【はじめに】FlashとHoganは躍度最小(以下C
J)、Unoらはトルク変化最小(以下C
τ)というどちらも運動の滑らかさを表す
評価関数
を提案した。前者は躍度(加速度の一微分,以下jerk)、後者は関節トルク変化(以下TC)が小さいほど、滑らかな動作であると位置づけられる。我々は第36回の本学会でC
Jを用い歩行時の重心の滑らかさを定量化し報告した。
今回更に歩行時の下肢関節C
τを求め定量化すると共に、重心C
Jと関節C
τが何か関係しているのではと考え、検討したので報告する。
【対象・方法】対象は健常成人9名(男性6名、女性3名、平均年齢22±3歳、平均体重60.6±6.6kg、平均身長167.6±6.2cm)とした。測定は2枚の床反力計(アニマ社製MG-1090)と三次元動作解析装置(アニマ社製LOUCUS MA-6520)使用し、快適自由歩行(以下FG)及び歩行率112・132steps/min(以下単位省略)の条件にて前方に腕組みして歩行させ、左下肢立脚期データを分析した。サンプリング周波数は240Hzにて測定した。
【データ処理】重心C
Jは各条件の測定より床反力前後分力(以下Fy)を算出し、制動相と駆動相にわけ分析を行った。Fyにおける重心加速度(以下Ay)はAy=Fy/M+Aoの式より求めた(Mは体質量、Aoは立脚期中のAyの平均を0にする値)。次に各相を時間軸100%として正規化したAyを微分しjerkを求めた後、重心C
JをC
J=1/2∫(jerk)
2dtの式にて求めた。また下肢関節C
τも足・膝・股関節トルクを身長と体重で補正した後に各相を時間軸100%として正規化し、それを微分した各TCの2乗和の積分にて算出した。
【結果】重心C
Jの各条件での制動相と駆動相の比較では、条件FGの重心C
Jは制動相210.87±68m
2/s
5,駆動相300.17±91m
2/s
5であり、歩行率132の重心C
Jは制動相268.42±77
2/s
5,駆動相334.39±66
2/s
5,と、どちらも駆動相が有意に高い値を示し、歩行率112でもp値=0.0503と駆動相が高値となる傾向を示した。また関節C
τの各相の比較では全条件で有意差は認められなかった。次に重心C
Jと関節C
τの相別における各条件の多重比較では、制動相の関節C
τのみが、条件FGに比べ歩行率132で有意に高値を示した。また重心C
Jと関節C
τの関係は、制動相では歩行率112と132で正の相関関係を示し、駆動相ではFGのみ正の相関関係を示した。
【考察】制動相と駆動相の比較より、歩行時の重心C
Jは制動相に比べ駆動相で滑らかさが損なわれていることが明らかとなった。
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