介護保険において, 障害をもつ高齢者の要介護度は, 基本調査結果から算出される. しかしこれは複雑な電算処理を要するため, 介護の現場で要介護度を推定することは困難である. そこでわれわれは, 日常目につきやすい生活動作の障害状況から, 簡便に要介護度を推定できる樹形モデルを開発した. 本モデルは, 痴呆系と身体障害系に分けて作成した. 一次判定の確定した東山老年サナトリウムの患者から, 痴呆系と身体障害系の症例を各要介護度20例づつ, 計240例を無作為に抽出し, その基本調査結果を検討した. 調査項目の選択肢が「自立」から「全介助」へと移行するにつれ要介護度が比較的規則正しく上昇する項目, 痴呆系では「上衣の着脱」, 身体障害系では「排尿後の後始末」を第一次分岐項目に選定した. 痴呆系モデルにおいて,「上衣の着脱」の選択肢と要介護度の対応は次のようにした.「自立」→要支援,「見守り」で「立ち上がり」が「つかまらないでできる」→要介護1, 同じく「立ち上がり」が「つかまらないでできる」以外→要介護2,「一部介助」→要介護3,「全介助」で「食事摂取」が「全介助」以外→要介護4, 同じく「食事摂取」が「全介助」→要介護5. 身体障害系では,「排尿後の後始末」の選択肢と要介護度の対応を次のようにした.「自立」で「歩行」が「つかまらないでできる」→要支援,「つかまらないでできる」以外→要介護1,「間接的援助のみ」または「直接的援助」→要介護2,「全介助」で「食事摂取」が「自立」か「見守り」→要介護3, 同じく「一部介助」→要介護4, 同じく「全介助」→要介護5とした. 本樹形モデルによる推定要介護度と一次判定の要介護度が完全に一致した正診率は, 痴呆系71.7%, 身体障害系66.7%であった. 両者のずれが上下1ランク以内に留まる準正診率は, 痴呆系98.3%, 身体障害系100%であった. 以上から, 本推定樹形モデルは十分実用に耐えると考えた.
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