,広範囲に残雪が分布することがわかった。融雪水による
    登山道
    侵食促進を防ぐためには,1)残雪が消える時季への利用分散,2)残雪からの融雪水供給の影響のない部分への利用行程の短縮,3)残雪からの融雪水が流れ込まないような
    登山道
    への付け替え,といった対策が必要である。
  • ―12の山での「登山道侵食」地形学図の作成でわかったこと―
    *小林 勇介, 平川 一臣, 小松 哲也, 小畑 貴博, 渡辺 悌二
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 525
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    登山道
    侵食という地形現象を理解するにあたり,「侵食発生箇所における地形計測的要素の分析」や「侵食断面形態の変化の把握」といったアプローチが,これまでのところ主流なものとしてとられてきた.その一方で,地形学では当然と考えられるアプローチ:①多地域・多地点での地形現象の比較,②地形現象をあらわす地形学図の作成,はおこなわれてこなかった.本研究では,これまでに着目されてこなかったこれらの点にもとづいて,
    登山道
    侵食のパターンや特徴について明らかにする.

    2.研究方法
    北海道内の48 の山の
    登山道において登山道
    侵食の有無を確認した.
    登山道
    侵食が確認できる山であった場合,その山の
    登山道
    侵食パターンをもっとも良く代表するような場所を1地点選び,そこで地形学図を作成した.地形学図は,
    登山道
    侵食の始点から終点までを含む数~十数mの区間でのスケッチをベースとし,それに折れ尺,クリノメーター,レーザー測距器を使用して計測した斜面長,侵食深,侵食幅,侵食断面形態といった情報をもりこんだものである.

    3.
    登山道
    侵食のパターン
    登山道
    侵食は30の山でみられた.地形学図は,そのうちの12の山で作成した.侵食のパターンは,発生箇所の表層地質に着目すると以下の2つのタイプに区分された.

    (1)粘土質タイプ(狩場山,長万部岳,目国内山,積丹岳,余市岳,礼文岳,斜里岳):主に中期更新世に活動を終えた古い火山にみられるタイプ.特徴的なのは,
    登山道
    侵食の深さ・幅と表面礫・表層地質との間に河川水理の経験則と似た次のような関係がみられる点である.すなわち,
    登山道
    侵食は,地表面上に散在する大礫・巨礫がまばらになり,礫の粒径が小さくなる地点からはじまる.侵食がみられる場所の表層地質は粘土質であり,その断面形はV字型である.侵食の断面形が函型を示すようになると,地表面上に大礫が散在するようになり,侵食は漸次解消にむかう.

    (2)砂礫質タイプ(オロフレ山,利尻山,富良野岳,黒岳,羅臼岳):過去数万年間以内に生じた火山噴火によると思われる火砕流,もしくは降下軽石・スコリアが堆積した山でみられるタイプ.粘土質タイプとは異なり,
    登山道
    侵食の深さ・幅と表面礫・表層地質との間に関係はみられず,不規則な侵食パターンをとる.

    4.おわりに
    北海道では,平成17 年に環境省によって大雪山国立公園内の
    登山道
    管理に近自然工法が導入された.近自然工法とは,
    登山道
    を小さな川にみたて,その表流水を礫や木材によって制御することで,
    登山道
    侵食を軽減させる工法である.これに対して,本研究の結果は,
    登山道
    を川として捉えることが可能な場合(粘土質)とそうではない場合(砂礫質)があることを示す.これは,少なくとも表層地質を考慮に入れない一様な近自然工法では,
    登山道
    侵食の軽減が難しいことを示唆するだろう.
  • 小林 昭裕
    環境情報科学論文集
    2004年 ceis18 巻
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/01/12
    会議録・要旨集 フリー
    登山道
    沿いの植生の荒廃、
    登山道
    の浸食および対策としての整備が自然環境や山岳景観に不適切とされ、社会問題化している。本研究は、対策として環境省が示した案を事例に、理念と計画レベルを主眼に問題点を指摘し改善策について提起した。環境省案の中で、論理的合理性に欠け改善が必要な点として、
    登山道
    の考え方、荒廃する
    登山道
    の原因と対処、
    登山道
    の整備水準、
    登山道
    のレベル区分を指摘した。対案として、問題点を踏まえ、場の目標設定を通じた保全水準と整備水準の関係を指標によって明確化し、荒廃の分布に対応した
    登山道
    のレベル区分と、荒廃の程度に対応した荒廃プロセスに着目し技術的問題に絞り込んで維持管理手法の構築を提案した。
  • *小林 勇介, 渡辺 悌二
    日本地理学会発表要旨集
    2017年 2017s 巻 419
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/03
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに  大雪山国立公園では、主な
    登山道
    の表層は火山性の脆い物質に覆われ、さらに融雪期と登山シーズンが重なるという地域性から、
    登山道上の侵食や登山道
    周辺の植生上への土砂の堆積が深刻な問題のひとつとなっている。
    登山道
    侵食を理解する上で侵食断面を計測する2次元的な手法が従来から取られてきた。しかしながらこの手法では全体的な計測や経年変化の把握は難しい。そこで本研究ではUAV(ドローン)による撮影および3次元解析を行い、2014年から2016年の3年間の侵食量および堆積量の変化を明らかにした。また、
    登山道
    表面から基盤までの厚さを計測し、将来、侵食しうる規模について評価した。 2. 調査対象
    登山道
     本研究では、大雪山北海岳から白雲岳方面にかけて広がる緩斜面上を南北に走る
    登山道
    を対象とした。登山者は例年9月が最も多い。大雪山国立公園の中でも、深さ1 m規模の大きな下方侵食が多発している区間である。 3. 計測方法  今回、7箇所の
    登山道
    上の侵食を計測した。ひとつの侵食の全体を計測できるよう、侵食の始点から終点の間に複数個のGCP(地上基準点)を設置し、GPSを用い地上座標を得た。UAVにはDJI Phantom2+Visionを、空撮用カメラにはRICOH GRを用いた。写真測量解析にはAgisoft Photoscanを、土量計測にはArc GISおよびEasy MeshMapを用いた。
    登山道
    表面から基盤までの厚さの計測にはPANDA2を合計14地点で用いた。   4. 結果と考察  計測対象とした7箇所の中で、最も侵食規模の大きな箇所の侵食量は274.67 m3であった。各計測箇所においては、全体の侵食量と
    登山道
    の傾斜度に明瞭な関係は見られない。また、2014年から2015年にかけて
    登山道
    に変化はほとんど見られない。しかし、2016年台風10号による大雨の影響で、下方侵食が1 cmから30 cmの範囲で進行した。今回、周氷河地形が発達する緩斜面上で下方侵食のほか側壁の崩壊が見られた。今後の下方侵食が発生しうる規模については、30 cmから100 cm以上と想定され、2016年台風10号のような大雨が今後も発生すると更に下方侵食が進行することが予想される。また、今回の大雨による活動層の融解の促進が見られた。このため
    登山道
    が泥濘化し、登山者が歩行場所を大きく変え、
    登山道
    が拡幅した場所も見られた。現在、大雪山国立公園では近自然工法に基づく
    登山道
    補修が積極的に行われている。実際の施工に際し、水道となる微地形の見極めが必要となることから、UAVおよびSfMを用いた計測は
    登山道
    管理において有効であると考えられる。しかし予算や人員が限られており、今後荒廃しやすい場所を優先的に補修するなど対策が必要である。   本研究の実施には科学研究費補助金「持続的観光への展開を目指した協働型
    登山道
    維持管理プラットフォームの構築」(課題番号15K12451,研究代表者:渡辺悌二)を使用した。
  • *王 婷, 渡辺 悌二, Regmi Dhananjay
    日本地理学会発表要旨集
    2023年 2023s 巻 643
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    会議録・要旨集 フリー

    はじめに

     サガルマータ(エベレスト山)国立公園は,世界自然遺産にも登録された山岳国立公園である。自動車道路のない公園内の移動には,いわゆる

    登山道
    が使われている。長距離の登山を行う利用者は途中の村に休憩・宿泊しなければならない。メインの登山ルートに点在している村の中にはロッジやレストランなどの施設がたくさん建てられている。観光関連物資の運搬には家畜(ナムチェ・バザールより高所では雄ヤクとゾプキョ,低所ではミュール=ウマとロバの交配種)が広く使われている。特に最近になってトレッキング観光が盛んになり,観光関連物資運搬の家畜が
    登山道
    を利用する機会が増加しているものと考えられる。

     Barrosら(2013)は,草地上の

    登山道
    において,人と家畜の雑踏により裸地の拡大や土壌流出などの荒廃問題が生じやすいことを報告している。サガルマータ国立公園では,放牧地を通過する
    登山道
    区間がたくさん存在している。しかし、この国立公園を含めたヒマラヤでは
    登山道
    荒廃に関する研究はほとんどない。そこで,本研究では, UAVを用いて撮影した写真の解析,ならびに現地観察によって,
    登山道
    の荒廃の現状を把握することを目的とした。

    研究方法

     LuzaとMachhermoの間の放牧地を通る約334 mの

    登山道
    区間(標高 4,400〜4,455 m)を調査対象として選んだ。UAV(DJI社製,Mavic 2 Pro)を用いた
    登山道
    の3Dマッピングは2022年11月18日に実施した。植生の荒廃状況を把握するために, 11月19〜21日にMAPIR社製のSurvey3N Camera (OCN, NDVI) をUAV (DJI社製,Phantom 4) に装着して写真を撮影し,調査した
    登山道
    区間のNDVIマップを作成した。撮影した写真はAgiSoft Metashapeで解析した。作成したオルソイメージやDEMデータを使って,ArcMap で3D分析およびNDVI分析を行った。

    Dマッピングによって作成した地形図の解析

     図化した

    登山道
    区間の地表面は起伏が大きくて,傾斜が30度を超える場所もある。複線化した
    登山道
    が連結して幅が22 m を超える場所があり,ガリーの深さは最大で80 cmに達している。

     オルソ画像をみると,

    登山道
    の複線化により周辺の植生がまばらになっていて,植生被覆が広範囲にわたって著しく分断されたことがわかる。一方で,一部のガリー(幅50 cm以下)の側・底面に植生が認められた。

    NDVI解析

     調査時期が冬シーズンであるため,

    登山道
    周辺は全体的にNDVIの数値が低く,ガリー底では数値が-0.25よりも低かった。今後,
    登山道
    周辺の植生がどれほどダメージを受けたかを明らかにするために,NDVIを用いて夏シーズンの植生の生育状況を把握することが必要である。さらに,継続的な調査により,植生が側・底面に残っているガリーにおいて植生の回復状況をモニタリングすることが可能となる。

    登山道
    管理の必要性

     2022年11月にサガルマータ国立公園で調査した際に,標高3800 m 以上の

    登山道
    にまで石畳やコンクリートで整備した区間が増加していた。こうした整備区間は侵食速度を考慮せずに人の通行量の大きさに基づいて整備が決められている可能性が大きい。ところが,本研究で問題視している,複線化とガリー侵食の著しい草地上の
    登山道
    区間(より平坦で土壌が発達している)はいまだに放置されたままである。
    登山道
    の持続可能な利用を実現するために,ガリーが生じた
    登山道
    区間を積極的に整備し,植生回復を促進する対策を行うことが,今後の
    登山道
    管理に含まれる必要があり,最初にすべきことは,国立公園全域の
    登山道
    管理のグランド・デザインを考えることであろう。

     UAVによる写真撮影にはChandan Regmi(フィンランド・トゥルク大学・院生)ならびに地元ガイドらの協力を得ました。また,UAVの飛行許可はネパール国立公園野生動物保全局ならびにネパール民間航空公社から得ました。

  • *渡辺 悌二, 王 婷, レグミ ダナンジャイ
    日本地理学会発表要旨集
    2020年 2020s 巻 418
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/30
    会議録・要旨集 フリー

    はじめに

    サガルマータ(エベレスト山)国立公園は,世界自然遺産にも登録された山岳国立公園である。自動車道路のない公園内の移動には,いわゆる

    登山道
    が使われている。多くの山岳地域とは異なり,サガルマータ国立公園では,人だけではなく観光関連物資を運搬する家畜(ナムチェ・バザールより高所では雄ヤクとゾプキョ,低所ではミュール=ウマとロバの交配種)が
    登山道
    を利用している。特に最近になってトレッキング観光が盛んになり,観光関連物資運搬の家畜が
    登山道
    を利用する機会が増加しているものと考えられる。
    登山道
    の荒廃についてはNepal & Nepal (2004)の研究が行われているのみである。

    そこで,本研究では,Google Earth画像,UAVを用いて撮影した写真の解析,ならびに現地観察によって,

    登山道
    の荒廃の現状を把握した。Google Earth画像と現地観察はエベレスト街道沿いの広域で行い,UAV(DJI社製,Mavic 2 Pro)を用いた
    登山道
    の図化はナムチェ・バザールとクムジュンの間の2区間(標高3,824〜3,838 mの「上区間」と標高3,694〜3,718 mの「下区間」)で2019年11月21日に実施した。図化した区間長は,上区間で約165 mで,下区間で約145 mである。GCPは,それぞれの区間において,アンテナ(Tallysman社製,TW4721)をRTK GNSSモジュール(EMLIP社製,Reach M+, RCH102)につなぎ,一組をローカル基準局とし,もう一組を移動局として対空標識(6カ所)の位置情報取得に用いた。撮影した写真は,AgiSoft Metashapeで解析した。

    Google Earth画像の解析

    調査地域に関しては,2008年〜2017年の画像が公開されている。2017年の画像から,平坦な場所に

    登山道が設けられている場合に登山道
    の複線化が著しく,しばしば5〜10本の
    登山道
    が並行して発達していることがわかった。ガリー侵食もこうした区間で著しい。  

    Google Earthで2008年と2017年の画像を比較すると,後述のUAV写真による図化範囲の一部で,2008年にはみられなかったガリー侵食が2017年までに発達したことがわかる。また,

    登山道
    周辺の植生は残ってはいるものの植生の被度が低下している区間が増加していることがわかる。

    UAVによって作成した地形図の解析

    図化した2区間のうち,上区間では複線化した

    登山道
    が連結して幅が13 mを超える場所があり,ガリーの深さは最大80 cmほどに達している。下区間では
    登山道
    の幅は10 mを超えていて,ガリーの深さは最大100 cmに達している。

    UAVによる写真から図化した

    登山道
    の荒廃の一部は,Google Earth画像から最近になって生じたものであると考えて良い。

    オルソ画像をみると,現時点では

    登山道
    周辺の地表面が植生で覆われていても,広範囲で植生がまばらになっている様子がわかり,植生が広範囲にわたってダメージを受けている可能性がある。将来は,NDVIを用いるなどして植生の生育状況を明らかにし,
    登山道
    荒廃を面的に捉える必要がある。

    最近の

    登山道
    整備の状況

    2018年12月以降,2019年11月までの11ヵ月間で,これまでにはみられなかった整備が,パンボチェの下流やデボチェの上流,ナムチェ・バザールの下流などいくつかの区間で行われていた。これらの区間では幅2.5〜5.5 mの

    登山道
    を石畳やコンクリートで整備し,鉄の手すりや階段を設置しており,まるで中国の国立公園やジオパークの
    登山道
    を連想させる整備状況になっている。こうした整備は基本的には急斜面を横切る区間で多く,本研究で問題視している,複線化とガリー侵食の著しい草地上の
    登山道
    区間はいまだに放置されたままである。上記の
    登山道
    整備は草地や景観の保護・保全を目的としたものではなく,安全性と快適性の向上を目的としている。国立公園局による
    登山道
    整備の優先順位付けには大きな問題があるといえ,複線化とがり侵食の進行区間を広域で精度良く把握する必要がある。

  • *清水 孝彰
    日本生態学会大会講演要旨集
    2004年 ESJ51 巻 O1-X07
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/30
    会議録・要旨集 フリー
     亜高山帯から高山帯に位置する
    登山道
    では、過剰利用等が原因となり、周囲の植生の荒廃が進んでいる。
    登山道
    の荒廃は、植生によりその程度が異なり、特に周囲が雪田や高茎草原等のお花畑となっている
    登山道
    は、著しく荒廃が進んでいることが多い。本発表は、白山の標高2000_から_2500mの地域を対象として、
    登山道
    の荒廃状況の指標となる
    登山道
    幅員を計測し、併せて周囲の植生・標高・傾斜・方位等の環境条件を調査、両者の相関を統計解析し、
    登山道
    の荒廃と環境との関係の定量的評価を試みた、市民団体による研究報告である。
     まず、
    登山道
    幅員が周囲の植生により異なる傾向にあるかを、F検定により解析した。その結果、ハイマツ、オオシラビソ群落は他の植生より幅員が狭く、高茎草原は他の植生より幅員が広いという傾向にあった。幅員と、地形の代表要素である標高・傾斜・方位、及び植生との関係を見ると、標高との明確な関係は見られないが、傾斜は小さいほど幅員が広くなる傾向にあった。方位との関係は南南東が最も幅員が大きく、南南東から離れるにつれ幅員が狭くなる傾向にあった。植生との関係は、平均幅員の狭い順に、岩屑・夏緑低木・ハイマツ・オオシラビソ・ダケカンバ・ササ・高茎草原・雪田の順に並んだ。
     次に、
    登山道
    幅員により大きく寄与している要素は何かを把握するため、標高・傾斜・方位・植生を説明変数、幅員を目的変数として重回帰分析を行った。その結果、植生の寄与が最も大きく、次に大きく寄与しているのは方位及び傾斜であり、標高の寄与は小さくなった。
     本発表では、計測データを追加して再解析し、さらに一部の調査点において
    登山道
    幅員の経年変化を調査した結果を紹介する。また、残雪・融雪水と
    登山道
    荒廃との関係を概略調査し、その概要を紹介する予定である。
  • 彦坂 洋信, 小林 達明, 浅野 義人, 高橋 輝昌
    日本緑化工学会誌
    1999年 25 巻 3 号 221-229
    発行日: 2000/02/28
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    神奈川県の丹沢山地において, 周辺植生と
    登山道
    荒廃の程度等との関係について調査を行った。その結果, 傾斜度や
    登山道
    周辺植生の低木・草本層の違い, あるいは土性の違いによって, 侵食量・侵食幅・侵食深といった
    登山道
    荒廃の程度等に明らかな差異が認められた。特に, 草本層の植被率が低い所やイネ科の草地内など, 周辺植生の表土中に太い根が少なく, 植被率や植生高が低く人が脇にそれやすい地点では,
    登山道
    幅の拡大が顕著にみられた。また,
    登山道
    内の土性が, 透水性が悪く侵食されやすい壌土の地点では, 侵食深が拡大する傾向がみられた。逆に, ササ類が密に生育し, 表土中の太い根の量が多い地点では, 侵食幅の拡大はほとんどみられず, また透水性の良い砂壌土の地点では比較的侵食深の拡大は抑えられていた。
  • *大場 一樹, 山下 亜紀郎, 吉田 剛司
    日本地理学会発表要旨集
    2010年 2010s 巻 S1404
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/10
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
     2005年の知床地域における世界自然遺産登録は、1970年代以来の第二次知床観光ブームを巻き起こした。それによる観光客の著しい増加は同地域内において過剰利用によるさまざまな問題を引き起こしており、羅臼岳においてもし尿処理問題や貴重な高山植生の破壊なども含めた
    登山道
    の荒廃が深刻である。日本各地でも
    登山道
    の厳密な維持管理の必要性が議論され、
    登山道
    の荒廃に関する研究が行われているが、羅臼岳の
    登山道
    における現状把握や対策に関する研究はまだ少ない。そこで、本研究では、羅臼岳における
    登山道
    の荒廃状況を現地調査により明らかにするとともに、航空データによってそれがどの程度把握できるのかを検証した。

    II.研究方法
     羅臼岳の山頂へ伸びる2つの
    登山道のうち利用者の多い岩尾別側の登山道
    において、登山口から大沢入り口までの侵食状況を、現地調査によって得た1)
    登山道
    幅、2)侵食深度、3)斜度、4)緑被率、の4データから明らかにした。
     また、近年では航空レーザー計測や空中写真の精度が飛躍的に向上しており、写真判読は広域を対象に均質な判断基準で情報抽出するような場合に威力を発揮する手法である(小荒井ほか、2008)。また、これらの技術は現地以外でも評価を求めることができるという利点がある。特に山岳地は多くが遠隔にあり気象条件も厳しく現地調査にかかる負担が大きい(愛甲ほか、2006)ことから、有効性が発揮される。
     そこで本研究では解像度0.4m/px、0.2m/px、の1978年と2004年の羅臼平野営指定地の空中写真をそれぞれ比較し、解像度の違いによってどの程度、
    登山道
    の荒廃状況の把握に違いが出るかを分析し、さらに1978年から2004年までの同地域の裸地面積を比較することで経年変化を追った。また、羅臼温泉側の
    登山道を対象に航空レーザー測量を用いた詳細な地形データから登山道
    荒廃状況がどの程度解析できるのかについて検証した。

    III.結果・考察
     岩尾別側の
    登山道
    における現地調査の結果として、
    登山道
    幅と侵食深度を度数分布表による変化点や平均値から3つに分類した。それらをクロス集計し、
    登山道幅と侵食深度からみた登山道
    の荒廃状況を5つのレベルで評価した。その結果、標高900~1000mの仙人坂と呼ばれる地点付近に
    登山道
    荒廃の深刻な評価_IV_および_V_が集中していることが分かった。
    登山道
    全体における侵食深度と斜度との相関係数は0.50739であり何らかの相関関係があると考えられるが、仙人坂付近と同程度の斜度を持った他の地点においては評価_III_以下しか得られなかった。このことより、
    登山道
    の荒廃には斜度の大小が関係しているが、地質や周辺の地形・植生など今回調査したもの以外の他の要因も関係しているであろうことが考えられる。
     次に、1978年および2004年の羅臼平野営指定地周辺における空中写真から裸地の面積を抽出し比較したところ、1978年と2004年でそれぞれ708.92m2、688.94m2となり、1978年の方が裸地の広がりが大きいという結果となった。両空中写真とも撮影月が10、11月であったことから、積雪時の写真であることが裸地面積の抽出を困難にしている可能性が考えられ、裸地面積の比較には別時期における空中写真において再度検討する必要がある。また、同地域において解像度の違い(0.4m/px、0.2m/px)から野営地周辺に発生している登山客によるトイレ踏み分け道を確認することができるかを比較した。その結果、0.2m/pxの高解像度の空中写真においてもトイレ踏み分け道を確認することはできなかった。同地域のトイレ踏み分け道はハイマツに覆われており、航空機からの撮影では限界があると考えられ、より低高度から撮影できる機器の活用などが必要であろう。または、同地域を覆っている植生に左右されないレーザーデータが有効であると考えられる。
     羅臼温泉側
    登山道
    における航空レーザーデータの解析結果からは、
    登山道
    を確認することができた。しかし、現地調査の結果、この地区における
    登山道
    では目立った荒廃が確認できなかったため、高性能なレーザーデータにおいてどの程度
    登山道
    の荒廃を把握できるのかは確認できなかった。しかし、荒廃の深刻でない箇所においてもかなりの精度で情報を得ることができるので、荒廃の深刻な箇所において、その現状把握に効果が発揮されると考えられる。

    付記
     本研究は、環境省環境技術開発等推進費「航空レーザ測量データを用いた景観生態学図の作成と生物多様性データベース構築への応用」(研究代表者:小荒井衛)の一部であり、航空レーザーデータの解析結果も当課題の成果を使用した。
  • *堀 彰穂, 岩永 青史, 原田 一宏
    日本森林学会大会発表データベース
    2023年 134 巻 B1
    発行日: 2023/05/30
    公開日: 2023/05/30
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、国立公園における

    登山道
    整備において、ボランティアを活用した整備について着目し、新たな担い手としてのボランティアによる整備の可能性とその課題について検討することである。そこで、登山者に対して、登山者への
    登山道
    を取り巻く課題の認知や、ボランティアによる整備への意識についてのアンケート調査を実施した。

     アンケート結果より、回答者の約79%は、

    登山道
    整備のボランティア活動について「興味がある」と回答しており、
    登山道
    整備の新たな担い手としての可能性を有していることが明らかになった。一方で、「ボランティア募集の案内を見たことがあるか」について、約20%の回答者が「見たことがない」と回答しており、周知について課題があることが分かった。また、
    登山道
    整備ボランティアについて「興味がない」と回答した者ついて分析を行った。その結果、興味が無い主な理由として「技術が無い」ことを挙げており、また、「技術が無い」と回答した者の半数以上が女性であった。このことから、技術が不要かつ男女問わず参加できる多様な作業項目があることについての周知・広報が求められることが明らかになった。

  • *王 婷, 渡辺 悌二, レグミ ダナンジャイ
    日本地理学会発表要旨集
    2024年 2024s 巻 415
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/19
    会議録・要旨集 フリー

    はじめに

     サガルマータ(エベレスト山)国立公園は,世界自然遺産にも登録された山岳国立公園である。ヒマラヤ山脈(ネパール側)の高所で家畜の放牧を長年継続したシェルパ人の居住は特別に認められている。自動車道路のない公園内の移動には,いわゆる

    登山道
    が使われている。標高4000 m以上の高所ではヤクの放牧地を通過する
    登山道
    区間も広く分布している。観光関連物資の運搬には家畜(ナムチェ・バザールより高所では雄ヤクとゾプキョ,低所ではミュール=ウマとロバの交配種)が使われている。国立公園内の放牧地を通過する
    登山道
    区間には,ガリー侵食や
    登山道
    の複線化などの深刻な環境荒廃問題が多く見られた。しかし,この国立公園を含めたヒマラヤでは
    登山道
    荒廃に関する研究はほとんどない。本研究では,UAVによる3次元マッピングを行い,ガリー侵食・植生の荒廃問題に焦点をあて,当地域の
    登山道
    の荒廃の特徴を把握することを目的とした。

    研究方法

     ゴーキョの谷に行く登山ルートにヤクの放牧地が広く分布している。Machhermoは当ルートの重要な宿泊集落として知られ,登山シーズンに休憩・宿泊利用をする登山者が多く訪れる。本研究では,Machhermoに入る(ゴーキョに向かう方向)直前の約334 mの

    登山道
    区間(標高 4,400〜4,440 m)を調査対象として選んだ。2023年10月26日に,UAV(DJI社製,Mavic 3 Multispectral+D-RTK-2 GNSSステーション)を用いて,RTKモードで
    登山道
    の3次元・NDVIマッピングを実施した。撮影した写真を使い,AgiSoft Metashapeで調査地のオルソイメージおよびDEMデータを作成した。作成したDEMおよびオルソイメージを用いて,ArcMapで3D解析・NDVI解析を行った。

    調査地の地形の特徴とガリー侵食の分布パターン

     図化した

    登山道
    区間は起伏の大きい地面を通っている。南に傾いている斜面が全体の8割以上で,東南方向に傾いた斜面が一番多い。傾斜が15度を超える場所を中心に深さ5〜80 cmのガリーが発達している。凸型の地面(傾斜が30度以上)に直交した区間に,平均面積約29 m2 (レンジ= 10〜44 m2)の崩れ (n = 8) が断続的に生じていた。それに対して,傾斜が小さい区間では,深さ20 cm以内のガリーが複数本並んで走っている。そのうち,幅が15 cmほどの細いガリーも多数みられた。

    植生の荒廃

     

    登山道
    区間の地表面のNDVI数値のレンジは0.2〜0.5であった。保水力・浸透力が大きく低下したガリー侵食面や著しい踏圧を受ける裸地表面では,NDVI数値が0.3以下と低く,そのほかの裸地表面と枯れた牧草が残った地表面では0.3〜0.4だった。幅が15 cm以内の細いガリーを中心に,ガリー底とガリー側面で植生の回復が見られたところが多く,そこではNDVI数値がほぼ0.5に近く,調査した
    登山道
    区間内で最高値となった。ガリー侵食により,大きな崩れが生じた区間では,
    登山道
    の中央から両側につれてNDVI数値が上がる傾向が明確に現れた。

    必要な

    登山道
    管理対策

     当調査地域では,地面の起伏が大きく,斜面に交わって走る

    登山道
    区間では,地表面が裸地化し,ガリー侵食もたくさん生じている。ところが,幅が狭いガリーの多くはあまり深くまで侵食されず,植生回復も進んでいる。このため,これ以上侵食する心配はない。ただし,ガリーの複線化が進んだことにより,地面が凸凹になって歩きにくくなっている。その結果,登山者の歩行が周辺の平坦な場所に広がり,頻繁に通過する区間では,土壌が強く圧密され,植生が回復できない状態になる恐れがある。このような区間では,登山者・ヤクの交通量を有効に分散させる対策を考えるべきである。一方,凸型の地表面と直交する
    登山道
    区間では,崩れた
    登山道
    のさらなる拡大を防止することが重要である。崩れた地面の補修・強化と同時に階段を入れて傾斜を小さくするような積極的な維持管理を提言する。

  • 奥矢 恵, 大場 修
    日本建築学会技術報告集
    2020年 26 巻 63 号 753-757
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    We conducted field surveys and interviews about the mountain huts on Mt. Fuji which were built around Showa 30’s (1955-1964). Until then, building materials were transported by horses or human power and the member dimensions of columns and beams were limited. Still, partially though, we confirmed that these stone huts have the same form and construction as the Edo era. Specially, a floor plan with an earthen floor parallel to the mountain trail is the basic form of the stone huts on Mt. Fuji. Plural kinds of tephra are used in the right place for the stone huts.

  • 渡辺 悌二, 深澤 京子
    地理学評論 Ser. A
    1998年 71 巻 10 号 753-764
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    黒岳周辺の
    登山道
    の荒廃の軽減を図るために,黒岳七合目から山頂区間の
    登山道
    に,1989年に排水路と土止め階段が設置された.これらの排水路や土止め階段が設置された当時には,板の上端まで土壌があったと考えられるが,現在では土壌侵食によって,かなりの板が露出している.調査地域に設置された板製の排水路の67%と板階段の67%が機能を失っており,57%の階段の周辺で土壌侵食が生じていた.
    登山道
    の幅は,7年間で平均72.5cm拡大していた.さらに,5地点での土壌侵食速度は,54~557cm2/年であった.この地域の既存の排水路や土止め階段はいくつかの問題を抱えており,
    登山道
    の荒廃を軽減するためには,(1)適切な設置角度の排水路の数を増やし,(2)排水路や土止め階段の長さを長くし,(3)
    登山道
    表面の整地作業を頻繁に行う必要がある.
  • *愛甲 哲也, 安原 有紗, 庄子 康
    日本森林学会大会発表データベース
    2023年 134 巻 B2
    発行日: 2023/05/30
    公開日: 2023/05/30
    会議録・要旨集 フリー

    我が国の山岳地の

    登山道
    は,多様な管理者や民間の協力で維持されている。国立公園内においても,多くの
    登山道
    が事業執行をされていない状況で,周辺の山小屋事業者,地域の山岳会,市民ボランティアなどがその維持管理を担っている場合も少なくない。関係機関や自治体から人員や資材,経費が補助される場合もあるが,多くの地域で維持管理の継続が課題となっている。特に民間の山小屋事業者が周囲の
    登山道
    の維持管理を実質的に担っている場合,新型コロナウィルス感染症の蔓延による登山者数の減少および宿泊人数の制限により経営が厳しくなり,
    登山道
    の維持管理などといった公益的機能の維持が困難になってきている。本研究で対象としている北アルプス南部地域では,2021年秋より,登山者に
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    維持管理への費用負担をもとめる取組,北アルプストレイルプログラムをはじめた。関係者や登山者の関心も高く,2021年9月18日から10月18日までの期間に,約550万円の寄付が集まった。一方で,取組の継続性やより効果的・公平な徴収方法の検討など,課題も多い。取組について協議している検討会の記録と,登山者のアンケート調査からその課題と改善策を考察する。

  • *藤野 正也, 久保 雄広, 栗山 浩一
    日本森林学会大会発表データベース
    2021年 132 巻 B18
    発行日: 2021/05/24
    公開日: 2021/11/17
    会議録・要旨集 フリー

    2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行し、富士山においては対策として4つの

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    すべてが閉鎖された。この対策が国民にどのように評価されているのかを明らかにするため、全国の20歳から69歳の男女1,038名に対し、Webアンケート調査を実施した。感染対策としての
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    閉鎖の妥当性を尋ねたところ、50%が妥当であると回答した。閉鎖された
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    へ侵入する登山者への対応としては、25%が自己責任であれば問題ないと回答した一方、30%が罰金を科すのが良いと回答し、評価が分かれた。また、
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    の閉鎖が終了した場合を想定し、山小屋の宿泊人数を半減させる対策に対して評価を求めたところ、効果を期待する意見が4割あった一方で、相部屋であること自体に対して否定的な意見が4割あり、評価が分かれた。今後、適切な対策を取るためには従来の登山とは異なる形態の構築が必要であると考えられた。

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